ロードバイクのホイールを自分で組んでみる

私の認識ではロードバイクのホイールは消耗品です。タイヤチューブやチェーンと比較すると長持ちで個性が強いという特徴がありますが、使用に伴い徐々に劣化して、やがて修理や交換が必要となる事には違いはありません。

そこで気になるのがホイールの寿命や維持費です。

特に私のように毎日バイクに乗れないと体調がおかしくなるライダーは走行距離も年間10,000kmを超えていたりしますので、購入してからさほど時間を置かずに製品寿命を迎えてしまう事もない訳ではありません。

私が普段履き用途に手組ホイールを使用するようになった理由も消耗品の入手性の良さや維持費の安さに魅力を感じての事ですが、故障する度に500km離れた馴染みのショップに送付していたのでは修理の度に無用な時間がかかってしまいます。

ハブの分解はともかくスポークの張り替えぐらいは自身でもできるようにならないだろうかと、これまでに何度か分解と組み上げを繰り返してきました。

ホイール組みの練習の素材となっているのは、完成車付属ホイールの調査時に分解したAR-713の前輪をそのまま使用しています。

前輪なので左右のテンション差などを気にする必要がなく、スポークの編み方に集中する事ができます。

そして元々が組み上がっていたホイールの部品なので、スポークの長さが正確という利点があります。何度も分解してホイールを組み上げていくうちに気づいた事なのですが、ホイールを組むにあたって正しい長さのスポークを使用する事は極めて重要と言えます。

2クロス、3クロスと複雑な編み方を丸暗記しなくても、スポークの長さが正しく、きちんと精度が出ていれば固定されるべきスポークホールの位置をスポークが教えてくれます。

これは実際に自分で組んでみないと分からない事でした。

その中で意味を為す言葉が「*個先の穴から出ているスポーク同士が交わる」というおまじないです。

スポーク長と交差するスポーク同士の位置さえ押さえていれば、少なくともそれっぽい形には組めます。

組み始めるまではスポークの構造を全て把握していなければ組めないという先入観がありましたので、慣れで組めてしまう事には自分でも驚きの気持ちしかありません。



順序として正しいかは不明ですが、私の場合はいつもハブにスポークを全て通してしまったら左右のどちらか一方を先にリムに通してしまいます。


各スポークの行く先は前述の通り、スポークの長さとおまじないが教えてくれますので、交差させるべきところでしっかりと交差させる事さえ忘れなければ、この時点では特に難しい事はありません。

苦労するのはむしろニップルの扱いです。

私の場合は何度やってもリムの中にニップルが入り込んで行方不明になります。

通し始めのうちはスポークを可能な限りリムに押し込んでネジを回していけば良いのですが、スポークをリムに固定するほど自由度が減ってニップルを通しづらくなります。

スポークを全て通し終わるとグニャグニャの柔らかいホイールができあがります。

柔らか過ぎて体重を掛けたら潰れそうに思えますが、ニップル回しを使ってスポークのテンションを上げて行くとホイールの形になります。


ここまで組み上げておいて...なのですが、実は私はローラー台の上でもこのホイールに乗った事がありません。

過去にハブを分解してベアリングボールを抜いてしまっているので、きちんと回らないのです(笑)

今までは練習で良かったのですが、最も使用頻度の高いホイールが壊れてしまったからにはきちんと組み上げて直した後に、ローラー台上で試走してやらなければなりません。

練習も滞っているので早急に直さねば...

というわけで本番

OpenProリム / FH-9000ハブ 重量計測

ほぼ1年間のライドとローラー台トレーニングによりスポーク切れを起こしてしまった手組ホイールですが、この機会に分解して組み直すことに決めました。

切れたスポークを差し替えて再度テンションを調整してやれば問題なく使い続けることも可能なのですが、オフセットリムを使用して左右のスポークテンション差を是正してやると使い心地はどう変わるのかに興味があるので自分で試してみる事にします。

せっかく分解するからには、今まで不明だった各部品の重量も測定してしまいます。




このホイールの出自ですが私がお世話になっている大阪が本店のショップに依頼して組んで頂いたものです。

自身で購入した部品の持ち込みではなくショップ発注だったので、実は各部位の重量計測を自分で行ったことがありませんでした。

そうした理由から私も知らなかった各部品の重量ですが、まずは再利用が決まっているハブから計測します。

この部品だけでも推定値よりも 5g も軽かったのですね。

続いて、前輪に採用予定のリムです。

こちらは推定値より 1g 重い値が出ました。私の記憶が正しければ、前記事に採用した数値はカタログ値なので精度が良いと言い切って良さそうです。



ライド時にホイールが壊れたらどうなるのか

先日、訪れた高見山に似た峠として一年ぶりに和田峠に行きたくなりました。

和田峠は八王子の西端にある峠の一つで、距離 3.5km 平均斜度 10% となかなかのスペックを持ちながら東京都心方面からのアクセスが良いという魅力があります。

新宿を起点とすると早朝6時ごろに家を出れば、午前中にライドを終えて帰宅する事も可能という事で心理的にもアプローチしやすい峠です。

そうした理由から近所を散策するような軽い気持ちで、ローラー台から久し振りに Raleigh CRN を下ろして出かける事に決めます。

ほぼ毎日、ローラー台の上で乗っているとは言え、ここ最近の外出はもう一台のカーボンバイクが多かったので 100km 超のライドに持ち出すのは数ヵ月ぶりです。




路上に持ち出し、バイクに跨って踏み出すと、すぐに意外なほどに力が逃げている事に気がつきます。

最近、乗り続けていたカーボンバイク FELT F7 はレース仕様の硬いフレームなので、フレームの性格の違いかと最初は特に気にしませんでした。

斜度 2% の坂を下ったり、5% の坂を上がったりしていると違和感はより強くなってきましたが、クランクやホイールを確認してみても特に異常は認められません。

スポークを握ってテンションを確認してみても張り詰めたままなので、ホイールやコンポーネントではなくフレーム側の劣化や寿命を疑います。

そのまま走り続けて 45km ほどが経過したあたりから、今度はクランクに抵抗を感じるようになります。

注意して意識を払ってみると抵抗は周期的に生じる事が確認できます。

周期的に生じるのであれば回転してるホイールに間違いないだろうという事で、後輪を持ち上げてクランクを回してみるとホイールが著しく反フリー側に振れて、左側のブレーキシューにリムが接触しています。

これは不味いと思いながらも、早朝の河川敷では選べる対処も限られているので、ニップルレンチで後輪全体のスポークテンションを緩めて簡易な振れ取りを施します。

このまま持ち堪えてくれれば良かったのですが、再度、走り出してから間も無く後輪から微細な金属音が聞こえるようになります。

とうとうスポークが破断してしまいました。金属音の正体は折れたスポークが他のスポークに接触する時の音です。



壊れるにしても素直にハブ側で首が飛んでくれれば良かったのですが、ニップル側で破断してしまったのでスポークを引き抜こうにも抜く事ができません。

このままでは移動することもできないので、押し歩きの邪魔をしないように適当な位置に巻きつけます。

ホイールに張られている時には、あんなにも硬かったスポークが指先で簡単に曲げられるほど脆く、柔らかくなっているのを直に感じるのには少しばかり寂しいものがありました。


完組ホイールであれば、この時点で帰宅困難や廃棄などの恐ろしい言葉が思い浮かびますが、手組みホイールはスポーク本数が多いので1本が折れたからと言って、必ずしも直ぐに走行不能に直結する訳ではありません。

とは言え、まともに走行できなくなっている事は否定できませんので、早急に修理が必要となる事に変わりはありません。

今回の反省として

  • クランクに踏み込んだ力が逃げている感覚があったら外見上は異常がなくても要注意
  • 段差の衝撃などを与えていないのに急にホイールが振れるようになったら既に異常が生じている
  • 使用する予定はなくてもニップルレンチや輪行袋は携帯しておいた方が無難

という教訓をよく噛みしてまとめとしたいと思います。

続く