現像ソフトを買う前に読むべき『RAW現像の教科書』

カメラや写真に関心をもって調べていると「RAWで撮影」「RAW現像」といった表現を耳にする事があります。

何となく凄そうには思えるものの、敷居が高く感じられてしまい、自身では触れてみた事のない人も多いのではないでしょうか。

最近の一眼レフやコンデジが写し出すJPEG形式の画像も十分にきれいなので、その必要性も直感的に把握できないかもしれません。

まさにそんな人に向けて書かれた最初の入門書が『RAW現像の教科書 (以下、本書)』です。



RAW現像の教科書


本書は「RAW画像とは何か?」に始まり、その画像データとしての特徴、それを編集する現像ソフト、できる事とできない事について導入部で簡潔な説明を行い、第1章から第5章まで具体的な目的設定に応じた編集過程と注意点について解説します。

情報量としては、私でも1日で全ての章を読み切れるぐらいの分量ですが、自分で編集過程を再現して習得するには数週間から数ヶ月ほどの時間が必要という印象を受けました。

一見すると内容が少なそうに感じるかもしれません。しかし、RAW現像ソフトごとの相違点やヒストグラムの読み方、トーンカーブの使い方など、実践的で役立つ情報が豊富に掲載されており、これだけでも有用性が高いです。

また本書の特徴として特定のソフトウェアに依存していないので、RAW現像の普遍的な考え方を学び、自分の目的に適したRAW現像ソフトを選ぶという視点を持つ事ができるようになります。




実際に私は本書を読むまで Adobe Photoshop Lightroom 以外のソフトウェアがある事も、それらにどのような違いがあるのかも知りませんでした。

2017年現在、日本語の関連書籍の多くがこのソフトウェアの使用を前提としていますが、どうしてそうなっているのか (カメラやレンズメーカーを問わず使用できる・ユーザー数が多い等)、自分にとって積極的に選ぶメリットはあるのかなどを検討するための一助となります。



Adobe Photoshop Lightroom 6(写真現像ソフト)|ダウンロード版|Windows版


特定のソフトウェアに依存していない分、本書にはソフトウェアの細かな操作方法などは書かれていません。

加えて露出補正やシャッタースピード、ピント範囲などのカメラ側の設定は、ほぼ省略されていますので、不明瞭な点がある場合には 写真の腕がメキメキ上がる露出決定50の掟 (玄光社MOOK 50の掟シリーズ) などの他の書籍で知識を得てから読むと間違いがありません。

「撮影時に (カメラ側で) できることはすべて実行して」と書かれているように、最後の仕上げとして意図した通りに画像を補正してあげるのがRAW現像だという事が本書を読むと良く分かりますので、しっかりとした撮影を行う事が重要なのはRAW現像でも変わるところはありません。

何となく凄そうだけど、何をしているのか不明瞭だったRAW現像で何が実現でき、何の作業をして、どのように写真が変化するのかを把握する事できる本書は、RAW現像に興味がある人、これから挑戦しようと考えている人にこそお勧めです。

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奥多摩には夏の魅力がいっぱい

東京都内において自転車を最も楽しめる場所が奥多摩ですが、移動速度と視点を変えて徒歩で巡っても楽しいものです。

徒歩でしか辿り着けない隠れた名所も数え切れないほどあり、乗っていること自体が楽しいはずの自転車を置いて、歩き出したくなることも度々あります。

そうした名所が特に多いのが奥多摩でも北部にあたる氷川・青梅方面です。

氷川とは奥多摩町の中心地区で、JRの奥多摩駅 (かつての氷川駅) のあるところです。檜原村や青梅市西部などを含めた広域地名の奥多摩との混同を避ける目的で区別して呼称します。

わざわざ区別する理由は奥多摩の地形と交通網にあります。

標高1,000m近い尾根が東西に伸びる奥多摩では南北の移動に困難を伴いがちです。

東側に位置する東京都心部に接続する交通網が発達しているという事情もあり、氷川や小河内 (奥多摩湖) であれば青梅、檜原であれば武蔵五日市や日の出といった具合に東西移動を前提として訪問を考える事が基本になります。




東西移動を前提とした場合に、自転車での走りやすさ (舗装状態の良さや交通量の少なさ) 、景観や周辺環境の良さ、御飯の美味しさを全て満足させるのは檜原・武蔵五日市方面、圧倒的な利便性とアクセスの良さを誇るのは高尾・八王子方面なので、自然とそちらの方に足が向いてしまいます。

実際、氷川・青梅方面は交通量が多く、危ない運転をする車も少なくなく、舗装状態も悪いところが散見され、トンネルも多いので、道路として見た場合には全く好きではありません。

しかし、ひとたび道路を離れれば、都心から大勢の人を引き寄せるだけの雄大で風光明媚な景色が広がっています。

風景の美しさでは奥多摩随一と言っても良いかもしれません。



圧倒的な大きさで非日常感を感じさせるのは小河内ダムですが、そこから下流にある多摩川の上流も水の透明度や渓谷美が楽しめる魅力の多い土地です。

JR鳩ノ巣駅から至近の距離にあり、川原に降りようとしない限りにおいては気軽に登山の醍醐味 (絶景) を楽しむ事ができます。

さらに下流に向かえばカヤッキング、上流に向かえば登山が楽しめるので、新しい趣味に目覚めそうです。



訪問にあたっての注意点は登山と変わるところはありません。

ツキノワグマの生息地で奥多摩駅前どころか青梅でも目撃例があります。

急峻な山が多く落石や滑落には細心の注意が求められます。装備もなしに不用意に沢に近づくのは非常に危険です (いつ増水するかも分かりません) 。

また気温や直射日光から常に熱中症の危険を伴いますので、常に水分と糖分を補給ができるようにしっかりと事前準備を怠らない事が必要となります。

入念な準備と安全に対する心掛けは要求されますが、首都圏の他のどこにもない荘厳な雰囲気を持つ山々や渓谷は一見の価値があります。

東京の自然という趣を持つ高尾の森、人里の身近にある山林を感じられる檜原や秋川の森と比較しても、奥行きや迫力を全身で感じる事ができる点が異なります。

そして、その魅力を最も楽しめる季節は夏だと私は考えます。

日原の鍾乳洞も、氷川の清流も、古里の渓谷も暑い夏だからこそ、その涼しさが際立ちます。

台湾第三の都市・臺中盆地でヒルクライム尽くし

私が台湾を訪れている理由は武嶺 (Wuling) にあります。

武嶺とは台湾における国道最高地点、標高3,275mにして、Maxxis Taroko International Hill Climb や Taiwan King of Mountain (KOM) Challenge と言ったヒルクライムレースのゴール地点でもあります。

台北行きの航空券と休みを確保したのは、そのヒルクライム大会に出場するために他なりません。

しかし、台湾東部を襲った5月28日の豪雨により会場となる臺8線 (中橫公路/Central Cross-Island Highway) 、開催地と台北とを結ぶ臺9線 (蘇花公路/Suhua Highway) の両方にて土砂崩れが発生。大会は開催時期未定の延期となってしまいました。

現地のニュース記事を継続して読み続けていると、その後も開催地の花蓮懸で地震が発生したり、復旧作業が難航していたりと言った報道がなされており、現在でも東海岸 (特に山間部) に訪れるには時期尚早と判断せざるを得ません。




ところで、当初の目的地の武嶺ですが、その実態は台湾中央山脈 (合歡山) 上に位置する峠です。

峠の東側に下りれば豪雨被害に遭った花蓮懸へと至りますが、西側に下りれば台湾第三の都市・臺中に辿り着きます。

私は臺中に不思議な縁があり、今までに自分の意志で行こうと思ったことは一度もありませんでしたが、向こうから呼ばれて訪れた事なら飽きるほどあります。

土地勘もあり、現時点で交通規制も行われていない事から、入り口の臺中だけでも見に行ってみるかと言う思惑で立ち寄ってみる事にしました。

西側から武嶺を目指す場合、通例では臺中から約50kmほど中央山脈寄りにある埔里鎮 (Puli) を起点にするらしいのですが、復旧作業の妨害を避けたい事、飛行機輪行用の大荷物を抱えてのバス移動も容易ではない事から今回は訪問を見送ります。

実際に訪れるのは臺中都心と新社區、南投縣の國姓鄉に囲まれた臺中の裏山です。幾重にも連なった標高450m付近の山塊に、縦横無尽に舗装路が張り巡らされています。

その舗装路をMTBやロードバイクが引っ切りなしに通過していくので、私も地元のサイクリストに混じって一通りの峠を巡ります。

臺中の中央駅から山道の入り口までは直線距離で10kmもありませんが、人家も疎らで補給地点はほぼ皆無です。

この辺りは大きな縣市道でも最大で12%前後の斜度があります。名前もついていない小さな道においては、平然と斜度18%ぐらいの坂が現れます。

自転車もよく通りますが、舗装された登山道ぐらいの認識を持って臨まないと危険です。

切り立った崖のようなところが多く、そう言うところほどガードレールがありません。その代わりに展望は抜群に良いのが悩ましいですね (夜景の名所だそうです)。

大都市のすぐ近くにあり、主要な道路もいくつも通っているので簡単に通過できそうに見えますが、一つ一つの峠がヤビツ峠ぐらいの走行距離と標高を持っていますので、普通に走っていると総獲得標高は瞬く間に2,000mを超過します。

日陰はあったりなかったりな上に、基本的に亜熱帯気候で日本よりも気温が高いので、熱中症には細心の注意が必要です。



峠を越えて行政区が臺中市から南投縣に替わると景色は最高になります。

埔里鎮に向かうにはここから更に標高400mと650mの2つの峠を越えて24kmほど山側まで進む事になります。武嶺からは約144km離れています。

訪れてみたいところではありますが、今回はどう考えても巡り合わせが良くないので、1日も早い臺8線の復興を祈りつつ臺中へと折り返します。

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