真夏のデザインフェスタが楽し過ぎる

友人から熱心に誘われて、真夏のデザインフェスタ 2017 に行ってきました。

デザインフェスタとは東京の国際展示場で開催される創作のイベントで、誰でもオリジナル作品を展示、販売することができることを趣旨としているそうです。

実際に訪れてみるとオリジナルの絵画ポストカードにアクセサリー、ぬいぐるみにガラス細工、写真集に、衣類に、木製品に、落書き集と何でも有りな販売ブースが並び、その横で音楽を演奏してる人がいたり、食事してる人がいたりといった具合に自由な空気に圧倒されます。

例えて言えば、ミュージアムショップとフリーマーケットとナイトマーケットが融合しているような不思議な空間です。

イベント会場全体に共通するテーマも存在しない為、個々のブースが好きなものを好きなように展示しており、次に何が出てくるのか検討もつかない面白さがあります。

その脈絡のなさは、仮に私がロードバイクを展示しながら『檜原・奥多摩の絶景写真集』を販売していても違和感がないほどです。




この脈絡のなさから、自分の知識を超えた範囲にある他者の創作活動を伺い知ることができ、さらには創作者自身と直接的に会話することもできます。

私自身は風景写真が好きなので、自転車で山の中に出掛けていった序でに撮影してレタッチすることも多いのですが、他の人の写真や絵画を眺めていると自分なら意識もしないような対象に目を向けている作品が多々あることに驚かされます。

そんな視点の異なる作者とイベント会場では直に話せるのですから、面白くない訳がありません。
加えて驚くべきなのは、一からの絵画制作の実演を目の前で見ることができ、制作者の許可さえ得られれば作品が完成するまでの過程を撮影することさえ可能なことです。

以下は野宮ましろさんの描く星空の制作途中の様子。ここから試行錯誤を経て最終形に至るのは完全に予想外ですし、実物は写真以上に陰影の表現が素晴らしいです。

既製品とは異なる手作りの商品や他では購入できないオリジナルの作品を購入でき、創作者と会話が可能で、字義通りに作品の制作過程まで見ることができるデザインフェスタは、端的に言って会場に一日中いても飽きない楽しいイベントでした。

そして重要なことですが、明日も開催しています。

奥多摩には夏の魅力がいっぱい

東京都内において自転車を最も楽しめる場所が奥多摩ですが、移動速度と視点を変えて徒歩で巡っても楽しいものです。

徒歩でしか辿り着けない隠れた名所も数え切れないほどあり、乗っていること自体が楽しいはずの自転車を置いて、歩き出したくなることも度々あります。

そうした名所が特に多いのが奥多摩でも北部にあたる氷川・青梅方面です。

氷川とは奥多摩町の中心地区で、JRの奥多摩駅 (かつての氷川駅) のあるところです。檜原村や青梅市西部などを含めた広域地名の奥多摩との混同を避ける目的で区別して呼称します。

わざわざ区別する理由は奥多摩の地形と交通網にあります。

標高1,000m近い尾根が東西に伸びる奥多摩では南北の移動に困難を伴いがちです。

東側に位置する東京都心部に接続する交通網が発達しているという事情もあり、氷川や小河内 (奥多摩湖) であれば青梅、檜原であれば武蔵五日市や日の出といった具合に東西移動を前提として訪問を考える事が基本になります。




東西移動を前提とした場合に、自転車での走りやすさ (舗装状態の良さや交通量の少なさ) 、景観や周辺環境の良さ、御飯の美味しさを全て満足させるのは檜原・武蔵五日市方面、圧倒的な利便性とアクセスの良さを誇るのは高尾・八王子方面なので、自然とそちらの方に足が向いてしまいます。

実際、氷川・青梅方面は交通量が多く、危ない運転をする車も少なくなく、舗装状態も悪いところが散見され、トンネルも多いので、道路として見た場合には全く好きではありません。

しかし、ひとたび道路を離れれば、都心から大勢の人を引き寄せるだけの雄大で風光明媚な景色が広がっています。

風景の美しさでは奥多摩随一と言っても良いかもしれません。



圧倒的な大きさで非日常感を感じさせるのは小河内ダムですが、そこから下流にある多摩川の上流も水の透明度や渓谷美が楽しめる魅力の多い土地です。

JR鳩ノ巣駅から至近の距離にあり、川原に降りようとしない限りにおいては気軽に登山の醍醐味 (絶景) を楽しむ事ができます。

さらに下流に向かえばカヤッキング、上流に向かえば登山が楽しめるので、新しい趣味に目覚めそうです。



訪問にあたっての注意点は登山と変わるところはありません。

ツキノワグマの生息地で奥多摩駅前どころか青梅でも目撃例があります。

急峻な山が多く落石や滑落には細心の注意が求められます。装備もなしに不用意に沢に近づくのは非常に危険です (いつ増水するかも分かりません) 。

また気温や直射日光から常に熱中症の危険を伴いますので、常に水分と糖分を補給ができるようにしっかりと事前準備を怠らない事が必要となります。

入念な準備と安全に対する心掛けは要求されますが、首都圏の他のどこにもない荘厳な雰囲気を持つ山々や渓谷は一見の価値があります。

東京の自然という趣を持つ高尾の森、人里の身近にある山林を感じられる檜原や秋川の森と比較しても、奥行きや迫力を全身で感じる事ができる点が異なります。

そして、その魅力を最も楽しめる季節は夏だと私は考えます。

日原の鍾乳洞も、氷川の清流も、古里の渓谷も暑い夏だからこそ、その涼しさが際立ちます。

新緑の奥多摩は美しい。30度超の真夏日は秋川の清流で涼をとろう。

東京では今年初めての真夏日となった5月3週目の日曜日ですが、暦の上ではまだまだ初夏は終わっていません。

初夏と言えば山の木々が生命力に溢れ、空の青とコントラストを成す、ヒルクライムが最も楽しい時期です。

一年のうちでも最高の時期に最高の天気が重なる日曜日。たとえ予想最高気温が30度を超えていようが、これで山に登らなければ自転車に乗っている意味がありません。

東京の副都心に位置する私の家から奥多摩の山までの移動距離は約80kmほど。移動時間に直すと片道4時間弱なので、午前中の隙間時間に自走で行き帰りするには午前4時以前に出発する必要があります。

そうした理由から早朝3時台に家を出て、朝焼けの中を五日市まで進みます。

こんな時間にも関わらず、23区内では高速バスに工事車両にタクシーにと交通量が多過ぎて極めて不快な気分になりますが、調布まで我慢を続けて一般道を抜ければ、僅かばかりのランナーを除いて他に何も目に入らなくなります。

更に進んで八王子の市街地を過ぎてしまえば、その後は快適そのものです。


目的地に早く到着するのは良い事ですが、今日の目的地は夜間通行禁止です。

早く到着しすぎると通行できないという問題が生じますので、奥多摩周遊道路が開門する午前8時に到着できるよう、秋川の河畔で写真でも撮りながら時間を合わせます。




予報では真夏日ですが、午前7時を回ったばかりの檜原村の気温は14度。ひんやりとした空気が心地よいです。

しかし、ここまで来ても車の往来が多く、改造車の威圧的な排気音が雰囲気を台無しにする事に気がつきます。

元より多かった自動二輪車はともかく、これほどまでに多くの車が行き来する道であっただろうかと記憶との齟齬に悩みます。

都民の森は良いところですし、従来は有料道路だっただけあって走りやすいのですが、四輪の自家用車が大挙して押し寄せるようになったら、まともに走る事すらできなくなってしまうのは他の山道と何ら変わりはありません。

もしそうなってしまったとしたら、残念ながら今後は走行ルートから除外する事も検討しなければなりません。


程なくして都民の森に到着しましたので、売店で軽い朝食をとって、風張峠へと登ります。

ここに以前に来た時には、苦しくてフロントインナーで軽いギアを必死に回す事しかできませんでしたが、アウターのままダンシングで登る練習をしたり、バイクがブレないように意識して修正する余裕がある事に自身の成長を感じます。

次は速く登れるように更なる練習を重ねなければと決意を新たにします。

気分的には更に奥へと進みたいところなのですが、自宅から80km超も離れた奥多摩 (風張峠までなら90km超) でそれを行うと、容易く1日消費コースとなってしまいます。

通行できる経路の限定されている山間部では、制限時間を正確に把握して、退き際を弁える事が肝要です。

現在時刻は午前9時。道幅が狭く、信号停止だらけの劣悪な東京の道では、このまま引き返しても帰宅できるのは正午を過ぎてしまいます。

とは言え、ここまで訪れる苦労に対して圧倒的に登りが足りてませんので、道なりに位置する適当な峠を組み入れます。



山越えを含めて100km超となる帰路に対して簡易な朝食だけでは心許ないので、檜原村役場前のたちばな屋さんで美味しいラーメンを頂きます。

陽が昇るに連れて気温も大幅に上昇して来ますが、生い茂った新緑の葉の木陰や秋川の清流が涼を与えてくれます。

檜原や奥多摩の道は大部分が秋川の渓流と並走していますので、少し道を外れると滝や湧水が現れます。

観光案内図に載っているような知名度の高いものから、名前があるのか不明なものまで多々ありますが、共通しているのは水が透き通っていて美しい事です。

こんな真夏日にはこの清流があるだけでも価値があると思えてくるものです。

気温はその後も上昇を続けますが、何とかそれをやり過ごしながら山を降り、向かい風に抗って川を下り、午後一の車の通行の少ない時間を狙って帰還しました。