私の使用方法では SRAM 純正ブレーキパッドは、走行距離 2,000km (高度下降 31,000m) 前後で寿命を迎えます。
一ヶ月あたりの走行距離はおよそ 400km から 600km 程度なので、年月に換算してみると半年ももちません。
さすがにこれでは交換頻度が高すぎるので、いろいろな互換製品を順番に試しています。
使用しているブレーキキャリパーは SRAM Rival eTap AXS HRD ですが、Red でも Force でも eTap AXS のブレーキパッドは共通です。
AVID LEVEL / EILXIR / DB / XO / ROAD の記載があって、バックプレートの形状が似ていれば使えることが多いです。
パッドの厚みはメーカー毎にばらつきがありますが、キャリパー固定位置の調整で対応できる場合がほとんどです。
いまのところ、ヤスリがけが必要になったことはありません。
SRAM の純正ローターはロードバイク用のディスクブレーキローターとしてはかなり厚みがあり、クリアランスは厳し目なので組み合わせによっては使用前に加工が必要になることがあるかもしれません。
実際のところ、SRAM のブレーキローターはなかなかに個性的です。
ICE TECHNOLOGIES 由来の SHIMANO ローターのように特殊な構造はしていませんが、バンドに SUS420 を使用していると思われるほか、140mm ローターで平均 1.9mm の厚みがあります。
SHIMANO ローターが業界最軽量クラスを実現しているなら、SRAM ローターは耐久性がおそらく業界最高レベルです。
ステンレス製を謳っている互換製品のほとんどはバンドに SUS410 を使用しています。
SUS410 はマルテンサイト系ステンレスの標準鋼と言い切ってしまっても良いぐらい至るところで利用されています。加工しやすい上に耐久性が高いところが特徴です。
自動車エンジン部品や銃火器にも用いられているぐらいなので、自転車のブレーキ熱ぐらいであれば何の問題もありません。
SUS420 は SUS410 より、さらに耐摩耗性が高く、通常は長期使用する刃物やプラスチック金型などの用途に用いられます。
これをバンドに使用している SRAM ローターは贅沢品です。
というわけで、評価に際してはより一般的な Prime ディスクブレーキローター 140mm を使用しています。
Prime ローターは SUS410 バンドと AL7075 スパイダーの構成で材質的には Swiss Stop Catalyst ローターとほぼ同一です。
Reynolds カーボンホイールのリムブレーキシュー (Cryo-Blue) を作っていた BRAKCO の FR-01SA に形状が酷似していて、素材も同一、生産国も台湾なので、割といいところの OEM 製品なのではないかと推定しています。
このローターと SRAM キャリパーの組み合わせで非常に感触が良かったのは、日本製 Vesrah ブレーキパッドです。
急ブレーキからダウンヒル中の速度調整まで、ストレスを一切感じさせない高い制動力に感動を覚えました。ポンピングブレーキで断続的にブレーキを引き続けたときの安心感が素晴らしいです。
どちらかと言うと前輪向き。短所は日本国外での入手性に難があるところです。
耐久性で言えば、金属パッドの BBB Cycling Disc Stop BS441S も AXS キャリパーで使用可能です。
コントロール性を重視して敢えて制動力を控えめにしているのか、それほど制動力が強いとは感じませんでした。
使っていて良かったところは、ブレーキダストが控えめであまりキャリパーを汚さないことです。
どちらかと言うと後輪向き。ダウンヒル中の速度調整に後輪ブレーキを多用するので、ここに磨り減りにくい金属パッドを採用するのは有りだと思えました。
意外と好感を覚えたのは Lifeline Organic パッドです。
こちらと純正ブレーキパッドとをブラインドテストで評価したら区別できないと思います。
それぐらい純正ブレーキパッドと制動力やコントロール性が似ています。ただし、汚れやすいので雨の中でダウンヒルに使用したりすると、結構すべります。
グリスや油分などが付着するとこのパッドは再起不能です。
それ以外では制動力も文句なしで性能としては十分です。なお、こちらは Vesrah とは反対に日本国内では入手できません。
この他に現在 10 種類のブレーキパッドを試用していますが、結局のところ強い制動力を得ようとするとパッドとローターの何れかを摩耗させることになるので、前輪は制動力重視、後輪は耐摩耗重視でそれぞれ異なるパッドを用いるのが良さそうだという考えに至っています。
ブレーキパッドは各社、制動力、静音性、耐高温性、耐久性、耐天候性、ローターへの攻撃性など用途ごとに全く異なる性能のブレーキパッドを開発しているので、相性は使ってみるまで分かりません。