サイクリング・ツールボトル ケースの寿命

スポーツ自転車の必需品と言えば、空気入れや前照灯のほかにパンク修理キットなどがあげられます。

1回あたりの走行距離が長く、一般的なシティサイクルとは部品を共有できないスポーツ車には、専用の補修部品や工具の携行が欠かせません。

具体的には予備のチューブやタイヤブート、インフレータ、切れたチェーンをつなぐミッシングリンク、そして、サドル高の調整やバイクの解体に必要なアレンレンチなどが該当します。

こうした補修部品の携行にはサドルバッグを利用されている方が大勢います。


TOPEAK(トピーク) エアロ ウェッジ パック(ストラップ マウント) M

サドルバッグを利用すると携行できる荷物の量を増やせるので便利ですね。

一方で私はツールケースを愛用しています。

こちらはボトルケージを利用して、補修部品や工具を運搬できます。

サドルバッグよりも全体の荷物量を減らすことができ、複数の異なる自転車に容易に移し替えることができることが利点です。

私のようにドリンクボトルは、1本でも飲みきれないという人には積極的に利用を検討される価値があります。

もっとも、最近では飲み物も現地調達することが多いので、ボトルすら持ち歩かないことが一般的になっていますけれども。


Vittoria(ビットリア) ツールボトル プレミアムジップツールケース [premium zip tool case] イタリアンフラッグ 1L1.6BX.01.00.111BK

この便利なツールケースを約4年間ほど愛用しています。

ところが最近、気になってきたことが4点ほどあります。




まず1つめはケース外観の変形が甚だしく、ボトルケージに差し込んでも落としそうになることです。

山越えしたあとの長い、長い下り坂のカーブでケースが飛んでいくことが生じて困ります。

2つめは落下や紫外線などの影響で外装が破れたり、劣化してきていること。

3つめは外装の変形や劣化によって、ファスナーの開閉が難しくなっていること。

そして、4つめは致命的なことにファスナーそのものも錆びて、定期的に動かさないと固着してしまうことです。

ほかの3点はともかくとしても、錆びているのは私の使い方のせいなので、そこは仕方がないですけど。

雨に、雪に、泥に、汗に、潮風に、さらには火山性の硫化水素に晒されて、ツールケースの内容物まで腐食されているのですから、錆がでるのも当然というわけです。

ツールケースは必需品であって、無くなると困るとは言え、さすがにこの状態では使い続けられませんので、この機に新調し直すことに決めました。

ツールケースが1つあれば 200km から 400km ぐらいの自転車旅に出れます。

しかし、ツールケースがなくなると 30km のトレーニングですら不安になります。

なぜか以前から使っていた Vittoria は店頭には置いていなかったので、在庫品で間に合わせた結果、少し容量が増えました。

Vittoria ツールケースでは、チューブ2本、タイヤレバー3本、折りたたみ工具、ミッシングリンク、緊急用のルブを入れると隙間が無くなっていたので、容量が少し増えるとインフレータ用の CO2 ボンベも収納できて便利です。

4年間もお世話になった Vittoria ツールケースは、いつファスナーが開閉できなくなるか分からないので、このあたりで引退させます。

複数の自転車で使いまわして、雨の日も雪の日も持ち出していたことを考えると、ビンディングシューズやアイウェアと同じぐらい使用頻度も高かったはずです。

ここまで本当によく持ってくれたと思います。

同時にファスナーさえ無事なら、まだまだ使えないこともないような気もします。

ツールケースの寿命をきめるのは、きっと外装の傷み方と開閉部の機能なのだろうなと思います。

鳴滝・団子石・道祖神峠 – 石岡ヒルクライム周回

茨城と言えば関東平野の中心であり、遮るもののない広大な平地がどこまでも広がっていることで有名です。

都道府県面積では大分や島根、宮城よりも小さいのに、可住地面積では兵庫や静岡、岩手すらをも上回る国内第4位という具合です。

本当に笑えるほど平野ばかりです。

その茨城の中央にありながら、まったく茨城らしくない不思議な土地が石岡です。周辺の三方向を山に囲まれて、ここだけ、まるで高原地帯のような光景が拝めます。

調べてみると、石岡市は日本百名山の一つ筑波山、国内第二の湖である霞ケ浦、5つしか現存しない古代の風土記の舞台を市内に有し、関東でもっとも歴史のある土地の一つでもあるという立派な肩書を持っています。

そのはずなのですが・・・

県庁所在地でもなく、文化史跡では鹿島神宮の方が有名で、市内にあるはずの不動峠や風返し峠は筑波のイメージが強すぎ、茨城県という範囲の中でさえ存在感が希薄な印象を受けます。

当地を最初に訪れた時には「ネタみたいな激坂が密集してる農村」ぐらいの印象しか持ちませんでした。

しかし、同時に自転車で散歩して回ると楽しいとも感じました。

いまや関東でもっともサイクリストに優しい街になりつつある土浦、人も車も多い筑波に比べると、観光地化されていない分だけ交通量も少ないので、雰囲気の良い緑地、丘陵地帯、田園地帯を独り占めできます。

そして辺縁部に行くと飽きるほど激坂も存在します。

具体的には筑波山、加波山、難台山、愛宕山といった西部の山々です。この辺りの山地は標高は控えめながら、どれも勾配が急であり、登り始めから峠までの平均斜度は 7% を越えていることが一般的です。

もっとも緩いと思われる上曽峠や湯袋峠においても平均斜度 6.8% (最大 10% 超) という強烈な数字が出ます。片側1車線の普通の道路でも、登り始めると斜度 9% ぐらいは当たり前のようにでてきますし、最大斜度は 14% 以上に達することも珍しくありません。

加えて、勾配がきつい区間と平坦な区間が明確に分かれていて、見かけ上の平均斜度が下がる傾向にあります。

主要な山間道路と平野部はきれいに整備されていて路面状況も良好ですが、人が少ない峠道は苔に覆われていて、その上に泥や落葉の層ができていることが良くあります。そして、たまに路上に倒木が放置されています。




本日、訪れたのは道祖神峠と団子石峠という北部の峠道です。経路沿いの滝を含めながら、この山塊の周囲をめぐると一周 50km 近くの調度いい距離になります。

道祖神峠
道祖神峠(どうろくしんとうげ)は石岡市と笠間市の市境にあります。石岡の峠道の中では、路面状況はもっとも良いです。

全体を通して片側1車線の舗装の綺麗な道が続きます。

この峠の笠間市側はヒルクライム入門者にとても良さそうな道なのですが、石岡市側はとんでもない激坂です。

その長さといい、斜度といい八王子の和田峠にそっくり、最大瞬間斜度は和田峠のそれを上回っているのではないかと思えるほどです。

ただし途中に平坦区間を含みますので、最初から最後まで登り続ける和田峠と比較すると平均斜度は控えめな数値が出ます。

距離 平均斜度
和田峠 (八王子側) 3.5km 10.3%
道祖神峠 (石岡側) 3.2km 7.8%

また和田峠は車1台がギリギリ通れるぐらいの細い道路であるのに対して、こちらは(台数自体はあまり多くはありませんが)車も普通に通行する道路です。

路肩が広いのはいいですが、左端の白線沿いを常時走行することになりますので、ワインディングが本当に辛いです。

登りきっても林道の入り口があるだけで展望は開けません。

団子石峠
団子石峠(だんごいしとうげ)は道祖神峠の手前にある峠です。こちらも石岡市と笠間市の市境になっていますが、峠を抜けた先の方角が違います。

道祖神峠は JR 水戸線の笠間駅の方につながっています。一方で団子石峠の方は JR 常磐線の岩間駅前に至ります。

道祖神峠と比較すると斜度は大したことはありませんが、樹木に覆われて薄暗く、湧水が豊富で路面が湿って苔むしているので注意が必要です。

ダンシングで登ると、苔のせいでトラクションが掛からずに後輪が空転したり、道路上の泥ごと前輪がスリップしてハンドルを持っていかれることがあります。


路面状況は良好とは言い難いですが、後述する滝路と比べるとまだマシな部類です。

石岡の坂らしく、ここも勾配がきつくなったり、ゆるくなったりを繰り返します。ほかの峠道よりも特徴的なのはグレーチングが多くて滑りやすいことです。

数多くのグレーチングがあるものの、石岡市側はわりと平穏に峠まで辿り着けます。ところが笠間市(岩間駅)側に入ると表情が一変し、瞬間最高斜度 15% の危険な坂に変貌します。

何が危険かと言うと、路面が泥や苔に覆われていて、ブレーキを掛けるとスリップするんですよ。かと言って急勾配の下り坂なので、ブレーキを掛けないとガードレールを乗り越えて滑落する危険性が高いです。

できることなら、団子石峠の笠間市側はあまり通りたくないですね。

なお、道祖神峠の石岡市側から登り始めて、帰りに団子石峠の笠間市側から戻ってくると行きも帰りも斜度 14% 超の激坂ヒルクライム周回を実現できます。

団子石峠の方は路面があまり良くないので、通られる予定がある方はオフロードタイヤ仕様の MTB またはシクロクロスで来られた方が無難かもしれません。

鳴滝
鳴滝は峠道ではなく、滝の入り口へと至る登山道に近いです。

しっかりとアスファルト舗装されていて、車や二輪車も通ります。

自転車で登られる人も先述の団子石峠よりもよっぽど多いらしく、セグメントも置かれています。

距離は 1.2km ほどと短く、通り抜けもできませんが、緑が濃くて雰囲気が良いのと勾配がきつくて登り甲斐がある点が楽しいです。


斜度は高めで、油断していると前輪が浮くようなところもあります。

また路面状況はあまり芳しくなく、全体的に滑りやすい点に注意が必要です。落葉や泥、苔に覆われていて路面が見えないところもあります。

しかし、アスファルトが陥没していたり、落石でサイドカットする危険性は低いです。

登りきると見事な滝がありますので、時間があるようでしたら立ち寄ってみられると良いかもしれません。

馬滝
団子石峠や鳴滝は、まだ「ヒルクライム」が可能な山道でした。

馬滝は完全なネタ坂です。ファンシーな看板に導かれて立ち寄ってみると、とんでもない場所に連れて行かれます。

まず、舗装がアスファルトではありません。

激坂で有名な十三塚峠も途中からアスファルトではなくなりますけれども、馬滝は最初の入り口から最後までアスファルト舗装がありません。

そんな坂道なので、当然ながら道幅は狭いですし、勾配も急です。

ここは公道ではなくて林道なのではないかとも思いましたが、市の観光協会にも取り上げられていますし、駐車場もありましたので、車両で通行しても一応は大丈夫なようです。

法令的には通行しても大丈夫なようですが、物理的にはあまり大丈夫ではありません。少なくともスリックタイヤでは、まともに走行できません。

滝の近くだけあって常に路面が濡れているほか、落葉、落枝、泥などの割合が高く、急勾配とも相まって非常にスリップしやすいです。

おそらく最大斜度は 13% ぐらいはありそうです。

今までも登りきれなかった坂というのは、あまり無いのですけれども、ここだけはまともに走行できずに登坂を断念しました。

自転車を降りて押し歩きしながら滝の方に向かうと、巨大なオオムラサキが視界を横切っていきました。

実際には、石岡の坂の中でも市街地に近い場所にあるのですが、遭難しそうなほどの山奥に来た雰囲気があります。

いろいろ寄り道しながら遊んでいると、走行距離 50km 程度で獲得標高 700m ぐらい登れます。

走り続けて血糖値が下がってきたら、経路上にいくつも存在するセイコーマートで美味しい北海道アイスをいつでも頂けます。

これがあるから石岡の山巡りは辞められません。


上空から見下ろすような見事な展望もなければ、話題になるような絶景もありません。

ただ普通に散歩していることが楽しくて、ときどきネタみたいな激坂に遭遇する。石岡というのはそういうところです。

梅雨を避けて – 会津・桧原湖・磐梯高原

早くも 2019 年の半分が終わり、暦の上では夏が始まろうとしている7月の初頭。

東京では連日の雨が続き、最後に青空を眺めたのは何日前なのか全く思い出せないほどです。

1日に数時間の雨なら良いにしても、早朝から深夜まで断続的に延々と雨が振り続けていて、ここ数週間は気分もずっと灰色です。

嘆いていたところで、時間が待ってくれるわけでもなく、天気が好転するわけでもありません。何とかできるのは自分自身のことだけです。

そこで雨の東京を脱するべく、大人の力でマイカーにエトセトラカードを突っ込んで、紫色のゲートをくぐることに決めました。

目指すのは奥羽山脈と越後山脈に囲まれた「日本で最も美しい村」会津の磐梯高原です。

会津地方は日本海と奥羽山脈の間に位置しており、前述の通り、越後山脈と奥羽山脈に囲まれているため、そのどちらとも気候が若干異なります。

吾妻山の東側(浄土平)が雨雲に包まれているときでさえも、会津は乾燥していて過ごしやすいこともあります。

もとより緯度と標高の高さから避暑地として賑わっているため、夏でも冷涼で湿度が低い土地です。

夏でも気温 20℃ 前後で過ごしやすく、ロードバイクには理想的です。

そして周囲にスキーリゾートが密集していることから分かるように山間部の豪雪地帯でもあります。

雪国のほうが除雪のために路肩が広く、冬季のスリップ防止の目的もあってか、山道でも線形が良いところが多い傾向にあるので、狙っていくとハズレがありません。

その分、路面が荒れていたり、融雪剤 (塩化カルシウム) が撒かれていて車体に悪影響を与えるところもあるのですが、福島県に関して言えば整備が行き届いていて道路環境は良好です。

しかも、山脈と盆地が入り組んだ地形のお陰で見渡す限り絶景ばかり。

にもかかわらず、辺りは静寂に包まれており、自転車のチェーンの音が聞こえるほどです。

関東や東北の太平洋側は雨が降り続いていることもあってか、気候も、景色も、道路環境も最高なのに、裏磐梯まで来ると交通量はまったくと言い切っていいほどありません。

これだけ静かな環境は、懐かしく感じるほど久しぶりです。




雨雲と関東平野を抜けて、磐越道から猪苗代盆地に入り、そこから自転車に乗り換えて桧原湖まで走っていると、いつの間にか薄雲が途切れて、ところどころに青空が見え始めました。

同時刻の東京はおろか、福島の中通りが雨であっても、会津は晴れることがあるのを実感した瞬間です。

猪苗代から磐梯山を越え、桧原湖をほぼ一周すると約 35km 。

この間に見かけた車は 15 台未満。信号は僅か 3 つ。コンビニは 1 つ。自動販売機は 1 台もありませんでした。

もちろん、気分は最高です。

補給はやや厳しいですが、五色沼あたりに複数件のレストラン、早稲沢あたりに山塩ラーメン店、桧原ビューラインの入り口に道の駅とアイス工房がありますので、しばらく走り続けていると次の補給地点が見えてきます。

山塩ラーメンと言うのは、聞いたところによると、磐梯高原に湧出する温泉水から得た塩をつかった名物料理のようです。

そして、もう1つの名物がこちらです。

なんと新潟駅や越後湯沢などで入手できる笹団子です。

この辺りまで来ると、約 150km (宇都宮と同じぐらい遠く) 離れた同じ東北の仙台よりも新潟市の方が交流も多く、文化も近いのかもしれません。

新潟の笹団子とは米粉に違いがあるそうですが、会津製もしっかりと笹団子の味と風味がしました。

これ、すごく美味しいんですよ。たまに新宿の小田急百貨店などに期間限定出店されていて、運良く購入できることもあります。

山塩ラーメンにも興味がないわけではありませんでしたが、せっかく会津まで来たからには、一度は本場の喜多方ラーメンを味わってみようということで、山道を下って昼食は喜多方までやってきました。

それから、磐梯山を登り返して猪苗代へと戻ります。

磐梯山は桧原湖のある裏磐梯 (磐梯高原) が注目されますが、広大な猪苗代湖と奥羽山脈を見下ろす表磐梯のダウンヒル (県道64号) も、会津盆地を一望できる桧原ビューラインの喜多方側 (国道459号) も絶景ばかりで感心します。

注意しないといけないのは、展望がよい県道64号 (磐梯山ゴールドライン) も国道459号の喜多方側 (桧原ビューライン) も瞬間斜度 10% 超の急斜面が続くキツい坂道なので、自転車に乗り慣れていない人には厳しい道路であることです。

県道2号線と国道459号の五色沼側 (猪苗代と五色沼の間) は斜度 2-6% 程度の緩やかな上り坂がつづきますので、ヒルクライムが苦手な方はこちらのほうが安心して走行できると思われます。

桧原湖の周囲は、白布峠の方に行かない限りは傾斜は緩やかで走りやすいです。ただし補給場所は少なく、おそらく4月末ぐらいまでは雪崩に注意が必要です。

さらに天気が良い日には、安達太良山から浄土平に抜けてもいいですし、白布峠を越えれば米沢と蔵王山が見えてきます。

温泉地だけに走り終えたあとは日帰り温泉に立ち寄って、露天風呂で青空を眺めながら、好きなだけ汗を流すことも可能です。

景色もよく、食べ物もよく、環境も道路もよく、さらに途中からは天候までもが良くなって、本当に会津に来てよかったと感じられる一日になりました。

次回はさらに浄土平にも足を伸ばすか、あるいは南会津から日光や魚沼の方を開拓するか、楽しみが広がります。