ロードバイク新車購入の心理的障壁


新しい車やMTBやロードバイクを購入するとき、普通は喜びと期待を感じるはずです。

間違っても手間が増えるだとか、処分方法はどうしようかという気持ちで購入することはないと思われます。

ましてや、それが誰もが認める憧れのブランド品である場合は。

それにも関わらず、およそ1年半にわたって探し続けてきた購入できる見込みが立ち、購入が現実味を帯びてきたら途端に関心が薄れて問題の方に意識が向くようになりました。

思えば4年前もこのメーカーのフレームを購入しようとしていました。




あのときは結局 CANYON を選択しましたけれども、改めて眺めてみると CANYON は本当に良くできたシステムを構築していることに気がつきます。

せっかく購入できるとなっても入手できるのはフレームセットのみで、コンポーネント、ステム、ハンドル、シートポスト、ホイール、それからボトムブラケットまで個別に揃えないといけないのでは気軽に購入には至りません。

このご時世では自転車のコンポーネントは常に品薄で、少し調べただけで完売や入荷未定が当たり前になっており「フレームセットだけ入手できたところで…」という状況に陥る事がありありと想像できます。

しかも、このフレームに採用されているのは BB386 というゴm… 整備することを考えると憂鬱になれる規格です。

それも店舗で実物を見せて頂いたところ、どうやら BB を外さないとケーブルの交換もできなさそうな構造になっています。

内部構造や配線を見て、このフレームに搭載するのは実質的に SRAM の無線電動変速で決まりだと思いました。


SRAM Force eTap AXS リアディレイラー グレー ミディアムケージ

ただでさえ BB386 のせいで特殊な BB を使わないと SHIMANO 互換にならないという無用の重荷を背負わされていることに加えて、この圧入BBをフレームから叩き出さないとケーブルの調整もできなさそうな構造から、できるだけケーブルは使わない方が無難に見えます。

しかも BB の例に漏れず、他のフレームでは一切使用する機会がない専用工具が要求されることはもちろん、特殊な部品なので価格も $200 ぐらいする上に在庫も安定しないという深い闇を抱えています。

そうすると SHIMANO は潔く諦めて SRAM DUB を導入し、このクランク選択の不自由さを解消しつつ、物理的にケーブルも抹消してしまうほかに救済策が思い付きません。

と言うか、この無意味に乱立する BB 規格によって消費者が不利益を被らないように誠実な対応を行ってるメーカーこそが SRAM です。

ただし問題なのは SRAM コンポーネント自体もあまり入手性が良くない点です。これ本当にどうにかならないのでしょうか。

さらにコンポーネントが解消したところで、まだステムやハンドルやシートポストの在庫を調べないとなりません。

冗談抜きに性能と品質が担保されていて、入手性が良好、しかも価格も最安値に近いものとなると、CANYON の完成車に付属してくる AERO COCKPIT が第一候補に上がってくる始末です。

それもう CANYON で良いんじゃないかな?

実際に CANYON フレームでは SHIMANO 規格の BB86 が採用されており、クランクの互換性や整備性で悩むことはありませんし、そもそも完成車で購入すれば、コンポーネントの在庫を自分で調べて取り寄せなくても最初から付属品として着いてきます。

しかも在庫があれば確実に買えます。ほんとうに簡単です。新車購入に伴う手間や心理障壁の少ない実によくできたシステムです。

フレームセットだけ購入できてもコンポーネントの入荷時期が分からないとか、せっかくジオメトリを見て適合したフレームを見つけても、乱立する不要な BB やヘッドセットの規格のせいで、取り付けられる部品が揃わないといった面倒ごとが発生しません。

しかし世界的な自転車の供給不足の例に漏れず、長期的に在庫が払底している CANYON は私の購入候補から外れている (というか、そもそも買えない) ので、購入するとしたら在庫が残っているメーカーのフレームセットになります。

自転車の供給不足は2021年中には解消しないことが見込まれ、来年以降の供給の見通しは不透明なのでフレームだけでも押さえておくのは、必ずしも間違いとは言えません。

間違いとは言えないのですが、ぜんぜん心がときめかない選択であることも事実です。少なくとも、これから新しいロードバイクを購入しようという態度ではないですね。

SRAM を使うのはおもしろそうではあるものの、MTB のブレーキフルードを SHIMANO のミネラルオイルにしてる関係上、なるべく消耗品を統一したいという事情が二の足を踏ませます。

タイヤもチェーンもスプロケットもブレーキフルードも一台毎に別系統の消耗品を保有するのは御免です。




そうすると、もうロードバイクは辞めて GRX で組んだグラベルバイクをロードバイク用途に代用するのが正しいとなってしまうのでしょうか。

毎月のように飛行機で持ち運べて、フラットペダルで普段着でも乗れる安価なグラベルバイクは、台湾一周ツアーに参加するために凄く欲しいところではありますが、今すぐに欲しい一台ではありません。

すぐに欲しい訳ではありませんけれども、この機会を逃すと次に入手できるのは何時になるのか分からないので、こちらを押さえておくのも間違いとは言えない気がしてきます。

いざツアー再開となってもバイクが無ければ参加できないですし、感染症の終息時期は予想がつかないので時期にあわせて準備を行う事も困難です。

年単位での長期欠品が表面化している状況で必要になってから探しても入手できる保証はないんですよね。

それならばとロードバイクのフレームセットもグラベルバイクも両方買ってしまうのも一つの手ですが、社会情勢の変化と個人的な転職によって転居や移住まで検討してる最中に所持品が増えるのも気分がのりません。

結局、買いたい時に買えないから、買える時に買わざるを得ず、そのために余計な手間がかかったり、大して出番のなかったり、いつ使えるようになるのか分からない所持品が増えていく事が心理的障壁の正体なのかもしれません。

その一因は間違いなく無用な規格の乱立にあります。

MTB も大概ですが後発の優位性があるにも関わらず、未だにスルーアクスルのピッチ規格すら統一できず、BB、ヘッドセット、クランク、フリーハブ、ブレーキフルードと歳際なく増殖していく独自規格に消費者が嫌悪感を抱いていることをロードバイク業界はもっと認識したほうが良いですね。

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