2017年9月の落石事故を重く受け止め、太魯閣渓谷と山道の危険性について記述しました (2017年9月17日追記)。
桜と高原茶、神木、五奇にも数えられる旭日、夕焼け、森林、鉄道など、阿里山の魅力を形容する語彙は多々あります。
その中でも最も幻想的であり、同時に悩ましくもある存在は雲海ではないでしょうか。
標高2,000m超の峠や山におけるヒルクライムでは、登坂中に雲の中に突入することも決して珍しくはありません。しかし、雲霧が名物と化している阿里山においては、霧の天候は年間244日、雨天は209日、平均降水量は4,000mm [1] と高頻度で雲に山が覆われます。
阿里山公路と大華公路のそれぞれを通って、阿里山に連続して2回訪れた私も、その両方で濃霧と激しい夕立に遭遇して楽しくも大変な体験をしました。
濃霧は視界を遮り、雨は道路と側溝との境界や路面状況を覆い隠し、土砂災害を招き、ブレーキの制動力や体温の低下を招きます。
決して甘く見てはいけません。それと同様に雨から逃げようとして慌てて降りてもいけません。
雨の山道は本当に危険なものだからです。
たかが霧ぐらいと侮っていると、進むごとに濃度が上がり、僅か10m先すら見えなくなります。スピードに乗った下り坂では特に危険です。
その雲霧の先には往々にして雨が待ち構えており、湧水が豊富な場所では落石や土砂災害の危険性もあります。
侮らず、慌てず、天候が回復するまで安全なところに退避しましょう。
ガラス戸を1枚隔てて、天国と地獄が隣り合う光景を楽しむぐらいの余裕が必要です。
運良く建造物の屋根に辿り着けない場合には、生い茂った樹木の陰で霧や雨を凌ぎます。
体温低下や自動車との接触事故を回避し、前照灯や車幅灯の電池を温存する事が目的です。
南洋植物の遮蔽性は高いので、1時間ぐらいの雨なら全く濡れずに済む事もあります。
ただし、枝や果実、石などの落下物や転倒の危険性は常にありますので、ヘルメットだけは外してはいけません。
阿里山のような標高の高い連山の場合、平地とは異なり、一帯全てが雨や霧に覆われる事は稀です。
雲が掛かるのは一部の地域のみなので、激しい雨が降っているところに自ら突入する事を避け、焦らずに遣り過す冷静さを保つ事が肝要となります。
直ぐにでもその場から離れたくなる気持ちは分かりますが、ポケットを引っ繰り返しても悪夢は終わりません。
焦らずに落ち着いて状況に対処する事が求められます。
自らを救うのは迷信や他力本願、根拠のない強がりではなく、自分自身の経験と観察、そしてLEDの人工光だけです。
雨避けを辞めるタイミングと進むべき方角は、通りがかった車に付着した水滴、風向き、光量、虫の雑音などが教えてくれます。
一難去って澄み渡った空と山道の組み合わせは本当に美しいものです。
それを見る為にも焦って降って事故に遭ってはいけません。
高山の雨は遣り過し、待機中は体温低下を避け、降坂は落下物に気をつけながら道路の中心寄りを走ります。
止まない雨も晴れない霧はありません。
安全になってからゆっくり降ればいいのです。
引用
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[1] 行政院農委会林務局, 2012, 阿里山森林遊楽区 | 国家森林遊楽区 http://recreation.forest.gov.tw/RA_J/RA_13.html