アルミバイクに対する所感

アルミニウム合金製の自転車フレームはカーボン (CFRP) やクロモリやマンモリと言ったモリブデン鋼製のフレームよりも寿命が短いとはよく言われることです。

それに対して FRP は想定外の方向からの衝撃に弱い、鉄製フレームは自然環境で酸化して強度を低下させるので、適切なメンテナンスなしではアルミよりも寿命が短い場合もあるという意見もあり、厳密な調査データは存在しないようです。

そもそも事故や落車以外では自転車フレームはほとんど壊れることはありません。

それでも私はアルミバイクが好きではありません。

原因の一つには幼少の頃に目にした材料工学系の雑誌が適切な用途外に濫用されているアルミニウム合金に軒並み批判的だった影響を無意識に受けている可能性もないとは言い切れません。

しかし、それを差し置いても、自分の自転車を乗車中に破断させた経験が理由としては大きいです。




それも3回。そのうちの2台がアルミバイクで、1台目はシートチューブとボトムブラケットの接合部の少し上の部分、2台目はヘッドチューブとダウンチューブの接合部がそれぞれ破断しました。

乗車中に力が抜けて、水の上に浮いているような感覚を覚えました。すぐにハンドル操作が正常にできなくなっていることに気がつき、咄嗟に車道とは反対側に意図的に自転車を転倒させたことで事なきを得ました。

もう1台は鉄製フレームで、こちらはボトムブラケットシェルが割れました。クランク軸が歪んでいるように感じられて整備に出したら、ひび割れているからこれ以上は乗れないという警告を受けて廃車となりました。

いずれもスポーツバイクではありませんでしたが、2000年代または2010年代に製造された普及品の自転車は使い込むと割れるという意見は一定の事実報告を含んでいることは確かなようです。

それではアルミ合金製のロードバイクや MTB は買ってはいけないのかと言うと、最近では逆にスポーツバイクの素材としてはアルミ合金が最適なのではないかとさえ思っています。

それはスポーツバイクは消耗品だからです。航空機と同じように一定の距離か年数を運用したら買い換えるという視点を持つとアルミバイクはメリットだらけで、デメリットはカーボンよりも多少重たいことと形状の自由度が低いことぐらいしかありません。

レース機材であるロードバイクは競技中の事故による破損も少なくありませんし、運送中の破損事例の報告にも事欠きません。舗装路よりもさらに過酷な環境で運用される MTB については言うまでもありません。

しかも、こうしたレース機材は新技術導入と後方互換切り捨てが常態化しており、高価な機材を大切に持っておいても数年で陳腐化するどころか、消耗品の入手性に疑問符が付いたりします。




あれ、これハイエンドモデルを購入して10年使うよりも、5年毎に機材を入れ替えていくほうが賢くね?ということに気づくとアルミバイクのデメリットは、ほぼ考えなくていいことになります。

かつての競技用アルミフレームは最軽量を達成させるために耐久性に目をつぶって断面積を減らしているものもありましたが、軽量化と剛性向上の役割を既に CFRP に譲った2020年代現在のアルミバイクはパイプの厚みで応力減らして安全率を確保することを当然のようにできるため、落車や事故にはむしろ強い部類なのではないかと思えます。

確かに鉄やカーボンなら故障しても補修できるというのはもっともです。ただしフレームは補修できても、そのフレームを何時までも使い続けることが可能かと言えば話は別です。

ロードバイクのディスクブレーキ移行に伴って生産終了したリムブレーキ専用品は現在の流通在庫が尽きれば入手困難になりますし、BB30、BB90、OSBBなどの規格に対応するクランクなどは今後いつまで供給されるかも分かりません。

加えてディスクブレーキ化に伴うスルーアクスルの採用です。クリックレリーズは問題だらけの古い規格なので無事に廃止できたこと自体は喜ばしいものの、それを置き換えるスルーアクスルはフレームの付属品に成り下がりました。

業界の不治の病とも言える独自規格の乱立と互換切捨ての例に漏れず、もちろんスルーアクスルも半ば専用品と化しています。どうして共用部品のネジピッチ数やスレッド長すら統一することができないのかと呆れるばかりなのですが、フレームを活かすためにスルーアクスルなどの消耗品の供給もよく考えなければなりません。

こんなことをすればするほど高級車の購買意欲が減退すると指摘しても分からないのか、最近ではステムもハンドルもシートポストも専用品化が進み、ますます製品寿命が縮んでいるように感じられます。

だからこそ安価なアルミバイクを使い捨てていくほうが現状では合理的という結論になるのです。

アルミバイクは好きではありませんけれども、安価で軽量で扱いやすく、しかも、スポーツバイクとして運用される分にはデメリットはほぼ無い、強いて言えば離島や豪雪地などで適切な保管をしていなかった場合に錆びやすいことぐらいしか挙げられないとなると、きわめて合理的な選択肢なのではないかと今では思います。

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