ロードバイク 新モデルがアツい 2020

この時期、例年通りであれば年に一度の晴れ舞台であり、新商品のお披露目の場でもあるツール・ド・フランスが終了し、サマーセール(サマーエンドセール)が始まってスポーツバイクの市場は大いに活気づきます。

ところが今年に限ってはツールもオリンピックも延期、アマチュアレースやブルベ等のイベントも中止が続き、流通も市場も混乱が続いたままです。

私と似たような業種の方はご存知でしょうが、航空便が減少しているせいで米国へのEMSの取扱も停止されており、到着までに3ヶ月も掛かる船便を使用せざるを得ない状況です。

そのためなのか、スポーツバイク業界でも店頭在庫が安定せず、取り寄せ注文を行っても入荷時期がまったく読めない部品や車体などが散見されます。

こんな状況下において新商品の発表機会を伺っていたかのように見える製造業界も、満を持してようやく新モデルの発表を始めました — それもディスクブレーキが一般的になった時代における技術革新を感じさせるモデルばかりです。




現在、話題の中心にいるのは S-WORKS TARMAC SL7 です。空気抵抗を極限まで減少させたエアロ性能とディスクブレーキ専用でありながら最軽量のリムブレーキ車と遜色ない軽量性能を備えた正統進化モデルです。

https://twitter.com/iamspecialized/status/1288255451352760325

もともと同社の VENGE はアマチュアレース界で数々の実績を残した「最強のバイク」の一つとして誰もが一目置くエアロロードでした。

良くも悪くも提供された機材で戦うプロではなく、自費でバイクを購入し、レースで実績を残してきたライダーに「選ばれるバイク」を置き換えて廃盤にしてしまうほどの力の入れようは、新モデルに対する同社の絶対的な自信を感じさせます。

私個人としては、消費者にとって何一つメリットがなかった圧入BBという欠陥規格を撤廃してくれた点にも賛辞を送りたいところです。ダウンチューブとヘッドの接合点などと並び、自転車の走行中に最も負荷の掛かるクランク軸周辺に整備性最悪の圧入BBを採用し始めた業界の流行には猛省を促さねければなりません。

今では絶版となった FELT Fシリーズと PINARELLO を除けば、ハイエンドモデルでねじ切りBBを選択できないという事態はただの悪しき慣習に他なりません。空力のために軽量性を妥協する必要もないのであれば、性能のために整備性と耐久性を妥協する必要も無くすべきです。

TARMAC SL7 ほど話題になってはいませんが、MERIDA REACTO もモデルチェンジして堅実に改良が加えられています。最近の流行に乗ってコックピットはケーブル完全内装され、フレームも地味に軽量化されています。

しかし、最大の変化点はそこではなく、日本語メディアではあまり話題になっていないジオメトリの見直しです。シートステーが大きく下がって、シートチューブとチェーンステーの作る後ろ三角形の形状が別物に変わっています。

どういうことなのだろうと少し調べていたら、どうやら快適性の向上を目指しての変更らしいです。さらに新モデルではディスクブレーキ専用設計が強調されており、どうも新型 REACTO のリムブレーキ仕様は発売され無さそうな雰囲気があります。見どころである快適性の向上さえもがディスクブレーキ車の過剰剛性に合わせた対処のように聞こえてしまいます。

私は3年ぐらい前から次の AEROAD(CANYON のエアロロード)はディスクブレーキ専用モデルになると思っていましたが、MERIDA のエアロロードである REACTO もディスクブレーキ専用車になるかも知れないですね。

そこにきて、われらの CANYON ですが、もはや恒例になっている ULTIMATE のマイナーチェンジを新型として発表するも、誰もモデルチェンジと捉えていないという(ここ3年ぐらいで見慣れた)いつものパターンを繰り返しています。

現行 AEROAD のツール初投入が 2014 年、ULTIMATE が 2015 年で、それからディスクブレーキモデルが追加されたり、普及版の CF SL グレードが追加されたり、数量限定の記念モデルが発売されたりはしましたが、長らくフレーム形状には変更点はありません。

ただ、この発表を見て、私は待ちわびていた新型 AEROAD を発表する気はあるんだなとポジティブに捉えました。

というのも昨年 CANYON が UCI に申請して承認された新型モデルの名称が AEROAD CFR DISC RO65 と判明しているからです。

このタイミングで ULTIMATE にマイナーチェンジを加えて、CFR としてブランディングを始めたということは、そろそろ AEROAD CFR も発表する準備が整ったのかなと思われるわけです。

そして名前から暗示されるように AEROAD CFR はディスクブレーキ専用になって、リムブレーキモデルは現行モデルをもって製造終了するのではないかと私は考えています。舗装路も走れるアドベンチャーロード GRAIL を除けば、CANYON で初めての舗装路用のディスクブレーキ専用ロードバイクとなるのか期待が膨らみます。

ただし CANYON は半完成車を通販で提供する販売形式をとっているので、整備性の悪いケーブル完全内装を採用してくるかどうかはあやしいと思っています。

仮に採用されても、飛行機輪行(ハンドルやステムを取り外す際)に不便極まりないので、私はそんなハイエンドモデルは購入せずに一般的なハンドルやケーブル半内装モデルを選択しますけれども。

総括すると、ディスクブレーキ車の完成度がリムブレーキ車と遜色なくなった2019年モデルと比較して、2020年はディスクブレーキ車を前提とした設計思想の変化を実感できるモデルが多い印象です。

将来のある時点で現在を振り返ったときに、あの頃からロードバイクの形状が変わったと言われるような大きな変化が訪れているような感覚を覚えて楽しみが増えます。

あとは SHIMANO が次期 DURA-ACE をどうするのかが最大の注目点ですね。

GARMIN DOWN – Garmin Connect サービス停止でモバイル機能が使用不能に

GARMIN のサーバが機能停止して早くも3日が経ちました。こんなに復旧が遅れているにもかかわらず、意外と話題になっていないのは日本が雨季で、影響を受けている利用者が少ないからでしょうか。

3日も過ぎて未だに復旧する気配もなく、コールセンターに電話もつながらない GARMIN に痺れを切らしたのか、ついには STRAVA が Garmin Connect をすっ飛ばして、端末から直接アクティビティログを抽出してアップロードするように公式アナウンスを発表しました。


Garmin outage – Strava Support
https://support.strava.com/hc/en-us/articles/360046805811-Garmin-outage


つまり、私がいつも行っているように Edge 530 などの GARMIN 端末を USB ケーブルで PC に接続して、アクティビティ・ログ(FIT ファイルや TCX ファイル)を抜き出して https://www.strava.com/upload/select からマニュアルアップロードして欲しいということです。

サイクルコンピュータの Edge やハンドヘルドデバイスの eTrex であれば、USBケーブルで PC に接続さえすれば、内部のファイルを自由に取り出せますので Garmin ディレクトリ(フォルダ)の中の Activities ディレクトリにアクセスして日付から該当の FIT ファイルを見つければ良いだけです。




ただ問題なのは Forerunner/ForeAthlete シリーズで、こちらは Bluetooth でスマートフォンと接続して使用することを前提に設計されていますので、そもそも USB ケーブルを接続することができません。

最近、購入したばかりの人はシステム停止によって時刻合わせもできないらしく、復旧までは時計としての機能すら使用できないのだとか。

Garmin 社内のサーバが機能停止していても、個々のユーザのモバイル端末にインストールされたアプリと同期できれば問題ないのでは?と思われるかもしれませんが、どうも Garmin Connect のモバイルアプリは Garmin デバイスから受信したデータをサーバに転送する役割しか持たないらしく、モバイルアプリが単独で機能していても実行できることがありません。

サーバが停止すると過去のアクティビティログや統計情報まで見れなくなるのは、ちょっとした驚きです。オフラインでも電話帳などの機能は利用できるように iOS も Android も内部にデータベースを持っており、多くのアプリでは通信状態とは無関係にデータの閲覧ぐらいはできるはずなのですが Garmin Connect はモバイルアプリ内には記録を残していないものかもしれません。

もし、そのような仕様で運用されているとしたら、Garmin Connect はかなり尖った思想を持ったアプリです。スマートフォンが盗難被害にあったときなどに個人情報を守れるとか、それぐらいしかメリットが思いつきません。

まあ、何にせよ、早く復旧してもらいたいですね。この前の話の続きではありませんが、復旧のために平然と数日を費やすような体制であれば、私にとっては市販のサイクルコンピュータを購入する動機が薄れます。

GPS 受信モジュールやスピード・ケイデンスセンサを購入してきて、自分で基盤にはんだ付けして、得られたデータを STRAVA にアップロードできる形式に変換することは別に難しくはありません。それどころかアップロードまで全て自動化することまでできます。

高額なサイクルコンピュータをわざわざ購入しているんですから、自作品より不便になる事態とか絶対に避けて頂きたいですね。

感染症,ヒルクライム, 新機材

世界的な渡航制限により研究施設にも製造施設にも取引先にも訪れることのできない現在、私はほぼ Android 内職屋に転職した感があります。

毎日のように引きこもって他人の書いた deprecated methods を今風の Kotlin コードに書き直しているうちに、筋力は減り、体重は増え、反射神経は衰えて、時差のせいで真夜中にかかってくる電話のために早朝に起きる習慣まで失って、順調に自転車に乗るための能力を日々喪失しつつあります。

危機管理能力は既に失われたらしく、久し振りの晴天に喜んでマスクを着けたままランニングに出かけたら、熱中症によって目眩と頭痛に悩まされる結果に終わりました。




こんなになるまで私が緊急事態宣言中に自分自身に課していた規則は3つだけです。すなわち、輪行しない(電車移動による他人との接触を避ける)、県境を越えない(無意味な悪法も法なので従う)、山道や未舗装路は通らない(事故や落車に遭遇する可能性を減らす)という単純なものです。

しかし、これだけの制限で私の環境では、自転車を楽しむことが不可能になってしまいます。

安全のために交通量の多い日中や混雑した市街地などを避けると、どうしても薄明かりの早朝時間帯に活動することになりますが、これでは落車の危険性を下げることはできません。

かと言って、日照時間を待てば人通りが増えて、他人との接触を避けることは現実的には不可能になります。その場合は輪行しなければ辿り着けないような山の中まで行かなければなりませんが、当然ながら医療資源の乏しい山間地への輪行も、宿泊も許容されないでしょう。

となると、行けるところがありませんので、自然と自転車には乗らなくなります。

乗らなくなると乗れなくなりますし、健康と体型を毎朝 50km 走って維持してきた私には体力も集中力も無くなって、良いことが一つもないです。

そんな最中に訪れた緊急事態宣言の解除、ライド解禁の合図に戸惑うばかりです。ただ、この状況でも一つだけ、私にも有利な点があります。香港ごと事業所がなくなりそうな私には、混雑した休日を避けて平日から出歩くことが可能なのです。

そうしたわけで、平日の人のいない時間を見計らって、近所で一番高い山にヒルクライムに出かけてみました。

県境を越えた移動も自由になったとは言え、感染拡大(とくに自分が伝染させる方にならないこと)に注意しなければならない点は変わりありませんので、自制心を働かせて自走で行って帰れる範囲内での行動を取ります。

近場とは言っても、この道路を直進すると標高 1,900m 平均勾配 10% 最大斜度 20% を超える『ふじあざみライン』という危険地帯に通じていますので、そちらは潔く素通りして篭坂へ向かいます。

いまの私では出力 170W でも実走においては1時間も持続できませんので、斜度 20% が 2km 近く続くあの『馬返し』を無事に越えられるわけがありません。

今回は久しぶりすぎて坂道を登る感覚を忘れていますので、路肩も広くて、見通しも良く、急勾配も存在しないという意味で安全な標高 1,104m の篭坂峠へと向かいます。

沼津や三島などの国道1号線沿いから篭坂に向かうと、出発点から御殿場まで上り坂しかありませんが、御殿場から須走までの間もさらに勾配のきつい上り坂しかありません。

篭坂峠はその勾配のきつい上り坂の延長上に位置する鞍点で、要するに約 40km に渡って上り坂しかありません ? 反対方向から走行すると、信号停止後の漕ぎ出し以外ではクランクをほとんど回さなくても 40km 移動できます。

こうした特性から「途中でバテて足が動かなくなっても、引き返して来れば大丈夫」という妙な安心感も感じていました。

そんな警戒とは裏腹に、登り始めてみると身体が覚えている感じで、想定していたよりもずっと簡単に坂を登れます。体重も重くなっていて、筋力も持久力も低下しているはずなのにランニング時のように息切れもせずに、大きな苦労も感動もないままに気がついたら篭坂峠まで到着していました。

一度、鍛えた心肺機能は筋力ほどは簡単には衰えないのかも知れません。

ただ良かったのは登りだけで、そこから引き返して峠道をくだってみると思ったように身体が動かなくて愕然としました。

さきに述べましたように、ここは勾配も緩くて、路肩が広く、線型が良くて見通しが良いので比較的ダウンヒルでも安全、多すぎる交通量(東名と中央高速を接続する迂回路となっておりトラックなどの大型車が多い)さえ無ければ、わりと下りでも楽しめる道です。

ところがバランス感覚と危機管理能力が衰えている今の私では、ヘアピンカーブで落車しかねませんので、後ろから車やバイクが通るたびに路肩に止まって先に行ってもらうようにせざるを得ませんでした。

以前から遅かった下りも更に遅くなくなりました。それはもう、ふつうに平地を走っているときのほうが速いほどです。

死角から飛び出してきた対向車が中央線をはみ出しただけでも意識を奪われ、コーナーでは思ったように体幹で曲がれず、狙ったところで止まれなくなっていたために、前後どちらかのブレーキレバーを絶えず引き続ける結果になりました。

おまけとして体重が増えたせいか、少スポークな後輪のリムが円形を保てずにキャリパーブレーキに引っ掛かる感触を頻繁に感じます。ロードバイクに乗りはじめてから5年超の歳月を経て、初めてディスクブレーキの必要性を切実に感じました。

安全な篭坂だから良かったようなものの、たとえば、車一台がギリギリ通れるほどの狭さで、週末になると地方都市の繁華街並みの密度でハイカーがうろつき、平均斜度 10% の急勾配に落石だらけの危険な路面を併せ持つ和田峠(東京)などに行こうものなら、事故を起こしても何の不思議もありません。

数週間ぶりのヒルクライムは現状に対する強い危機感と新しい機材に対する渇望を感じさせました。

思うに身体も小さめで体重も軽かった私だからこそ、リムブレーキでも何の問題も感じていなかったわけで、私よりも身長もずっと高くて、筋力も体重もあるようなライダーの方が制動力の問題は切実に感じられるように思われます。

手が小さく握力が小さな女性にオススメという誰が言い始めたのかも不明なセールストークも、よく考えてみると体重がずっと軽くて、ヒルクライムでも男性ライダーを難なく追い抜いてしまう女性ライダーに本当にそんな強力な制動力が必要なのか、と前提が疑わしく感じられてきました。

他人の言葉などに惑わされずに本当に自分に必要なものは何なのか、きちんと考えてみないとダメですね。

とりあえず、私は気温や天候やカーボンリムの温度を考えられずにブレーキレバーを引きたいときに引けるディスクブレーキ、重たい体重を支えられるスポーク数のホイール、それから山梨県や北海道によくあるグルービング施工路面(坂道で事故を誘発する危険極まりない縦溝)にハンドルを取られないぐらいの太いタイヤが早急に欲しいです。