「良い」写真を知って撮影技術を上達させよう – プロカメラマンの頭の中を覗け

数学の教科書を眺めて『何を言っているのかさっぱり分からない』という感想を抱いた経験は誰にでも一度はある事ではないでしょうか。

与えられた計算式が (次に変換されるべき過程をいくつか飛ばして) いきなり別物に変わっていたり、何を意図しているのか不明瞭な計算が唐突に始まったり、著者の意図するところが理解できません。

そんな場面に限って『自明である』として省略されている事も多く、読んでいて

イラッ

とするものですが、写真技術やカメラ関係の書籍を読んでいると同様の感想を抱く場面に少なからず遭遇します。

シズル感など聞いた事すらない存在が表現されているとされたり、『躍動感が伝わる』といった類の根拠の提示されない断定表現が頻出する為です。

そうした表現に付随する写真作例が効果的であれば説得力がありますが、『幻想的』や『雰囲気』とただでさえ抽象的なものに効果的とは思えない作例が組み合わさると、著者一人がそう思っているだけではないのかという気分になります。

数学 (の少なくとも大学までの教科書で扱う範囲内) であれば、何かしらの解が定まる (はずな) ので、そこから著者の行わんとした計算を再現してみたり、他のアプローチを考える事も可能です。

それに対して写真の場合では、具体的な正解というものが存在しない事が混乱を助長させます。
滝の水しぶきを撮影する際のシャッタースピードは1秒にすべきなのか、1/50秒にすべきなのか決まっている訳ではありません。

ピントの範囲を狭くして見せたいもの以外をぼかすべきなのか、背景までくっきりと写すべきなのかは目的によります。

さらに言いますと他の人が具体的に何処を見て良い写真、上手い写真と判断しているのか私には全く理解できない事もあると言った具合です。




その一方で、自分の頭の中で思い描いた通りのイメージをカメラで作り上げる事のできる撮影者が腕が良いと評されている事に気がつきます。

こうした「腕の良い」撮影者は、見せたいものを効果的に見せる手法に長けており、印象に残りやすい構図や撮影環境を意図的に作り出しています

私は専門家でもなければ、写真や美術を学んだ事すらない素人なので、これが正解であるかどうかは分かりませんが、上記のようにして撮影者の意図した通りに表現された写真を「良い」写真とするならば、彼等の「良い」写真や、それを作り出す技法を研究する事で自らの撮影技術を上達させる事ができるはずです。

撮影技術に関する書籍は、本来、こうした技法を学ぶ為の最高の教材です。

カメラやレンズの選び方から被写体の効果的な配置まで、具体的な撮影時の設定 (シャッタースピードや絞り、ホワイトバランス他) と合わせて実例を示してくれる教材は最高のお手本であり、構図の パクリ元 テンプレートでもあります。

残念ながら紙面の都合 (作例を優先的に掲載する事によるスペース不足) か著者と私 (読者) の感性の差異によるものか、先述のように説明不足で全く自明でないと思われるものも存在します。

しかし、何を表現しようとして、何を意識して、どのような写真を作成したのかを学ぶ事は、自身の撮影 (表現) 技術の幅を拡げる上で必要不可欠です。

私の知識が及ぶ範囲で、この観点から私のような素人の撮影技術の勉強に特に有益と思われた書籍は次の3冊です。

3冊の共通点は作例と比較して文章の割合が多く、どんな写真として被写体を見せる意図を持って、何を行なったかという内容が具体的に文字で記述されている事です。

謂わば撮影中のプロのカメラマンの頭の中を覗いているようなものです。


仕事に、お店に、ブログに効く! 魅せる写真撮影のお手本帖


絞りとシャッター速度50の掟 (玄光社MOOK 50の掟シリーズ)


写真の腕がメキメキ上がる露出決定50の掟 (玄光社MOOK 50の掟シリーズ)

何を意図して何を行なったかを文字情報で知る事が有益である理由は、それにより検索して調べる事が可能になるからです。

専門分野においては知っていて当然とされている知識 (数学で例えると行列の偏微分など) は最初から省略されている事が多いものですが、職業訓練として体系的に学習している訳ではない私のような素人は書かれていない事は知りようがありません。

その状態で『ググれ (自分で調べてください) 』と言われても何から手をつけて良いのか見当もつきません。

カメラを使って何ができるのか、その為にはどんな設定や小道具を使っているのかを見ていく事が有益となるのはその為です。

仕事に、お店に、ブログに効く! 魅せる写真撮影のお手本帖は特に最初の一冊にピッタリで、カメラと写真の基本から構図まで過不足なく説明されています。

見るべきは PART1 と PART2 で何を撮る為にどんなレンズ、機材が必要になるのかの最低限の基礎知識が得られます (それ以降はより詳細な他の書籍へ…) 。PART3 は1と2の応用編です。

2冊の50の掟は撮影時の設定についてより詳細に記述しています。カメラ任せのオート機能では意識する事は一切ないシャタースピードと露出決定についてです。風景写真を撮る際の設定が場所や目的毎に細かく分かれている点がとても素晴らしいです。

何に使えるのかと言えば、霧や湯気や光線を写したり、動きを表現する技法を学べます。
こうした撮影技術を見ていくと、写真とは撮影者が意図した通りに作り上げるものである事を強く実感します。

撮影枚数を重ねる事も大切ですが、多くのアマチュア写真家にとってはプロのカメラマンが何を考え、どのような手法で何を撮っているのか知る事により得られるものも多いです。

そして再現的に自らでも試すのであれば、『高級感がある』『やさしい』と言った根拠不明の断定に『どうしてそうなるの?』と解釈を試みるよりも、何を狙って何をしたのかを著者自らが語っているものを選択した方が私の経験上は有意義です。

書籍から学んだ内容は一応はこのブログにも反映されており、物撮りや料理写真にはサイド光や逆光が多用されていますが、撮影自体を目的としていない外出時は一箇所に立ち止まる事は稀で、何も考えずにシャッターを切っている事が多いので余り参考にしないでください。

MAXXIS 太魯閣ヒルクライム 2017 参加決定・そして昨年の反省


2017年9月の落石事故を重く受け止め、太魯閣渓谷と山道の危険性について記述しました (2017年9月17日追記)。


昨年はChallengeクラスで参加したMAXXIS 太魯閣ヒルクライムに今年も参加する事を決めました。

南国の白い砂浜から岩肌の荒々しい3000m級の山脈を駆け上がり雲の中に突入して行くドラマチックな展開は、ここでしか味わう事のできない貴重な経験だと感じたからです。

今年こそは頂上まで到達して台湾中央山脈を越えたいという目標もあります。

昨年のMAXXIS 太魯閣ヒルクライムは私にとって初めてのレース参加であり、初めての国際便での飛行機輪行であり 、初めて参加する海外サイクリングイベントである事に加えて、花蓮縣への訪問自体が初めてといった具合に全てが初体験の事ばかりでした。

しかし、事前に念入りに下準備をしていた事もあり、何一つトラブルなく、イベント参加を存分に楽しみ、無事に帰還する事ができました。


参照:関連記事


念入りに行っていた下準備ですが、自身で経験してから振り返って見ると、少しばかり大袈裟であったり、的外れであったりする事もあり反省点として残りました。

そうした反省点を総括すると次のようにまとめる事ができます。

  1. 特急列車以外での輪行はそれほど厳しくない
  2. 地図と同様にそれ以外の情報も大切
  3. 自転車整備よりもまずは食事
  4. 日焼けと天候変化に気をつける

順を追って見ていきましょう。




1. 特急列車以外での輪行はそれほど厳しくない

台湾の鉄道会社には厳密な輪行規則があります。これに従って万全の準備を整えて現地に向かったのですが、混雑していない普通列車ではオーストリアやドイツのように自転車を解体しないでも鉄道で輸送できる事もあります。

現地の職員に尋ねると教えてくれますので、職員の指示に従ってください。


2. 地図と同様にそれ以外の情報も大切

見知らぬ花蓮を訪れるに当たって、私はOpenStreetMapから現地の地図情報 (IMGファイル) を自身で作成して手持ちのGARMIN GPSデバイスに登録していきました。

これ自体はあらゆる場面で重宝しましたが、一方で最寄りのレストランや観光名所を検索する事には難儀しました。

後述する食事の問題も併せて考えますと、GPS端末で地図情報のみを参照する事を考えるのではなく、海外旅行用のモバイルルータを借りて持って行った方が何倍も便利です。

例えば私が海外出張でいつも利用しているイモトのWi-Fiもその一つです。

使い方はスマートフォンやタブレットを飛行機モードにしながら、Wi-Fi機能をONにして、モバイルルータ指定のネットワークに接続する事です。

これさえあれば日本で外出している時と同じ感覚でインターネットに接続でき、馴染みの地図アプリとGPSよりも正確な位置情報を使用できます。

性能的に気休め程度にしかなりませんが、オンライン機械翻訳も利用できるようになります。

3. 自転車整備よりもまずは食事

探しても適当なものがなかったので、必要最低限の自転車整備の依頼フレーズ (中国語) に英語と日本語訳を加えたものを渡航前に作成しました。

運悪く使う事になりましたので、これは有っても良かったのですが、現地を訪れて困った事には自転車の整備よりも昼食や晩食のメニューです (朝食はホテルで用意されます)。

写真付きのメニューや英語併記のメニューもありませんが、それ以前にレストランや食堂が何処にあるのかが店舗の外見からは区別がつかなかったりします。

晩食は夜市でも済みますが、昼は本当に困ります。

現地に行ってから調べるよりも、予め有名なレストランとそのメニューを把握しておき、中国語でメモしておいた方が間違いありません。


4. 日焼けと天候変化に気をつける

山の天気は変わりやすいとは登山家の常識ですが、太魯閣は高山である事に加えて湿潤な (亜) 熱帯気候の島に位置しています。

山麓の花蓮の街は、ホテルの窓を開けると一瞬でカメラのレンズが曇るような暑くて、空気中の水分の多い土地です。

突然の激しい雨に見舞われる事も頻繁にあります。

服も靴も自転車も濡れるものと考えて、着替えとサンダルを用意しておくと快適に過ごせます。
その一方で陽射しも強く、遮るもののない海岸線の気持ち良いサイクリングロードを走っていると、日本にいる時とは比較にならない程に日に焼けます。

薄っすらとアイウェアの跡ができる程度ではなく、赤く腫れて痛みがしてきます。

日焼け止めやサンダルを現地調達しても良いですが、探すための時間が勿体ないので、分かっているのならば最初から準備して行った方が利口です。

カタカナ表記とセブンイレブンですが日本ではありません

困難も多いが喜びも大きい

太魯閣は現地でも人気のある雄大で美しい土地です。昨年に訪れた際には、ここに来て本当に良かったと思わせるものがありました。

花蓮の南国の青い海、新城鄉の郷愁あふれる田舎道、コルナゴ部長さんに教えて頂いた海岸沿いの開放的なサイクリングロードに加えて、くり抜かれた断崖絶壁を進むレースのコースがまた美しく歴史を感じさせるものでした。

その先にある頂上では、どんな景色が広がっているのか想像するだけで楽しみで仕方がありません。


台湾の味と日本の味


台湾出張に来ると日本語や日本風を謳った飲食物の多さに驚かされますが、興味本位で購入して口に含んで見ると予想と違う味がする事が多々あります。

日本で提供されれば「甘塩っぱい」味がしそうな見た目をしていても、台湾では魚醤のような独特の風味が強く、見た目は似ていても味の面では掛け離れている事に拍子抜けする事は良くある事です。

世界共通と考えられていたファストフードのハンバーガーでさえ、心なしかパティが中華料理風味です。出汁のせいか調味料のせいかはまでは分かりません。

さすがに日式を掲げている緑茶は日本と大きくは変わりませんが、飲み物は全体的に砂糖が多めで甘い味がします。




しかしながら、高級なレストランではどこも素材の良さを活かすような薄味で、日本食に舌が慣れていると少しばかり味気ない気がします。

しばしの間、台湾に滞在していると、如何に日本の食事に塩分が含まれているのかを実感するようになります。

日本の味付けは一般的に塩辛く、水分多量で、添加物の為か、一部の料理は偽物のような食感がすると長らく暮らしたウィーンから東京に帰国した直後に感じたことを思い出しました。

改めて意識して眺めて見ると日本食の味の下支えに塩や醤油が果たしている役割の大きさに気がつく訳ですが、台湾料理に全く通じていない私からしても、台湾の食事の場面で高頻度で見かける食材に意識が向きます。

その食材とは海老です。



海老が好きなのか、調味料と認識されているのかは不明ですが、何を頼んでも海老が入っている割合が高いです。

また肉料理の場合には骨つき肉の割合が非常に高いという別の特徴があります。

もう少し探求してみたいところなのですが、ホテル周辺とレストランぐらいしか見る事のできなかった短くも忙しい出張では、この辺りが限界です。



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往路で来た道を引き返して、台南から桃園まで高鐵で一気に北上します。

旅のお供は豚肉料理の台鉄弁当です。

海老は入ってませんが骨付きで、この見た目をしていながら生姜焼きや照り焼きとは掛け離れた味のする全く別の料理です。

往路よりも良い天気に名残惜しさを感じながら、高鐵桃園站にて台北方面行きのMRTに乗り換えます。

前回はバスで来ましたが、高鐵站から空港までの所要時間と運賃を比較するため、復路は新規開通したばかりのMRTを利用します。

位置関係から見ると高鐵の路線より西側にある空港と東側にある台北が同じ方角にある事に違和感を覚えますが、MRTは台北の中心街から空港を経由して高鐵の站へと至るので台北方面で間違いはありません。


新路線という事で少しばかり期待していましたが、もちろんMRT (台北の地下鉄) なので過去に何度も乗った事のある地下鉄車両がやって来ます。

空港バスと比較すると桃園空港と高鐵桃園站との間では、料金はMRTの方が5TWDばかり高いものの、所要時間に大きな違いはありませんでした。

大きな荷物がある際は空港内でのアクセスの良さからMRTの方が便利かなと思われましたが、それ以外の場合はバスでも特に問題ないと感じました。

乗り場が近ければ、どちらか先に来た方でも良いのでしょうが、残念ながら空港でも高鐵站でも両者の乗り場は近くはありません。

早く帰宅して思う存分、自転車に乗りたい気持ちが半分、台湾を離れたくない気持ちが半分のまま、桃園を後にして出張を終えます。

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