Electron & React で ContextBridge を使って安全に DB 操作する

HTML や CSS などの Web 技術を用いてクロスプラットフォームなデスクトップアプリを開発できるフレームワーク ELECTRON

動的なウェブサイトを構築できるライブラリ React (ReactJS)

この2つを組み合わせて、データベース (CRUD) 操作を行えるアプリ作成を考えます。

セキュリティを考える

一見すると、この課題には難しい点はないように思われます。

Renderer プロセスから ipcRenderer を読み込み、Main プロセスの ipcMain との間でプロセス間通信を実行すれば、Main プロセスを介して Renderer プロセスと DB との間でデータの受け渡しが可能です。

ところが、2020年現在、こうした設計はセキュリティ上の理由から推奨されていません。XSS で Node.js Modules にアクセスされて SSH キーを不正取得されたりしても困るといった動機は理解できますが、不便でもあります。

そこで Renderer プロセスから安全に Node.js Modules を利用するため、ほかのスクリプト実行前にあらかじめ preload で読み込むことを行います。

この preload において contextBridge を用いて関数を API 化し Renderer プロセスから利用可能にすることが最近のセキュリティ重視の設計です。

ここで問題となるのは contextBridge によって作成された API (オブジェクト) には型定義が存在しないため TypeScript のコンパイル時にエラーの原因となります。

TypeScript は React を安全に使うために必要です。

ELECTRON が用いる HTML/CSS/JS にはデスクトップアプリに適した UI フレームワークが存在しないため React がそれを補います。つまり React もあったほうがいいものです。

それらのリソースを管理するのは Webpack です。

こうした一つ一つの要素技術に設定ファイルがありますので、組み合わせると面倒なことになります。




整理すると、やるべきことは次のようになります。

(1) Main プロセスにおいて preload を読み込む
(2) Preload において関数を API 化する
(3) API の型定義を行う
(4) Webpack の設定ファイルを書き換える
(5) データベースに接続して操作を行う

ここで断っておきますが、私はフロントエンドもスクリプト言語も嫌いです。当然ながら専門家ではありません。最新の公式ドキュメントには目を通していますが、より良い方法がほかにあるかもしれません。

実行環境

実行環境は以下のとおりです。

TypeORM をインストールはしていますが後述の理由から使用しません。また機能要件に対して必要性を感じないので Redux も使用しません。

Main プロセスにおいて preload を読み込む

ELECTRON の main プロセスの内容を記述したファイルを main.ts とすると、その内容は次のようになるはずです。

ここでドキュメントに従い、BrowserWindow の中に preload を設定します。

ファイルパスは環境に応じて適宜変更してください。

Preload において関数を API 化する

Main プロセスから preload を読み込むよう設定したあとは、main プロセスと renderer プロセスとの間で通信を行う準備を行います。

ここで contextBridge を用いて関数を API 化することが肝要です。

先述のように contextBridge によって作成された API (オブジェクト) には型定義が存在しないため TypeScript のコンパイル時にエラーの原因となります。

API の型定義を行う

そこで正統な対処法として、型定義ファイルを作成して tsconfig に定義ファイルを読み込ませることがよく行われます。

個人的に確認はしていませんが、原則的にはこれで問題なく動作すると思われます。

この代わりに、私は API に対して interface を作成し、実行時に import することを行いました。

これで main プロセスと renderer プロセスとの間でデータの受け渡しを行えるようになります。

Webpack の設定ファイルを書き換える

型定義を与えてコンパイル(トランスパイル)できるようになっても、肝心の preload.js ファイル自体が実行ファイルとして読み込まれなければ意味がありません。

そのために次は webpack.config.js の設定を書き換えて preload を読み込ませます。

具体的には entry と output の項目に preload を書き加えるだけで大丈夫です。




データベースに接続して操作を行う

ようやくデータベースを利用する準備が整いましたので、main プロセスからデータベースに接続する関数を記述します。

これを IPC 通信を用いて renderer プロセスから呼び出してやれば良いわけです。

ここに来てついに React の出番となります。

preload にて定義した API のelectronIpcInvoke を呼び出します。

これで Connect ボタンをクリックすると IPC 通信で main プロセスの connectTest を呼び出して、データベースに接続・操作を行います。

この状態でビルド、実行してボタンをクリックした際に以下のように表示されれば成功です。

TypeORM を使えない

以下は余談です。

TypeORM (version 0.2.26) にて ormconfig.json を作成せずに createConnection に直接的に引数を渡そうとするとエラーになります。

より具体的には以下のようなことをやっています。

明らかに現状では開発中のライブラリですし、どうしても必要なものではありませんので私は使用することを諦めました。

ちなみに下記のようなエラーはコンストラクタを作成して各カラムの変数を初期化すると消えます。


TS2564: Property ‘name’ has no initializer and is not definitely assigned in the constructor.


エンティティを定義されているファイルに constructor を追加してやれば問題解決です。

また次のようなエラーは tsconfig.json の設定により表示を消すことができます。


TS1219: Experimental support for decorators is a feature that is subject to change in a future release. Set the ‘experimentalDecorators’ option in your ‘tsconfig’ or ‘jsconfig’ to remove this warning.


お好きなエディタで設定ファイルを開いて該当箇所のコメントアウトを削除してください。

こうしたマイナーなエラーは簡単に対処できますが、データベースに接続できないことにはどうしようもありません。

改善されることを待つか、使用することを諦めるほかにありません。私はもう諦めてしまいました。

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