AEROCOCKPIT から推量する CANYON の思惑

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私が AEROAD CF SLX に乗っているのは先に述べた通り、ただ乗りたいバイクがそれだったからという理由です。

理由が理由なので、各部品の規格や互換性などは深く考えたことはありません。

そんな私でも複数のバイクを乗り比べていると、何となくバイクの設計意図やメーカーの思惑が見えてきます。

AEROAD CF SLX のシートポストなどを眺めていると、各要素の合理的かつ機能的な設計の美しさに関心してしまう反面、独自の専用部品が目立つことに気がつきます。

エアロを重視したモデルでは他社でも同様の傾向にあるので、専用部品が目立つのは CANYON にのみ見られる特徴ではありません。

しかし CANYON の場合、特に上位グレードモデルに顕著なのですが、完成車が完成され過ぎているが故にユーザーが独自にカスタマイズできる幅が少ない印象を受けます。

その為に余計に専用設計の印象が際立つのかもしれません。

少なくとも Instagram に投稿される見知らぬ他人のバイクの写真を眺めて、自分のバイクと間違い探しをしているかのような錯覚を覚えるのは、ロードバイク趣味では稀有な経験ではないでしょうか。




それを最も端的に反映している専用部品が AEROCOCKPIT だと私は考えます。

AEROCOCKPIT とはステム一体型のハンドルバーです。電動変速機のジャンクションパーツを収納できるようになっています。

フレームと一体としてデザインされているため、形状や質感にも統一感があって美しいものです。

この AEROCOCKPIT に CANYON は日本語で『トルクスネジ』と通称されるヘックスローブボルトを使用しています。

ヘックスローブボルトとは、つまりは私がハードディスクを分解した際に使用した star head bolts / hexalobular bolts のことです。


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ヘックスローブボルトそのものは珍しいものではありません。

友人が帰国する際に私が引き取って乗っていた (そして現在はこんなところに行ってしまった) フランス車にも普通に使われていました。

ただしロードバイクに限定してみると一般的とも言えません。

現に AEROAD CF SLX の実物を見ても (私が発見できている限りでは) ヘックスローブボルトが使われているのはここだけです。

ヘックスローブには利点も多いので、小さなボルトに採用するのに適当という事情もあるのでしょう。

その一方でデファクトスタンダードになっているアレンボルト (六角ボルト) を廃して CANYON が最適と考える部品を採用したいという言外の本音も窺い知れるようです。

先ほど述べたユーザーが独自にカスタマイズできる幅が少ないという印象も、そうなるようにメーカーが意図してデザインしているのではないかと思えてきます。

その意図が見て取れる範囲は、専用部品で構成される AEROCOCKPIT に留まらず、完成車の部品構成から別売のボトルケージにまで及びます。


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CANYON の掲げる PURE CYCLING という標語はまるで完璧主義の体現のように聞こえます。

直販されるバイク (特に完成車) もユーザーがあれこれと試行錯誤して作りあげるための基本形や素体ではなく、メーカーが考える現状での最適解を提供することを目指しているかのようです。

私の解釈が正しいなどと言う保証は一切ありませんが、「レースで勝てる速いバイク」を作る手法としてはユーザーの試行錯誤に任せるよりも効率的で、品質の保証という点では間違いがありません。

そのように完成車の形式で提供される AEROAD CF SLX に私は洗練された機能的な美しさを感じます。

そして没個性的ではあっても、このバイクは届いた状態のまま、メーカーが意図する通りに使用することで、最も楽しく使えるのだろうと容易に想像できます。


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私はどちらかと言えば試行錯誤に由来する多様性と個々人の趣味性の方により魅力を感じます。

ケーブル配線が煩雑になるので、正直なところ英国/日本仕様という形式で組み付けられている点すら有り難迷惑に感じます。

ですが AEROAD CF SLX に関して言えば、設計者の意図を汲み、積極的に購入時のままの状態で使いたくなります。

その部品構成にもメーカーの思想と個性を感じるからです。

せいぜいホイールを交換する程度ですが、これはグレードや購入時期によって変動する数少ない装備品なので、状況に応じて交換してしまっても本質を損なうものではないでしょう。

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