大都市でも快適に走るために覚えておきたい「黄金の時間」

English Bay in the evening 2

美術や写真の世界に “Golden Hour” という言葉があります※。

一日のうち、人や物や景色が特に美しく見える、日昇後と日没前の数十分の間を指してこう呼びます。

視覚芸術分野にいる表現者たちは光にとても繊細であり、天候や時間帯による人や物の見え方の違いを詳細に把握しています。

私のような自転車趣味の者が彼らから学べることがあるとしたら、それは道路環境も時間帯ごとの変化が大きく、「黄金の時間」を選べば何処に出かけても快適に走ることができるという事実ではないでしょうか。

快適に走るためには信号や前走車の影響を受けない、人気の疎らな道を選べば良いのは誰しもが知るところです。

しかし、多くの都市部に住む人にとっては、日中は混雑していない道路に辿りつくこと自体が困難となります。

そんな混雑の酷い市街地は輪行で回避してしまったり、趣味に打ち込める場所に住居を移してしまうのも有効な解決策ですが、より手軽に実践できるものとして人気の疎らな時間帯を走るという方法もあります。

冒頭に述べた「黄金の時間」です。




「黄金の時間」を具体的に述べると、夏季なら午前4時30分から6時00分までの90分ほどが該当します。

どのような天候においても路面状況を確認できるほどの明るさがあり、車の通行や路上駐車が少なく、通勤ラッシュが始まる前に帰宅できるのは、この時間をおいて他にありません。

それよりも早い時間帯はただでさえ視界が悪いところに、泥酔者とタクシーが傍若無人に振る舞い、路上駐車が増え、さらに道路の夜間工事のために車線数も減るなど、日中よりも危険性が大きく高まります。

それよりも遅い時間帯になると急激に車の通行が増えてきます。

快適で危険性の少ない早朝の90分の間に、休日であれば如何に市街地を抜けて郊外や山間部まで辿り着けるか、平日であれば如何に密度の高い練習を行うことができるかが、その後に続く一日の質を決定します。

偶然にも自転車にとって最高に快適な時間帯は、一日のうちでも人や物が特に美しく見える「黄金の時間」とも重なるため、幻想的な夜明けの空と早朝の澄んだ空気を楽しめるというご褒美まで頂けます。

早朝に走る習慣のない人には驚きの主張かもしれませんが、道路が快適で、景色も美しく、空気も美味しい「黄金の時間」は覚えておいて決して損はありません。

なお、冬季は日の出が遅くなる影響により夜明けの時刻と通勤ラッシュの開始時間が重なるので、自転車は諦めてランニングに専念しています。

関連: 冬場の朝練のジレンマ


※ 日本語における「マジカルアワー」との相違については話題が複雑になるので言及を避けます。確かに “golden hour” に類似する言葉として “magical hour” という言葉もあります。

前者は日昇「後」と日没「前」を表す文脈で用いられている事が多いのに対して、後者は日昇「前」と日没「後」を指す用例をよく目にします。ただし両者を同じ意味で用いる人もいますし、”golden hour” と “blue hour” を総称して “magical hour” と呼ぶ人もいます。

本文では日昇後と日没前の意味で用いられる用例が多いことを理由に “golden hour” を前述の意味で採用します。

ÖGON はいいぞ – ロードバイクやランニング用の財布を本気で考える

毎週末に自転車で100kmから200kmほど走り回っていると、スポーツ用途の携行品にも気を遣うようになります。

自転車での走行距離200kmを走行時間に換算すると約8時間から10時間に相当します。

その時間中、ずっと肌身離さず持ち運ぶ事になるのが携行品です。

特に金銭や貴重品を内包する財布は、時間中の飲食や宿泊、緊急時の対応などに密接に関わるほか、使用頻度も高いため、財布の使い心地がライドの質を決める と言っても過言ではないぐらいに重要です。




偉そうなことを言ってますが、私も長らく100円ショップのビニルケースを使用してきました。

ビニルケースは防滴性が高く、数年間も継続的に使用しても破れないほど丈夫で、内容物の確認も簡単です。

小銭入れとして便利なので、複数購入して頻繁に訪れる国の通貨ごとに分けて使用しています。


このビニルケースは、しかし、本当に財布に入れて保護したい貴重品 – つまり健康保険証や運転免許証などの身分証明書、クレジットカード、銀行のキャッシュカードなど – には全く適していません。

折り曲げに弱い上、カードや小銭が擦れ合うのを防止する事に構造的に不向きであるためです。

絶対に無くしたり、汚損したりできないカードと比較して、小銭などは優先度の低いものです。ポケットやツールケースに入れても差し支えありませんし、持ちきれなければ募金箱の中に置いてきても困ることはありません。

反対に身分証明書などのカードは、常に必要とされる可能性があるにも関わらず、基本的に1枚しか取得することができません。

ここが難しいところでして、休日のアウトドアやスポーツ用の財布やケースに入れっぱなしにしてしまえば平日に忘れる可能性があり、粗雑に扱えば紛失や汚損により使用不能に陥り、なおかつ、持ち運ばない訳にもいきません。

私の場合は、これらのカードを交通系のパスケースに収納して、休日も平日も同じように携帯する (自転車に乗る際はパスケースごとビニルケースに収納) という妥協をしていました。

ÖGON Stockholm に出会ったのは、まさにそんな時です。

台北へと向かう飛行機の機内販売カタログで見かけた際には思わず痺れました。



[OGON / オゴン] フランス製 アルミ 防水 カードホルダー (ブラック)


堅牢で小型軽量で防滴性があり、それでいて落としたら気がつくぐらいの大きさと重さを兼ね備えているもの。

デザインもシンプルで使用する場所を選ばないので、平日のオフィスに持って行っても違和感はありません。

その場でお買い上げして帰国後から毎朝のようにライドやランニングに持ち出しています。

WATER PROOF を謳っているぐらいですので、身体から滲む汗や小雨程度なら問題なく使用できます。

加えて紙幣の中では大きめな日本円の高額紙幣でも折り畳めば問題なく収納可能です。

携行品の点数で言えば、ビニルケースとパスケースの組み合わせよりも持ち物が減っているにも関わらず、防水性はかえって向上しています。

その要となる開閉部や密封装置 (内装) 、ヒンジなどは樹脂製です。

この中におまけとして、地味に役立つスキミング防止機能が付属します。

カードや紙幣の収納枚数は7枚しかありませんが、ライドなどで持ち出すのは基本的に健康保険証と決済用カードまたは紙幣、行きつけのショップの会員証ぐらいなので全く問題ありません。

遠方への輪行でも、これに加わるのは運転免許証と航空会社のマイレージカード程度です。

内容物が少なければ、開閉時に飛び出してくることも極めて稀です。

スポーツ用途の財布としての弱点は、貴重品を集中させてしまうので、紛失時のリカバリが難しくなることです。

そして、それとは全く反対の弱点として、自宅や自動車の鍵、パスポートなど、カードや紙幣以外のものは収納できないことが挙げられます。

紛失にさえ気をつければ (本体そのものも、開閉時の内容物も) ロードバイクもランニングも快適にしてくれる ÖGON はスポーツ用品でこそないものの、これまでのところ、スポーツ用途として採用してきた財布の中で最高の機能性と快適性を提供してくれています。

電動コンポの真価と機械式を積極的に選ぶ理由

電子制御により簡潔な動作で確実な変速を行う電動変速システムは、自費でバイクを購入する一般の消費者すべてが恩恵を受けられる画期的な発明だと私は考えます。

変速に関する一切の懸念が払拭される走行時はもちろん、整備時においても調整時間の短縮が可能となり、絶妙な変速調整を再現するための熟練を機械式ほど必要としない事から、どこの誰であっても安全で快適な変速を享受でき、11速のギアを効率的に利用できるようになります。

絶妙な変速調整と言えば、リア変速機のディレイラーハンガーの修正等と並んで、腕の良い整備士に任せたい難易度の高い作業です。

学習意欲と注意力と根気さえあれば、(性能の追求は別として) 安全に走れる形にはなるホイール組みや振れ取りよりも、よほど難しいだと個人的には思います。

専属の整備士がいるプロのライダーであるならともかく、私のような一般の消費者にとって、その絶妙な変速調整を実現できるようになるまでの学習費用、調整を依頼する為に店舗に通う時間的費用、安全で確実な変速が保証されている事の意味は大きいです。

腕の良い熟練の整備士の技能を機械的にほぼ再現してくれる電動変速システムは、それに用いられているセンサー等の部品や技術以上に、技能の再現という視点から捉えた場合に安過ぎるぐらいに安価です。

ロードバイクに限らず、新しくバイクを購入する際には真っ先に導入を検討する価値があります。

もちろん、使用者の不満も耳にしない訳ではありません。

突き上げるような激しい振動の中で長時間使用するとジャンクションパーツが飛び出たり、冬のカナディアン・ロッキーのような極端な低温環境で使用していると電池の動きが悪くなるなどの他者の体験も間接的に知っています。

ホイールでも何でもそうですが、私が何か新しいものを導入する際に下調べも何もしない事はありません (不必要なものを所有したり生活に無駄が出るのが大嫌いなので)。

ただ使用環境や使用用途が異なるので、他人の意見は他人の意見として参考に留めているだけに過ぎません。

反対に他者の意見では余り指摘されていない内容で、私が個人的に気になる点もあります。変速機そのものではなく、そこに用いられるリチウムイオン電池です。

携帯式のモバイル端末や電子機器に当たり前のように使用されている事から、意識される機会自体は少ないのですが、本来は輸送などに法令の規制を受ける危険物です。

プロの激しいレースでも用いられているぐらいなので、注意事項を守って通常使用している分には安全性の問題はないと思われますが、充電や運送や保管などの取扱いについては細心の注意が求められます。

それを最も顕著に見て取れる事例は飛行機輪行です。

ご存知の通り、ロードバイク等のスポーツ自転車は航空会社の定める規定に従って旅客機輸送 (輪行) する事が可能ですが、発火の危険性のあるリチウムイオン電池は温度変化や振動の少ない客室に持ち込まなければ荷物として携行できません※。

自転車のフレーム内に電池を内装する電動コンポーネントとの相性は率直に言って良くありません (その点、変速機そのものに着脱が容易な充電池を搭載する eTap は、飛行機輪行に限定して述べれば便利な構造をしています) 。

また機械装置と電子工学技術を応用させた変速機自体も機械式の変速機と比較して複雑な構造をしています。

電動コンポーネントではシフトケーブルの本数を減らす事が可能なので、自転車の見た目はシンプルにする事ができる反面、コンポーネントの機械としての構造は複雑になります。

それがそのままユーザーがあれこれできる範囲を狭めることと同義にはならないものの、(特に海外の山奥での) 故障や損耗時の対処を考えると機械式コンポーネントの構造の単純さの方が有難い場面もないとは言い切れません。




翻って私の使用環境を確認してみますと、飛行機輪行は日常の光景です。

行きたい場所もかつて住んでいたオーストリアの舗装路最高地点 (2,829m)、親友の故郷の南フランスの田舎町、何かと縁のある台湾やベトナムの山奥と言った具合にコンポーネントの修理や交換部品の調達に困難を伴う事が予想される土地が大半となります。

そもそも最初のロードバイクを購入した動機からして、1年間の期限付きの国際免許証に縛られずに自由に旅に持ち出せる自転車が良いというものでした。そこで電池の取扱いで制約を受けるのも何か違う気がします。

極めつけは私は複雑なものが嫌いで、機能的で単純なものが好きです。

これまでの話をまとめますと、電動コンポーネントのもたらす機能的な恩恵はとても魅力的で、視覚的にも自転車の設計の自由度を向上させるだけでなく、外見をシンプルに美しく見せる事ができるようになります。

普通に使用する分には約1,000kmの走行距離あたりに1回の充電が必要になるなど、デメリットにならないぐらいのデメリットしか有りません。

機械式と比較すると割高に見える価格設定も、熟練の技能 (の再現) を誰でも、世界中の何処にいても継続的に受けられると考えれば格安です。

導入を考えない理由など思いつきません。

それでも機械式コンポーネントを私が選択した理由は、構造の単純さ、トラブルへの強さ、取扱いの容易さに強い価値を見出したからに他なりません。

たとえ、内装ケーブル交換の手間と (電動コンポーネントモデルと比較して) ケーブルが邪魔に見える外見を甘受したとしても。

何の話かと申しますと、

また機材が増えた (それも機械式コンポーネントの)

という単純な話です。

増えた機材の話はこちら


※ リチウム含有量や電力量が基準値を超える場合は持ち込みそのものができません