Reynolds STRIKE は AERO とは異なる… しかしとても優秀かもしれない

Reynolds のロード用カーボンホイールには RZR と AERO と ALLROADS の3種類の商品構成があります。

1つ目の RZR はフラッグシップモデルで、英語圏では「究極の回転体」と比較されているところを目にします。ハブとスポークまでカーボン繊維 (と Boron fiber) で形成されており、前後輪あわせても質量 1.0kg を切るほど軽量だそうです。

対抗ホイールの Meilenstein と Gipfelsturm の方は何度も見たことがありますが、RZR に関しては自分自身で実物を見たことがないので詳しくは語れません。

2つ目の AERO は RZR に使われている技術を採用したミドルレンジモデルです。

約一年前に私が購入した AERO 46 もその一つで、現在は他にリム高の異なる AERO 65 と AERO 80 があります (過去には 72 と 90 がありました)。

こちらはカーボンリムに DT 240S ハブとスチールスポークを組み合わせた一般的なカーボンホイールです。

詳細は該当記事にありますので、興味のある方はそちらをご覧ください。

3つ目の ALLROADS もカーボンリムに合金ハブとスチールスポークを組み合わせたホイールです。

荒れた道に使える ATR の他に、リム高が異なる ATTACK (29mm) ASSAULT (41mm) STRIKE (62mm) の3つのモデルがあります。

これら ALLROADS ホイールとミドルレンジの AERO ホイールとの相違点はリムの形状とリム幅、そしてスポークの本数 (ただし最もディープな STRIKE だけは AERO と同じ本数) ですが、実物を細かく見ていくとカタログに載っていないところでも様々な点が異なります。

ここで偶然 CANYON の完成車に付属してきた STRIKE (62mm) と前述の AERO 46 が両方とも手元にあるので、それらを使って細かな違いを見ていこうと思います。




まず AERO と STRIKE とではハブの形状が異なります。

AERO の後輪は左右ともに2クロスですが、STRIKE はノンドライブサイドがラジアル組みです。

STRIKE Tubeless

AERO 46 Tubular

目立たないところではスポークも異なっており、AERO が DT Aerolite なのに対して STRIKE は DT Aero comp を使用しています。

スポークが DT ということは、ハブも DT 製なのでしょうけれども、今回は完成車外しのため確証がありません。

製品番号らしきフォントを見て「ポーランド工場製かな」と推測できるぐらい DT に魂を売り渡している私が見ても DT っぽいので、高確率で DT 製だとは思われますが。

ハブが異なるならスキュワも異なります。

私のことを良く知っている方は、私がアルミやチタンのような軽量な金属が嫌い (特にフレームやスポークやボルトの素材としては大嫌い) なことをご存知かと思われます。

話は脱線しますが一応は説明しておくと、アルミ素材が嫌いなのは板厚を稼げるので剛性を高める目的に適していても、疲労限度がなく耐久性に乏しいこと。

チタンについては摩擦係数が不安定なことに加えて、加工が難しく、室温でもクリープ性があるためです。

豊富な知識と卓越した技能を持つ整備士が点検した上でレースで使用するなら問題ないでしょうが、公道上で常用するなら鉄の方が安全だと思ってるわけです。

そんなアンチ軽量スキュワな私からしても STRIKE の方はちょっと… 市販品に交換したくなります。

AEROのスキュワはデザイン、質量、素材の全てについて言うことなし。最高です。

上が AERO 下が STRIKE

ハブもリムもスポークも、更に言えば (私の AERO 46 は Tubular なので) 使用するタイヤも異なるので、同じ Reynolds でも両者の性格は大きく異なります。

しかしリム高に対して非常に軽量な点は変わりません。

62mm のリム高に 25c のクリンチャータイヤとチューブ、リムテープが着いている割に前輪 1,033g 後輪 1,449g と質量は大変に優秀です。

(※ カーボンクリンチャーホイール用のタイヤレバーを所持していないので、やむなく完成車外しそのままの状態で計測しています)

特に後輪は DURA-ACE とは言え、11-28T の歯車が11枚とスポークのプロテクターが着いての数値です。

前後セットでカタログ値 1,635g という STRIKE の質量は伊達ではないかもしれません。

AERO 46 の方は Tubular なこともあって前後輪をあわせての質量 1,230g という恐ろしい数値が出ていますが、実際に履いて走ってみるととんでもなく速いです。

常用したくなるほどに気持ち良く速いのですが、私の住んでいる東京という違法駐車天国では 自転車が普通に走れるまともな道路 性能を活かせる場所がないので、イベント参加に遠出する際にしか出番のない不憫なホイールでもあります。

私が活かせていないだけで Reynolds のホイールはとにかく軽くてよく回るので、加速が必要とされるあらゆる場面でも役立つ上、Lifetime Crash Replacement という保証体制が優秀なので本来はとても使いやすいものです。

販売価格が安いだけのカーボンホイールよりも、品質的にも維持費的にも安心して使い倒せます (詳細は AERO 46 の記事を見てください)。

STRIKE も構造を見るだけで AERO とは根本的に異なる性格をしていることが分かりますが、これはこれで速いんだろうなと使う場面を考えるのが楽しくなってきます。

練習用ホイールを自分で組む・非対称リム編

私が練習用に使っているのは手組ホイールですが、スポークテンションを限界近くまで上げて石見グランフォンド太魯閣ヒルクライムといった本格的なヒルクライムで何度も酷使し続けていたらスポークが切れました

切れてしまったものは仕方がないので、自分でスポークを張り替えて再利用します。

自分で組むのは面倒なのですが、転居によってホイールを組んでくださった馴染みのショップから500kmも離れてしまったので止むを得ません。

せっかく組み替えるからには、この機会に後輪専用のオフセットリムを採用します。公称 (カタログスペック) 450g のDT SWISS RR440 シンメトリック 700Cというリムです。

実測値はこの通り。たいへん精度が良いですね。

先日まで利用していた MavicのOPenProリム と比較して 15g ほど重くなってしまいますが仕方ありません。

この新しいリムと先日まで利用していた Dura-Ace ハブで後輪を組みます。

先に述べたようにホイールを組むには正しいスポークの長さを知っていなければならないのですが、DT Swiss Spoke calculator を使うとほぼ正確な長さを自動で推定してくれます。

DURA-ACE FH-9000とRR440の組み合わせで、スポーク本数28本、編み方は2クロスを選択すると左が 287.3mm、同じく右が 285.2mm と算出されますので、ショップでこの長さにスポークを切って頂きます。

スポークの種類は星工業のHOSHI #15 ストレートと悩みましたが、もともとDTというメーカーが好きなのとリムにもDT製品を採用しているので、今回は DT Swiss Champion 1.8mm を選択します。


重量は左右ともに 84g でした。長さが微妙に違う割に重さが同じというのも妙な気がしますが、計測器の方が精度が出ていない可能性もあるので参考程度に見ておきます。

ニップルには特に拘りがないので、整備性を考えて付属品の真鍮製を使います。

こちらは1つ1gという具合で、重さから数を推定する場合に便利ですね。

部品が揃いましたら、えいやっと組み上げてしまいます。

何度かホイールを組んでコツを掴んでしまえば難しい事はありませんが、振れ取りは何度やっても大変で時間が掛かります。

この段階からオフセットリムの効果は出ているようで、上下左右の振れをとってホイールのセンターを出してやると、ドライブサイドのスポークテンションが 95kgf 、ノンドライブサイドが 85kgf あたりに落ち着きます。



例によって精度が出ているか不明ですが、PARKTOOL スポークテンションメーター TM-1で計測して、Wheel Tension App に測定値を入れてやると簡単にスポークテンションを求められます。

軽さを犠牲にしても非対称にした甲斐がありますね。

ところでこの非対称リムですが、ノンドライブサイドと呼ばれる左側にリムを寄せます。

下の画像のような他の完組ホイールがあれば、それを参考にすれば良いのですが、リム本体には向きが記載されていないので注意してください。

ここまで組んで見て、リムテームとタイヤを装着し、3本ローラーに乗せてクランクを回してみます。

どこかしらに問題があるかと思いきや、普通にホイールとして使えてしまいました。

意外なほど、あっさりと組み上げられてしまいましたが、ちゃんとホイールとして機能していることに自分自身が驚きます。

カーボンチューブラーホイールの使い心地について語ろうと思う

私が所有しているホイールは現在4組ほどありますが、その中で唯一つ採用回数が極端に低いホイールがあります。

The 46 AERO Tubular と名付けられた REYNOLDS のカーボンホイールです。

昨年6月に購入して軽くインプレして以来、なんとブログ上では全く出番がありません。

走行会などで出番があるので記事にしていないだけで 500km 以上は使われているのですが、それでも走行距離は述べ 1,000km にも届いていません。

そもそもの購入目的がカーボンホイールを自身で手組みする際のベンチマークにしたいというものだったので、走らなくても構わないと言えば構わないホイールではあります。

しかし、せっかくの高性能ホイールを所有していながらも、敢えて使わないことには、それなりの理由があります。




流行らないチューブラータイヤ

実際に自身で使ってみて、個人的にはカーボンチューブラーホイールも有りではないかなと思っています。

The 46 AERO に関して述べれば、走行性能の面では文句のつけようもありません。

軽くて加速が良いのでヒルクライムでもレースでも使えます。それでいてワイドリムに対応した太めのタイヤのお陰で乗り心地も悪くありません。ディープなのに横風も気になりません。どこで使っても楽しい不思議なホイールです。

ところが、このワイドリムに対応した太めのチューブラータイヤ (700 x 25c) は在庫が極端に少ないのか、実店舗でも通販でも時期を逃すと購入が難しくなります。

クリンチャータイヤであればセール時にまとめて購入して、手持ちのストック数に応じて買い足していけば良いのですが、700 x 25c のチューブラータイヤは見つけた時にまとめて予備タイヤを購入しておかなければ、その年にはもう安心して乗れなくなってしまいます。

チューブラータイヤは細いタイヤを使用していた頃に流行していた旧い規格です。

当時から主流であった 19c / 20c / 22c の何れかのタイヤであればまだしも、最近の流行であるワイドリムに対応しているものは絶対数そのものが少ないのです。

そして今後も数が増えていくことは余り期待できません。

現在のデファクトスタンダードはクリンチャータイヤであり、メーカーが積極的に開発投資を行なっているのはチューブレスタイヤだからです。

設計が旧いが故に構造が複雑で製造工程が煩雑、その為に価格も高く、タイヤ換装の手間も大きいチューブラータイヤは単純に流行らないのです。

消耗品の在庫も少ないREYNOLDS

タイヤも特殊であれば、ブレーキパッドも特殊です。

一般的なカーボンホイールであれば、お好みに応じてブラックプリンスやコルクなど使用すれば良いところなのですが、REYNOLDSのホイールは特殊な耐熱加工処理を施している事からブレーキシューも純正品を用いるように指定しています。

このブレーキシューも在庫が常時ある訳ではないので、見つけた時に購入してストックしておかなければなりません。

なぜか日本のアマゾンには在庫があるみたいですが…


レイノルズ Cryo Blue Pads 4個入 シマノ用

走行面でのデメリットは少ない

カーボンホイールの使用にあたりブレーキ関係を気にされる方が多いと思いますが、今までに使用中に不安になった事は数える程しかありません。

私が走るのは基本的に奥多摩の山間部なので、気温30℃に迫る真夏の間に都民の森 (檜原街道) の20kmも続く下り坂や最高斜度22%と言われる今川峠の急坂で使用しましたが、止まれなくなったりリムが溶けるほど発熱したりという事は経験していません。

ただしブレーキングには気を遣い、常時、引き続けたりする事は避けて熱が籠らない使い方を意識しています。

結局のところ、使用頻度が低いのはカーボンという素材よりも、使用している消耗品が特殊で入手性があまり良くない事の方が要因として大きいです。

しかし、入手性の良くない太めのチューブラータイヤも、メーカー純正のブレーキパッドも軽さと性能という絶対的な優位性を持っている為に、レースでは確かな需要があります。

流行らないから価格も割高で取扱いも面倒ですが、機械式時計のように趣味性の極致として楽しむと覚悟を決めた人には最高の走行性能を約束してくれます。

そんな尖った部分も含めて、個人的にはカーボンチューブラーホイールも有りではないかなと思っています。