レンズ沼の住人の気持ち

一眼レフなどのレンズ交換式カメラを使用していると性能の良いレンズを使ってみたくなります。

せっかく数万円ものお金を出して購入したカメラです。

人生で二度と訪れないこの瞬間をできるだけ良い画質で残したいに決まっています。

実際に良いレンズを使用すると、カメラの描画性能が大きく変わります。集合写真でも一人ひとりの顔が判別できるほど、細部までくっきりと写し切れたり、旅先で出会った歴史的な建物が歪まずにありのままの姿で写せたり、色が滲まずにファインダーに透明感を感じられたりとレンズ交換の効果は劇的です。

マクロレンズでなら幻想的な朝露や雪の結晶が、望遠レンズでなら目視では雷鳥やキタキツネが、広角レンズでなら視界一面に広がる瀬戸内海や積丹の青色が撮れます。

言葉ではどれだけ説明しても伝わらない、その情景と感動が自分のカメラだけで表現できます。レンズは偉大です。

動き回る子どもや猫を追いかけるオートフォーカスや連写速度、水族館などでの暗い室内で撮影した場合のノイズ量など、基本的なカメラの性能を除くと、画質はレンズの性能に影響される部分が大きいです。

そのために次々にレンズを購入してしまう状態を俗称で「レンズ沼」と言います。




止めどなくレンズの数が増えていくだけに限定されるのであればともかく、終わり無くレンズを購入し続ける状態も広義の「レンズ沼」に含まれるのであれば、私も沼の住人の一人なのかもしれません。あるいは住人の一人だったのかもしれません。

沼から抜け出す?

というのも、私の手持ちのレンズの数は (最近3本も追加したにもかかわらず) 減り続けていて、増える傾向がありませんので。

これは私の意志力が強くて不断の決意でレンズ沼を抜け出した、カメラ趣味に飽きた、あるいは資金が尽きて機材を処分せざるを得なくなったという訳ではありません。

ただ一つ、使わないものを持っていても仕方がないなと思えて、出番が少ないものから売却していった結果です。焦点距離が異なっていても 65mm を入れてから、そう言えば最近 55mm と 85mm を使っていないなぁと考えだしたら、いつの間にか減ります。

もともと私は転勤族の生まれで、子供の頃は一年ごとに住む国が変わるような環境で育ったので、大きな家具や使わない荷物が増えることが極度に苦手です。

用途が重複したり、2週間以上も使用する予定がない機材は売却候補に入ります。

今までに手放していったカメラやレンズも良いものばかりで、また使いたいと思うこともありますけど、使用目的が手持ちの機材と重複していると一方しか使わなくなってしまいますので思い止まっています。

そうして、現状 15mm や 110mm という極端な焦点距離の単焦点レンズばかりを使っているわけですが、レンズが欲しいという気持ちはよく分かります。


ZEISS Loxia 2.4/25 E-mount

標準ズームレンズという沼

個人的に「レンズ沼」に最も人を近づけるのは標準ズームレンズだと思っています。使用頻度が多いですし、どのレンズも得意、不得意があり、どれも何かが足りないからです。

メーカーやマウントに限らず、解像度や明るさとズーム機能を両立させたレンズは重厚長大になりがちですし、ズーム倍率が高くて広角から望遠まで何でも1本で対応できるレンズは画質に大きく期待できないことが多いです。

どのレンズにも長所と短所があり、どれも普通に使う分には十分な性能を持っています。

明るさ、ズーム倍率、解像度、オートフォーカス速度、逆光耐性、手ブレ補正、重量など「あと少し何かが違っていたら」と考えていくと終わりがありません。

何年も単焦点レンズだけを使い続けてきた私でも SEL24105G ( FE 24-105mm F4 G OSS ) を購入したら、ほかのズームレンズも欲しくなりました(このレンズ、焦点距離、大きさ、重さ、AF速度、画質の全てが使いやすくて良いですよ)。


ソニー SONY ズームレンズ FE 24-105mm F4 G OSS Eマウント35mmフルサイズ対応 SEL24105G

当たり前のことかもしれませんが、良いズームレンズは描画性能もよく、画角を自由に替えられるだけに何でも自由に撮ることができます。

そうすると視界に入ったものは何でも写せて、良い画質で綺麗に残せることが当たり前になってしまいます。当たり前に撮れるからこそ、逆説的に撮れないところに意識が向きます。

その撮れないところを意識するきっかけは、もしかしたら室内の暗さかもしれませんし、撮影距離より遠くにいる珍しい野鳥かもしれませんし、オートフォーカスでは追いきれない幼児かもしれません。

その(日常ではあまり頻度の高くない)「あと少し」に手が届かなくて歯痒い思いをすることもあります。

そんな経験が積み重なると新しいレンズに興味が湧いてくるものです。新しいレンズはお手持ちのレンズとは違う性能を持っていますので、レンズが増えるほど表現できる世界も広がります。

選択肢が広がり、表現の幅が広がり、文字通りに世界が広がります。

「沼」とは言われども、金銭的に日常生活に支障が出ない限り、悪いことは特にありません。強いて挙げるとすると維持管理が大変なことでしょうか。

使いやすくて使いにくい単焦点レンズ

極論を述べるとズームレンズを探す旅には終わりがありません。比較してみていくと、万能で完璧な機材は存在しないということがよく分かります。

解像度では下手な単焦点では比較にならないフラッグシップの「通し」ズームレンズであったとしても、年輪玉ねぎボケや収差やT値などを気にしだすと本当に切りがありません。

そうしたズームレンズと比較して、特定の用途に最適化されている単焦点レンズは気にすべき点が少ないので、あまり選択に悩むことはありません。

マクロなどの特殊な機能や F 1.4 などの明るさを求めなければ、大抵のズームレンズよりも小型で軽量になりますし、画質も製造時点で実現できる最高性能に近いものが多いです。

最適化されているだけに特定の用途においては非常に使いやすいです。しかし、それ以外の用途には使いづらく、場合によっては全く使えないことさえあります。

たとえば 135mm ぐらいの明るいポートレートレンズは、屋外で人物を写すには最高ですけど、レストランで席に座って料理を写そうと思っても、そもそも焦点が合わないことが一般的です。

そのため、単焦点レンズだけ(とくに単焦点レンズ1本だけ)を使用することを「縛り」と呼ぶ人もいます。

何年も単焦点レンズだけを使用してきた私にとってはこれが普通で、ズームレンズは何でも撮れる(わりに暗かったり、重かったりする)ために却って難しいと感じます。

少なくとも単焦点レンズだけを使用していたときには、同じ用途のレンズを何本も購入するという発想には至りませんでした。

撮れないものは準備してこないと絶対に撮れない。その代わり、撮りたいものだけはしっかりと撮るという発想です。




レンズ沼の真の意味

手元にあるレンズに満足している場合には何の問題もありません。

しかし、ふとした瞬間にレンズ特有の収差やボケ味が目に付いてしまうと、そればかり気になるようになり、満足できるレンズに出会えるまで何度も入れ替えを経験するようになります。

入れ替えをしていくうちに手ブレ補正やオートフォーカス機能がなくなったり、アダプターを接続しないと使用できなくなったり、体積や質量が増えたりと、使いやすさの面では却って元の状態よりも不自由な方向に進んでいくことさえあります。

突飛な話をしているように思われるかもしれませんので、少し具体例を見てみましょう。

そこらにある看板で適当に試したものなので、被写体は気にしないで下さい。それよりも気になるのは歪曲です。まっすぐな直線であってほしいところが、ぐにゃっと歪んでいます。

これでは人の顔などを写すと形が崩れるのは無理もありません。本記事の冒頭の画像も私が個人的に歪みが凄く気になっているものです。

ほかにも人によってはボケ味が好みではなかったり、発色が好みでなかったり、偽色が許せなかったりと、レンズを使っていると気になる点はいろいろと出てくるものです。

気になる点を解消できるのは、意外にも便利なオートフォーカスレンズではなかったりするので、気が付くとマニュアルレンズを何本も持っていることもあります。

同じ焦点距離と明るさでも、レンズ構成やコーティングによって写りが変わります。光学の世界は本当に奥が深いです。

一つ一つのレンズのそれぞれに個性があり、得意不得意が全て違います。

完璧で完全なレンズはありませんので、求めるものによっては文字通りに全てのレンズを購入するしかありません。

沼と向き合う

より健康的にレンズと向き合うのであれば、妥協できる点とそうでない点を明確にして自分に合ったものを選ぶことを心がけることでしょうか。

私の場合を例にあげますと、ボケや明るさは全く気にならない反面、解像度が低いことと歪曲がでること(そして、使用感の点から述べれば重くて持ち運びに不自由すること)がどうにも許せないようです。

と言うことは、私にとっては F 1.2 や F 1.4 の大口径レンズや高倍率ズームレンズはおそらく必要ありません。もちろん、興味がないわけではないので作例を見たりはするのですけれども、購入してもすぐに使わなくなるのだろうなと考えて冷静になります。どれだけスペックが素晴らしくても、です。

その反対に F 2.0 あたりの単焦点レンズは、ぜんぶ購入して試してみたいほどに魅力的に感じられます。

ここで実際にぜんぶ購入して手元に残すか、メインで使用するものだけ購入するか、あるいは購入せずに必要な時だけレンタルするかの判断は、個々人の価値観やレンズの希少性によって異なります。

以前は買ってみて合わなかったら売ればいいぐらいに思っていましたけど、沼に浸かり続けているうちにチャートやグラフから気になるレンズとそうでないレンズを区別するようになりました。「手遅れ」という言葉が頭をよぎります。

そうは言っても、実際にある程度、使い続けてみないと相性は分かりませんし、必要なものは一人ひとり異なりますので、他人の意見はどこまで行っても参考にしかなりません。

単焦点しか使わない極端なやつの意見などに何の価値もないかもしれませんけど、焦点距離はご自身がよく使われているところさえ押さえておけば、意外と何とかなります。広角から望遠まで途切れなく持っている必要性は実はありません。被写体との距離を自由に替えられる場所なら、焦点距離が違っても多少は代用できますからね。

25mm と 35mm と 50mm または 85mm の3本ぐらいあれば、あとはお子さんの発表会に合わせて望遠ズームをレンタルしたり、海外旅行に合わせて超広角を一時的に購入して後から売却したり、いくらでもやりようはあります。

それよりも「よく使う焦点距離」なるものを知るためには、それこそ沼に浸かるぐらいレンズのことばかり考えないといけないのかもしれませんけど。


VoightLander MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical

2019年春 あらためて購入する α7

世界初、世界最小・最軽量のフルサイズ・レンズ交換式カメラとして話題になった SONY ミラーレス一眼 α7

私も専用レンズ Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA の発売を機に、カメラボディとレンズをセットで購入した記憶があります。

それから5年以上の歳月を経て、Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA は手元に残っている最も古いレンズになってしまいました。ボディの方はと言えば、後継機への乗り換えの際に売却されて購入資金へと変わりました。

このときに手放した5年以上も古いカメラを 2019 年の今になって新品で再購入というわけです。




カメラとの2つの付き合い方

この2代目の α7 は私にとっては全く新しいカメラです。

今までの私は (a) 最新機種を購入して、しばらく遊ばせてもらった後で価値が下がる前に売却する、もしくは (b) 価値の下がりきったカメラを中古で購入し、安い単焦点レンズを装着して壊れるまで使う (高温多湿な熱帯雨林や海岸や高山といったカメラにとって過酷な環境において) という使い方しかしたことがないからです。

こうした使用方法なので、過去に保証は一度も利用したことがありません。ところが今回、α7 を選択したのはメーカー保証がとても魅力的だったためです。

ソニーストアで購入した製品には、通常のメーカー保証に加えて破損、水ぬれ、火災、水害、落雷といった不慮の事態に対応した5年間の保証をオプションで追加できます。

火災はともかく、停電や水害の珍しくない東南アジアに頻繁に出張する私にとっては、それだけでも SONY 製品は魅力的です。

長期保証 | ソニーストアについて | ソニー
https://www.sony.jp/store/benefit/warranty/index.html#METHOD04

さらには破損や水濡れにも対応しているとなると、安心して登山や自転車旅にも持っていくことができます。このような充実した保証が付属していることが1点目の購入動機です。

α7 の良さ

購入動機の2点目は、5年も経って未だに色褪せない α7 の基本性能の高さです。後継機の α7II との違いは連写性能や手ブレ補正の有無、グリップの形状など、画質の面では大きな違いはありません。

α7 III になりますと、センサーもメニュー画面も大きく変わって、AF のスピードも格段に速くなります。しかし、マニュアルフォーカスの広角レンズと一緒に使用するのであれば、ここも気になりません(常時パンフォーカス状態の景色撮影などであれば AF は有っても無くても同じです)。

それよりも後継機と比較した際の本体の小型軽量性とバッテリーの持続時間の長さが、思いがけない良い点でした。過去に 3 年近く使用して、理解しているつもりになっていましたが、改めて使い込んでみると意外な発見があります。

α7 III / α7 R III は大型カメラの風格があります。それに対して、小型化を追求したような初代の α7 の形状は気負わずに持ち出すのに良いです。

評判が悪かったシャッターボタンの位置は、コンデジと同じ感覚で気楽に使えるので、これはこれで良いと私は思います。ただし、シャッター音は確かに大きいですし、後継機ほど良くはないですね。

α7 を使った後に α7 R III をつかうとメニュー画面やファインダーより先に、まずシャッター音が気になります。昔はこれでも気にせずに使っていたはずなんですけどね。

もちろん、5 年以上も昔の機種そのままということはありません。

過去に私が購入した個体とは異なり、バッテリーが地味に新モデルにアップデートされていますし、内部のソフトウェアも 2016 年にファームアップデートされています。

付属品やソフトウェアだけを見ると、まるで α7 II みたいです。

最後にして3点目の購入動機は、いま購入しておかないと新品で入手できなくなってしまいそうだと思えたからです。

α7 と同時に発売された姉妹機 α7R (高画素モデル)の方は、2019 年 3 月 1 日現在、ソニーストアでの販売を終了しています。

α7 もソニーストアの販売価格は 10 万円を切るほどに下落しており、いつまで販売が継続されるのかは分かりません。

そして、私自身が今回日本にいられる時間が 2 週間しかないので、買えるときに買っておかないと二度と購入できなくなってしまう可能性も少なくはないのです。

そのときは α7 II を検討することになるでしょうけど、個人的に欲しいのは α7 の方です。これらの両機種とも過去に使用していたので違いはわかります。

α7 にはカメラ本体内の手ブレ補正機能が付いていないので機械としてシンプルであり、より小型軽量で、さらに私の使用環境では α7 II よりもバッテリーの持続時間が長い傾向にありました。

シャッターボタンの位置が気にならない私にとっては α7 の方が使いやすかったと記憶しています。

そうして思い切って購入した α7 に専用の液晶保護フィルムを貼り着けます。

現行モデルについては分かりませんけれども、2013年前後の SONY の NEX はどれも液晶コーティングが剥がれやすかった記憶があります。

中古カメラを4台も潰してさすがに気がついたので、今回は最初から保護フィルムを貼って大事に使います。このアクセサリも残りの在庫が少なくなっていて、少しばかり寂しい気持ちになります。

5年以上も前の「誰も作らなかったカメラ」は、他に代替できないカメラとして、目立たなくても今でも十分に魅力的です。

センサー固定式で、これだけ小型軽量で、ZEISS を含めた魅力的なレンズ群を機能を一切損なうことなく使用できるフルサイズのカメラは、現状、後継機を含めて他に一つもありません。

無事に入手できてよかったと心から思います。

自転車で一周する伊豆大島

自転車趣味を始めて以来、毎年3月は『しまなみ海道』を走る時期と決めて、尾道、三原、竹原、今治、西条と瀬戸内海を堪能してきました。

しかし、最近は日本国内に留まっていられる時間が限られており、東京から 500km 以上も離れた湊町を気の向くままに散策なんて贅沢な時間の使い方はできそうもありません。

せめて気楽に島旅気分でも味わえる場所でもないかと思っていたところ、ふと相模灘沖に点在する島々を思い出しました。

飛行機で羽田空港へと向かう際、上空で旋回しているときに見下ろす大島、利島、新島と言った東京都の島嶼部です。

島嶼と一纏めにしていますが、小笠原諸島は沖縄と緯度が変わらないほど南に位置しており、訪れるのは九州や北海道よりも大変です。

その一方で伊豆諸島の北部は東京から 120km から 180km ほど南にあるだけなので、思いのほか気軽に出かけることが可能です。

とりわけ北端の伊豆大島は緯度的に大阪市とほぼ同じ、東海道新幹線の熱海からジェット船で約1時間ほどと、離島としては格段に身近です。

同じ伊豆諸島に属する八丈島は、高知県の室戸岬や和歌山県の潮岬(本州最南端)よりも南にあるので、大島の感覚的な近さがお分かり頂けると思います。




火山島

鎌倉の由比ヶ浜から目視で確認できるぐらい身近で、訪れやすい伊豆大島ですが、いざ自転車で一周しようとするとこれがなかなか大変です。

サイクリングと言うよりもヒルクライムのカテゴリーに含めたくなるほど、本格的な山道が幾つもあります。とくに島東部の山岳地帯では、太平洋に浮かぶ島ではなく、霧ヶ峰や美ヶ原高原のような高山に来たのではないかと錯覚するような雰囲気の坂道が続きます。

遮るもののない大海原に位置するだけに、基本的に風が強いこともそう思わせる一因かもしれません。

よく考えてみると裾野が海中に没しているだけで、島そのものが巨大な火山みたいなものなので、頂上辺りの雰囲気が似ていると感じるのも不思議なことではありません。

地元住民の生活道路である大島一周道路でも斜度 8% 程度の登坂があります。ただし、そこから「あじさいレインボーライン」や「三原山登山道路」と言った登山道に入って山頂を目指しても、斜度は大きく変わりません。斜度が緩い分だけ登りの距離は長くなります( 8% の坂が 10km 近く続きます)けど、砂漠地帯や富士山がくっきりと見えて眺めが最高なので、余裕があったら挑戦してみるのもいいかもしれません。

激坂として例外なのは差木地から「月と砂漠ライン」の南側に抜ける無名の道路で、ここだけは斜度 12% 以上の坂がひたすら続きます。時計回りで一周する際には危険な下り坂になるので通らないほうが良いです。

反時計回りの場合では、波浮港にある信号を迂回できるので検討の余地があります。信号は迂回できても工事車両や教習車、裏砂漠に向かう車などが普通に走っているので、安全運転を心がける必要があるのは言うまでもありません。

前記事に書きましたとおり伊豆大島は車社会です。斜度 8% 以上の坂道が続くような地域の中では、信号も車の通行量も多いほうに含まれると思います。

交通量はそれなりに多いものの、路面の舗装状態が良いのでパンクの心配は少なく、どこに行っても絶景続きで景色に飽きることはないのでサイクリング目的にはとても良い場所です。

余りに景色が良い場所が多すぎて、最初に時計回りで周回した際には「裏砂漠の入り口」や「泉津の切り通し」といった有名所を見落としたぐらいです。

一周

伊豆大島を一周するだけでも距離 46km にして獲得標高 800m 超になります(経路によって 50m 程度変動します)。三原山登山道路の方は、距離 5.5km に対して獲得標高 500m ほどです。

夜行の大型船で早朝に上陸して、午後の船で日帰りする場合には滞在時間は約半日となります。

日頃からロードバイクで長距離を走り慣れた人であれば、大島一周道路を回ってから三原山のヒルクライムまで、この半日のうちに回りきれるかもしれません。

ミニベロなどの車種ではおそらく三原山ヒルクライムまでは難しいと思われますが、一周道路をゆっくりと見てまわりながら半日かけて島内を一周することは十分に可能です。

宿泊を検討されたほうが良いのは「月と砂漠ライン」に行かれる場合と大噴火口を見て回られる場合です。

前者はいろいろな意味で島内で最も酷い道でした。瞬間的に 15% の斜度が何度も出てきますし、途中からアスファルト舗装ではなくなりますし、すれ違いもできない狭い道に何台もの車が入ってきます。

個人的には二度と登らなくて良いやと思った大島の坂はここだけです。登りきっても駐車場しかありませんし、行ってみて分かりましたけど、砂漠には三原山の頂上から歩いてくれば、もっとシンプルに辿り着けます。

後者は自転車進入禁止区域にありますので、三原山ヒルクライムの後に徒歩で目的地を目指すことになります。

補給

サイクリングでは文字通り命取りとなる低血糖状態。コンビニが1件もなく、早朝や夜間に気軽におにぎりを購入できない伊豆大島では、特に低血糖状態に気をつける必要があります。

11時から14時までの昼食時を除いて飲食店は営業していないことが多く、島内に数あるスーパーマーケットや個人商店も24時間営業のものはありません。自販機や公衆トイレが多いのも、そのような事情があるのでしょうね。

したがって早朝にフェリーで上陸する場合には、あらかじめ低血糖を防ぐための補給食を携帯しておいた方が無難です。もし忘れていても船内の自販機で菓子類を購入できます。また開店時間中であればパン、羊羹、弁当などは問題なく現地で購入することができます。

夕食時には飲食店が営業していないことがありますので、宿泊施設に夕食や朝食が含まれていない場合には頼りになります。物価は本州とほぼ同じです。屋外の自販機は基本 500ml で 160 円ですが、スーパーマーケットで購入する場合は 125 円となっていました。

みずほ銀行の出張所があり、預金の引き出しも行えます。

持ち物

行き帰りの船に電源がないことが多いので、モバイルバッテリーを持っていると安心です。

先に述べたようにパンクの心配は少ないですが、予備のタイヤやディレイラーハンガー、ミッシングリンクなどを携帯しておくと、もしもの際に役に立ちます。

カメラなどを持ってくる人は予備のバッテリーや記録媒体を用意してくると良いかもしれません。

一応、島内でも電子機器を扱う店舗も見かけましたが、確認した限りではスーパーマーケットにも、空港の売店にも、フェリーターミナルの売店にも SD カードや USB ケーブルなどの電子機器類の取り扱いはありませんでした。

島内には6つの郵便局がありますので、荷物は多めに持ってきすぎても自宅まで郵送できます。

椿と明日葉と

ロングライドでカロリーを消費する目的で自転車に乗っている方にとって、訪れた先々で味わえる名物料理は楽しみの一つかと思われます。

三崎、小田原、木更津、清水といった良港に囲まれる立地の伊豆大島も美味しい海の幸に恵まれているはずです。きっと新鮮な魚介が味わえると思います。

とう言うのも、私は魚&蟹アレルギー持ちゆえに海鮮料理に対しては「口にしないように気をつけないといけない」以外のことは何も言えないです。

海鮮を除いた伊豆大島の名物と言えば、島中に生えている椿と明日葉(アシタバ)という野菜です。ここに来て初めて耳にしましたが、煎じて明日葉茶という飲料になるそうです。

本州や瀬戸内などにある他の離島とは異なり、伊豆大島には農地や河川や貯水池がほとんど見当たらないので、こうした野菜を育てているのは少しばかり驚きでした。

自転車で走ってみるとよく分かりますけど、ほかの土地では当たり前にある水田や畑がないので伊豆大島の景観は非常にユニークです。

よく見かけるのは自生しているオオシマザクラと椿ばかりで、火山地帯を除くと島中が木々の緑に覆われています。私の訪れた3月上旬ではちょうど椿が見頃で、今ぐらいではオオシマザクラが見頃になっていると思われます。

乗船

出発前に現地の天候と船の運行状況を確認し、電話でチケットを予約する際に自転車を持ち込みたい旨を海運会社に伝え、出発日に船に乗るだけです。東京港(竹芝)と熱海のほか、曜日によっては横浜、久里浜、館山などからも船が出ています。

フェリーではそれほど揺れないので、余程のことがない限り船酔いの心配は少ないと思われます。私が乗船したのは「春の嵐」と言った趣の風雨の夜でしたが、飛行機に比べれば何でもないぐらいの揺れしか感じませんでした。

青函フェリーや香港の新渡輪、あるいはシアトルの Water Taxi などをご存知でしたら、それらと比較すると船に乗っていることを忘れるぐらいの揺れだと思います。

荒天時に欠航してしまう可能性があることとジェット船以外では宿泊が前提となることから、最初は心理的な抵抗を感じるかもしれません。

そこで難しく考えずに、天気と風向きを見ながら搭乗日さえ決めてしまえば、おそらく想像されているよりも簡単に新しい世界が広がります。伊豆大島に始まり、八丈島、苫小牧、徳島、志布志と目的地を増やしていくのも楽しいです。