Batis 40mm F2 CF と SEL35F28Z と SEL55F18Z

ありがたいことに昨年末に発売されたばかりの ZEISS Batis 40 mm F2 CF を触れる機会を得られました。

実物を手にとって見ると意外と大きくて存在感があることに気がつきます。

ちょうど焦点距離 (レンズが写すことのできる範囲) の近い2本の SONY 純正のレンズを持っていますけど、その2本とも取り回しや設計思想が異なるのかなと感じました。

そのうちの1つは焦点距離がやや短い (写せる範囲が少し広い) SEL35F28Z です。フルサイズのミラーレスカメラに合わせて発売された最初のレンズであり、とにかく小型で軽量なことが特徴です。


ソニー SONY 単焦点レンズ Sonnar T* FE 35mm F2.8 ZA Eマウント35mmフルサイズ対応 SEL35F28Z

もう1つは焦点距離がやや長い (写せる範囲が少し狭く、対象が大きくなる) SEL55F18Z です。焦点距離は長めになるものの、Batis 40mm F2 CF と比較するとこちらも小型です。

SEL35F28Z に続いて2番めに発売されたレンズでして、当時の SONY が設計した中で最も画質重視と推量できるレンズです。フルサイズ・ミラーレスカメラを発売した当初の SONY は光学性能よりも小型化を追求していたようで、1年以上もの間、フルサイズEマウントにおいて最も明るいレンズであり続けたと記憶しています。


ソニー Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA※Eマウント用レンズ(フルサイズ対応) SEL55F18Z

ボケ味なり、四隅や周辺の解像度なりを気にされない方にとってはどうでも良いのですが、この2つのレンズに Sonnar 銘が付いているのは象徴的です。Sonnar は Tessar の発展系として開発された明るくて高コントラストなレンズだったのですが、一眼レフカメラのミラーに物理的に干渉する構造ゆえに長らく不遇でした。




偉い人によると、Nikon Ai AF Nikkor 50mm F1.8D のような一眼レフの主力レンズも Tessar 型に分類されるらしいので、新しいカメラの最初のレンズに Sonnar の名前を冠してきた SONY の意気込みが何となく想像できますね。

数年の時間をおいて、後ほど SONY 自身が Planar T* FE 50mm F1.4 ZADistagon T* FE 35mm F1.4 ZA という焦点距離的に競合するレンズを発表していますから、どれだけ Sonnar レンズを作りたかったのかを推し量れるようです。

それよりも5年も後になって、Eマウントレンズも充実している現在に新たに ZEISS 本家から発売されたのが Batis 40mm F2 CF です。焦点距離 (画角) は近いですけど、Sonnar ではなく Distagon 銘です。

もともと広角 (周りを広く写せる) レンズ用に設計された Distagon 構成の名前を付けられているだけあって、やや大きくて重いです。そして、前述の 2本の SONY レンズと比較すると撮影距離が短くて被写体に寄れます。


ILCE-7RM3 ZEISS Batis 2/40 CF ƒ/6.3 40.0 mm 1/40

撮影距離が短いと屋内で使いやすいので、とても便利です。だいたい距離30cm以下であれば、レストランでも無理なく使えます。

撮影距離 35cm の SEL35F28Z でも料理は無理なく撮れます。テーブルの反対側に座った人物を写すのは、場所によってはギリギリ可能です。その点、Batis 40mm F2 CF なら調度いい感じにテーブルと人物を写せるのが良いですね。

焦点距離 カタログ質量 撮影距離 発売日
SEL35F28Z 35 mm 120 g 35cm 2013年11月
Batis 40mm F2 CF 40 mm 361 g 24 cm 2018年11月
SEL55F18Z 55 mm 281 g 50 cm 2013年12月

Distagon 構成にありがちな歪みもほぼ無く、オートフォーカスも速くて、解像度も程よく高いので、日常の人物撮影に最高な気がします。

ただ、単焦点の標準レンズ (焦点距離が 50mm 前後のレンズ) にしては少し大きいです。その割にあまり明るくもありません (ズームレンズと比較すると圧倒的に明るいですけど)。

その辺りを重視する人を除くと、思い出を綺麗に残せる良いレンズとして、誰にでもおすすめできると思いました。

SEL35F28Z と SEL55F18Z を両方とも持っていなければ、私も即決で購入していたはずです。

でも、2本とも売却して Batis 40mm F2 CF を購入するかと言えば、ZEISS Batis 2.8/135MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical の方が欲しいです。

そちらは、そのうち時間を見つけて買います。


カールツァイス ZEISS Batis 2.8/135 E-mount

SEL35F28Z は十分に小型で軽量なので、ロードバイクで遊びに出かけたり、自転車で数日間の旅に出かけるときに1本だけ持っていくレンズとして使用頻度が高いのです。

これを Batis 40mm F2 CF に置き換えると発色が良い点は気に入るでしょうけど、まず間違いなくレンズ本体とフードの体積が気になるはずです。

SEL55F18Z は普段の出番は少ないものの、軽量性重視の私のレンズラインナップの中では、フルサイズで使える一番明るいレンズ (の1つ) なので、標準で使える明るいレンズとして残しておいたほうが良いと経験が告げます。解像度も高いですし。

出番が少ないのは、撮影距離が長くて使える場面が限られるからなので、Batis 40mm F2 CF を入手することがあれば、そちらばかりを使うようになるかもしれませんけど。

それにしても、必要なのは APS-C 用の軽いズームレンズなのに、興味が湧くのはフルサイズの単焦点レンズばかりです。

退屈な日常から抜け出せなかったアクションカムの行方

アクションカムの定義を調べると、小さくて、丈夫で、防水性をもち、アウトドアスポーツで使われ、しばしばヘルメットやサーフボードに取り付けられるといった説明が続きます。

いわば、エクストリームスポーツの興奮と感動を映像に閉じ込めて、共有するためのツールなのかもしれません。

珊瑚礁の青い海、白銀の雪山、地表から 3,000m上昇した雲の上など、アクションカムが活躍する場面はまさに非日常の世界です。

それでは日常においては全く出番がないかと言えば、そのようなことはなく、耐衝撃性や防滴性能を活かしてロードバイク用のドライブレコーダーの役割を果たしたり、携帯性の良さを活かして発表の練習に用いたり、安価な定点観測カメラとして利用できたりと日々の記録に使用する目的に対しては最適です。




ヘルメットに付けておいても邪魔にならないほどの軽さと小ささ、スキーやトレイルランニングにも使える衝撃耐性から、ポケットに入れて運搬できるという取り回しの良さが最大の利点になっています。

しかし、それでも思うところは有ります。スマートフォンではいけないのかと。

同じように持ち歩いているだけあって、最新のスマートフォンは携帯性も防水性も備えています。機種を選べば広角レンズも使えますし、USB 充電で撮影時間も稼げるので、アクションカムでしか撮れない映像というのは限られます。

手動で詳細な設定を行うスチルカメラであればともかく、スイッチを押したまま、触れることもないアクションカムとスマートフォン内蔵カメラに違いと言えるほどの違いはあるのかと。

一つ挙げるとしたら、手ブレ補正機能に有為な差があるかもしれません。

最近のアクションカムは強力な補正機能を有しており、出力される映像も安定しています。とくに最新の機種は順当に改良されていて、良いものに仕上がっています。

しかし、私の持っている SONY HDR-AS200V(現在は生産中止)のような古い機種や話題の中華アクションカムでは、手ブレ補正もあまり期待できません。

アクションカムの電子式手ブレ補正がどのようなものなのかは、実際に見ていただいた方が速いので、興味をお持ちの方は以下の動画をどうぞ。

これを書きたいがために、わざわざ大嶼山まで試験撮影に行ってきましたよ。何をやっているのだろうなと自分でも思いましたけどね。

もう一つは手ブレや振動に加えて GPS 信号を見失ったり、途中で録画が途切れたりする「アクションカムあるある」動画です。こちらも興味をお持ちの方だけどうぞ。

このようにアクションカムを用いると、悪くないと言えば悪くない、振動が気になると言えば気になる映像を手軽に撮影することが可能です。

ここから手ブレや振動や傾きなどを無くそうと思えば、動かさないように三脚に固定してしまうか (私が記録用に使っているときは主にこうしてます) ギンバルのようなスタビライザーを使用するしかありません。

もしくは電池が持続する限り、映像を取り続けて「使える」部分を切り取って編集することになります。

アクションカムの連続撮影を行う場合、最長で 2 時間程度の長さの映像を撮れます。出力ファイルの大きさは 3GB から 5GB 程度になります。この編集だけでも大変です。

結果的に撮ることが目的となって、撮った映像を見返すことには重点をおかない運用をするようになってしまいました。

ただ、私の場合は1年間に最低 5,000km は自転車に乗っているので、事故や保険対策のために映像を撮ること自体が重要です。その使命を果たしつつ、日々の映像記録にも使える HDR-AS200V には実は満足しています。

記録を残すことが目的なら、古い機種でも、中華アクションカムでも十分です。

体験や感動を誰かと共有するのであれば、スマートフォンとの差別化の意味でも、強力な手ブレ補正を備えた最新の機種の方がよい映像を残せます。

そういう意味ではアクションカムをアクションカムとして使用するのであれば、その時点でもっとも性能の良いフラッグシップモデルこそがお薦めです。

ダイビングに持ち出して海に沈めたり、ロープスライドに括り付けて峡谷を越えたり、体に取り付けて旅の記録を撮ったり、フラッグシップモデルは持っているだけで、いくらでも夢が広がります。

もちろん、それ以外のモデルもアクションカムとして非日常の場面に持ち出すことはできますが、機能がやや制限される分だけ、良い映像を共有するための難易度は少しばかり高くなります。

そうしたアウトドアやスポーツから離れて、ポケットに入れて持ち歩けるビデオカメラとして捉えてみると、アクションカムはとても便利です。

運動時に身につけていても邪魔にならないほど小型ですし、防滴性能もあるので普通のビデオカメラと違って、運搬や取り扱いに気を遣うことはまずありません。

三脚に固定して生き物の観察に使ったり、砂浜のような普通のカメラを使いたくない場所に設置して時間の経過を撮影したり、あるいは敢えて小学生ぐらいの子どもに貸し出して好きに使わせてみたりと、考えてみればいくらでも使いみちはあります。

強力な手ブレ補正や防水性能を備えた最新のフラッグシップモデル以外は、そういった日常の一場面を切り取る道具としての使用のほうが、本来の性能を発揮できるというのは言いすぎでしょうか。

映像の質を追求すれば、センサーサイズの大きなミラーレスカメラとの競合になり、携帯性を追求すればスマートフォンとの競合になる難しいところで、なんとか生き残ってくれないかと強く願います。

SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G の実写と使用感

レビューと言うほど大したものではありませんが、しばらく使用していて気が付いたことをいくつか備忘録的にメモしていこうと思います。


ソニー SONY ズームレンズ FE 24-105mm F4 G OSS Eマウント35mmフルサイズ対応 SEL24105G

このところ、そんな記事ばかりですが、健康に悪影響がありそうなほどに空気が悪いのでランニングに行くこともできず、自宅のデスクトップPCにアクセスできないので LibreCAD にも触れず、そもそも東京のほうの家には久しく帰っていないので自転車にも乗れずという具合に、撮影ぐらいしか楽しみがないのですよ。

そのうえ景気が冷え込んで生産活動は落ち込んでいるはずなのに、昨冬に比べて今季は霞んでいて視界が悪い日が多いです。必然的に写真映えもしなくなってしまいますが仕方ないですね。

そんな憂鬱な環境で何となく使っていた SONY ズームレンズ FE 24-105mm F4 G OSS ですけど、使い込んでいくほどにその性能の高さに驚かされています。




第一印象では、どんな場面でも使える便利なレンズだと思っていました。広角側は 24㎜ から望遠側は 105㎜ までの広い範囲に対応しており、オートフォーカスも速いです。

15mm や 18mm のような超広角と比較してしまうと派手さには欠けるものの、風景にも十分に使えますし、被写体に寄れて綺麗にボケるので、室内でモノやヒトを写すには最高です。

単焦点レンズに足りない画角を補う目的で使うつもりでいましたが、これ一本だけでも満足できる場面は多々あります。

私の場合、第一印象から大きく認識が変わっていくことはあまりないので、こんなに良い方に認識が変わったレンズというのは珍しいです。

ILCE-7RM3 SEL24105G f/6.3 1/250 sec. 24.0 mm

ILCE-7RM3 SEL24105G f/9.0 1/6 sec. 54.0 mm

ILCE-7RM3 SEL24105G f/6.3 1/13 sec. 82.0 mm

ただし、購入時から述べていたとおり、何時間も持って歩く場合は大きさと重さはこの辺りが限界ですね。鞄の3分の2ぐらいを占拠してしまいますので、単焦点レンズを追加する余裕もありません。

これに携帯電話を3つ (会社支給品・香港SIM・日本の電話回線維持) 持っているだけで重くて仕方がありません。

知人の FE 24-70mm F2.8 GM を眺めていると、その出力の立体感に驚かされこそはすれ、私には使いこなせないなと思ってしまいます。

SEL24105G も凄く良いです。でも良く見ると SEL2470GM は (少しだけ) さらに良くて、G-Master だけで運用していくのも有りだなと思わせるものがあります。

どちらも大きくて重いので、単焦点レンズをいくつも併せ持つことに不適な点は同じですし。

ILCE-7RM3 SEL24105G f/6.3 1/15 sec. 24.0 mm

ILCE-7M2 ZEISS Batis 2.8/18 f/2.8 1/25 sec. 18.0 mm

参考に掲載しているのは全て JPEG 撮って出しの無加工画像です。

私は明るく加工するのが好きなので、いつもの掲載画像と比較すると暗いものが多いかもしれません。

ImageMagick で縮小だけしています。ImageMagick は複数の画像をまとめてサイズ変更するのに便利です※。

 
$ mogrify -resize 1200x800 *.jpg

それから、いつもは ExifTool で習慣的にメタデータを削除してしまうのですが、今回は敢えて情報を消さずに残しておきます。

複数の画像の拡大や縮小と違って、こちらはブログに写真を掲載したり、画像認識用のデータを配布したりするとき以外には出番はないかもしれませんが、使えるものは便利に使いましょう。

これも1行で Exif ファイルを全て消去できますが、普通のディレクトリで実行すると大事なデータまで破壊しかねないので、テンポラリ・ディレクトリに画像を複製してから実行してください。

$ exiftool -exif:all= -overwrite_original *.jpg

※ ImageMagick の mogrify や convert などの処理中に convert-im6.q16: cache resources exhausted といったエラーメッセージが表示される場合には、資源不足によりプロセスが途中で失敗しています。

具体的には Disk 容量が足りていません。

 
$ convert -list resource
Resource limits:
  Width: 16KP
  Height: 16KP
  Area: 128MP
  Memory: 256MiB
  Map: 512MiB
  Disk: 10GiB
  File: 768
  Thread: 16
  Throttle: 0
  Time: unlimited

初期設定では <policy domain=”resource” name=”disk” value=”1GiB”/> になっているので、多くの人が引っ掛かるのはこれです。

解決するには /etc/ImageMagick-6/policy.xml にある設定ファイルを書き換える必要があります。環境に応じて書き換えてください。

 
$ sudo vim /etc/ImageMagick-6/policy.xml

DSC03952
ILCE-7RM3 FE 24-105mm F4 G OSS ƒ/5.6 36.0 mm 1/1250

DSC04815
ILCE-7RM3 FE 24-105mm F4 G OSS ƒ/4.0 65.0 mm 1/60 ƒ/8.0 64.0 mm 1/80

DSC04036
ILCE-7RM3 FE 24-105mm F4 G OSS ƒ/8.0 26.0 mm 1/30