まさに霊峰・氷点下の富士は別世界

登山者がテントを背負い、数日かけて山頂まで到達するような険峻は、私の生活とは関わりのないものだと思い込んでいました。

日本一の標高を誇る富士山はその最たる例で、せいぜいが遠くから眺めるぐらいの存在としか意識したことはありません。

そんな世俗の世界から遠く離れた神域を訪れる事になったのは、前日までは予想もしていなかった偶然の巡り合わせの産物です。




これまでも何度か一緒にライドに出掛けた事のある、たんげさんと一緒に静岡県の海沿いを走ろうと車で高速道路を走っていると、突如として渋滞に巻き込まれます。

1時間も掛けて500mも進まないような酷い渋滞です。待っている間に対向車線を何台もの救急車や消防車が走り抜けていきます。

調べてみると私の通行する約20分前に後ほど全国ニュースになるような大規模な事故があり、交通規制まで実施されます。

そのために動くに動く事もできず、1時間以上も待ってようやく脱出できた先が富士市の北部です。

本来であれば海岸線に到着していたはずの時間もとっくに過ぎ、なおかつ、ここまで来てしまった以上、走らないという選択もないので、急遽、予定を変更して富士の裾野を巡るライドと相成ります。

2月とはいえ、暮れともなると関東平野では春の訪れを感じる事も少なくありません。



香取神社(墨田区)の梅まつり

ところが富士の裾野では到着前から積雪注意の案内看板があちこちに設置され、午後1時過ぎに到達した際のスタート地点の外気温は僅か2℃。

恐ろしい事には、このスタート地点の標高は僅か600mにも満たないのです。

気温も別世界であれば、坂の長さも他の山々とは一線を画します。私たちは富士宮市の篠坂交差点から富士スカイラインへと入り (富士宮側) 五合目を目指したのですが、この登り坂がとにかく長いのです。

斜度9%が頻繁に現れる急勾配が休みなしに9kmも続きます。

登りきった先でも平坦になるわけではなく、ただ斜度が緩むだけであり、登り坂が続く事に変わりはありません。

標高650mから1000mに至る九十九折を抜けた先に見えるのは絶景…ではなく、どこまでも続いていきそうな長い登り坂です。

目指す先は3000m級の本物の高山である以上、1000m程度を登ったところで終わりが見えないのも当然ではあるのですが。

こうした景色は同じく3000m級の合歓山で見たことがありますが、合歓山に至る太魯閣峡谷と富士山との大きな違いは、合歓山を含む台湾中央山脈が連山なのに対して富士山が独立峰である事です。

言い換えますと高い山の連なる峡谷のヒルクライムと比較して、単峰のヒルクライムでは目指す先との距離 (標高差) や山体の大きさ、裾野の広さを常に意識させられる訳です。

そこで感じたのは富士山の神々しさ、圧倒的な大きさと人を寄せ付けない険しさです。

到達した地点の標高は同じであっても、富士山の場合には風の強さや坂の長さから山頂に至るまでの距離感をより強く感じさせられます。

そのヒルクライムも残念ながら、完遂することなく突如として終わりを迎える事になります。



標高の上昇と供に徐々に路面を覆う面積の増えていく積雪が、ある地点から完全に舗装路を覆うようになります。

こうなると登りも危険ですが、下り坂では命の保証はありません。

この辺りが引き時という事で意見が一致したので、折り返して下山する事に決まります。



ほんの偶然から訪れる事になった富士ですが、一部だけでも身をもって体験する事でそのヒルクライムの困難さを十分に感じさせてくれました。

ハンドルに抵抗を感じたらヘッドセットを疑え

最近ではほとんどブログに露出する機会のなかったクロモリバイクの Raleigh CRN ですが、実のところ、とある問題を昨年末から抱えておりました。

ローラー台の上で使用するにあたっては何の支障もないのですが、ハンドルを左右に切ろうとすると不自然な抵抗を感じさせます。

固着して動かなくなっている訳ではないので、ハンドルを操作できない訳ではないのですが、無理に動かそうとすると異音を発します。

擬音で言うとガシャ、人によってはギシっと聞こえるかもしれません。




さらにウェットペーパータオルで掃除を行うと、時折、ヘッドセットの周辺から茶色の染みがビッシリとこびり付きます。

おそらくヘッドセット内に錆が生じている事は容易に想像できますが、前回までの記事の通り、しばし出張で海外に赴任していたので、そのままの状態で2ヶ月ほど放置せざるを得ませんでした。

帰国後、久し振りにハンドルを左右に握ってみると、固着していたのか、今までよりも抵抗と異音が大きくなっていました。

ローラー台専用として使用する分にはこのままでも差し支えないとは言え、スチール製のフレームやフォークに錆びが伝染しても嫌なので、行き着けの修理専門店に相談に行きます。

その際に用意していたのがこちら。



FSA の Intellaset ST NO.28-41SC という部品です。

ハンドルの挙動から予め問題の原因が推測できていたので、該当する部品の新品を先に取り寄せて持参します。

もし該当部品の損耗が激しかった場合に、部品ごとまるまる新品に交換してしまおうという訳です。

バイクを購入したショップで面倒を見てもらえるのであれば、こうした手間は不要かもしれませんが、私の場合はバイクを購入した店舗が500km以上も離れた大阪にあり、まったく当てにできないので仕方がありません。

購入した当時は東山丸太町に住んでいたので、何の苦労もなかったのですが・・・



修理専門店にてフォークを抜き、専用工具で圧入されたヘッドセットを外してもらうと、これが面白いぐらいに錆びついてボロボロになっていました。

屋外保管の悲惨な自転車を見慣れた修理のプロをもってしても、この状態は意外だったらしく「こんなに錆びるものなんですね」と感心されます。



水が入りやすい構造など原因は考えられる原因は複数ありますが、ここまで悲惨な結果になるのは、入り込む水分が主に3本ローラー由来の塩分豊富な汗である為でしょう。

原因も結果も何となく予想がついていたので、持ち主としては苦笑いするしかありません。

結論を述べると、部品は持参して正解、Raleigh CRN に適合する部品として Intellaset ST NO.28-41SC も正解、フォークやフレームへの錆の転移も見られずに事なきを得ました。

工賃は私の場合は4000円で、部品の交換作業であっさりと修理が完了したので、とても助かりました。

ただ一つ残念だったのは、錆が出てベトついた古い部品の清掃と再利用だけは諦める結果に終わった事です。

これも安い部品なので無理に再利用する必要性はないかもしれませんが。

ドイツ語を話せずにドイツに来ると不便

30年近く生きてきてヨーロッパで警察官のお世話になったのも前回が初めてですが、ドイツにいてドイツ語が話せないというのも新鮮な経験です。

今までに気にした事がなかったので気がつきませんでしたが、ドイツでドイツ語を話せないと得られる情報が限定されて極めて不便です。

英語併記の少ないフランスと比較して、ドイツでは英語併記がより一般的なため空港や地下鉄や観光名所では英語の看板がある事も珍しくはありません。

しかし、郵送で荷物を送ろうとしたり、安くて古いホテルに泊まろうとしたり、鉄道が遅れたり事故があったりした場合は、英語だけではどうしようもありません。




ミュンヘンのような外国人の多い大都市でスーツケースを持っていると毎日のように英語で話しかけられるため、ドイツでは英語が通じるものだと今まで思い込んでいましたが、ドイツ語が話せない日本人と一緒に数日を過ごして見ると英語が苦手なドイツ人も一定数存在する事が分かります。

時制や動詞の語順、関係詞などに細かな違いはあれこそすれ、ドイツ語話者にとって構文の似通った英語は簡単だと信じて疑っていなかったのですが、どうやら地下鉄の中やホテルの受付で英語で話し掛けてくる人々は一部の例外で、多数派はそれほど英語が得意でもないという印象を受けました。

話し掛けられても「助けはいらない」とドイツ語で返答してしまうので、知る由もなかった訳ですね。

同類と見られているからなのか、時折、反対に他の旅行者から英語で道を聞かれたり、助けを求められる事もあります。こうした旅行者は現地のドイツ人やギリシャ人、トルコ人と外見や発音では区別できない事もありますが、必ずしもドイツ語が話せる訳ではありません。

何にせよ「英語でだけで何とかなる範囲」を注意して見ていると驚くほど限定的で、あまり多くは望めませんので不便な思いをするという結論に至ります。

続く

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