リムブレーキ用ロード・ホイールの将来を考える

ロードバイクにディスクブレーキが投入され、紆余曲折の末にようやくフロント12mm×100mm、リア12mm×142mmのスルーアクスルという統一規格が固まってきた2017年から2018年。

乗り心地や軽量性などの点においても従来のリムブレーキ車と遜色ない完成度のディスクブレーキ車が登場しだした2019年ときて、いよいよディスクブレーキモデルが主流になりつつある2020年現在、リムブレーキモデルの資産を大量に持つ既存のユーザは選択を迫られているように思われます。

現在の資産を使える限りはリムブレーキ車を使い続けるか、あるいはディスクブレーキ車と互換性のないパーツやアクセサリには見切りをつけて新車に乗り換えるか。

リムとディスクの両方に使えるサドルやクランクは良いとしても、高価で走行性能に直結し、もちろん流用もできないフレームやホイールの新規購入には、以前にも増して大きな決断が求められます。

既存の資産を活用してアップグレードを行うか、完全に新規格に切り替えてしまうのか。そのどちらが正しいのかは現時点では誰にも分かりません。

ただ、あとから振り返ったときに自分の判断が正解だったと思う人も、失敗だったと思う人もどちらも存在することだけは間違いありません。

リムブレーキ用のホイールについては、現在、早い者勝ちの売り切りセールが行われていますので、例えば以下のオンラインショップなどでは Campagnolo Eurus Mega G3 (ユーラス) を始めとする高性能ホイールが半額以下で購入できる可能性があります。

その反面、現行モデルの継続性が不透明なので、交換部品を入手できず、破損したら即廃棄せざるを得ない事態に陥ることも、この先、起こり得ないとは言い切れません。

一方でディスクブレーキ対応モデルについては最新技術を体感できる利点がありますが、こちらもまた(例えば13速化によるエンド幅の変更等により)いつでも現行モデルが陳腐化するリスクを抱えている点はリムブレーキモデルと同等です。

大枚をはたいて購入したロードバイクが数年で陳腐化しては堪ったものではないですが、リムからディスクへの移行期にはごくありふれた光景でした。

今ではほとんど見かけなくなったエンド幅 135mm のクイックレリーズ式ディスクブレーキ車などは、その最たるものです。

業界がディスクブレーキを推しているのでディスクブレーキの開発は続くでしょうが、いま市場にあるものを使い続けられるかどうかは誰にもわかりません(MICRO SPLINEがロードホイールハブにも導入されたら、いまの11速ホイールは…)。




この点、長い歴史を持つリムブレーキモデルは市場に出回っている数も多く、構造も単純で軽量という絶対的な利点もあるので消えることはないという意見もあります。

部分的には同意できるものの、私見を述べると今後もリムブレーキ車のほうが「軽量」であり続けられるかどうかは甚だ疑問だと私個人は思っています。

技術革新によるディスクブレーキモデルの軽量化うんぬんの話ではなく、単純にリムブレーキ用カーボンホイールに使用されるブレーキシューの製造がいつまで続くか不明だからです。

リムブレーキのカーボンホイールは、メーカー毎に異なるブレーキシューを使用します。ENVE なら ENVE Grey Pads、CORIMA なら CORIMA コルクパッド、REYNOLDS なら Cryo Blue といった具合に、それぞれのホイールにメーカー指定の固有ブレーキシューがあります。

指定品以外を使用した場合、保証を受けられなくなりますし、設計温度を越えるブレーキ熱を発して走行中にリムが破損することがあります。

ところがメーカー指定のブレーキシューは専用品なので価格も $50 ぐらいすることが普通ですし、取扱店舗も少ないので入手性も良くありません。

もとより高価であまり販売数が多いとは言えなかったカーボンホイールに、ディスクブレーキホイールという競合まで加わっては、いくら消耗品とは言え、メーカーもあまり専用品のブレーキシューを量産したいと考えるとは思えません。

そうなるとリムブレーキでカーボンホイールを使い続けるためには、例えば SwissStop に対応したカーボンリムに一本化してメーカー全社が共通で生き残りを模索するしかありません。


SWISS STOP FLASH PRO BLACK PRINCE カーボンリム用 ブレーキシュー

しかし、ホイールの買い替えを促したいメーカー側にはそれをする動機がありません。

結果としてリムブレーキでは、カーボンやプラズマ電解酸化処理などの特殊なブレーキシューを必要とするホイールは廃れて、リムブレーキ車は一般的なアルミホイール専用車になるのではないかと私は考えています。

こうした伝統的なアルミホイールは SHIMANO や Campagnolo がリムブレーキ用グループセットの製造を続ける限りは安泰でしょう。

私個人は3年前から「リムブレーキ車はこれで最後になる」と考え、ディスクモデルもある中で敢えてリムブレーキモデルを選び、悔いが残らないようにリムブレーキ車で 5万 km 以上も走ったので、もうディスクブレーキに移行しても良いかなと考えています。

それでも、あくまでもリムブレーキモデルが好きという人には難しいところですね。

結論を述べると、構造の単純さと価格競争力からエントリーモデルを中心としたリムブレーキ車は生き残るとは思われますが、カーボンホイールのような特殊な専用部品を必要とするアップグレードの選択肢の幅は狭まると思われます。

そのため、リムブレーキ車は将来的にはミドルグレードのアルミホイールを専用とする「そこそこ軽くて安い」ロードバイクという評価に落ち着くのではないか、と私個人は考えています。

つまりセールで投げ売りされているレーシングゼロやシャマルウルトラなら購入して練習用に使い続けるのは大いにありではないかと

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