大容量ポータブル電源を購入する前に

防災用品として注目を集めているポータブル電源。

内蔵充電池を使用して停電時に電化製品を使用したり、照明を維持するのに重宝します。

もちろん、キャンプや釣りなどのアウトドアでも大活躍しますので、一つ持っているだけで調理にも音楽再生にもゲームにも使用できます。

基本的な使い方は USB モバイル充電池と同様です。専用の充電器を使用してコンセントから充電を行い、必要なときに電化製品の電源プラグをつなげて給電を行います。

利便性のためか、実店舗で在庫品を見かける機会は稀であるにも関わらず、市場にはいくつものベストセラー商品が溢れています。以下はその一例です。


Jackery ポータブル電源 400 大容量110000mAh/400Wh 家庭用蓄電池 PSE認証済

こうした人気商品を見ていきますと「機能全部入り」の大型ポータブル電源が目立つことに気がつきます。

電源プラグを2つ以上も同時に使用でき、大容量で給電時間も長く、そのうえ、一つにまとまっていているので1台で多くの場面に対応できます。

こうした大型のポータブル電源は確かに利便性が高く、所有していることで得られる安心感も大きいように思われます。しかし、私個人は容量の少ない小型のポータブル電源を敢えて選択するようにしています。

その理由はポータブル電源は使い捨ての消耗品であるためです。

正確には最近のポータブル電源に搭載されているリチウムイオン二次電池が消耗品であり、その取り扱いも難しいためです(※鉛蓄電池を使用しているものもあります)。




リチウムイオン二次電池は基本的には製造者の指定する専用の充電器を用いて充電するもので、規格の異なる充電器の使用などの誤った取り扱いによってセルを破損させた場合、異常発熱や破裂、発火する可能性もある危険物です。

使用者が安易に分解修理(部品交換)できるものではありません。

日立ポータブルパワーソース PS-64000(自動車整備用品)のように信頼性の高い日本製の商品である場合はともかく、防災時にも使用することを考えると商品の信頼性やアフターサービスも期待できるのかどうかを一考されたほうが間違いがありません。


日立[HITACHI] ポータブルパワーソース PS-64000

小型のポータブル電源においても同様のことが言えますが、これらは小型・軽量・小容量であるために価格も安く、大型のポータブル電源を1つ購入するのと同じ金額で複数個を購入できます。つまり冗長性で信頼性を補えるとも考えられます。

また携帯性を活かして日常生活でもノートパソコンの予備電源としての役割をもたせることが可能です。

いくらポータブル電源のなかでは小容量とは言え、カタログ値 83Wh もの容量がありますので、これ1つだけでも一般的なノートパソコン(※消費電力 20 – 30 Whと仮定)を 2.5 時間から 4 時間ぐらいは動かせる計算になります。

2つ以上を用意することで複数の電子機器を同時に稼働させることができるようになりますし、容量の問題も克服することが可能となります。

しかしながら、当然ながら1つの電源ごとに個別に充電が必要となりますし、数が増えてくると持ち運びに難がありますので、運用の面では大容量ポータブル電源のほうに利がある場面が多々あります。

週末ごとに登山に出かけて、照明を灯しつつ、音楽を流し、トラベルクッカーで調理される場合などには大型のポータブル電源を一つだけ持っていくほうが便利で現実的かも知れません。

具体的な使用場面と使用頻度を考えられてから選ばれると失敗を避けられます。




最後に防災用電源として画期的なマキタ (Makita) に触れずに本記事を終わらせることはできません。

市販品にセンサやスイッチを組み込んで利便性を向上させることを日常的に行っている人たちには有名な電動工具の会社です。

一般的にはコードレス掃除機が有名ですが、個人的に重宝しているのはデスクトップPCやキーボードの清掃に使えるブロワーです。

こうした電動工具や清掃器具に搭載される大容量リチウムイオン電池を防災時には非常用電源として活用できることがマキタの強みです。


ASCII.jp:なぜマキタのリチウムイオンバッテリーは災害時に最高なのか (1/3)
https://ascii.jp/elem/000/001/749/1749802/


災害時や外出時だけではなく、日常的に充電・使用する電源であること、充電時間が短いこと、入手性が良く信頼性も高いことなどに特徴があります。

惜しむらくは現状では外部出力が USB 充電のみで、一般的な電源プラグには対応していないこと、またポータブル電源としては電池がやや割高なので、マキタの電動工具や清掃器具を愛用している人でなければ導入の魅力が薄まってしまうことが弱点とも言えます。

幸いにしてマキタ製品は信頼性と耐久性に優れた実用品なので、防災用品と一緒に揃えられても無駄になることはありません。

防災用品を検討されるなかで、日常での使用頻度も考慮されますと現実的で合理的な選択肢とも言えるのではないでしょうか。


マキタ(Makita) 防災用コンボキット CK1008

Amazon で売られている太陽光パネル&LED電球は防災用途に使えるか

私の知り合いに山奥に住んでいる会社経営者がいます。

社長と言うよりも、その道 30 年の職人といった出で立ちで、山の麓の工業団地のちかくに事務所と作業場を構えています。

この経営者が大のつくほどのコンテナ好きで、どこかしらで中古の 20ft コンテナを買い付けてきては、資材置き場や自転車ガレージとして愛用しています。

ただ元が貨物輸送用コンテナなので、通気性は最悪ですし、内部の気温は夏場には 40℃ を軽く越えます。

意外と奥行きがあるので、中に入ると少しばかり薄暗いです。

外壁が金属なので暑い、寒いは仕方ないとしても、せめて、照明ぐらいは何とかならないかなと、太陽光パネルと充電式 LED 電球を購入して持っていったことがあります。


ソーラーパネル LED 充電式 キャンプライト

これなら送電線の届かないコンテナでも繰り返し利用できますし、使い捨てとしても問題ない価格です。

唯一の欠点は充電池の特性として、高温や落下などの衝撃で発火する可能性があることぐらいです。

昨今の災害により停電対策が見直されていることもあり、ふと、これは防災用品としても利用できるのではないかと思い至りました。




なにしろ低価格で始められて、必要なものは揃っているので、導入することは難しくはありません。

パワーインバータ(AC/DC変換回路)もチャージコントローラも別途購入する必要はありません。

付属の Micro-USB ケーブルを使用して LED 電球を充電すれば使用できるようになります。

LED 電球とケーブルの他には、太陽光パネルのみが梱包されています。

日本語の説明書は付属しません。

いろいろ英語としてはおかしいのですが、言いたいことは伝わらなくもないぐらいの拙い英語の説明書が1枚ついてきます(※これを学習教材にはしないほうが良いです)。

それによると


引用開始

Charging with 6V 1.8W Polycrystalline silicon solar panel is optional.

When you use it for the first time, please remember to charge it for 4hrs first.

If solar panel is used for charging, put the solar panel to a location where have direct sunlight and need 8-9hrs charging time.

(原文ママ)

引用終了


LED 電球のほうが本体で、こちらの充電時間は(おそらく)通常の充電器を使用した場合で 4 時間。

太陽光パネルを用いて充電すると 8-9 時間ぐらいで満充電に至るようです(太陽光パネルは使用しなくても充電できます)。

LED 電球は 3.7V/2600mAh のリチウム電池(※公称電圧からしてリチウムイオン二次電池)搭載で点灯時間は 6 時間と書かれています。

それに対して照明の詳細には Power 7W / Input Voltage AC 100-240V/DC 5V との記載があります。

ここから 消費電力 7W 電圧 5V として、これで 明るさ(全光束) 560lm の LED を照らすことになっています。

ん? あれ??? 消費電力と容量からして点灯時間おかしくね? と思いませんか。

いや、まあ、説明書の文章(というか英語)からして、おかしいのですけど・・・

搭載のバッテリーは容量 2,600mAh 公称電圧 3.7V なので 2.6 [Ah] * 3.7 [V] = 9.62 [Wh] ですね?

消費電力 7W の電球の 1 時間あたりの消費電力量はそのまま 7Wh になりますので 9.62 [Wh] / 7 [Wh] を考えても、これ、2時間も持たないんじゃね?🤔という疑惑が湧きます。

7 [Wh] * 6 [h] / 3.7 [V] = 11,350 [mAh] ぐらいが、バッテリーに本来あるべき容量でしょうか。

しかし、この電球はスペック通りに常温では 6 時間にわたって点灯し続けます

怪しいのは消費電力の方ですが、手元に電力量計がないので確認できません。分からないものは、ひとまず置いておくとして、使えるのか、使えないのかで言えば、割と使えます

分かりやすく PETZL ACTIKキャットアイ (CAT EYE) VOLT と比較してみます。

PETZLは登山者に抜群の支持を得ているフランスのヘッドライトで、これさえあれば、新月の夜でも足元まで見渡せるスグレモノです。

キャットアイは自転車用の照明などを製造している日本の企業で、この VOLT 700 は明るすぎるぐらいに明るいことで有名です(現在は後継モデルの VOLT800 が販売されています)。

カタログスペックで見るとこうなります。

光束 質量 点灯時間
ACTIK 350lm 86g 2h
VOLT 700 700lm 256g 2h
この電球 560lm? 6h

これらを暗室に持っていき、三脚に固定されたカメラで明るさを比較してみます。

カメラの設定で差が出ないようにマニュアルモードで、シャッタースピード 1/60 [sec] 絞り値 F/5.6 ISO 1600 に設定も固定しています。

この設定自体に大きな意味はありません。重要なのは設定が自動で変化しないことです。


(1) PETZL ACTIK

まずは 350lm の PETZL ACTIK です。

デジタルカメラは暗所に弱いので、画像だと暗いですが、肉眼で見ている分には十分な明るさです。

なお光量を絞ると点灯時間が大きく伸びます。


(2) CATEYE VOLT 700

つぎに CATEYE VOLT 700 です。いつ見ても凄い明るさです。

この光量では対向車が来る可能性があるところでは使用できないこと、点灯時間が3時間未満になることなどから、通常時には光量を絞って利用します。


(3) 太陽光パネル付き LED 電球

最後に今回の太陽光パネル付き LED 電球です。

LED テーブルランプ(デスクライト)と同じぐらいの光量があります。

部屋が全体的に明るくなるわけではありませんが、光量としては十分に実用的です。

この光量で本当に6時間も点灯が続きます。

電球の方はそれなりに実用性があることが分かったとして、次は太陽光パネルです。

外装はしっかりしている電球に比べると、太陽光パネルのほうは色も大きさも品質も玩具みたいです。

しかし、晴天時であれば屋内のガラス越しでも発電します。

出力端子は Micro USB だけなので、モバイルバッテリや小型の電子機器専用ですね。

この簡易なつくりでも、きちんと充電できることに感動を覚えます。

もちろん、より高価で大型のパネルを使用したほうが発電量は安定しますし、そもそもの品質がまったく異なりますので、防災用品としては微妙なところです(※ キャンプや電子工作に用いる玩具としては文句なしです)。

しかし、値段が値段ですし、これに依存するのではなく、装備品の一つとして持っておく分には悪い選択肢ではないと思います。

最後に多くの人が気になるであろう信頼性ですが、私が購入した個体については今のところ不具合は出ていません。

購入時点においては、日本国内のアマゾンから発送されてきましたので、返品交換対応も大丈夫かとは思いますが、中国から直送されてきたという人がいるというのを聞いても、いろいろ納得できてしまいます。

製品ごとの個体差もあるかも知れません。

信頼性のことを考えると、安心できるのはキャンプ用品メーカーのLEDランタンです。故障したら困る場面で使われることを前提としているので、丈夫なものが多く、保証もしっかりとしています。


コールマン(Coleman) 乾電池式 LED クアッドマルチパネルランタン 約800ルーメン

普段は使わない防災用品にしてしまうことがもったいないぐらいです。

こうした装備品を整えておき、補助的に組み合わせて使用することが理想に思われます。

まとめますと、実際に使用している者の感想としては、それなりに実用性が感じられて良い製品には思えますけれども、信頼性 やスペック情報 は未知数なので過信しすぎない程度に装備として考えておくのが良いと感じます。

関連:太陽光パネルの発電を計測する電子工作

オーラルB 電動歯ブラシの持ち歩き用ケース

出張族の私にとって、愛用品となってしまった ブラウン 電動歯ブラシ オーラルB EX D12013AE


ブラウン 電動歯ブラシ オーラルB EX D12013AE

価格ゆえに故障や紛失を気にせずに持ち運べ、世界中のどこに行っても替えブラシの入手性が良く、さらに単3電池で稼働することから飛行機にも躊躇せずに持ち込めます。

充電式の上位モデルの方が性能自体は良いのかもしれません。しかし、リチウムイオン電池を内蔵していると、出張に出かけて (空港に) 行く度に鞄から取り出して荷物検査を受けなければならなくなります。

歯ブラシだけなら構いませんけど、ノートパソコンに、携帯電話に、腕時計 (の形をした GARMIN ForeAthlete 230J) に、ノイズキャンセリングヘッドホンに、カメラに、モバイルバッテリーに、さらに人によってはタブレット端末に、ゲーム機に、ドローンに、といった具合に、電子機器が増えるとすごく大変です。

毎回のように、持っている電子機器をほとんど全て取り出してから、再度、収納することになってしまいます。

その点、オーラルB EX D12013AE であれば、スーツケースに入れっぱなしにして預け入れ荷物として運搬できるので、出張時にも電動歯ブラシを使用したい場合には最高です。

どこにでもあるアルカリ単3電池で稼働するので、電池は到着先で現地調達すれば軽量化もできます。




ただ、もともと外出先で使用することを想定していないのか、持ち運びにはやや難があります。剥き出しのまま、ボトルに入れて運んでいたらブラシが変形することが多かったので、ほぼ移動先ごとにブラシを使い捨てにして交換することになっていました。

ところで、この電動歯ブラシは交換式のブラシ (ドイツ製) の方が本体といいますか、ボディ (中国製) よりも高価です。

その本体であるブラシを、まだまだ使える (しかし、持ち運ぶとダメになるのが分かっている) 状態で使い捨てているのも何だかな、と思っていたところに良いものを見つけました。


エイ・ノーション Anotion プラスチック 電動歯ブラシケース 収納ケース ブラウン オーラルB対応 透明

ただの社外品のケースなのですが、私の持っている全 オーラルB EX D12013AE には対応しています。

これ一つあるだけで、ブラシを潰さずに持ち運べるので出張用品として、ますます便利になりました。


こうした誰がどこで作っているのか不明な便利品は、日本では珍しいですがヨーロッパには良くあります。

私が何年も住んでいたドイツにも ein Euro Shop という100円均一と同じ発想の店舗がありまして、 Made in EU とだけ書かれた謎のペットフードや、製造者やブランドについて何の記載もないボールペンなどが置いてありました。

大抵はローマニアやポーランドあたりで製造していて、中国製の方が高価格だったような覚えがあります。

このケースがどこで製造されているのかは私には分かりかねますが、とても昔にどこかで見たことがあるような質感です。紙箱や素材は中華っぽさしかありませんが、この微妙な噛み合わせにヨーロッパらしさを感じてしまいます。

送り先も書いていないのに利用者の意見を求めたり、微妙に英訳と意味が変わっていたり、なかなか楽しい仕様になっていますが今までのところは問題なく使用できてます。

歯ブラシもきちんと収納できますし、スーツケースの中に放り込んでも割れたりせずにケースとしての役割を果たしているので、少し高価ですが持ち運びが多い人には役に立つかと思われます。

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