日本国内で最も行きたい場所であった乗鞍岳にようやく行ってきました。
乗鞍岳を縦貫する乗鞍エコーライン・スカイラインは、言わずと知れた日本最高の標高を誇る舗装路です。畳平と呼ばれる峠の標高は 2,702m に達します。
ヨーロッパの舗装路のうち、標高の高いものはそれ自体が観光地となっていますが、その最高地点の標高は Pico del Veleta を唯一の例外とすれば 2,700m から 2,800m の範囲に収まっており、畳平の標高を超えるものは数える程しかありません。
そのうちエコーライン・スカイラインのように峠として通り抜けられるものは更に少数に限られます。
私は自分が住んでいた中央ヨーロッパ以外の事情は旅行者程度の知識でしか知らないのですが、海外の有名な峠と比較しても日本の乗鞍岳は遜色ない魅力と個性を持っていると思っています。
乗鞍エコーライン・スカイラインは単純に標高が高いだけではなく、許可車両を除けばバスとタクシーと自転車のみが走行できる交通量が極端に少ない道路でもあるのです。
残念ながら他の高山は景色の良いところほど交通量も多い傾向にあり、のんびりと自然を満喫することが難しい面が少なからずあります。
日本一の乗鞍岳では時折バスが訪れるのみで、車両の通行はほとんどありません。
雲に手が届きそうなほど空に近い場所で、見渡す限りの絶景を思う存分に楽しむことができるのです。
寒さと登坂で消耗する体力の許す限りにおいて。
ひとえに乗鞍岳といっても平湯温泉・高山 (岐阜県) に近い西側のスカイラインと白骨温泉・松本 (長野県) に近い東側のエコーラインでは性格が少し異なります。
高山側のスカイラインは全線を通して片側1車線が続いており、舗装も相対的に良いです。そのためか私が滞在していた時間帯では、東側よりバスを見かける頻度が高い気がしました。
雲の上にいるような爽快な景色が広がっています。
松本側のエコーラインは道幅が狭くなる地点が複数あり、舗装も相対的に荒れ気味です。
あくまで相対的な話で普通に走行する分には全く支障はありません。
西側と比較してバスを見かける頻度は低めでしたが、道幅が狭くなるところでは路肩に自転車を寄せてバスに先に通行して頂くことが必要になる場合があります。
登坂中に目標地点の山頂が見え隠れすること、視界が開けてからは空中庭園のような広々とした空間が続くことなどの要素が渋峠を彷彿とさせます。
一方、舗装状態と坂の長さと斜度は、まるで大弛峠のようです。
私は雲の上にいるような感覚を長く楽しみたいのでスカイラインの方が好みです。
同時に登っていて面白いと思うのは「あんなに高くて遠いところまで行く」ことを強く意識させられるエコーラインです。
連続していながら、どこか表情が異なる乗鞍岳のスカイランとエコーライン。そのどちらにも登って降りるだけの価値があります。
そして登りきった先にある畳平にもまた最高の景色が待っています。
これほどまでに美しい峠は他に見たことがありません。
私は今年はもう10月初旬の瀬戸内海を最後に遠出を控えるつもりでいました。
しかし、その予定を変えても紅葉の季節にまた訪れたくなるほどに、乗鞍岳は贅沢で美しい場所でした。
最後に注意点を述べておくと、東京方面から松本を経由して訪れる場合には、険しく、交通量も多い山道 (国道158号線) を通ることになります。
自家用車でも通行することが憚られる狭い道路なので、周辺の宿泊施設を利用してなるべく交通量の少ない早朝に通過するなどの対策を行った方が安全です。