ツーリング用モバイル PC の最適解か – 約 500g の 7インチ ノート PC

日常的に出張を繰り返す私にとって、モバイルPCは無くてはならない存在です。

今までにも Chromebook を Linux マシンとして利用したときの使用感や、仮想環境上にて実行できる高性能なラップトップ PC の購入について述べてきました。

通常の出張においてであれば、こうした既存の PC を持ち運ぶことに何ら不満はないのですけれども、「自転車旅でも PC を持ち運びたい」と考えたとき、さらに小型で軽量な PC への欲求が湧いてきます。

Tabキーで入力補完のできるキーボードが付属していて、ローカルで Shell scripts と Python さえ動く端末があれば、移動中の時間も無駄にすることなくデータの処理が行なえますし、VPN と SSH と Git まで用意できれば、それこそサーバ経由であらゆることが実行できます。

自転車で遠くまで遊びに行ったときの隙間時間(フェリーや飛行機で移動する場合では数時間から数日間)を活用することで、もっと自由に遊べる時間を増やせるわけです。

そんな都合が良いものが無いかと年単位で探し続けていたら、先日、ついに見つけてしまいました。


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キーボードと一体型の筐体に、振動で故障しにくい SSD ストレージ、本体質量 515g の重さに 6,500mAh のバッテリー容量という素晴らしいスペックながら、182 x 110 x 17 mm という手のひらサイズの体積の「ノートパソコン」です。

この大きさでタブレット端末ではなくて PC というのが最高に素晴らしいです。

軽量なタブレット端末に Bluetooth キーボードを接続する方法も、もちろん試したことはあるのですが、ファイルアクセスが面倒であったり、レスポンスが悪かったりと、ストレス無くスクリプトを書いて走らせることは困難です。




そうは言っても、普通のノート PC は薄型であっても自転車で持ち運ぶには大き過ぎますし、専用の充電器も荷物になります。また軽量モデルほど高価になる傾向がありますので、廉価モデルには持ち運びに適したものが少ないです。

Chromebook は USB 充電できることと低価格が魅力ですが、本体はあまり小型ではありません。作業用マシンとしての使い勝手もそれなりです。

タブレットは使えなくはありませんけれども、ローカルで実行できることが限定されますので、長時間の作業を続ける環境としては、いろいろと辛いと思います。

作業性 USB充電 質量 価格
ノートPC 700g – 9万円 –
Chromebook 900g – 2.5万円 –
タブレット 230g – 2万円 –
7インチPC 500g – 6万円 –

ところが、7インチPCは携帯性と作業性を兼ね備えていて、PCとしてのスペック的にも全く妥協していません。

その分、本体価格も高価なので、ツーリングに向いていない点があるとしたら(雨に濡らしたり、道路に落下させたりする可能性が高い場面で用いるPCとしては)価格が高過ぎることでしょうか。

ストレージ容量を考えるとパーティションを分割して、デュアルブートにしても良さそうだなと考えると、ますます欲しくなってきます。

仮想マシンを動かすには RAM が心許ないですが、256GB のストレージ容量は2分割しても数年前のノート PC よりも余裕がありますので、確認作業やファイル閲覧用に Windows を残しておけるのも理想的です。

購入すべきかどうかを迷っているのは、ただ一点、遊びに出かけていないときにどれだけ使用機会があるかどうかということに尽きます。

小型化のためにポインティング・スティックと特殊なキーボード配列を搭載した筐体は、通常の用途では使いにくいかもしれません。

キーボードしか使わない私のような原理主義者は OS ごと Debian で上書きすれば良いと考え始めるので、あまり問題にならないと思われるのですが、トラックパッドの方が何かと使いやすいのも違いありません。

現状ではおよそ 1kg の旧いノートパソコンに SD カードから Linux をブートして使用しています。

旧いノートパソコンとは言え、数年前のフラッグシップモデルだった PC だけに、キーボードも使いやすく、スクリーンも広くて、動作速度も快適です。

SSDストレージ容量は時代なりですし、メーカーの補修部品の在庫もそろそろ怪しいところですが、単体での作業性で見たらこちらの方が使いやすいことは明白です(ストレージ容量と稼働時間は、さすがに厳しいですけど)。

使わなくなった時点で郵送してしまえば、携帯性は考えなくても良いですし、ある意味では既に役目を終えた PC の再利用なので、事故による故障や紛失も大きな問題にはなりません。

遊びに出かけている間に使用することはないので、長い移動時間の最中にだけ手元にあれば良いことを考えると、これでも良いかなという気になってきます。

郵送が頼りにできないような場面が出てきたら、その時こそ小型モバイルPCの買い時なのかも知れません。

何れにせよ、このスペックと携行性があれば利用用途はいくらでもありますし、モニターとキーボードを外付けすれば操作性も格段に向上しますので、メイン機として考えても良いななどと思っていると夢が無限に膨らみます。

朝霧を抜けて天龍を登れ

天竜は浜松市の中心部から、およそ 20km から 60km ほど北方にある山間地です。

愛知県の北設楽郡、長野県の下伊那郡に近接しており、絶景に魅せられて奥地まで進んでいくと、自然と県境を越えていることも珍しくはありません。

その静謐な雰囲気といい、奥行きを感じさせる圧倒的なスケール感といい、湧水量の豊富さといい、天竜の山道は省道臺八線こと中部橫貫公路によく似ています。

浜松名物の餃子が台湾滞在中の日々を思い出させることも相まって、気分は完全に台湾自転車旅行です。

そんな天竜川渓谷が最高の表情を見せるのは、何を差し置いても晴天時の早朝です。




水量豊富な天竜川の蒸気霧が窪地を覆い、月にでも行けてしまえそうなほど神秘的な光景を目にすることができます。

やがて夜が明けて、太陽が昇ると濃霧は雲海となって、地表を覆い隠しながら青と白と緑のコントラストを作り上げます。

視界がぼやけて何もかもが曖昧だった早朝から、雲海の朝を経て、陽の光によって全てが明瞭になっていく過程はあまりに鮮烈で、たった一度の訪問で天竜の虜になってしまいました。

これだからロードバイクは辞められません。

そして、この天竜渓谷の中央に控える秋葉山こそ『遠州一の激坂』と名高いヒルクライムスポットであり、南アルプス・赤石山脈の南端です。

全長 50km 超のスーパー林道天竜線もここにあります。

決して全容を知れない奥深さ、天候や時間帯によって刻々と移り変わる表情、険しい山道に美しい渓谷と、何度くりかえし訪れても感動します。

本気で浜松に移住しようかなと思えるぐらいには楽しめるので、機会がありましたら晴天時の早朝未明を選んで訪れてみてください。

続き 「遠州一の激坂」秋葉山を登る

終業後はロードバイクで浜名湖 – 浜松 移住体験

東海道新幹線に乗っていると、多島海のすぐ隣を通り抜け、南国風の樹木が並ぶ、開放的な景観が目に飛び込んでくる場所があります。

両側に水面が広がっていて、まるで水の上を走っているような気分になります。

東京行きの列車では、ここを過ぎるとトンネルが連続する区間が始まり、新大阪行きの列車では直後に名古屋に到着するアナウンスが入ります。

そのあたりが三信遠と呼ばれる地域で、三河湾があって、浜名湖があって、南アルプスこと赤石山脈の入り口があります。

私も博士課程の学生の頃は、なぜか毎週、新幹線に乗って京都から東京に通う生活を送っていたので、訪れたこともないのに既視感と親近感があります。

そんなところに仕事で「来ていただけませんか?」と誘われれば、よろこんで行ってしまいます。こっそりと自転車も携帯しながら。




趣味のものまで持っていくと、さすがに荷物が増えすぎて持ちきれませんので、ビンディングシューズやヘルメット、着替えの服や予備の靴やカメラなどは事前にホテルに郵送しました。

あとは待ち合わせ場所をホテルのエントランスに指定して、待合せ時刻よりも早めに到着して、自転車もフロントに預けてしまえば完璧です。

スーツケースを持ち歩く、いつもの出張よりも簡単な気がします。

手荷物に余裕がありましたので「ロード乗りなら一度は食べておけ」と言われる『牛肉どまん中』弁当も、この機会に試食してみました。

偉い人の好物らしく、たしかに冷めていても美味しいです。強いクセも、臭いもなく、万人向けの味で、非常に質と完成度が高いと感じました。

でも、この値段なら、私なら「レストランに行ってしまうかな」とも思います。

浜松にはうなぎと餃子の他にも、げんこつハンバーグの『さわやか』、ラーメン、遠州焼き、三ケ日みかんと名物も豊富にあって目移りするほどです。

私はアレルギーで海産物を口にできないので、うなぎは撮影するだけですけれども、食べ物が美味しいというのは良いですね。

たくさん食べたら、たくさん走ることが幸せを感じる秘訣です。

浜松は遠州地方の中心に位置しており、東を向けば牧ノ原台地と御前崎、西を向けば浜名湖と三河湾、北側には三方原と秋葉山が聳えているという立地なので、走る場所には事欠かないだろうと思っていました。

実際に来てみますと、思いのほかに浜名湖が至近距離にあり、文字通りに毎日の終業後に通えることが分かりました。

17時に業務を終えても、このあたりは東京よりも日照も日没も遅いので、夏場は19時ぐらいまで明るいです。

浜名湖の入り口にある舞阪まで、元城町からでも 12km およそ 30分ぐらいで到着しますので、湖西や舘山寺ぐらいまでであれば無理なく通えます。

ただし一つだけ注意点がありまして、人口や都市規模を考えると異様に車が多く、どこまで行っても市街地が途切れませんし、車の量も減りません。

サイクリングスポットとして注目を集めている場所の中で、ここまで交通量が多いところは他に見たことがありません。それどころか、全国の政令市の中でも有数の車社会なのではないかと思えるほどです。

いちおう札幌、仙台、新潟、岡山、広島、北九州には行ったことがありまして、京都や福岡には住んでいたこともあるのですが、浜松の道路や市街地はそれらの何れとも違います。

浜松の場合は駅前や中心市街地と郊外との区別が曖昧で、どちらも同じぐらい多くの交通量があります。

平野が広いためなのか、市街地そのものの面積も大きく、ようやく市街地を脱したと思いきや、その直後に愛知や静岡の隣町の市街地に繋がります。

東海道沿いの主要都市はどこもそうなのかもしれませんが、必ずしも都市の中心部に向かう車ばかりではなく、中心部から辺縁部に向かう車も決して少なくはなく、双方向に大きな流動があるので、より広範囲での交流があることを実感させます。

冬季の積雪も考えなくていいですし、生活環境も東京よりも遥かに良好、食べ物も美味しく、産業の一大集積地だけに仕事にも不自由せず、政令市ならではの利便性も兼ね備えていて、移住先としては理想的な候補の一つであることに変わりはありませんが、住んでみないと分からないこともあるのだと痛感しました。

住んでみないと分からないと言えば、早朝に天竜川を遡っていくと凄い景色をご覧になれます。有名なのは浜名湖ですが、これも実際に来て、走った人にしか分からない贅沢です。

その話はまた次回にでも