ロードバイクのカスタムビルトという選択


先の記事で述べた通り、ロードバイクを始めとするスポーツ自転車が品薄です。新型感染症に伴う公共交通忌避と外出禁止による運動不足の解消目的などの背景から自転車の需要は増えても、供給量は急増しません。

それどころか原材料不足や輸送費高騰、外出禁止による作業員不足の影響により生産数が低下する可能性まであります。

こうなると俄然魅力的な存在となるのがカスタムビルトです。一部ではフレームオーダーなどとも呼ばれる一点物の手作りフレームですね。

私にとっては全く興味が沸かない分野でしたが、考えてみると結構おもしろいものができるのではないかと思えて妄想が止まらなくなってきました。




そもそも、私がカスタムビルトに興味がなかった理由はただ一つだけで、乗り物の形状は素材と流体力学が決めると思っているからです。

手足の長さを測ろうが、体重を測ろうが、小さな力で楽に速く自転車を走らせようと思ったら、形状はメーカー既成品に似通ったものにしかなりませんし、調整の幅があるとしたらせいぜい重心の位置ぐらいしか思いつきません。

加えて、多くの人の体型は互いにそれほど差がないとも考えています。

かつてファッション通販サイト ZOZOTOWN は顧客の体型把握に ZOZOSUIT という計測用の衣類を使用していました。ところが、いざデータを集めてみると身長・体重・年代・性別の4変数から機械学習(おそらく単純な線形回帰式)で推定できる程度の違いしか体型に個人差はなかったようです。


【速報】「ZOZOSUITなくします」前澤社長、衝撃の発言。 | Business Insider Japan
https://www.businessinsider.jp/post-178621?utm_source=dlvr.it&utm_medium=twitter&utm_campaign=ff3a47a60c18531a9ca1a8499fdc17e7


正規分布がどうやって作られたのかを考えると、当然そうなるでしょうね。

直接的に身につける衣類ですら問題にならない程度のバラツキしかないのに、ステムやクランクやシートポストでいくらでも調整余地がある自転車のフレームサイズにそこまで神経質になって調整の利点を謳う必要性が私には分かりません。

では素材を選べることに利点があるかと言えば、メーカーの大量生産品に使われている FRP の方がアルミニウムより軽くて比曲げ剛性も高いぐらいです。みんな CFRP の C ばかりに注目しますが大事なのは FRP に使われているエポキシ樹脂の方です。

エポキシ樹脂は活用法が無限に存在するチート素材である一方、熱硬化性があって保管に難があります。そのため大量生産のメーカー品では非常によく用いられているにも関わらず、カスタムビルトの素材としてはあまり一般的ではありません。

むしろカスタムビルトの素材は、ありふれた金属である鉄やチタンばかりで、メーカー品のほうがアルミニウムにマグネシウムやスカンジウムを混ぜるなど冒険していたりします。

それならカスタムビルトの良さとは何かと考えると、メーカーが絶対に作らないようなバイクを作れることです。

たとえば、もし私がロードバイクのフレームをオーダーするなら、その時は前輪か後輪にハブダイナモを仕込みます。


SHIMANO ハブダイナモ DH-C2100-NQN ブラック 32H QR J2-A 6V-0.9W ADHC2100NQNBAL NEXUS(ネクサス)

それからヘッドチューブにフロントバッグを支える台座を設けて、その真下もしくはシートチューブにチャージコントローラと充電池を設置するためのケースを取り付けます。

あとはハブダイナモに接続する電源ケーブルを通せば走行中にバッテリの充電ができるというわけです。カスタムビルトなのでフォークに穴を空けて電源ケーブルを内装してしまうのも有りですね。

こうすれば、長距離ツーリングの際に電子機器の充電のためにホテルに宿泊する回数を減らせるので、行動の自由度が大きく向上します。

フロントバッグはハンドルバーから外してヘッドチューブの方に固定してしまえば、ハンドルを左右に振ったときの操作性にも悪影響を及ぼすこともないという発想です。




リアの方は太陽光パネルを設置するためのマウントを設けてもいいですし、キャリアを装着しても良いです。一般人に風洞実験はできなくても、計算で重心位置を求めたり、物理エンジンを使って側方転倒のシミュレーションを行うことは難しくはありません。

したがって何度か試行錯誤を繰り返せば、それなりに耐久性があるものができるのではないかと思われます。しかしながら、質量や抵抗が増えて軽快性や信頼性が犠牲になるので、おそらくメーカーが製造することはないでしょうね。

このように1から新しいものを作る関係上、いくらでも自分にとっての使いやすさを追求できるところ、残念ながら既成品から大きく離れたカスタムビルトのフレームを私は見たことがありません。

だからこそ、メーカーが研究開発予算と学位持ちの物理の専門家を使って最適化したフレームを敢えて避けて、わざわざ似たようなものをオーダーする意図が理解できなかったわけです。

しかし、一点物であればこそ、生産性を気にしてメーカーが避けるような構造を思い切って取り入れることもできますし、セールスにおいて重要とされる速さや軽さを捨てて利便性に特化しても良いわけです。

そうしたバイクを求めるのであればカスタムビルトも大いに有りです。いまのところ全く興味がありませんけれども、このままロードバイクの品薄が続くようであれば、カスタムビルトも選択肢に入れても良いかも知れませんね。

関連:
ロードバイクを買えない時代
ロードバイク新車購入の心理的障壁
アルミバイクに対する所感
グラベルバイクとは何か

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

Contact Us