台湾出張に思う事

台湾に出張に来る度に思う事があります。ここで自転車に乗ったら楽しいのだろうなと。

実際に台湾での山岳自転車レースに参加した事はあるのですが、私がいつも乗っているロードバイクではなく、シティサイクルやミニベロで上体を起こしてゆったりと街中を巡る事が楽しそうだと感じます。

台湾の街は高層建築物は少ないのですが市街化面積がとにかく広く、中心地が何処だか分からないぐらいに延々と商業施設や住宅などが続いています。

例として台北を挙げると、國立臺灣大學の友人に「台北の中心はどこですか」と尋ねた際に「中正、中山、大同、萬華、大安、松山、信義の七區」という回答が返ってくるぐらいに都市の核や中心という概念が曖昧で、鉄道駅が実質的に街の中心となっている事の多い日本の都市の多くとは異なる構造をしています。

見所や名所は多いのですが、互いに距離が離れていると徒歩で回るのは大変で、地下鉄やタクシーでは小回りが効かないので少しばかり不便です。

しかし二輪車で回るには実に調度良さそうな大きさをしています。




自転車は台湾の主要産業の一つなので、関心を持って街中を見て回るだけでも面白い発見があります。

GIANTやMERIDAは言うに及ばず、KHSにGARMIN (GARMIN Asia) に正新輪胎 (MAXXIS) などが本拠地とし、私が好きなDT Swissなどの多くのメーカーの工場が立地しています。

取引先の送迎車に揺られて窓外をぼんやりと眺めているだけで、あそこに行って見たいという気分になる事も度々です。


ミュンヘンを訪れた際に寄ったBMW博物館 (ブログ未記載) でも自動二輪車の車輪とブレーキばかりを眺めていた私なので、その中でも最も気になるのは車輪のハブとスポークです。

ハブ内部のベアリング等の一部の部品を除いて、ほとんどの部品を自国生産している台湾だからこそ、出張ではなく私用で訪れて、じっくりと眺めたいという気持ちになります。


自分で使う車輪を自分で組んでいると、その部品にも敏感になります。

上の画像ではブレーキディスク側を 1x、反対側を radial という私の大嫌いな編み方で車輪を組んでいますが、こんな構造で良いのかなぁと考えていくと思わぬ発見があったり、なかったりします。

部品工場もたくさんある台湾だからこそ、自分で良い部品を見つけて、その場で組み立てて、気の赴くままに散歩に、観光に出かけたくなります。

出張で忙しくなければ本当に良いところです。

台南紀行

約10ヶ月ぶりに台湾を訪れています。今年に入って5回目か6回目の海外出張です。

トレーニングや糖質制限を否応なく中断せざるを得なくなるので、レース出場前には成る可く避けたいものですが、普段なら出会えない景色に巡り会えると思うと楽しくもあります。

激務のエンジニアにとって数少ない役得かもしれません。大学 (院) 生の頃は、来たくても適当な国際会議がなかったので無縁だった台湾に、就職後は取引先の都合で頻繁に訪れる事になった事には皮肉なものを感じます。




東京を出発時には19度だった外気温は桃園空港に到着した頃には32度にまで上っていました。まとわりつくような湿気と熱気にじわりと汗が噴き出します。

桃園空港と言えば、今年の3月にようやくMRT (地下鉄路線) が乗り入れて台北站まで鉄路で到達できるようになりましたが、往路は従来どおりの移動手段であるバスで高鐵桃園站まで移動します。

台北方面には何度も訪れていますが、空港から桃園まではバスで移動した事がなかったので、所要時間と運賃を確認しておく為です。


MRTは台北中心部だけではなく高鐵桃園站にも接続しているので、普通に移動するだけであればそちらを利用した方がおそらく簡単です。今後は空港からの輪行手段も変わっていくのでしょう。

桃園からは高鐵 (High-speed rail) で一気に台南にまで南下します。

高鐵は日本の東海道新幹線そのものなので、車両の構造やデザイン、案内放送までそっくりです。台北から台中まではトンネルが連続する点まで東京から静岡の区間に似ています。

日本と異なるのは座席ではなく、出入り口付近に専用の充電スペースが設置されているところです。物価の差もあるのでしょうが料金も新幹線と比較して極めて安いです。まだ新しいからか東海道新幹線と比較すると驚くほどに不快な横揺れがありません。

気になるのは日本と同じ左側通行である点です。

右側通行用に新たに車体を設計すると費用が高騰してしまうからなのかもしれませんが、道路から鉄道から右側通行の台湾にあって高鐵だけ日本と同じ左側通行で運用されている事には強い違和感を感じます。

日本と同じく左側通行のイギリスやオーストラリアに輸出する事がもしあったとしたら歓迎されるかもしれませんが、左ハンドルの車に驚愕する人の多いアメリカにはそのまま輸出できるのだろうかなどと余計なことを妄想してしまいます。



台南站に到着したら旧市街の方角にある街一番の高級ホテルを目指します。林百貨店のある旧末廣町が有名ですが、花園町や清水町など日本統治時代の古地図で参照できる地域です。

日本の面影はほとんどありませんが、あやしい 日本語だけは氾濫していて楽しいです。

東京の表参道あたりに英語が氾濫しているのと同じような現象で、現地の台湾人にとって日本語は身近で違和感のない言語なのかもしれません。


日本語と同じような頻度で台湾で見かけるのは野生動物です。

ネコにリスにコウモリと。

もちろん近づき過ぎると逃げられてしまうので望遠レンズが欲しくなります。

持っていて良かった広角レンズとはよく耳にする言葉ですが、単焦点レンズ一本で旅をしていると望遠も欲しくなる事が多々あります。

しかし、新たに導入した撮影機材自体は大活躍で、仕事でさえなければこれに Android スマートフォンとBluetoothキーボードだけで長旅できると感じます。

自走で行く奥多摩・秋川街道で檜原へ

千代田区や港区といった東京の中心部に住んでいると自転車で気軽に走れる場所が近所にない事が悩みとなります。

約100mから200m置きに信号停止があり、交差点の度に左折車が渋滞を起こして道路を塞ぎ、路上駐車は日常茶飯事、自転車通行帯にまでバスが割り込んできて、気を抜いたら歩行者が飛び出してくる始末です。

最寄りの山や峠は距離にすると約60kmから70kmほどなので、それだけでは大して離れていないように見えますが、上述のように道路の質が著しく低いので実際にはそれ以上に心理的な距離感と負担を感じます。

「走力を上げれば問題ない」という意見を耳にする事もありますが、心理的な距離感の原因は信号停止の多さと渋滞の酷さなので、自身の巡航速度が上がったところで問題が解決する訳ではありません。

1時間走ったら平均15分は強制停止させられる程に頻繁に信号に足止めされる東京の市街地では、個々人の走力や走行時の風向きよりも道路の混雑具合の方が巡航速度に寄与する割合が高いです。

むしろ唐突な車の割り込みや歩行者の飛び出しの多さを考えると速度を上げるのは、危険になるだけの可能性が高いので、急いでも良いことはありません。




現実的な妥協策として多くの人が輪行を行なっています。

鉄道を利用する事により、危険で不快で走りづらい市街地を回避し、空気が美味しく、サイクリストを歓迎してくれる奥多摩や丹沢の山の麓まで移動できます。

もう一つの妥協策は多摩川などのサイクリングロードを経由して、山の手前から一般道に合流する事で市街地を迂回する方法です。

上の地図で奥多摩や丹沢の玄関として表示されている『拝島駅』や『高尾駅』に程近いところを流れる多摩川や浅川の河川敷にはサイクリングロードが設置されており、断続的に東京湾の羽田空港まで続いています。

このサイクリングロードも歩行者が多く、常に安全に気をつけて徐行する必要はありますが、道幅が狭小で危険な場所の多い多摩地区を迂回できる事から一考の余地はあります。

しかし、これらの妥協策を講じても (八王子の和田峠はともかく) 奥多摩や檜原方面にはさっぱり行かなくなってしまいました。

都民の森や払沢の滝、神戸岩に小河内ダムに秋川渓谷といった名所に恵まれた奥多摩地区に魅力がない訳ではありません。

単純に行きづらいのです。

甲州街道が整備されている八王子方面は走りやすいのですが、輪行先の駅やサイクリングロードを出でて檜原や奥多摩にまで至る道のり (睦橋通り) は悪い意味で東京らしく、地方都市郊外にある国道沿いのような外観からは想像もできないほど信号停止が多くて疲れます ※。

交通量と信号停止の多い睦橋通りを避けて、ストレスなく奥多摩へとアクセスするルートとして新たに検討してみたのが秋川街道です。

地元の人にとっては今更という気分でしょうが、秋川街道とは八王子と武蔵五日市の2点間を結ぶ都道32号線を指します。

地図上で見た限りでは、途中にトンネル (新小峰トンネル) があるので自転車で通れるかどうか不安だったのですが、実際に走行してみると走りやすい素晴らしい道でした。

秋川街道の良い点は3つあります。

  1. 八王子市街地を除いては一貫して交通量が少ない
  2. 浅川サイクリングロードや京王・JR八王子駅からアクセスしやすい ※※
  3. 適度に飲食店がある

行き方は甲州街道を『本郷横丁』交差点で右折するか、浅川サイクリングロードを萩原橋で抜ける事です。初見では見過ごして何気なく通り過ぎてしまいますが、一度覚えてしまえば簡単です。



秋川街道に入り『萩原橋』から『楢原町』までの約3kmほどは市街地の信号停止が続き、バスがいればバス停停車の度に道路が詰まりますが、そこを越えると交通量が極端に減ります。

ただし飲食店も極端に減ってしまうので、補給が必要なのであれば、早めに寄り道しておいた方が無難です。

楢原町から先は登り基調で、約9km先の武蔵五日市駅前まではコンビニや飲食店は、ほとんどありません。

楢原町から7kmほど進むと危惧されていた『新小峰トンネル』に辿り着きますが、自転車通行可能で片側だけとはいえ歩道もありますので、訪れてみると何てことはありませんでした。


トンネルを抜けると下り基調となり、秋川の河川のすぐ近くを通って武蔵五日市駅前へと抜けます。

二子玉川駅からサイクリングロードを利用する事を考えると武蔵五日市までの走行距離は、二子橋、多摩川サイクリングロード右岸、多摩川原橋、多摩サイクリングロード左岸、府中四谷橋、浅川サイクリングロード、萩原橋を経て約47kmです。

サイクリングロードを繋いで車との接触を避けながら武蔵五日市まで到達する事が可能となります。

走行距離自体は長めになってしまいますが、サイクリングロードの空いている早朝の時間帯を狙って行けば、最もストレスなく奥多摩にアクセスできるルートの一つとして採用の余地はありそうだと感じました。


※ 奥多摩に向かう経路には他に青梅街道・国道411号線がありますが、休日の渋滞で有名な場所であり、路面の荒れたトンネルもたくさんある上に、奥多摩から山梨県に通じる唯一の舗装路として車両が集中する為、睦橋通り以上に走りにくいと言わざるを得ません。

※※ 『武蔵五日市駅』や『奥多摩駅』まで輪行してしまっても良いのですが、この2駅はJRの路線 (終端の目的地はともかく、東京都心側に位置する出発地点の駅が輪行に不向きな構造をしている事が多い) であり、単線ゆえに運行本数が少なく、また休日は登山客で混雑するなどの理由から実はあまり輪行には適していません。

拝島駅の場合、行き帰り共に輪行に便利な始発駅 (西武新宿駅・拝島駅) を使えるため輪行が容易という利点があります。

京王八王子駅の場合は始発駅 (京王線新宿駅・京王八王子駅) が使える事に加えて、乗り換えが一切ない、運行本数が多い、乗車時間が短い、運賃が割安 (360円)、休日の下りは空いている (登山客は高尾山口方面に流れる為) 等、豊富な利点があります。

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