ミニベロが欲しいけれども購入できない

頻繁に出張に出かけていると、定期的にミニベロが欲しくなります。

出先の足としてスーツケースに入れて持ち運びができ、サイクリングウェアとビンディングシューズが無くても楽しめて、走行性能もそれなりに高水準 — 1台もっていると便利なんだろうなと見かける度に思います。

そして、いざ店舗を訪れると、今度は小径車の規格の多さに圧倒されて二の足を踏むことになります。

自転車趣味でもない限り、ロードバイクでも相当に分かりづらい世界だと言うのに、ミニベロと比較すればロードバイク選びは単純で分かりやすいと断言できるほどです。

車輪とタイヤの大きさは基本的に共通、クランクやチェーンなどの消耗品も基本的に2種類(SHIMANO / SRAM または Campagnolo の2つとそれらの互換品)のみ、フレームも (剛性云々は別として) 入門者が検案すべき項目は製造者と素材と形状ぐらいといった具合に業界の全体像がつかみやすいです。

レース機材として基準が定められているため、市販のブランド車であればハズレはありませんが、飛び抜けて個性的なモデルもありません。

これがミニベロになると、まず車輪の大きさからして統一の基準がありません。

よく見かけるのは 16 インチと 20 インチのものですが、何度か購入を検討している私でさえ、未だにどちらが主流なのかさえも分かりません (ほかに 14 インチのモデルも少なからずあります)。

出かけた先での交換部品の入手性は、輪行を前提としたモデルの多いミニベロにとって最重要事項のはずなのですが、統一の規格がないのでどのモデルを購入しておけば、安心して輪行で使えるのかが全く分かりません。

仮にメジャーな 20 インチを選択すれば、それで終わりかと言えば、そこから更にタイヤやチューブの規格が複数あるといった具合です。

皮肉なことに本来は輪行に向いていない 700C のロードバイク※の方が、使用者の多さと統一規格のお陰で圧倒的に安心感があります。

レースで勝つための競技用機材の方が、旅先での移動手段として信頼できるとはどういうことなのか。

携帯電話の電波も届かないような北米や台湾の山の中で、ビンディングペダルが壊れたり、サイドカットでタイヤが破れたりしても、経験上、ロードバイクなら実際に何とかなっています。

ミニベロを持ち出して、たとえばアルプスの山村などを訪れているときに同じことが起こったら、その場で交換部品の調達ができるのか — 私自身が試していないので決めつけることはできませんけど、難しいのではないかと思われます。

700C のチューブや 11 速のチェーンはあっても、ミニベロ用のタイヤやチェーンは入手できるでしょうか。




車輪はまだ良い方で、フレームに至っては専用部品の塊と言いたくなるほど、車種ごとに個性があります。

同一のメーカーであっても車種ごとに使わている部品が全く違います。そもそも車輪の大きさも、ブレーキも、フレーム形状も何もかもが違うのです。

この選びにくさを何とかしてほしいです。

高性能でユーザーも多くて選びやすいミニベロと言えば BROMPTON ですが、価格的にロードバイクのエントリーモデルよりも盗難や破損が怖いです。

もっとも BROMPTON は BROMPTON が好きな人が購入するためのバイクで、飛行機輪行で酷使するためのものではありませんけどね。

内装変速でパンク修理 (車輪の着脱) が難しく、しかもデフォルトでは着脱に工具が要求される自転車を飛行機に乗せて (つまり、一度、完全にタイヤの空気を抜いて) 使用するのはさすがに気が引けます。

むしろ、エントリーモデルのクロモリロードバイクの方が、ミニベロよりも輪行では使いやすいと言えるかもしれません。

エントリーモデルのクロモリロードバイクは空港で放り投げられても割れないですし、ミニベロよりも軽量ですし、本体価格だけで見ればミニベロと同等か少し安いぐらいです。

走行性能においては比較にすらなりません。直進安定性やコーナリングの容易さ、段差や振動への耐性など、物理的に考えれば誰にでも分かることですが、全くの別物です。

それに加えて、何よりも世界中にユーザーがいて、レース機材だけに規格も同一なので、交換部品の入手性が高いことがロードバイクの最大の利点です。

ただし、かさばるので、持ち運びには難があります。

ミニベロにはロードバイクほどの走行性能は求めませんけど、もっと気軽に使えて、どこにでも駐輪できる取り回しの良さは欲しいところです。

もしくはパニアバッグに収納できる専用のケースがあって、カフェやレストランの前で折りたたんで店内に持ち込んだり、ロッカーに預けて美術館を回るような使い方ができるなら $2,000 までは出しても良いかなと思えます。

しかし、ある程度の走行性能を求めると中途半端に大きくなって、ロードバイクよりも運搬しにくくなりそうに思えて、そこでまた躊躇してしまいます。

ロードバイクと比較して小さくはなっても (それでもまだ大きい) 軽くはならない (むしろ重くなる) ので、飛行機の預け入れ荷物の制限が厳しいことに変わりがないのが地味に痛いところです。

機動性を重視するのであれば、訪れた先でレンタルバイクを借りることを考えてもいいでしょうし。

高速走行に特化していて使いづらそうなロードバイクの方が、軽量性と消耗品の入手性を活かして、飛行機での持ち運びと滞在先での移動手段として意外と健闘しています。

こうしたロードバイクや街乗りのシティサイクルと比較したときのミニベロの良いところは、携帯性と (乗り手の体型や用途を問わない) 汎用性の高さです。

常にそばに置いておけて、どこにでも持っていける、家族や友人に貸し出しても良いし、1台あれば何でもできるという夢と浪漫を追求できるのがミニベロの良いところですが、冷静に眺めてみるとミニベロだからこその苦労も結構ありそうに思えてきます。

専用部品の多さ、(モデルの継続性も含めた)消耗品の入手性、耐久性、維持費、悪路走破性 — 収納性や携帯性との両立のために走行性能を犠牲にしているミニベロだからこそ考えなくてはならないことが、少なからずあります。

ミニベロは購入前から考えなくてはならないことだらけです。個人的にはここが購入への一番の障壁になっていると思います。

でも、見ていると欲しくなる魅力が確かにあります。

いろいろな用途に使えて、収納スペースも少なくて済むので、あの形や大きさが好きな人は迷わず購入して損はないのでしょうが、一方でミニベロから他の車種に乗り換えたという人の意見も理解できます。


※クイックレリーズはレース中のパンクに対応するためのもので、輪行目的に作られたものではありません。輪行時に車輪を外さなくてはならないのは、私の知る限り日本と香港ぐらいであり、車輪の着脱と輪行を結びつけて考える方が一般的とは思えません。

今時のマニュアルレンズ – Wide-Heliar という選択

一眼レフに対するミラーレスカメラの優位点として話題になる瞳オートフォーカス(AF)。

人物のポートレート撮影の失敗が格段に少なくなるほか、最近では動物にも対応し表現の幅が広がることが期待されています。この機能がなによりも役に立つのは、観光地などで誰かに写真を撮ってもらう場面においてではないでしょうか。

カメラ操作に慣れている人であればともかく、その場にたまたま居合わせた人に自分の記念撮影を依頼すると、もう見事にピントは合っていないわ、手ブレしているわと悲惨なことになっていることが日常的に生じていました。

どうして、こんなことになっているのだろうと設定を見直してみると、自分にとっては当たり前になっていた絞り優先やシャッタースピード優先、もしくはマニュアルモードが原因となっていることが思い当たりました。

それ以降はカメラを他人に貸す場合には積極的にプログラムオートに設定して、カスタム機能で割り当てた瞳AFを使用してもらうようにしたところ、よっぽど距離を離れていない限りは、ピント合わせに失敗することはなくなりました。

そんなオートフォーカス全盛の今日にあっても、マニュアルフォーカスが燦々と輝く分野が2つあります。マクロと超広角です。




精緻なピント合わせが必要なマクロ撮影

マクロとは被写体を大きく写す撮影で、花や昆虫や雪の結晶などがよく被写体となります。

マクロ撮影ではオートフォーカスが(速度的にも、精度的にも)頼りになりませんし、どこを拡大したいのかを最終的には自分の眼で選ぶことになるので、マニュアルフォーカスに最適化されたレンズのほうがオートフォーカス機能を併せ持つレンズよりも使いやすかったりします。

具体的にはピントリングが違います。マニュアルフォーカスレンズは手でリングを回してピントを調整するようにできていますので、物凄く細かいところまで微調整が効きますし、動かしている途中で勝手にピントが動いたりしません。マクロのMFレンズは機能で選べる実用品です。

もう1つの超広角のMFレンズも、また別の理由で極めて実用的です。

パンフォーカスが通常の超広角

マクロレンズの被写体が極端に小さいものなら、超広角の被写体は極端に大きな風景となることが一般的です。

風景撮影に求められるのは、大きく写せるレンズの広さ(画角)、隅々まで写せるレンズの解像度、直線をまっすぐな直線として描写できる歪曲の少なさといったレンズそのものの描画性能であることがほとんどです。

ボケを求められることは多くないので、星空を撮影しない場合には明るささえ問題にならないかもしれません。ピント合わせは無限遠となり、オートフォーカスは有っても無くても、ほとんど変わりません。

Wide-Heliar で言えば、2.0 m 以上も離れていれば無限遠です。ピントリングを回すまでもなく、ほとんどの場合は最初から合焦していますので、いきなり微調整に入れます。

こうした条件であれば、マニュアルフォーカスであることのデメリットを感じることはほとんどなく、むしろ、構造がシンプルであるがゆえの軽量性や携帯性、堅牢性、低価格などのメリットが大きいです。

なにしろ焦点距離 15mm の超広角レンズが(ライカMマウントの場合)たった 247g で実売価格は8万円ほどです。

同じ焦点距離 15mm あたりのレンズでは、質量 500g から 600g ほどになることが通常で、価格も15万円から20万円超になることが珍しくありません。


VoightLander 単焦点レンズ SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Aspherical III VM フルサイズ対応 130135 SWヘリアー15F4.5VM3

オートフォーカスを使えないという、超広角ではデメリットにならないほどのデメリットを甘受するだけで、こんなに簡単に超広角を楽しむことができるのかと衝撃を受けました。

Wide-Heliar を知って超広角レンズに対する認識が大きく変わりました。

それまでは望遠レンズの次ぐらいに大きくて重たいこと(そして高価格)が当たり前だと思っていた(フルサイズの)超広角レンズが、パンケーキレンズと同じ感覚でポケットに入れて持ち運べるなんて、最初は意味が分かりませんでした。

焦点距離 15mm という広さは、どんな山でも活躍できるぐらいの十分な広さを持っています。

この焦点距離(と 35mm までを1本で使いたくて)Nikon 広角ズームレンズ AF-P DX NIKKOR 10-20mm f/4.5-5.6G VR をボディごと購入したことがあるぐらいです。

ところが実際にはズーム機能はあまり使わず、後から見返しても(最も広角の換算)15mm と(最も望遠の換算)35mm しか使っていないことが分かったので、あまり普段は常用することのない超広角の 15mm を簡単に持ち運べることは、私にとっては大きな意味があります。

世界最広角

ところで、この Wide-Heliar には 15mm のほか、12mm と 10mm というバリエーションがあります。

このうち、10mm には世界最広角という魅力的な肩書があります。すなわち 35mm フルサイズのセンサーにおいて、フィッシュアイなどの特殊なレンズを除いて、もっとも広い範囲を写せるレンズということです。

超広角でおなじみの SONY ウエアラブルカメラ アクションカム HDR-AS300 だって 35mm フルサイズに換算すると焦点距離 17mm 相当ですから、凄すぎて意味が分かりません。


VoightLander 単焦点広角レンズ HELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 ASPHERICAL VM VMマウント対応 ブラック 130142

ただし、10mm と 12mm はドーム型にレンズが飛び出しているので ND フィルターや PL フィルターを使用することができないほか、開放 F/5.6 とレンズとしては暗い方になります。

むしろ、この小ささ、軽さで F/4.5 の明るさがあり、フィルターも装着できる 15mm の方が特殊なのかもしれません。

どれを選んでよいのか、物凄く迷うところですが、私の場合はコガネムシと衝突することがあるのでフィルターを使用したいこと、なるべく荷物を軽量にしたいことなどから 15mm を選択しました。

しかし、そうした事情さえなければ、世界最広角の 10mm が極めて魅力的に見えます。聞いたところでは 10mm が一番人気があるみたいです。

超広角でも、どれぐらいの差があるのか、どの距離がもっとも使いやすいのかは、下のサイトを見てみるのが最もわかりやすいです。

Voigtlander 10mm vs 12mm vs 15mm: Wide-Angle Lenses for Sony E-mount – The complete comparison
https://mirrorlesscomparison.com/e-mount-lenses/voigtlander-10mm-vs-12mm-vs-15mm/

アダプター使用を前提とした VM マウントだけに、どのカメラでも使える小型軽量の超広角レンズ Wide-Heliar。その使いやすさと表現力を知ってしまうと、文字通りに視野が広がります。

実質、ほぼいつもパンフォーカスでピントリングを大きく動かすことはあまりないので、マニュアルフォーカスという一言で敬遠してしまうのは余りにも勿体ないです。

語ると長くなるのと、言論の自由のない共産国では使用機会が乏しいので、使用感は来月あたりに海峡の反対側にでも行った際に書くかもしれません。

退屈な日常から抜け出せなかったアクションカムの行方

アクションカムの定義を調べると、小さくて、丈夫で、防水性をもち、アウトドアスポーツで使われ、しばしばヘルメットやサーフボードに取り付けられるといった説明が続きます。

いわば、エクストリームスポーツの興奮と感動を映像に閉じ込めて、共有するためのツールなのかもしれません。

珊瑚礁の青い海、白銀の雪山、地表から 3,000m上昇した雲の上など、アクションカムが活躍する場面はまさに非日常の世界です。

それでは日常においては全く出番がないかと言えば、そのようなことはなく、耐衝撃性や防滴性能を活かしてロードバイク用のドライブレコーダーの役割を果たしたり、携帯性の良さを活かして発表の練習に用いたり、安価な定点観測カメラとして利用できたりと日々の記録に使用する目的に対しては最適です。




ヘルメットに付けておいても邪魔にならないほどの軽さと小ささ、スキーやトレイルランニングにも使える衝撃耐性から、ポケットに入れて運搬できるという取り回しの良さが最大の利点になっています。

しかし、それでも思うところは有ります。スマートフォンではいけないのかと。

同じように持ち歩いているだけあって、最新のスマートフォンは携帯性も防水性も備えています。機種を選べば広角レンズも使えますし、USB 充電で撮影時間も稼げるので、アクションカムでしか撮れない映像というのは限られます。

手動で詳細な設定を行うスチルカメラであればともかく、スイッチを押したまま、触れることもないアクションカムとスマートフォン内蔵カメラに違いと言えるほどの違いはあるのかと。

一つ挙げるとしたら、手ブレ補正機能に有為な差があるかもしれません。

最近のアクションカムは強力な補正機能を有しており、出力される映像も安定しています。とくに最新の機種は順当に改良されていて、良いものに仕上がっています。

しかし、私の持っている SONY HDR-AS200V(現在は生産中止)のような古い機種や話題の中華アクションカムでは、手ブレ補正もあまり期待できません。

アクションカムの電子式手ブレ補正がどのようなものなのかは、実際に見ていただいた方が速いので、興味をお持ちの方は以下の動画をどうぞ。

これを書きたいがために、わざわざ大嶼山まで試験撮影に行ってきましたよ。何をやっているのだろうなと自分でも思いましたけどね。

もう一つは手ブレや振動に加えて GPS 信号を見失ったり、途中で録画が途切れたりする「アクションカムあるある」動画です。こちらも興味をお持ちの方だけどうぞ。

このようにアクションカムを用いると、悪くないと言えば悪くない、振動が気になると言えば気になる映像を手軽に撮影することが可能です。

ここから手ブレや振動や傾きなどを無くそうと思えば、動かさないように三脚に固定してしまうか (私が記録用に使っているときは主にこうしてます) ギンバルのようなスタビライザーを使用するしかありません。

もしくは電池が持続する限り、映像を取り続けて「使える」部分を切り取って編集することになります。

アクションカムの連続撮影を行う場合、最長で 2 時間程度の長さの映像を撮れます。出力ファイルの大きさは 3GB から 5GB 程度になります。この編集だけでも大変です。

結果的に撮ることが目的となって、撮った映像を見返すことには重点をおかない運用をするようになってしまいました。

ただ、私の場合は1年間に最低 5,000km は自転車に乗っているので、事故や保険対策のために映像を撮ること自体が重要です。その使命を果たしつつ、日々の映像記録にも使える HDR-AS200V には実は満足しています。

記録を残すことが目的なら、古い機種でも、中華アクションカムでも十分です。

体験や感動を誰かと共有するのであれば、スマートフォンとの差別化の意味でも、強力な手ブレ補正を備えた最新の機種の方がよい映像を残せます。

そういう意味ではアクションカムをアクションカムとして使用するのであれば、その時点でもっとも性能の良いフラッグシップモデルこそがお薦めです。

ダイビングに持ち出して海に沈めたり、ロープスライドに括り付けて峡谷を越えたり、体に取り付けて旅の記録を撮ったり、フラッグシップモデルは持っているだけで、いくらでも夢が広がります。

もちろん、それ以外のモデルもアクションカムとして非日常の場面に持ち出すことはできますが、機能がやや制限される分だけ、良い映像を共有するための難易度は少しばかり高くなります。

そうしたアウトドアやスポーツから離れて、ポケットに入れて持ち歩けるビデオカメラとして捉えてみると、アクションカムはとても便利です。

運動時に身につけていても邪魔にならないほど小型ですし、防滴性能もあるので普通のビデオカメラと違って、運搬や取り扱いに気を遣うことはまずありません。

三脚に固定して生き物の観察に使ったり、砂浜のような普通のカメラを使いたくない場所に設置して時間の経過を撮影したり、あるいは敢えて小学生ぐらいの子どもに貸し出して好きに使わせてみたりと、考えてみればいくらでも使いみちはあります。

強力な手ブレ補正や防水性能を備えた最新のフラッグシップモデル以外は、そういった日常の一場面を切り取る道具としての使用のほうが、本来の性能を発揮できるというのは言いすぎでしょうか。

映像の質を追求すれば、センサーサイズの大きなミラーレスカメラとの競合になり、携帯性を追求すればスマートフォンとの競合になる難しいところで、なんとか生き残ってくれないかと強く願います。