レンズ沼の住人の気持ち
一眼レフなどのレンズ交換式カメラを使用していると性能の良いレンズを使ってみたくなります。
せっかく数万円ものお金を出して購入したカメラです。
人生で二度と訪れないこの瞬間をできるだけ良い画質で残したいに決まっています。
実際に良いレンズを使用すると、カメラの描画性能が大きく変わります。集合写真でも一人ひとりの顔が判別できるほど、細部までくっきりと写し切れたり、旅先で出会った歴史的な建物が歪まずにありのままの姿で写せたり、色が滲まずにファインダーに透明感を感じられたりとレンズ交換の効果は劇的です。
マクロレンズでなら幻想的な朝露や雪の結晶が、望遠レンズでなら目視では雷鳥やキタキツネが、広角レンズでなら視界一面に広がる瀬戸内海や積丹の青色が撮れます。
言葉ではどれだけ説明しても伝わらない、その情景と感動が自分のカメラだけで表現できます。レンズは偉大です。
動き回る子どもや猫を追いかけるオートフォーカスや連写速度、水族館などでの暗い室内で撮影した場合のノイズ量など、基本的なカメラの性能を除くと、画質はレンズの性能に影響される部分が大きいです。
そのために次々にレンズを購入してしまう状態を俗称で「レンズ沼」と言います。
標準ズームレンズという沼
個人的に「レンズ沼」に最も人を近づけるのは標準ズームレンズだと思っています。使用頻度が多いですし、どのレンズも得意、不得意があり、どれも何かが足りないからです。 メーカーやマウントに限らず、解像度や明るさとズーム機能を両立させたレンズは重厚長大になりがちですし、ズーム倍率が高くて広角から望遠まで何でも1本で対応できるレンズは画質に大きく期待できないことが多いです。 どのレンズにも長所と短所があり、どれも普通に使う分には十分な性能を持っています。 明るさ、ズーム倍率、解像度、オートフォーカス速度、逆光耐性、手ブレ補正、重量など「あと少し何かが違っていたら」と考えていくと終わりがありません。 何年も単焦点レンズだけを使い続けてきた私でも SEL24105G ( FE 24-105mm F4 G OSS ) を購入したら、ほかのズームレンズも欲しくなりました(このレンズ、焦点距離、大きさ、重さ、AF速度、画質の全てが使いやすくて良いですよ)。ソニー SONY ズームレンズ FE 24-105mm F4 G OSS Eマウント35mmフルサイズ対応 SEL24105G
当たり前のことかもしれませんが、良いズームレンズは描画性能もよく、画角を自由に替えられるだけに何でも自由に撮ることができます。 そうすると視界に入ったものは何でも写せて、良い画質で綺麗に残せることが当たり前になってしまいます。当たり前に撮れるからこそ、逆説的に撮れないところに意識が向きます。 その撮れないところを意識するきっかけは、もしかしたら室内の暗さかもしれませんし、撮影距離より遠くにいる珍しい野鳥かもしれませんし、オートフォーカスでは追いきれない幼児かもしれません。 その(日常ではあまり頻度の高くない)「あと少し」に手が届かなくて歯痒い思いをすることもあります。 そんな経験が積み重なると新しいレンズに興味が湧いてくるものです。新しいレンズはお手持ちのレンズとは違う性能を持っていますので、レンズが増えるほど表現できる世界も広がります。 選択肢が広がり、表現の幅が広がり、文字通りに世界が広がります。 「沼」とは言われども、金銭的に日常生活に支障が出ない限り、悪いことは特にありません。強いて挙げるとすると維持管理が大変なことでしょうか。使いやすくて使いにくい単焦点レンズ
極論を述べるとズームレンズを探す旅には終わりがありません。比較してみていくと、万能で完璧な機材は存在しないということがよく分かります。 解像度では下手な単焦点では比較にならないフラッグシップの「通し」ズームレンズであったとしても、年輪玉ねぎボケや収差やT値などを気にしだすと本当に切りがありません。 そうしたズームレンズと比較して、特定の用途に最適化されている単焦点レンズは気にすべき点が少ないので、あまり選択に悩むことはありません。 マクロなどの特殊な機能や F 1.4 などの明るさを求めなければ、大抵のズームレンズよりも小型で軽量になりますし、画質も製造時点で実現できる最高性能に近いものが多いです。 最適化されているだけに特定の用途においては非常に使いやすいです。しかし、それ以外の用途には使いづらく、場合によっては全く使えないことさえあります。 たとえば 135mm ぐらいの明るいポートレートレンズは、屋外で人物を写すには最高ですけど、レストランで席に座って料理を写そうと思っても、そもそも焦点が合わないことが一般的です。 そのため、単焦点レンズだけ(とくに単焦点レンズ1本だけ)を使用することを「縛り」と呼ぶ人もいます。 何年も単焦点レンズだけを使用してきた私にとってはこれが普通で、ズームレンズは何でも撮れる(わりに暗かったり、重かったりする)ために却って難しいと感じます。 少なくとも単焦点レンズだけを使用していたときには、同じ用途のレンズを何本も購入するという発想には至りませんでした。 撮れないものは準備してこないと絶対に撮れない。その代わり、撮りたいものだけはしっかりと撮るという発想です。
そこらにある看板で適当に試したものなので、被写体は気にしないで下さい。それよりも気になるのは歪曲です。まっすぐな直線であってほしいところが、ぐにゃっと歪んでいます。
これでは人の顔などを写すと形が崩れるのは無理もありません。本記事の冒頭の画像も私が個人的に歪みが凄く気になっているものです。
ほかにも人によってはボケ味が好みではなかったり、発色が好みでなかったり、偽色が許せなかったりと、レンズを使っていると気になる点はいろいろと出てくるものです。
気になる点を解消できるのは、意外にも便利なオートフォーカスレンズではなかったりするので、気が付くとマニュアルレンズを何本も持っていることもあります。
同じ焦点距離と明るさでも、レンズ構成やコーティングによって写りが変わります。光学の世界は本当に奥が深いです。
一つ一つのレンズのそれぞれに個性があり、得意不得意が全て違います。
完璧で完全なレンズはありませんので、求めるものによっては文字通りに全てのレンズを購入するしかありません。
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