ロードバイク 2023 モデルとリムブレーキ / ディスクブレーキ

2022年のトレンド

2020 年から 2021 年にかけてのロードバイク業界を象徴するできごとが世界的な自転車需要の激増と納期遅れであるとしたら、2022年のそれは急激な販売価格の高騰です。

かつて販売価格に上限を設けずに最高の軽量バイクを目指すというコンセプトの Ultimate CF Evo 10.0 LTD (2020) というモデルがありました。

防衛省の許可を得て輸出された日本製の先端素材などを用いて、ディスクブレーキ完成車で 5.99kg という重量を実現している挑戦的なバイクだったのですが、2022年の現在にあらためて見返して驚くのはその価格です。

2020 モデルは 12 速 SRAM RED eTap AXS 搭載モデルで 89.9万円。フレームセットに関してはリムブレーキ用で 36.9万円。ディスクブレーキ用は44.9万円です。

これって、今だと普及価格帯、SHIMANO で言えば 105 や ULTEGRA 、 SRAM で言えば RIVAL や FORCE コンポーネントが搭載されているミッドグレードもしくはエントリーレベルのディスクブレーキ搭載車の値段です。

いわゆる決戦用と位置づけられるハイエンドモデルは 150 万円を超えていることが一般的です。

こうした新モデルは、ほぼ全てがディスクブレーキ搭載車であり、2021年までは併売されていた既存のリムブレーキ・ロードバイクは徐々に市場から姿を消しつつあります。

いま、新規にロードバイクを求められている方には、とても選択が難しい時代です。

新型のディスクブレーキモデルは価格が高騰していて、割安だったリムブレーキモデルは保守用部品の供給がいつまで続くのか分からない状態にあります。

リムブレーキ車とディスクブレーキ車は別の乗り物

そもそも同じロードバイクのカテゴリでも、リムブレーキ搭載モデルとディスクブレーキ搭載モデルは全くの別物です。

リムブレーキ車は剛性向上と軽量化を突き詰めるかたちで進化してきたので、市販のホイールではスポークの本数がフロント 16H リア 20H ぐらいになっています。

これがディスクブレーキ車になるとホイールのスポーク本数もフロント 24H リア 28H 程度に増え、新たにブレーキディスクローターやリザーバータンクが加わり、タイヤ幅も太くなります。

軽量化の面ではメリットがないので進化の方向は空力の改善や転がり抵抗の低減に向かうようになりました。

当然ながら、両者の乗り心地は全くの別物です。

リムブレーキ車は踏み込めば加速する軽量で反応性の良いバイクである一方、ディスクブレーキ車のほうは剛性や安定感があってダウンヒルやコーナリングのストレスが圧倒的に少ないです。

私の場合はリムブレーキの CANYON AEROAD CF SLX (2017) とディスクブレーキの ULTIMATE CF SL (2022) を1日置きに乗り換えて、ほぼ毎日乗り続けています。

前者に乗っているときは後者は重くて乗り心地がしなやかなだけのバイクに感じます。一方で後者に乗っているときは前者は軽くて速いだけのバイクに感じます。

もっとも SRAM RIVAL クランクの剛性がやや低く感じるのとホイールが間に合わせのものなので、部品を交換すればディスクブレーキの ULTIMATE CF SL の走行感ももう少し改善されるかもしれません。

それでも、根本的な構造が異なる以上、ディスクブレーキ車がリムブレーキ車のように軽快になることは難しいと思われます。

リザーバータンクが入る分、シフトブレーキレバーが大きくて重たいので、人によってはブラケットポジションを続けていると手が痛くなるかもしれません。

その反対にディスクブレーキ車に慣れている人が、はじめてリムブレーキ車に乗ったら軽量さに驚くと同時に制動力やコーナリングに不安を覚えるかもしれません。

使用用途と好みに応じて、どちらかを選択できれば良いのでしょうが、メーカー主導の潮流はそれを許しません。

現在、新規にロードバイクを購入されるのであれば、間違いない選択は 12S 電動変速のディスクブレーキ車です。必要な予算は 50 万円以上となりますが。

11S の機械式変速という選択もありますが、こちらは保守用部品の供給がいつまで続くか不明な点が気がかりです。

さきに述べたシフトブレーキレバーの大型化の影響で、ディスクブレーキ車では機械式変速はあまり好まれません。

メーカーも積極的には売りたくないのか、最新の 2×12 速に機械式グループセットを対応させていません。

電動12速の DURA-ACE R9200 や ULTEGRA R8100 Di2 にリムブレーキ仕様が市販されているなかでも、機械式変速は用意されていないことを鑑みるに機械式 11S のコンポーネントを気兼ねなく使える時間はいつまで残されているか不透明です。

一方で高性能なリムブレーキ車が欲しい人には、この 1-2 年ぐらいがおそらく新品を購入できる最後の機会になると思われます。

Pinarello DOGMA や GIANT TCR ADVANCED などの一部のモデルを残して、リムブレーキモデルは次々と廃番になっているので、将来的にはエントリーグレードのアルミニウムフレームしかリムブレーキ車は選べなくなるかもしれません。

かつて 23mm がデファクトスタンダードであったタイヤ幅が、現在 700c x 28mm が一般的になっているのを見てリムブレーキ時代の終焉を実感しました。

リムブレーキ車の走行感が好み、あるいはロードバイクの価格高騰に付き合いきれないという人は、今のうちに保守用部品や予備のフレームを買い揃えておくのが正解なのかもしれません。

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