ULTEGRA と DURA-ACE
ULTEGRA と DURA-ACE に体感できるような差はあるのか。
私は ULTEGRA (6800系) と DURA-ACE (9100系) で組まれたバイクをそれぞれ1台づつ所持しているので、ごく偶にこんな質問を受けます。
結論から述べると全くの別物と言えるほどの差があります。
同じタイヤ・ホイール・スプロケット (同一種どころか全く同じ個体) を履かせても、持ち上げた時の軽さから操作性まで大きな違いが現れることを随分前から感じていました。
それにも関わらず、今日まで記事にして来なかったのは2つの理由があります。
1つは私の個人的な感想を事実と混同する人がいるらしいこと。
確認できていないので断定はしませんが、このサイト自体、ある意味で苦手な日本語の練習目的に書いているので、内容の主体もある時点での私の感想となります。
ランキングには参加しないのも、更新通知もしないのも、仕事や専門分野に関する話題には触れないのも、最近は特定機材の使用感を書かないように意識しているのもそれが理由です。
今回も敢えて重量などの記載は避けます。
小さなレバーと軽くて回るクランク
ULTEGRA と DURA-ACE との具体的な相違点として、おそらく誰もが認識できるのが STI レバーとクランクでしょう。 前者は握った瞬間から違いが分かります。 小さくて軽いのでハンドル自体も軽量となり、ヒルクライムでの操作性やロングライドでの疲労感が大きく変わってきます。 レバーを握ったり、ハンドルを持って前輪だけを吊り上げた際の重さにも違いが現れますが、一度に150km以上を走ったり、2,000m 以上も登ったりすると、より大きな違いを感じられます。 STIレバーと比較するとクランクの差は、少し走り込まないと意識することが難しく感じられます。 DURA-ACE のクランクは踏み出した際に「あれ、少し軽いかな?」と感じる程度なのですが、その後に ULTEGRA のクランクを踏んでみるとその重さと抵抗に驚きます。 DURA-ACE のそれを追い風とすると、ULTEGRA では微弱な向かい風の中を進んでいるかのように、僅かにもたつく感触があります。 ヒルクライム時にはさらに顕著な差があり、DURA-ACE であれば斜度 10% 程度まではシッティングで無理なく進めるのに対して、ULTEGRA では脚の体重を載せてダンシングで踏み込んでやらないと失速してしまう感覚を覚えます。 DURA-ACE を知らなければ ULTEGRA で満足できると良く言われているのは、こう言うことなのかなと個人的に納得できてしまいました。 とは言え、ULTEGRA の方が使いやすいので、誰もが DURA-ACE にする必要性もないと私は思っていますが。
使いやすい ULTEGRA・よく目立つ DURA-ACE
早朝4時台、5時台に東京都心を走っているロードバイクの多くは DURA-ACE を搭載しています。 2番目に頻繁に見かけるグループセットが 105 であるか SRAM RED であるかは分かりませんが、1番目は DURA-ACE で確定と言えるほど圧倒的多数派を占めています。 ただし、これは極めて特殊な事例であって、他の時間帯に他の場所を走れば、DURA-ACE で固められたバイクが如何に少数派であるかを嫌でも意識することになります。 お手洗いに行くとき、飲み物や補給食を補充しに行くとき、牧場に立ち寄ってアイスを食べるとき、イベント参加時のスタート直前など、自転車から降りて離れる必要がある場合には、とても神経を使います。 独特の意匠と長い文字列から DURA-ACE のグループセットは常に目立つので、盗難対策にも気を遣いますし、ファンライドでは他の自転車との価格差があり過ぎて気まずくなることもあります。 良くも悪くも、速く走ることに特化した高価なレース機材です。 それに対して ULTEGRA は、より多くの目的に使えて、何に使っても良好な性能を示す万能機材の印象があります。 普及価格帯で数も多いので、どこに行っても、どんな場面でも (真剣なレースにおいても) 悪目立ちすることはありません。 自転車を降りて離れる機会の多いロングライドや自転車旅、破損の可能性が高まる輪行、遠征など、上記の DURA-ACE との性能差を考慮しても、気軽に使える ULTEGRA を敢えて選びたい場面も少なからずあります。 走ること自体は DURA-ACE の方が楽しくても、峠から山頂までの (徒歩) 登山や食事などを含めたライド全体を考えると ULTEGRA の方が気兼ねなくできることの選択肢が広がり、結果として満足度が高まる可能性があるという訳です。
Shimano - Ultegra R8000 11スピードグループセット
あまり違いを感じない変速機
冒頭に全くの別物と記載しましたが、ULTEGRA 6800 と DURA-ACE 9100 との間で個人的にあまり違いを感じない部位も、もちろん存在します。 両者の相違点として良く引き合いに出される変速機です。 両者ともに機械式なので整備状況に依存するという面も否定できませんが、比較のために ULTEGRA は技術力に定評のある某ショップに調整を依頼したもの (ワイヤー代金を含めて整備費用 20,000円) 、 DURA-ACE は CANYON のメカニックが出荷時に調整したものを用意したので、どちらもプロが整備したものが前提です。 きちんと整備されていれば、どちらも変速したいタイミングで遅滞なく変速が決まります。 当然ながらチェーン落ちの不安など微塵もありません。 こういうこともあって、技術料としての整備費用は高価とは思いませんし、それを再現する電動変速機も (技能費と比較して見れば) 安価過ぎるぐらいに安価だと書いたのですが、ここでは割愛します。 重量には差があるので軽量化の観点から DURA-ACE を導入すると言う意見に対しては異論ありませんが、変速性能としては ULTEGRA との比較で考えるよりも調整をしっかりと行うことを考えた方が効果が大きい気がします。
個人的に比較できないブレーキ
過去に何度か書いた記憶があるので、繰り返しになるかもしれませんが、私はあまりブレーキを使わずに早め早めに速度を落とす性格です。 車の運転でもブレーキを使わずに、割り込まれない範囲で可能な限り車間距離を維持します。 ブレーキは速度調整に用いることが多いので、違いがあるのかどうか良く分からないのが本音です。 船なしの TIAGRA ブレーキシューは制動力不足で身の危険を感じたので、早々にブレーキキャリパーごと廃棄・交換しましたが、幸いにして ULTEGRA で急停止できずに危ない思いをしたことはありません。 ダウンヒルにしても、どちらかと言うと落石によるサイドカット、グレーチングによるスリップ、対向車の車線はみ出しなどで危険を感じることが多いです。 累積の獲得標高にして少なくとも 30,000m ぐらいは ULTEGRA でダウンヒルを経験しているはずですが、舗装された公道で ULTEGRA の制動力に不安を感じるところなど、もちろん、一つとしてありませんでした。 命に関わる最も大切な部品なので、どこか一つだけでも DURA-ACE のパーツを入れるとしたら、間違いなくここなのですが。
耐久性の神話
DURA-ACE に関連する話題のうち ULTEGRA との比較と同様に良く耳にするのが、その耐久性についての話題です。 軽量で剛性が高い、にも関わらず、耐久性も高く長持ちする。 根拠も示されずに語られる説話ですが、そんな都合の良いものなんて存在するのかなと私自身は思っています。 先に述べたように私の周辺で見かける人は、圧倒的に DURA-ACE 使用者が多いので、当然ながら一番故障した姿を見ているのも DURA-ACE です。 特にクランク (主に9000系以前) に関しては、最も頻繁に破断したところを目撃します。 もちろん絶対数が多いので目撃数も自然と多くなること、DURA-ACE を使ってる人はそもそも走行距離が極端に多い傾向があり継続使用による減耗が進んでいることなどを考慮して見なければなりません。 それでも走行する度に力が掛かり続けるものなので、継続使用していれば、いつかは故障することもあります。 購入すればそれっきりではなく、定期的に整備と部品交換を行わなければならないもの (70km/h超の速度で用いられることもあるので特に整備は念入りに) と捉えた方が良いと思われます。
まとめ
走行性能を見ていくと別物と言って良いほど異なる両者ですが、DURA-ACE はパフォーマンスの追求に特化している面があるので、ULTEGRA の方が使いやすいと思うことも私には結構な頻度であります。 レース用途では ULTEGRA は重すぎるという意見も、両者を何度も乗り比べていると実感として良く理解できますし、正直、同意せざるを得ません。 機材スポーツにおいて機材が果たす役割は少なくありません。 しかし、その性能が常に必要かと問われれば、多くの人にとっては常時必要なわけでもないのではないかと私は思います。 ここぞと言うときに真価を発揮するのも、ただ走っていて楽しいのも DURA-ACE なので、私は両方を持つことにしましたが。
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