ニップルを交換すると振れ取りがうまく行くこともある

まとめて発注したスポークとニップルを使用して、新しくホイールを組んだり、傷んできたホイールのスポークを順次交換しています。

1ホイールあたり約30本あるスポークを連日のごとく締めたり、緩めたりしていると、次第にコツが掴めてくると言うか、どういう時にどうすれば良いのかという事が少しづつ明らかになってきます。

最初に断っておきますと、私は自転車店の店員や開発者ではないのでホイールに関する詳細な知識は持っていません。

大阪の実店舗で完成車やホイールを購入後、遠方 (東京) に転居して見てくれる人がいなくなったので、自分で整備方法を学習、訓練して習得したに過ぎません。

その為、問題が生じた際には先ずは自分の技能を疑い、次に使用している道具 (の精度) を疑い、最後に部品 (の精度) を疑うという過程を繰り返している訳です。

しかし、さすがに一度に100本以上もスポークとニップルを弄っていると、技能や道具ではなく部品の方に問題があるのではないかと思える場面に出くわす事もあります。




振れ取りの途中でニップルを絞めてスポークのテンションを上げて行くと、どういう訳かある時点からニップルを締めてもテンションを上げられなくなってしまう事があります。

まるでニップルが空転しているような感覚がレンチを通して手に伝わってきます。

あるいは予想外にニップルが強く締まり過ぎてしまい、回そうとしても回らなくなることもあります。

こういう場合に力を掛けて無理やりニップルを締めると角をなめて破損させてしまう危険性があります。

少し勿体ないですが、こういう場面で他のニップルに交換すると簡単に振れ取りができるようになる事もあるので、駄目そうな場合は早々に交換してしまった方が良いかもしれません。

スポークを製造しているのは各メーカーですが、適当な長さに切断してネジ切り加工までしている訳ではありませんので、どうしても相性もありますし、ニップル側の不具合も存在しない訳ではありません。

もちろん私自身の技能に問題がない訳ではありませんが、こうした現象に対する寄与度は余り高くないので、そこだけに注目しても生産的とは言えません。

振れ取り中に縦振れが生じた場合には、一度、全てのスポークのテンションを緩めて振れを取ってから締め直すなど、ホイール組みには経験則に基づく知識がいくつもあります。

全て言語化されていれば調べやすいのですが、残念ながら余り情報がないので気が付いた時にメモして実践で確かめることを今後も続けていきます。

Mavic Open PRO と DT 350S で前輪をラジアル組み


ローラー台や街乗りに用いるホイールが欲しくなったので新しく組みました。

と言ってもリムは再利用品なので、新規に用意したのはハブとスポーク、ニップルの3セットのみです。

リムに使用するのは Mavic Open PRO の 28H で、以前は後輪に使用していました。

これに組み合わせるハブは DT SWISS 350 のリムブレーキ仕様です。最近ではディスクブレーキ仕様もあるらしいですね。

スポークはメンテナンス性を考慮して DT Competition 2.0/1.8 mm を選択します。

他のスポークでも良いのですが、私の場合は他のホイールにも同じスポークを使用しているので、種類を統一しておくと同じニップルを使い回せて便利という訳です。

Mavic Open PRO の ERD は 602mm と言われているので、これに DT 350 のピッチサークルとフランジ距離を合わせると2クロスの場合のスポーク長は 289.8mm ぐらいになるはずです。




そこで 290mm のスポークを発注して組み始めたのですが、組んでいる途中から何故か長さが足りずに厳しい場面に遭遇。

片側だけなら何とかスポークを張れなくもないのですが、そうするともう一方の側ではスポークがニップルまで届きません。

仕方がないので一度完全に分解してから、改めてラジアル組で組み直すことにしました。
そもそもこの計算が合っているのかどうか分かりませんが、ラジアル組なら同じ計算で 282.7mm あれば十分なはずなので、実際に少しスポークが余ります。

ラジアル組みをするとスポークが動く度にフランジの穴が広がって、いつかハブフランジが千切れるのではないかと不安になりますが、F6R みたいな競技用ホイールのテンションで張っても大丈夫なら、きっと大丈夫なのだろうとみなします。

向こうは 20H でこちらは 28H なので、もしかしたら強度的に不味いかもしれませんが、安価な実用ハブでそれも前輪なので定期的に様子を見ながらダメ元で使ってみます。

競技用品ではなく実用品なのでニップルは真鍮一択です。

安価な完組みでも良いところをわざわざ手組みにしているのは、トラブルへの強さを重要視しているからなので、外出先で交換することを考えたら真鍮の方が都合が良いと思い至りました。

そう考えると組み方も3クロスの方が適切かもしれませんが、組み上げる労力が大きいので個人的には直ぐに組める2クロスの方が好みです。

私は山道ではダンシングを多用するので、体感で振動が大きくなるラジアル組は余り好きではなく、自分では積極的には組みません。

今回も使用してみて気に入らなかったら、もう一度、スポークを再発注して組み直します。

Reynolds STRIKE は AERO とは異なる… しかしとても優秀かもしれない

Reynolds のロード用カーボンホイールには RZR と AERO と ALLROADS の3種類の商品構成があります。

1つ目の RZR はフラッグシップモデルで、英語圏では「究極の回転体」と比較されているところを目にします。ハブとスポークまでカーボン繊維 (と Boron fiber) で形成されており、前後輪あわせても質量 1.0kg を切るほど軽量だそうです。

対抗ホイールの Meilenstein と Gipfelsturm の方は何度も見たことがありますが、RZR に関しては自分自身で実物を見たことがないので詳しくは語れません。

2つ目の AERO は RZR に使われている技術を採用したミドルレンジモデルです。

約一年前に私が購入した AERO 46 もその一つで、現在は他にリム高の異なる AERO 65 と AERO 80 があります (過去には 72 と 90 がありました)。

こちらはカーボンリムに DT 240S ハブとスチールスポークを組み合わせた一般的なカーボンホイールです。

詳細は該当記事にありますので、興味のある方はそちらをご覧ください。

3つ目の ALLROADS もカーボンリムに合金ハブとスチールスポークを組み合わせたホイールです。

荒れた道に使える ATR の他に、リム高が異なる ATTACK (29mm) ASSAULT (41mm) STRIKE (62mm) の3つのモデルがあります。

これら ALLROADS ホイールとミドルレンジの AERO ホイールとの相違点はリムの形状とリム幅、そしてスポークの本数 (ただし最もディープな STRIKE だけは AERO と同じ本数) ですが、実物を細かく見ていくとカタログに載っていないところでも様々な点が異なります。

ここで偶然 CANYON の完成車に付属してきた STRIKE (62mm) と前述の AERO 46 が両方とも手元にあるので、それらを使って細かな違いを見ていこうと思います。




まず AERO と STRIKE とではハブの形状が異なります。

AERO の後輪は左右ともに2クロスですが、STRIKE はノンドライブサイドがラジアル組みです。

STRIKE Tubeless

AERO 46 Tubular

目立たないところではスポークも異なっており、AERO が DT Aerolite なのに対して STRIKE は DT Aero comp を使用しています。

スポークが DT ということは、ハブも DT 製なのでしょうけれども、今回は完成車外しのため確証がありません。

製品番号らしきフォントを見て「ポーランド工場製かな」と推測できるぐらい DT に魂を売り渡している私が見ても DT っぽいので、高確率で DT 製だとは思われますが。

ハブが異なるならスキュワも異なります。

私のことを良く知っている方は、私がアルミやチタンのような軽量な金属が嫌い (特にフレームやスポークやボルトの素材としては大嫌い) なことをご存知かと思われます。

話は脱線しますが一応は説明しておくと、アルミ素材が嫌いなのは板厚を稼げるので剛性を高める目的に適していても、疲労限度がなく耐久性に乏しいこと。

チタンについては摩擦係数が不安定なことに加えて、加工が難しく、室温でもクリープ性があるためです。

豊富な知識と卓越した技能を持つ整備士が点検した上でレースで使用するなら問題ないでしょうが、公道上で常用するなら鉄の方が安全だと思ってるわけです。

そんなアンチ軽量スキュワな私からしても STRIKE の方はちょっと… 市販品に交換したくなります。

AEROのスキュワはデザイン、質量、素材の全てについて言うことなし。最高です。

上が AERO 下が STRIKE

ハブもリムもスポークも、更に言えば (私の AERO 46 は Tubular なので) 使用するタイヤも異なるので、同じ Reynolds でも両者の性格は大きく異なります。

しかしリム高に対して非常に軽量な点は変わりません。

62mm のリム高に 25c のクリンチャータイヤとチューブ、リムテープが着いている割に前輪 1,033g 後輪 1,449g と質量は大変に優秀です。

(※ カーボンクリンチャーホイール用のタイヤレバーを所持していないので、やむなく完成車外しそのままの状態で計測しています)

特に後輪は DURA-ACE とは言え、11-28T の歯車が11枚とスポークのプロテクターが着いての数値です。

前後セットでカタログ値 1,635g という STRIKE の質量は伊達ではないかもしれません。

AERO 46 の方は Tubular なこともあって前後輪をあわせての質量 1,230g という恐ろしい数値が出ていますが、実際に履いて走ってみるととんでもなく速いです。

常用したくなるほどに気持ち良く速いのですが、私の住んでいる東京という違法駐車天国では 自転車が普通に走れるまともな道路 性能を活かせる場所がないので、イベント参加に遠出する際にしか出番のない不憫なホイールでもあります。

私が活かせていないだけで Reynolds のホイールはとにかく軽くてよく回るので、加速が必要とされるあらゆる場面でも役立つ上、Lifetime Crash Replacement という保証体制が優秀なので本来はとても使いやすいものです。

販売価格が安いだけのカーボンホイールよりも、品質的にも維持費的にも安心して使い倒せます (詳細は AERO 46 の記事を見てください)。

STRIKE も構造を見るだけで AERO とは根本的に異なる性格をしていることが分かりますが、これはこれで速いんだろうなと使う場面を考えるのが楽しくなってきます。

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