クロスバイクにディスクブレーキは必要か?

ロードバイクにディスクブレーキが標準搭載されるようになって数年。市場では機械式ディスクブレーキを搭載したクロスバイクの割合が徐々に増えてきました。

2024年現在では売り場のクロスバイクの70%近くがディスクブレーキ搭載するモデルという店舗も存在するようです。

ディスクブレーキを搭載したクロスバイク自体は5年近く前から存在します。有名なところでは GIANT ESCAPE RX DISC 2020 (2019年) が油圧ディスクブレーキを搭載していました。

けれども当時のクロスバイク市場の主役はVブレーキ搭載モデルでした。

位置づけとしてはVブレーキが普及モデル、ディスクブレーキが最上位モデルといった趣で価格帯で層別されていました。当然ながら売り場のほとんどを占めるのはVブレーキ搭載モデルです。

Vブレーキはリムブレーキの一種で、構造が簡易で製造コストが低い上に制動力が極めて強いという特徴を有しています。

対して現在の主流になりつつあるディスクブレーキは、走行中の泥や雨水の影響を受けにくく、安定して性能を発揮するという特徴があります。

悪天候でも用いられる実用車のクロスバイクでこそ、ディスクブレーキの真価が発揮されるという考え方もできるので、その選択肢ができたこと自体は素晴らしいことです。

一方でVブレーキで不十分かと言えば、そんなことは無いわけで、むしろVブレーキのほうが明らかにメリットがあると言い切れる部分さえあります。

ロードバイクのディスクブレーキ化には肯定的な私ですが、クロスバイクのディスクブレーキ化には手放しで賛成はできません。

ロードバイクにディスクブレーキが搭載されるようになったのは、より速く、より軽く、よりエアロにを追求した結果です。レースで勝つことを至上命題にした競技用機材なので費用や整備性よりも速く走れることが優先されます。

そうした制約の中で用いられる熱に弱いカーボン素材、ケーブルを廃したエアロ化と相性が良かったために、ディスクブレーキが生き残ったという経緯があります。

クロスバイクは実用車なので高価でデリケートなカーボン素材は使用しませんし、ロードバイクのようにケーブルワイヤの内装もしないことが一般的です。

ケーブルを内装している一部のモデルにおいても、その目的は空気抵抗の削減ではなく、ケーブルの保護を目的としている場合がほとんどです。

したがって、クロスバイクのディスクブレーキ化は純粋にローターの汚れにくさ、雨天時や悪路での制動力低下を予防することを目的としていると考えられます。

そうしたメリットは否定できませんが、一方でローターを搭載する分だけ駆動部の質量が増えるのも事実です。質量が増えると漕ぎ出しが重くなり、走行性能に影響が生じます。

ロードバイクに用いられるカーボンホイールの場合は、軽量化、エアロ化が徹底されていますのでローターの質量増による影響は許容範囲内ですが、クロスバイクのアルミ合金ホイールでは重量増は純粋にデメリットになります。

もちろん、カーボンリムを使って軽量なホイールを組むことも可能ですが、そうすると今度は盗難リスクが向上して駐輪に向かない自転車になってしまいます。カーボンホイールは高価なのです。

価格面においてはランニングコストも無視できません。

Vブレーキのブレーキシューは 10,000km 走ってもまだまだ使えたりしますが、ディスクブレーキのブレーキパッドはそこまで長持ちしません。

ダウンヒル等で激しい使い方をしているとローターも焼けたりします。

このまま使い続けていると割れることもありますので、ローターもパッドも 3,000km 走行したら一度は点検したほうが良いですね。

ゴム製のブレーキシューに比較すると割高な感じが否めませんが、きちんと整備されていないと安全に走行できなくなってしまいます。

駐輪を前提とした運用を考えると、本体も軽量で初期費用も維持費も控えめなVブレーキモデルのメリットが生きてきます。

ディスクブレーキの利点を感じられるのは、どちらかと言うと性能向上を意識した時かもしれません。

クロスバイクと言えば、長らくVブレーキにエンド幅 135mm クイックレリーズといった独自規格の採用によって、基本的にアップグレードはできないと言っても過言ではありませんでした。

それがディスクブレーキ化によるケーブルーティングの変化、または油圧化によりドロップハンドル化の難易度が著しく低下しました。

機械式ディスクブレーキも繊細な調整を要求されますが、Vブレーキのようにドロップハンドル用のコントロールレバーとの併用をメーカーに禁止されるようなことはありません。

またホイールについてもロードバイクに用いられる軽量な完組ホイールが、ディスクブレーキ搭載のクロスバイクではそのまま利用できる場合があります。

つまりグラベルやバイクパッキング、自転車旅用の車体の素質があると見なすことも不可能ではありません。

普段は実用車として使いながら、パーツを換装して全く別の用途に用いるのも面白いかもしれません。

ロードバイクやグラベルバイクと比べると、文字通りに桁違いに価格が低いので駐輪したり、乱雑に扱うことの心理的な抵抗が少ない点も特徴です。

飛行機輪行で割れてしまっても別に良いかなと思えるぐらいがアドベンチャーバイクとして適切です。ただしグラベルバイク等と比較すると重たいので輪行で苦労することだけは忘れてはいけません。

まとめると実用車として日常使用する分においてはVブレーキで何も困ることはありません。むしろ安価で軽量なのはVブレーキのほうです。

改造したり遊ぶことを考えるとディスクブレーキのほうが可能性が広いです。

とくにハンドルやホイールはVブレーキ時代には、ほとんど選択肢がありませんでしたが、ディスクブレーキではメーカー完組ホイールが使えるなど積極的に選ぶほどの利点があります。

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