DT Swiss RR21 – 練習と本番の両方で使えるホイール

毎日の練習と台湾ヒルクライム遠征により常用ホイールが著しく損傷した事は先に述べた通りですが、修理に出して嘆いている間に無情にも短い夏は過ぎ去りました。

ロードバイクというスポーツにとってのピークシーズン。旅行にもうってつけの緑の美しい期間中、ひたすら東京に引きこもってプログラムを書いているうちに新しいホイールの購入を検討するようになりました。




手組ホイールは丈夫でランニングコストは良いのですが「決戦」あるいは「本番」の場面では少しばかり重過ぎます。一人のソロライドでは良いですが、自分よりも速い人との集団走行では迷惑になりかねません。

ディープリムホイールは性能は十分なのですが、チューブラータイヤとカーボン素材の取り扱いの難しさから性能を発揮できる場面が限定されます。

そこで目を付けたのが両者の中間的な性格を持つ軽量アルミニウム完組ホイールです。

普通はこちらを最初に購入するのかもしれませんが、私の場合はアルミニウムに不信感を持っていたり運用コストを試算したりする悪癖があるので、この選択に辿り着くまでに少しばかりの時間を要しました。

もちろん軽量であれば何でも良いという訳ではなく、

  • スポークはステンレスである事
  • 消耗品の交換が容易である事
  • 構造的に単純で故障が少ない事

と言ったいつもの選択基準は何ら変わるところはありません。

軽量ホイールを探しておきながら矛盾するようですが、上の条件が満たされていて価格が抑えられているのであれば、軽量と剛性のどちらかは捨てても良いとさえ思っています。

そうした経緯から選択したのが DT Swiss RR21 Dicut というホイールです。

Dicut というのはハブに切り込みを入れるアイデアらしいですが、私にとって重要なのはそこではなくステンレススポーク (DT aerolite, aero comp) でありながらカタログ重量 1,415g とアルミホイールの中では相当に軽量である事です。

フロント・リムテープ付き: 640g

リア・リムテープ、10速対応リング付き: 805g

ここで用いられているスポークは一般に市販されているものであり将来的な供給体制も不安がないという点も見逃せません。それは DT Swiss という会社はスポーク製造業を出自とするスポークの専門企業だからです。

ホイールにおける代表的な消耗品はスポークとベアリングですが、前述のようにスポークの入手は容易でベアリングもカートリッジごと交換できるのでメンテナンス性が高いというわけです。

その上に構造的に故障が極めて少ないスターラチェットを採用しているのが RR21 というホイールの特徴です。

実はこのスターラチェット目当てで RR21 を購入したと言っても過言ではありません。DT Swiss の価格に対して高性能なホイールには R20 DicutR23 Spline といったモデルがありますが、これらのモデルでは “Pawl System” とDTが呼ぶハブ構造をしています。

そこで使われるスプリングはもちろんポールスプリング、稀にラチェットスプリングと呼ばれます。

私は個人的にこの部品があまり好きではないのです。アルミニウム合金にも通じるところがありますが、前兆なく割れることがある (しかも、割れると大変なことになる) からです。

ドイツ語圏で Klinkenfeder と検索すると DT の物も市販されているのが見つかりますが、交換部品が販売されているという事はやっぱり消耗品なのでしょうね…

ハブの種類ごとにサイズが異なるので割愛しますが、同じく消耗品のベアリングも Kugellager 6802 (240s向け) などで検索すると販売ページに行き着きます。

他の付属品にはチューブレスタイヤ用のバルブやレバーの倒せない(むしろ起こせない)クイックレリーズなどユニークな物がたくさんあります。

ナットを握ったままレリーズを締めるとフレームに固定できるのですが、こうすると軽量化に役立つのでしょうか?


実走記事:


DT Swiss – RR 21 Dicut アロイクリンチャーホイールセット (Shimano)

OpenProホイール完全復活

西日本の某所に修理に出していた常用ホイールこと OpenProホイール ですが、修理が完了し遂に私の手元に返ってきました。修理前には真円を維持できなくなっていたリムですが、検証の結果、使用できないほど深刻に歪んでいる訳ではないので、現時点ではまだ交換の必要性は低いとの事。

スポークテンションが非常に高いまま横振れを取ろうとすると簡単に縦振れが出るので、テンションを維持したまま調整を行いたいのであれば一度分解してから再度スポークを張りなおす事が正解だという貴重なご意見を賜りました。

これはいよいよホイール組みについて習熟せねばと考えていたところ、近所で調整をお願いできるショップを作ってくださいという極めて妥当かつ真っ当な批判を頂きました。

自分で触るなとも (苦笑)

過去に何度か書いている事ですが、私が試行錯誤を繰り返しているのは馴染みのショップに通う事が不可能になった為であり、任せられるのであればそれに越した事はないだけに難しいところです。なお通う事が不可能になった理由は単純に京都から東京へと転居した為です。


メンテナンスを怠る方がかえって危険なので、あくまで自己責任と承知しつつ戻ってきたホイールの状態点検を行います。

タイヤを履かせる前に行わければならない点検作業は、各スポークのテンションとニップルの緩み、横振れ、縦振れ、そして傷んだスポークやリムのひび割れなどがない事の確認です。

実際に振れ取り台に乗せて見てみるとプロが組んだホイールや完組ファクトリーホイールであっても1mm以下の横振れがあったり、リムも完全な真円にはならない事が分かりますが、どの程度であればホイールとして許容され得るのか具体的に見て取れるので勉強になります。

縦振れはある程度まではタイヤが吸収してくれるので横振れほど神経質にならなくても良いという意見もありますが、縦振れによる上下の振動は直に乗り心地に影響を与えるので少ないに越した事はありません。

直感的に理解しやすい横振れの取り方とは異なり、ホイール全体の形状を意識しなければ解決できないのも縦の振れ取りの難しいところです。

こうしたホイール組みのコツに習熟するまでは自分で触るなという馴染みのショップ店長の意見に従い、実際に使用する全ホイールの調整はプロに任せて自らはホイール組み練習用の部品で修行を積む目論見です。

カーボンホイール – Reynolds AERO 46 Tubular に200km試乗してみたら夢中になった

チューブラータイヤを貼ったきり、そのままになっていた Reynolds AERO 46 Tubular ですが、試走で約200km、獲得標高にしておよそ 4,000m ほどを走ってきましたので、そろそろインプレッションを行いたいと思います。

6月中旬の購入から、ここまで時間が空いてしまった理由は、台湾でのヒルクライムレースなどのイベントを挟んだという事情もありますが、距離を走り込んでいくうちにホイールの印象が大きく変化して行った為です。

正直に述べますと、最初は軽い失望感を覚えました。

確かにホイールを交換しただけで、信号停止だらけの東京の市街地でも平均時速が 25.1km/h から 27.6km/h まで上がるようになりました。

他に何もしなくても平均速度が 2.0km/h 以上も変わってくるのは、凄い事には間違いありません。

しかし、走行中にそれを体感できるかというと微妙なものがあります。

国内販売価格が30万円近いホイールである事を考えると、それぐらいの性能は発揮できて当然ではないかという思いも湧き上がり、評価を確定させる事を躊躇わせます。

約50kmほどの慣らし運転を終えた時点では、高速域での体感的な疲労が少ない事がホイールの特徴と考えられ、速度を維持しながら走れる距離が伸びた事が平均速度の向上に寄与しているのではないかとメモするだけに留めました。

その後、奥多摩や山梨に出かける際に持ち出して峠を幾つも越えた事、他のホイールとの乗り比べを繰り返した事により、徐々にこのホイールの特性についての理解が進んできました。

言うなれば、ただのカーボンチューブラーホイールとして見ていた対象に、Reynolds AERO 46 という個性を発見した気分です。




個性として、誰もが気づく点にはリム幅の太さがあります。
25Cの Continental Competition と同じ幅を持つワイドリムが、走行中は常に強烈な存在感を放っています。

視覚的に特徴があるだけでなく、このリムに収まる太めのタイヤに収まったエアボリュームとブチルチューブの感触は、バイクに跨った瞬間から体感できるものです。

先に述べた体感的な疲労の少なさは、この25Cタイヤによるところが大きいのかもしれません。

23Cのアルミホイールではザラつきを感じる荒れた路面でも、何の凹凸もなかったかのように滑らかに回転していきます。

このタイヤを履いたホイール自体も決して硬さを感じさせず、路面からの衝撃をうまく往なしている様です。

微細な振動が抑えられる事に加えて、ワイドリムによる恩恵か、横風にハンドルを取られる事もありませんので、ダウンヒルでも安心して降れます。

それでいながら、カーボン素材の軽量さゆえにリム幅や25Cタイヤによる重量増で加速がもたつくと言う事もありません。

前後輪の質量の実測値が 1,230g と軽量な上に、リムデプスが 46mm もありますので、普通に踏んでいけば 40km/h まで勝手に加速していきます。

こうした特徴を見つけていくにつれ、ホイールに対する印象が少しづつ変化していきました。

乗り心地が良い上に、軽くて、速い訳ですから、このホイールに乗る事が楽しくない訳がありません。

日頃、コストパフォーマンスだの、整備性だの言っている事がどうでも良くなるぐらいに、乗っていて気分
が良くなると言う意味では 別格 と言っても差し支えありません。

こうした特性に気づくのに時間が掛かった理由には、居住地と走行経路の問題が大きく影響しています。

私の家から何処かに出かける場合、200m置きに信号停止に遭遇する麹町や四谷の市街地を経由し、その先にある五反田や渋谷、新宿や巣鴨といった山手線の線路と駅周囲の繁華街という物理的な障壁を乗り越えなければなりません。

向かう先も混雑と渋滞を避けるという理由から、奥多摩や山梨の山岳地帯ばかりになります。

こうした環境に置かれると、せっかくの高性能な機材もただ軽量であるだけのブレーキングに気を使うホイールと化してしまい、機材の良さや設計思想は全く生きてきません。

純正のブレーキパッドを使用していても少々のブレーキでもリムが温まる事には相違ありませんので、改良されてきているとは言え、カーボンホイールの弱点としてブレーキングによる熱には常に気を遣います。

私はよく信号停止時にリム側面に指で触れて温度を調べるのですが、触れて見るとなかなか熱が逃げていかないのが感覚でも捉えられます。

ホイール本体のリムにも気を遣うのと同様、高価で、しかも、入手性も余り良くないブレーキパッドの方にも気を遣います。

使用しているとすぐに磨り減るためです。




このような材質的な短所があるにも関わらず、毎日でも乗りたくなる魅力がこのホイールにはあります。

クロモリフレームとも異なるチューブラータイヤの滑るような乗り心地と抜群の加速性能、スターラチェットの小気味良い音と高速巡航時の伸び。

ロードバイクで速さを追求する楽しさを初めて感じられたのは、このホイールがあったからかもしれません。
そう言えるほどに高速走行に快適さと安定性を提供してくれるのが Reynolds Aero というホイールです。

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