ロードバイクを買えない時代

2020年初から既に一部では見られていたスポーツ自転車の在庫不足、納期遅延、長期欠品。

2020年東京オリンピックの開催に合わせて発売されることが期待されていた新商品の流通によって、こうした在庫問題は徐々に解消し、同時に新しい規格の普及も進むと思われていたところに不測の事態が生じます。

WHO が引き起こしたパンデミックによる自転車の供給低下と世界的な需要増です。納期遅延は数ヶ月から一年超にも及び、消耗品の欠品まで報告されるようになりました。

私も一年以上もディスクブレーキを備えたロードバイクを買うと言い続けていますが、一年経っても在庫不足で新車を購入できないままとは考えもしませんでした。

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ロードバイクを荷物として送る

東海道新幹線において縦・横・高さ3辺の合計が 160cm を超える、いわゆる特大荷物を車内へ持ち込む場合に事前予約が必要とされるようになった昨今、ロードバイクやミニベロなどの自転車を新幹線に持ち込んで遠出することも気軽にできなくなりました。

かと言って飛行機を利用するにも、専用の輪行箱の用意が必要となったり、持ち込む荷物に気をつけないといけなかったりと注意点が無数にあります。

輸送事故によるフレームの破損や廃車などの報告には事欠かないため、どんなに慎重に梱包を行ったとしても最悪の場合に対する覚悟だけは常に必要とされます。

とくにレースで用いられるようなハイエンドの軽量カーボンフレームやホイールの場合、落車程度の衝撃でも割れてしまうことがありますので、飛行機での輪行は廃車の危険と隣り合わせと言っても過言ではありません。

そんなカーボンバイクでも専用の輸送サービスを利用すれば、安全に遠方まで届けることが可能です。発送元の住所を自宅、宛先を滞在先のホテルにしておけば、行き帰りの新幹線や飛行機では手ぶらで移動できますし、到着先で輪行箱や輪行袋の扱いに苦労することもありません。

私は過去に何度も自転車運送サービスを利用したことがありますが、これまでに運送中に機材が破損したことは一度もありません。したがって保険も一度も利用したことがありません。

そう、運送サービスを利用した場合、輪行にはない貨物賠償責任保険を利用することもできるのです。




しかし、自転車のように大きな荷物を送るとなると、送料が気になるところだと思われます。座席予約時に荷物スペースさえ確保してしまえば、無料で運送できるところが輪行のメリットですが、運送サービス利用でも東京から九州まででも片道わずか 6,000 円程度から自転車を輸送することが可能です。

参考価格
ヤマト便 CX 西濃
東京-旭川 6,909 6,000 9,890
東京-尾道 5,292 5,800 8,940
東京-熊本 6,502 6,300 11,170
東京-沖縄 12,812 11,000 13,110
大阪-旭川 8,339 6,600 11,080
大阪-青森 6,502 6,000 9,170
大阪-長野 3,972 5,500 5,960
大阪-沖縄 11,371 10,700 11,790

上の表は 2020 年 8 月時点における、自転車を容積換算重量で 100kg とした場合のヤマト運輸(ヤマト便)の利用料金、シクロエクスプレス (CX) の片道基本料金、西濃運輸 (カンガルー自転車便) の自転車配送料をそれぞれ転載したものです(※正確な利用規約や料金は各社の利用案内をご参照ください)。

このうちシクロエクスプレスとカンガルー自転車便は自転車運送の専用サービスで、輪行箱をお持ちでない場合には梱包セットを購入することも可能です。

この梱包ケースですが、私が飛行機輪行に用いているような縦・横・高さの合計が 203cm の飛行機輪行の規約準拠のバイクポーターよりもさらに大型で、フレームとホイールが互いに干渉しないほどの隙間を持たせることが可能です。

フレームとディスクローターを接触させたくない場合でも、これだけスペースがあると両者を完全に分離して収納することが可能です。

梱包セットには図解つきの説明書が付属しますので、スポーツバイクの分解に慣れていない方でも安全に収納できるかと思われます。むしろ航空機の預け入れ手荷物の規約を優先し、収納スペースに一切の余裕がないバイクポーターよりも簡単に収納でき、緩衝材の量的にも安全性が高いと考えられます。

利用を申し込むと発送の前日に発送元の住所に梱包セットが届きますので、そのまま梱包して玄関前に置いておけば集荷に来てもらえます。

注意点としては配達日数や受取時間の指定ができないこと、それから海外には発送できないので使える場面が限られてしまうことです。ただし利用できる場面では積極的に利用するだけの価値があるサービスです。

なによりも機材破損の懸念は払拭されますし、大荷物を抱えて空港や駅まで考えなくても良くなります。自転車を運ばないのであれば、その分だけ着替えやノートパソコンなど、運べるものも増えますので出張などの短期滞在にも便利ですね。




じつは海外から日本にも SAL でロードバイクを送ったことがありますが、その話はいずれまた。

リムブレーキ用ロード・ホイールの将来を考える

ロードバイクにディスクブレーキが投入され、紆余曲折の末にようやくフロント12mm×100mm、リア12mm×142mmのスルーアクスルという統一規格が固まってきた2017年から2018年。

乗り心地や軽量性などの点においても従来のリムブレーキ車と遜色ない完成度のディスクブレーキ車が登場しだした2019年ときて、いよいよディスクブレーキモデルが主流になりつつある2020年現在、リムブレーキモデルの資産を大量に持つ既存のユーザは選択を迫られているように思われます。

現在の資産を使える限りはリムブレーキ車を使い続けるか、あるいはディスクブレーキ車と互換性のないパーツやアクセサリには見切りをつけて新車に乗り換えるか。

リムとディスクの両方に使えるサドルやクランクは良いとしても、高価で走行性能に直結し、もちろん流用もできないフレームやホイールの新規購入には、以前にも増して大きな決断が求められます。

既存の資産を活用してアップグレードを行うか、完全に新規格に切り替えてしまうのか。そのどちらが正しいのかは現時点では誰にも分かりません。

ただ、あとから振り返ったときに自分の判断が正解だったと思う人も、失敗だったと思う人もどちらも存在することだけは間違いありません。

リムブレーキ用のホイールについては、現在、早い者勝ちの売り切りセールが行われていますので、例えば以下のオンラインショップなどでは Campagnolo Eurus Mega G3 (ユーラス) を始めとする高性能ホイールが半額以下で購入できる可能性があります。

その反面、現行モデルの継続性が不透明なので、交換部品を入手できず、破損したら即廃棄せざるを得ない事態に陥ることも、この先、起こり得ないとは言い切れません。

一方でディスクブレーキ対応モデルについては最新技術を体感できる利点がありますが、こちらもまた(例えば13速化によるエンド幅の変更等により)いつでも現行モデルが陳腐化するリスクを抱えている点はリムブレーキモデルと同等です。

大枚をはたいて購入したロードバイクが数年で陳腐化しては堪ったものではないですが、リムからディスクへの移行期にはごくありふれた光景でした。

今ではほとんど見かけなくなったエンド幅 135mm のクイックレリーズ式ディスクブレーキ車などは、その最たるものです。

業界がディスクブレーキを推しているのでディスクブレーキの開発は続くでしょうが、いま市場にあるものを使い続けられるかどうかは誰にもわかりません(MICRO SPLINEがロードホイールハブにも導入されたら、いまの11速ホイールは…)。




この点、長い歴史を持つリムブレーキモデルは市場に出回っている数も多く、構造も単純で軽量という絶対的な利点もあるので消えることはないという意見もあります。

部分的には同意できるものの、私見を述べると今後もリムブレーキ車のほうが「軽量」であり続けられるかどうかは甚だ疑問だと私個人は思っています。

技術革新によるディスクブレーキモデルの軽量化うんぬんの話ではなく、単純にリムブレーキ用カーボンホイールに使用されるブレーキシューの製造がいつまで続くか不明だからです。

リムブレーキのカーボンホイールは、メーカー毎に異なるブレーキシューを使用します。ENVE なら ENVE Grey Pads、CORIMA なら CORIMA コルクパッド、REYNOLDS なら Cryo Blue といった具合に、それぞれのホイールにメーカー指定の固有ブレーキシューがあります。

指定品以外を使用した場合、保証を受けられなくなりますし、設計温度を越えるブレーキ熱を発して走行中にリムが破損することがあります。

ところがメーカー指定のブレーキシューは専用品なので価格も $50 ぐらいすることが普通ですし、取扱店舗も少ないので入手性も良くありません。

もとより高価であまり販売数が多いとは言えなかったカーボンホイールに、ディスクブレーキホイールという競合まで加わっては、いくら消耗品とは言え、メーカーもあまり専用品のブレーキシューを量産したいと考えるとは思えません。

そうなるとリムブレーキでカーボンホイールを使い続けるためには、例えば SwissStop に対応したカーボンリムに一本化してメーカー全社が共通で生き残りを模索するしかありません。


SWISS STOP FLASH PRO BLACK PRINCE カーボンリム用 ブレーキシュー

しかし、ホイールの買い替えを促したいメーカー側にはそれをする動機がありません。

結果としてリムブレーキでは、カーボンやプラズマ電解酸化処理などの特殊なブレーキシューを必要とするホイールは廃れて、リムブレーキ車は一般的なアルミホイール専用車になるのではないかと私は考えています。

こうした伝統的なアルミホイールは SHIMANO や Campagnolo がリムブレーキ用グループセットの製造を続ける限りは安泰でしょう。

私個人は3年前から「リムブレーキ車はこれで最後になる」と考え、ディスクモデルもある中で敢えてリムブレーキモデルを選び、悔いが残らないようにリムブレーキ車で 5万 km 以上も走ったので、もうディスクブレーキに移行しても良いかなと考えています。

それでも、あくまでもリムブレーキモデルが好きという人には難しいところですね。

結論を述べると、構造の単純さと価格競争力からエントリーモデルを中心としたリムブレーキ車は生き残るとは思われますが、カーボンホイールのような特殊な専用部品を必要とするアップグレードの選択肢の幅は狭まると思われます。

そのため、リムブレーキ車は将来的にはミドルグレードのアルミホイールを専用とする「そこそこ軽くて安い」ロードバイクという評価に落ち着くのではないか、と私個人は考えています。

つまりセールで投げ売りされているレーシングゼロやシャマルウルトラなら購入して練習用に使い続けるのは大いにありではないかと