ロングライド時のカメラの運搬に HAKUBA プラスシェル メッセンジャーS

自転車でのカメラの運搬方法として、私は長らくカメラ本体を剥き出しのままストラップで吊るす運搬方法を採用してきました。

この運搬法は速写性が高く、走行中の振動に伴う故障の可能性を軽減でき、持ち運び荷物の点数を減らす事で遺失を予防できるなどの長所があります。

その反面、落下による故障の可能性が高く、汗や日焼け止めクリームや直射日光による本体の損耗やレンズの汚染に弱く、雨の影響を直に受けるという短所も目立ちます。

防塵防滴仕様でないミラーレスカメラを豪雨の中で使用した場合、勝手に電源が ON になったり、レンズに結露が生じたり、ローパスフィルタに汚れが付着したりすることがありますので、普段から汗水に晒されているカメラのダイアルやシャッターユニットの内側がどうなっているのかは、想像することさえも憚られます。




そんな事を今さら気にするようになったという訳ではありませんが、画角の異なるレンズ2本を持ち運べるという利点が気になったこともあり、HAKUBA カメラバッグ プラスシェル シティ03 メッセンジャー 1.6L S グレー SP-CT03-MBSGY という小さなメッセンジャーバッグを購入して 500km ほど試用してみました。



自転車で使用する目的において小型で軽量であることは持ち物の必須条件です。

このバッグは荷物を収納したサコッシュとほぼ同じ大きさに、内装のしきりと4つのポケットがあります。つまり、ミラーレスなどの小型なカメラであれば、ボディとレンズ2本、小型の三脚、レンズペン、ブロワ、予備の電池などを相互に干渉させずに収納することが可能です。

質量は公称で185gですが、肩紐の幅が実測で25mmと幅広で運搬しやすいので、使っていてバッグ自体の重さが気になることはありません。

バッグ本体の大きさに対して肩紐の幅が広いというのは重要な特徴で、このお陰で肩から吊り下げて走行した際にバッグの位置が安定します。

私は SONY 純正品を含めて似たような大きさのポーチやバッグを複数所有しているのですが、紐が細かったり、吊り下げて走行した際に安定しなかったりと、これほど自転車用途に適したものは他に見当がつきません。

加えて重要なのが、吊り下げていて音鳴りしない構造になっていることです。

バッグの使用において私が個人的に最も許せないのは音鳴りで、樹脂製の部品が擦れ合う際に発する不快な音を聞いただけで、そのバッグを投げ捨てたくなります。

最低限のクッション機能もあり、AMEDAS アメダスのような防水スプレーを予め吹き掛けておけば、剥き出しで持ち運ぶよりも遥かに安全にカメラを運搬することができます。

速写性は剥き出しのままよりは落ちるものの、リュックに背負うよりも遥かに良いです。私の使用環境においては、東京の中心部にある自宅を起点にして、半径60kmから70kmほどの市街地区間では撮影機会はほぼ皆無なので、この区間で特に大活躍します。

撮影しないのにカメラを持ち運ぶことは、自転車走行の質を落とすという意味でも、カメラ本体に対して不要なダメージを与えるという意味でもデメリットしかありません。

そう考えたことがバッグでの運搬を検討し始めた最初の要因ですが、突発的な降雨に遭遇しても走り続けなければならないロングライドの場合においても、或いはフラッシュライトや焦点距離の異なるレンズなどの機材を持ち運びたい場合などにおいても有用なのではないかと使用していて強く感じました。

CO2依存脱却の試み

自家用車を処分する云々といった内容ではありません。

スポーツ用の自転車のパンク修理に用いられるCO2インフレータへの依存を止めて、携帯エアポンプを携行する事を検討しています。

CO2インフレータの長所は (1) 携行時の体積が小さい事 と (2) 労力を掛けずに瞬時にタイヤに空気を送り込める事の2つです。



airbone(エアボーン) airbone CO2ボンベネジ有り16g3本セット ZT-101


スポーツ用自転車のタイヤは概して高い空気圧が必要となるため、携帯式のエアポンプで空気を送り込むために必要な労力は無視できるものではありません。

自転車用途で使用される携帯式エアポンプは、持ち運びが便利な小型で軽量なものほどタイヤやチューブに空気を送り込むのに必要な労力が大きくなる傾向があり、携行性と利便性の両方を追求する事が難しいため、どちらか一方に割り切ったポンプを愛用するサイクリストも少なからず存在します。

CO2インフレータの場合、最も小さな携帯式エアポンプとほぼ同じ大きさでありながら、必要な量の空気を瞬時に送り込む事ができますので、携行性と利便性のどちらも犠牲にする事はありません。

反対にCO2インフレータの短所は、CO2ボンベを使用する事です。




CO2ボンベを使用する事によるデメリットは無数に存在します。

そのうちの最大のものは、(1) 一度きりの使い捨てとなり再利用ができない事です。

失敗も許されませんので、現実的には2本以上のボンベを携行する事が推奨されます。

軽量のエアポンプよりもインフレータ一式の質量の方が上回る事も当然あり得ます。

体積または労力の削減はできても、(2) 持ち運ぶ質量の削減の点においては余り意味がないのです。

また (3) 注入できる気体が二酸化炭素である事から、エアポンプを使用した場合よりもタイヤの空気が抜けやすい事も懸念事項となります。

その事を身をもって実感したのは、つい先日のできごとです。

東京から山梨県と長野県の境界上にある大弛峠を目指して走行していた際、後方から迫ってきた自家用車から幅寄せと急ブレーキによる進路妨害を受け、異物の散乱する路肩に無理やり押し出された挙句、1cm長の金属片を踏んで後輪がパンクしました。

そこは山梨県の大月市というところで、目的地までは40kmほど離れていましたが、東京の出発地点からも90kmは離れた場所でした。


手持ちのCO2インフレータと予備のタイヤチューブを消費する事で自転車を走行できる状態にする事はできましたが、早朝3時台に家を出てきた事もあり、ここまで来ておいて引き返すのは嫌だなと思いました。

私が携行するパンク修理用品は、Vittoria ツールケースに収まる2本のCO2ボンベと予備のチューブのみで、携帯式エアポンプを持ってライドに出掛ける事は基本的にはありません。

例外として島根県まで輪行した際、出雲空港からホテルまでの移動 (自走) 中に使用した Road Morph です。

これはパンク修理を意識したものではなく、否応なしにタイヤの空気を抜かなければならない飛行機輪行には必須であった為に持ち合わせていたに過ぎません。

CO2インフレータは無事に帰宅する為の助けにはなりますが、タイヤをパンク以前の状態まで復元してくれるものではありません。

予備のボンベとチューブは残り1本づつ。

路面の荒れた道の多い山梨県の初めて訪れる場所。

引き返すべきとは思いながらも先に進まざるを得なかったのは、消費した修理用品やタイヤの空気圧を補充できそうな場所が見たらなかったからです。

そこから山道と峠を越えて45km離れた八王子まで戻らなければ。


今までは無事に帰る事を優先していたのでCO2インフレータは必要十分でした。しかし、トラブルに遭遇した後、なおも先に進みたい場合にそれだけでは心許ないと痛感します。

幸いにして、しばし進んで到着した猿橋というところで、訪れていた方にエアポンプを貸して頂ける事になりました。

私が笹子峠と大弛峠を越えて長野県の入り口まで辿り着けたのは、偏にこの方の親切によるものだと考えると感謝しても感謝しきれない思いです。

帰宅後、翌日は真っ先に最寄りのショップを訪れて Mini Morph G を購入しました。

ツールケールに収まらない携行品が増えてしまうのは、紛失防止の観点からは避けたいものですので、もちろん思うところはあります。



一方で便利なCO2インフレータは、私の使用用途には不向きなのではないかとも考え直す事になりました。

パンク修理に1秒を争うタイムトライアル等では必須になりますが、私の場合はライドに厳しい制限時間が伴う事は極めて稀です。修理目的もパンク地点から最寄り駅やエイドステーションまでの到達よりは、山越えを伴った自走での帰宅となる可能性が高いです。

加えて、特徴的なのは飛行機輪行の頻度です。

CO2インフレータの場合、飛行機輪行ではボンベの持ち込みそのものが法令による本数制限を受けます。手荷物検査の担当者が輪行に不慣れな場合、その外見から面倒になる可能性もあります。

スポーツ用の自転車用品であり、ボンベの中の気体は二酸化炭素である事を明かした上で「パンク修理用の二酸化炭素ボンベ」あるいは “puncture repair kit(s)”、”patch kit(s)”と説明する事が無難ですが、最善の手段は消耗品のボンベは持ち込まずに到着後に現地調達する事です。
こうした事情もあり、CO2依存からの脱却を試みています。

エアポンプ1本のみでは冗長性がありませんので、CO2インフレータの携行自体を直ぐに止める事はありません。

ジャージのポケットとツールケースで持ち運べる荷物が限定されている中での最適な持ち物の組み合わせを模索しています。

輪行嫌いが選ぶ輪行袋

ガイジンやキコクシジョという腫れ物扱いを受けるほどに日本社会に馴染めない私ですが、普段の生活の中で最も苦手なものが日本の鉄道です。

やかましい自動音声を延々と流しながら携帯電話での通話だけは禁止などの理解不能な規則をたくさん設けているので、乗るたびに神経を擦り減らして疲れます。

東京の中心部に近いところに住んでいるのも、鉄道と関わらずに日々の生活を完結できるようにする為です。

ただでさえ鉄道が嫌いな事に加えて、輪行袋というアイデアも好きではありません。

ロードバイクは輪行袋に収納して持ち歩くことを考慮して設計されている訳ではなく、自動改札の存在、狭いプラットフォーム、都市間交通での満員電車の常態化などが暗示しているように、日本の鉄道もまた輪行をする事を前提としていません。

駅や列車が空いている場合に限り、専用の輪行袋に収納するという条件で、自転車の鉄道輸送もできるという取り決めは、乗客 (自転車乗り) にとっても鉄道会社にとっても互いに無理をして妥協しているような印象を受けます。

仮に問題が生じたとしたら、また新しい規則が増えて輪行も制限を受けるかもしれません。私が輪行を行う場合、ほとんどが飛行機と高速バスで、稀に鉄路を利用する際は、始発列車に始発駅から乗ることを意識しているのは、こうした理由からです。




そんな私が輪行袋に対して求める要件は3つあります。

1点目は鉄道会社などの輪行規則に合致するものであること。2点目は他の乗客の迷惑にならないように自転車をなるべく小さく収納できるものであること。3点目は存在自体が本来は不要なものである分、走行中に邪魔にならないことです。

愛用しているOSTRICH ロード220は、1点目と2点目は完璧に満たしてくれる優秀な輪行袋ですが、リアディレイラを保護するエンド金具が必要となる為、どうしても大きくて嵩張ります。

本体のみ・ケースと紐とエンド金具は含まず

飛行機 高速バス輪行など、自分の手元から離さなければならない時には頼もしいのですが、ボトルホルダー1つを占有してしまう大きさと重さは常時携帯しておくのには適していません。

そうした理由から、使用するのは専ら遠距離輪行の用途に対してです。

大抵の場合は輪行先の駅やホテルに到着した直後に荷物として預けてしまいます。

同じ機能を持つ輪行袋の中で、最小または最軽量であるかどうかは私の知識を超えるところですが、必要な機能を満たしながら、目的の用途に対しては十分に軽量で、入手性も良いので満足しています。

エンド金具を用いる本格的な輪行を行わない場合、例えば自走で200km以上も走って丹沢や山梨などの遠方の山岳地帯に赴く際の非常用の携帯輪行袋としては、同じくOSTRICH の SL-100を使用しています。
ケースに入れたままサドルに巻き付けられる上に、輪行袋の中でも最小、最軽量の一つと言えるほど携帯性が良いので、常時携帯していてもライドの邪魔をしません。

それだけでも素晴らしいのですが、この輪行袋の優れた点はこの大きさと重さを実現しながら、自転車を完全に収納できる事です。

私はエンド金具を携帯しませんので縦置きする事はできませんが、肩紐を付けて手で持ち続けさえすれば、私が輪行袋に求める全ての条件を満たします。

私は移動距離が2時間ぐらいなら列車に乗っても座席に座りませんし、いざとなったら横置きもできますので何の問題もありません。

まあ、にわか雨の際に一度 (徒歩で) 使用したきりで、まだ輪行で使用しなければならない事態に陥った事はないのですが・・・

本体のみ・ケースと紐は含まず

ケースのみ・本体と紐は含まず

本体と (一体型) ケースのみ・紐は含まず

輪行で使用する事は稀ですが、輪行袋にホイールバッグを組み合わせることもない訳ではありません。

どちらかと言うと自家用車で用いる事の方が多いのですが、フレームの塗装に傷が付いたり、タイヤに付着した泥やスプロケットの油で車内が汚れたりする事を気にしなくても良くなります。

頑張ればサイクリングジャージの背中ポケットに収まる大きさまで折り畳めなくはないので、フレームサイズが小さく、別の輪行袋と組み合わせても規定の大きさに収まるのであれば輪行で使用しても良いかもしれません。

ただし、運搬時の落下対策だけは必要です。

私はジャージの背中ポケットに入れていて落とした事があります。

TIOGA ホイールバッグ 1本用


TIOGA ホイールバッグ 2本用

工夫を凝らされた輪行袋そのものはとても良いアイテムですが、輪行袋というアイデアが好きではないという意見は変わる事はありません。

運搬時の合理性や (ハードケースではなく薄い生地の) 輪行袋に収納する必然性がある訳ではなく、ただ設けられた規則を守るために存在するものだからです。

そうであればこそ、良い輪行袋とは規則に合致しながら、運搬時にも邪魔にならないものだと私は考えます。

市場には他にも良い輪行袋がたくさんあるでしょうし、自転車に対する保護機能こそが最重要などといった意見も否定しませんが、状況に応じて必要最低限の軽量な輪行袋を使い分ける方法が、私にとっては最もストレスが少ないです。