開通直後の渋峠で雪の壁を見る

冬季の積雪で閉ざされていた志賀高原道路が開通されたと聞いたので訪れてきました。

渋峠には一度も訪れた事がなく、群馬県や長野県にも土地勘がなかったので、東麓の草津温泉まで高速バスで輪行して白根山側を登りました。

よく耳にするロープウェイや殺生河原の硫化水素発生地はこちらにあります。




遠くの山を見下ろしながら、上へ、上へとどこまでも進んで行きそうな道に快感と僅かばかりの恐ろしさを感じる山道です。




恐ろしさの正体は、どこまで行ってしまうのか分からない、未知の領域に足を踏み入れている感覚です。

ロープウェイの駅を越えて、しばしのダウンヒルを経ると横手山に入ります。

白根山が果てしなく上へと登っていくような景色なのに対して、横手山の方は既に空の上にいるような感覚です。





個人的には雄大なこちら側の景色の方が好きになりました。

中央分水嶺を越え、雪の壁を越えると唐突に日本国道最高地点の碑が見えてきます (碑の画像はこちら) 。

東京都の公道最高地点である風張峠でも思った事ですが、ネットでは有名な記念碑も実際に訪れてみると駐車場の傍に申し訳程度に置いてある事が多いですね。



それに対して景色に負けないぐらい存在感を放っているのが、長野県と群馬県の境界に位置する渋峠ホテルです。

晴れていれば景色は最高なのに加えて、峠のパンがとにかく美味しい、建物の雰囲気が良い、可愛い生き物もいっぱいと車でデートに訪れても良さそうな場所です。



今しか見れない景色があるという事で訪れた渋峠でしたが、訪れることを決めて本当に良かったと思います。

渋峠は東京から日帰りできるのか – 思いつきで高速バス輪行

ロードバイクに乗っていると一度は名前を耳にする憧れの場所というものが存在します。

国内であれば『しまなみ海道』や『乗鞍岳』などが有名ですが、国道日本最高地点として名高い『渋峠』もその一つに数えられます。

しかし遠く憧れる存在というだけに多くの人が住む都市部からのアクセスには若干の難があります。

最寄りの大都市である東京から訪れる場合、Google Mapのルート検索では新宿駅から渋峠ホテルまで距離にして209km、移動時間は関越自動車道を利用しても3時間45分ほどと表示されます。

自家用車で早朝に出発して日没後に帰宅する事を考えれば日帰りできない事もありませんが、始発時刻のある公共交通を利用して輪行する場合には時間的な制約はやや厳しくなります。

鉄道でアクセスする際の最寄駅は渋峠ホテルから約33km離れた『長野原草津口駅』となりますが、土曜休日運転の特急草津号を除いては東京 (上野) からの直行便はなく、しかも、その草津号が人気で混雑するらしいので輪行に向いているとは思えません。

特急を利用しない場合はJR吾妻線を利用することになりますが、吾妻線は単線で列車の運行本数が限られている上に高崎または渋川駅にて乗り換えが必要となる事から、こちらも輪行に適しているとは言い切れません。

そこで遠距離輪行の強い味方である新幹線の利用を考えます。北陸新幹線を利用する場合の渋峠の最寄駅は約50km離れた『長野駅』、または約60km離れた『軽井沢駅』です。

東京からの乗車時間は約2時間と短く、輪行時に面倒な乗り換えもありません。

山道を無理なく60km走れる走力のある方なら新幹線輪行が最もストレスなく「日帰りで渋峠」を実現できる方法かもしれません。




とは言え新幹線は乗車料金も高いですし、駅から目的地までの距離が長いので現地の土地勘がなければ利用を躊躇してしまいます。

長い移動距離の途中でのトラブルや機材の故障、天候の悪化などを考えると気軽にという訳にはいきません。

そこで私は高速バスを利用して渋峠の麓の草津温泉に直接、乗り付けてしまう方法を試験的に採用してみました。

ジェイアールバス関東が運行している『上州ゆめぐり号』は東京の新宿駅から群馬の草津温泉に向かう高速バスですが、2017年4月現在、有料手荷物として500円の追加料金を支払う事で折りたたみ自転車を持ち込むことが可能です。

  • 【おしらせ】折りたたみ自転車等の手回り品取扱いを開始します(有料)3/8 <路線限定>
  • http://www.jrbuskanto.co.jp/topics/38.html

『上州ゆめぐり号』であれば新宿駅を 8:05 に出発して草津温泉バスターミナルに 12:12 に到着できます。

始発電車や新幹線と比べると時間的な余裕は少ないですが、その分、到着地点から目的地までの移動距離が圧倒的に短い、出発時間も遅くする事ができる、運賃も新幹線に比べて割安 (通常期の事前運賃 3,450 + 有料手荷物 500 円)という長所があります。

短所としては、どうしても飛行機輪行のように荷物を預けなければならない事です。

検証のため、私はカーボンフレームの FELT F7 をいつもの輪行袋 ロード220 に包んで預けました。

ただし破損や盗難に対する補償はありませんので、何かあっても自己責任となります。

もちろん、私の場合は特に問題はありませんでした。


私が利用した際には空いていた事から他の乗客のスーツケースとは別のトランクに入れて頂いた事もあり、特に問題はありませんでしたが、坂道などでは少しだけ不安になる事もありました。

利用してみて嬉しかったことは高速バス中にUSB充電器が設置されていた事と終点の草津温泉バスターミナルにコインロッカーが用意されていた事でした。



これで常時携帯している CP-R10S を温存できますし、登山時に輪行袋を持たずに済みます。

帰りの終バスは輪行できる新宿路線が 17:30 が最終便となりますので、新幹線を利用しないで日帰りする際には5時間弱で渋峠に登って草津温泉に戻ってくる必要があります。


それがどれ位の難度かですが、距離20kmにして獲得標高1,000mぐらいの長い峠道を90分ぐらいで登れる実力があれば、国道最高地点や渋峠ホテルまでは時間内に行って帰ってくる事は (機材トラブル等が一切なければ) おそらく可能です。

それが難しい場合には長野側に降りて終電の遅い新幹線で戻ってきたり、自家用車やレンタカーでより早い時間に現地入りした方が無難なことは間違いありません。

私の場合、実は現地でスマートフォンが故障するトラブルがあった影響で、(地図や交通機関の検索ができず、最悪、自走で山越えして帰宅するつもりで脚を温存しながら) ゆっくり登ってきましたが渋峠ホテルまでは余裕を持って到着する事ができました。

実際に実行して見たところ、東京から日帰りで渋峠をヒルクライムして、その日のうちに輪行で帰ってくる事は不可能ではありませんでした。

不可能ではありませんでしたが、草津温泉や榛名山などの名所を全て無視して急いで帰ってくることになった為、本音を言えば1泊2日以上の日程で周辺を巡りたい気持ちになりました。

おすすめできるかと尋ねられれば、「正直、おすすめはしません」と答えますが、憧れの渋峠に輪行でも日帰りで行ける事が分かったのは収穫です。

渋峠の詳細はこちら

三浦半島では東京湾の水も透き通る


三浦半島は東京から南の方角に60kmから70kmほど離れた位置にあります。

神奈川県の横須賀市、三浦市、葉山町、逗子市などに相当しますが、過密で単調な景色の続く関東平野の南端にありながら、ここだけ別世界のように非日常感あふれる光景が広がっています。

海峡に断崖絶壁、無人島に白い砂浜に透き通った青い海に米軍基地と何でもありです。

四国や瀬戸内海の島の光景と偽っても誰も疑わないような漁村の風景と美しい海岸が東京のすぐ近くにあると言うだけでも感激ですが、都市部の人口密集地帯でありながらバイクラックの設置が多く、サイクリストの受け入れ態勢が整っている事には驚愕するばかりです。

横須賀市・うみかぜ公園

横須賀市・観音崎灯台

横須賀市・観音崎公園

三浦市・城ヶ島大橋

鎌倉市・由比ヶ浜


私は東京から自走で訪れましたが、三浦半島は鉄道網が発達しているので輪行でのアクセスも容易です。

横浜という大都市の近隣で居住人口が多い事に加えて、東京湾の防衛上の観点から重点的に交通網が整備されてきた経緯によるものでしょう。

三浦市の南端を除いては好きな地点から出発できると同時に、天候の悪化や機材トラブルの際には最寄駅から即座に撤収できると言う利点にもなります。

名物は三崎のマグロやシラス、横須賀では基地や米軍に因んだカレーやハンバーガー、逗子や葉山、鎌倉などの著名な観光地に出れば、有名店には事欠きません。




注意点としては、とにかく自動車が多過ぎるの一言に尽きます。

半島の急峻な地形ゆえにトンネルが多かったり、時折、斜度10%に迫る坂が現れるなどアップダウンがそれなりに (一周のみなら獲得標高1,000mぐらい) ある等の気をつけるべき点は多々ありますが、最大の問題の前には些細な事に過ぎません。

限られた狭い道路に居住者と観光客の自家用車が集中しますので、道中では終始バイクや車の真後ろを気を遣いながら走行する事に徹する事になります。




私が訪れた日は風速が11m/sに迫り、強風波浪注意報が出されるくらい南風が強かったのですが、それでも海岸線以外では排ガスの臭いが衣類に纏わり付くほど車が多く空気が悪いものでした。

その臭いたるや、東京の副都心、それも国道沿いに住んでいる私からしても気分が悪くなる程の強さです (そして海岸線に逃げれば、強風に乗った砂つぶがアイウェアの隙間を縫って吹き付けてきます)。

ただし改善策もない訳ではなく、観光客の自家用車やバスが動き出す時間帯を避けて、輪行で早朝から乗り入れてしまったり、冬の閑散期を狙って訪れれば不快感や危険性を大幅に低下させる事ができます。

上述の通り、三浦半島は東京近郊とは思えない程の非日常感と絶景に溢れていますが、その多くが駐車困難な海岸沿いに突如として現れますので、自転車で訪れる価値は大いにあります。

車では気づかずに通り過ぎてしまう地点にこそ、本当に美しい絶景が広がっていると言う土地柄と考えて間違いありません。