夏の北海道 – 自転車旅行を考える

唐突ですが、私は首都移転に賛成です。そして移転先は現実的に考えて、北海道をおいて他にないと考えています。

アジアと北アメリカを結ぶ航空と海上交通の要衝に位置しており、空港や港湾の立地として最適なこと。

東京、名古屋、大阪の3都市から十分に距離が離れていて同時に被災しないこと。

都市を新設するために必要な平地と水があり、地権者もすくないこと。

ついでに道東であれば降雪量も少なく、大陸からも離れていること。

と、勝手に思っているのですけれども、じつは北海道にまともに行ったことがありません。一応、札幌というか、北海道大学というか、その中の工学部だけは数年前に会議で行ったことがあります。

会議内容を除いては「積雪量が凄すぎる」「市内は良く除雪されているのに構内は危ない」「新千歳空港は SUICA は使えるのに ICOCA は使えない」「新千歳から札幌に行くのは関空から京都駅に行くのと同じぐらい大変」といった程度の感想しか抱かない旅行でした。

つまり、あんまりよく知らないわけです。

ただ毎夏、北海道を自転車で横断したり、縦断したりしている人たちの話を聞いていると、本州では得難い体験ができる魅力的な土地のようです。

「積丹ブルー」という言葉で有名な神威岬、ウィンタースポーツで名高いニセコ連峰と羊蹄山、国内有数のヒルクライムスポット十勝岳、最北端の宗谷岬といった具合に、一度は訪れてみたい名所が数え切れないほどあります。

問題はそのどれもがアクセスが大変で、辿り着くまでに必要とされる移動時間が異様に長いことです。

そして 小樽 から 新千歳・苫小牧 に至る札幌都市圏の大動脈、旭川 – 札幌 間の特急列車を除くと、あまり公共交通機関を当てにできません。

道内での移動を前提に考えるよりも、羽田空港(東京)から飛行機で移動したほうが早いのではないかと思える場所も少なからず存在します。

以下は羽田空港から直行便が出ている道内の空港です。

とくに道東や道北の場合、移動時間的にも、飛行機の発着数的にも道内よりも東京のほうが「近い」場合があることを考慮に入れて、移動経路と帰りの交通手段を考えなければなりません。

そうは言っても、飛行機輪行を頻繁に行いすぎて最近では飽きてきたので、今回は「もっと簡単で一般的な方法」を考えます。




つまり、フェリーと新幹線です。

これらの交通手段の長所は、特別な準備が不要であることです。

短所は飛行機に比べて移動時間が長くなること、ならびに行き先が限定されることです。

2019年現在、フェリーでは小樽か苫小牧のどちらか、新幹線なら現状では新函館までしか行けません。

飛行機とは異なり、道東や道北には直接アクセスできません。

もし北海道新幹線が倶知安まで開業していれば、北陸新幹線の長野駅に並ぶ最強の輪行駅になるのですが、現状では 東北の延長 北海道の入り口までしか行けませんので使いどころが難しいです。

それでも飛行機よりも予定変更に対する柔軟性が有り、定時性が保証されていて、毎時1本は東京まで行きますので、覚えておくと頼りになります。盛岡行きであれば終電が20時以降というのも心強いです。

もちろん出発地点も限定されており、関東から新函館なら東京駅(大宮駅)、苫小牧なら大洗港、小樽なら新潟港が出発地点になります。

東京や大洗はともかく「新潟?」と思われるかもしれませんが、新潟と小樽を結ぶ新日本海フェリーは船としては高速であり、到着時刻も早朝 4:30 と使いやすいため、目的地次第では現実的な選択肢です。

東京駅から新潟までの新幹線とフェリー運賃の合計金額も、新函館駅まで新幹線で直行する場合と大きく変わりません。

新幹線で当日の午前中に函館に到着したとしても、新函館駅から洞爺湖まで約 140km、倶知安まで約 165km、余市まで約 200km ほど離れていますので、目的地が道央であれば到着時刻はフェリーと大差無いかもしれません。

行き先 出発時刻 到着時刻 運賃※
北海道新幹線 東京 -> 新函館 6:32 (始発) 10:53 22,690円
商船三井フェリー 大洗 -> 苫小牧 19:45 翌日 13:30 10,200円
上越新幹線 東京 -> 新潟 6:08 (始発) 8:13 10,570円
新日本海フェリー 新潟 -> 小樽 12:00 翌日 4:30 7,300円
新日本海フェリー 舞鶴 -> 小樽 23:50 翌日 20:45 11,200円
行き先 出発時刻 到着時刻
北海道新幹線 新函館 -> 東京 18:40 (最終) 23:04
商船三井フェリー 苫小牧 -> 大洗 18:45 翌日 14:00
新日本海フェリー 小樽 -> 新潟 17:00 翌日 9:15
新日本海フェリー 小樽 -> 舞鶴 23:30 翌日 21:15

※新幹線の運賃は普通車指定席の通常価格です。

フェリーの運賃は時期と船室によって変動します(掲載しているのは夏季の最安値です)。ほかに自転車の運賃が必要となる場合があります。

また時期によって運行時刻の変動があります。





行き先と移動手段が定まったところで、今度は持ち物を考える必要が有ります。まず何はなくとも気象データをご覧ください。

札幌や旭川には用事はありませんので、自転車で出かけて楽しそうなところばかりを選んでみました。


日最高気温(℃) 日最低気温(℃) 月間降水量(mm)
稚内 7月 19.7 14.5 90.6
上富良野 7月 25.6 15.3 101.5
中標津 7月 20.6 12.1 136.5
釧路 7月 18.6 12.8 127.7
襟裳岬 7月 16.9 12.8 130.8
倶知安 7月 23.9 15.6 96
神恵内 7月 23.1 16.6 111.5
東京 7月 29.2 21.8 153.5
日最高気温(℃) 日最低気温(℃) 月間降水量(mm)
稚内 8月 22.3 17.3 116
上富良野 8月 26.4 16.2 148.5
中標津 8月 23.0 14.5 147.8
釧路 8月 21.2 15.5 130.8
襟裳岬 8月 19.8 15.6 125
倶知安 8月 25.4 16.8 141.6
神恵内 8月 25.4 18.5 121.1
東京 8月 30.8 23.0 168.2

参照:気象庁


稚内はご存知のとおり宗谷岬があるところです。上富良野は十勝岳、中標津は知床の羅臼岳にそれぞれ近く、神恵内は積丹半島にあります。

ここで注目すべきは釧路や襟裳あたりの最高気温です。誤植ではないかと疑われるような数字が並んでいることがお分かりになると思われます。

以前、私が住んでいた中央ヨーロッパよりも、よっぽど寒いですし、しっかりと雨も降ることがデータから読み取れます。

北海道の広大さを考えると、滞在期間は最短でも3泊4日ぐらいは欲しいところですし、そうなると着替えの服も1着は欲しくなります。

防寒対策に、雨天対策に、着替えの服 (予備のサイクリングジャージ) とビンディングシューズ以外の靴、行き先によってはキャンプ道具と考えていくと、通常の自転車旅よりも必要な荷物が増えていきます。

道中で必要なくなった荷物を積極的に郵送して軽量化を行うなどの工夫が必要になるかもしれません。

とくに移動時間の長さを考えると、往路は飛行機で目的地の近くまで移動して、復路は特急列車とフェリーと新幹線を利用 (飛行機輪行用のハードケースは現地から郵送) といった変則的な輪行も検討の余地があります。

最後に補給地点ですが、これは計画当初に考えていたよりも、ずっと良さそうです。

道東の知床半島の斜里町と羅臼町や標津町の間でも 30km から 50km ほど走行すれば、地図上では次のコンビニが見えてくるので、閉店の有無と営業時間さえ事前に調べておけば大きく問題になることはないはずです。

東京都の奥多摩でも 50km ぐらい走らないと最寄りのコンビニに辿り着けないことはありますし、離島ではコンビニすら存在しない場合もあることを考えると、来訪者に優しくて助かります。それだけ、冬季の生活環境が過酷ということなのでしょうけれども。

場所が場所だけに、牧場もあちらこちらにあります。

補給の不安はなくなっても、移動距離と寒冷な気候から依然として普通の自転車旅よりも難易度が高いのですが、だからこそ、北海道には特別感があっておもしろいものなのかもしれません。


以下は新幹線の部分先行開業を主張する北海道商工会議所連合会の関連サイトです。ガイドブックが凄く良くできていて一見の価値があります。

サイクル・ツーリズム北海道推進連絡会
https://www.hokkaido.cci.or.jp/cycletourism-hokkaido/

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *