今時のマニュアルレンズ – Wide-Heliar という選択

一眼レフに対するミラーレスカメラの優位点として話題になる瞳オートフォーカス(AF)。

人物のポートレート撮影の失敗が格段に少なくなるほか、最近では動物にも対応し表現の幅が広がることが期待されています。この機能がなによりも役に立つのは、観光地などで誰かに写真を撮ってもらう場面においてではないでしょうか。

カメラ操作に慣れている人であればともかく、その場にたまたま居合わせた人に自分の記念撮影を依頼すると、もう見事にピントは合っていないわ、手ブレしているわと悲惨なことになっていることが日常的に生じていました。

どうして、こんなことになっているのだろうと設定を見直してみると、自分にとっては当たり前になっていた絞り優先やシャッタースピード優先、もしくはマニュアルモードが原因となっていることが思い当たりました。

それ以降はカメラを他人に貸す場合には積極的にプログラムオートに設定して、カスタム機能で割り当てた瞳AFを使用してもらうようにしたところ、よっぽど距離を離れていない限りは、ピント合わせに失敗することはなくなりました。

そんなオートフォーカス全盛の今日にあっても、マニュアルフォーカスが燦々と輝く分野が2つあります。マクロと超広角です。




精緻なピント合わせが必要なマクロ撮影

マクロとは被写体を大きく写す撮影で、花や昆虫や雪の結晶などがよく被写体となります。

マクロ撮影ではオートフォーカスが(速度的にも、精度的にも)頼りになりませんし、どこを拡大したいのかを最終的には自分の眼で選ぶことになるので、マニュアルフォーカスに最適化されたレンズのほうがオートフォーカス機能を併せ持つレンズよりも使いやすかったりします。

具体的にはピントリングが違います。マニュアルフォーカスレンズは手でリングを回してピントを調整するようにできていますので、物凄く細かいところまで微調整が効きますし、動かしている途中で勝手にピントが動いたりしません。マクロのMFレンズは機能で選べる実用品です。

もう1つの超広角のMFレンズも、また別の理由で極めて実用的です。

パンフォーカスが通常の超広角

マクロレンズの被写体が極端に小さいものなら、超広角の被写体は極端に大きな風景となることが一般的です。

風景撮影に求められるのは、大きく写せるレンズの広さ(画角)、隅々まで写せるレンズの解像度、直線をまっすぐな直線として描写できる歪曲の少なさといったレンズそのものの描画性能であることがほとんどです。

ボケを求められることは多くないので、星空を撮影しない場合には明るささえ問題にならないかもしれません。ピント合わせは無限遠となり、オートフォーカスは有っても無くても、ほとんど変わりません。

Wide-Heliar で言えば、2.0 m 以上も離れていれば無限遠です。ピントリングを回すまでもなく、ほとんどの場合は最初から合焦していますので、いきなり微調整に入れます。

こうした条件であれば、マニュアルフォーカスであることのデメリットを感じることはほとんどなく、むしろ、構造がシンプルであるがゆえの軽量性や携帯性、堅牢性、低価格などのメリットが大きいです。

なにしろ焦点距離 15mm の超広角レンズが(ライカMマウントの場合)たった 247g で実売価格は8万円ほどです。

同じ焦点距離 15mm あたりのレンズでは、質量 500g から 600g ほどになることが通常で、価格も15万円から20万円超になることが珍しくありません。


VoightLander 単焦点レンズ SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Aspherical III VM フルサイズ対応 130135 SWヘリアー15F4.5VM3

オートフォーカスを使えないという、超広角ではデメリットにならないほどのデメリットを甘受するだけで、こんなに簡単に超広角を楽しむことができるのかと衝撃を受けました。

Wide-Heliar を知って超広角レンズに対する認識が大きく変わりました。

それまでは望遠レンズの次ぐらいに大きくて重たいこと(そして高価格)が当たり前だと思っていた(フルサイズの)超広角レンズが、パンケーキレンズと同じ感覚でポケットに入れて持ち運べるなんて、最初は意味が分かりませんでした。

焦点距離 15mm という広さは、どんな山でも活躍できるぐらいの十分な広さを持っています。

この焦点距離(と 35mm までを1本で使いたくて)Nikon 広角ズームレンズ AF-P DX NIKKOR 10-20mm f/4.5-5.6G VR をボディごと購入したことがあるぐらいです。

ところが実際にはズーム機能はあまり使わず、後から見返しても(最も広角の換算)15mm と(最も望遠の換算)35mm しか使っていないことが分かったので、あまり普段は常用することのない超広角の 15mm を簡単に持ち運べることは、私にとっては大きな意味があります。

世界最広角

ところで、この Wide-Heliar には 15mm のほか、12mm と 10mm というバリエーションがあります。

このうち、10mm には世界最広角という魅力的な肩書があります。すなわち 35mm フルサイズのセンサーにおいて、フィッシュアイなどの特殊なレンズを除いて、もっとも広い範囲を写せるレンズということです。

超広角でおなじみの SONY ウエアラブルカメラ アクションカム HDR-AS300 だって 35mm フルサイズに換算すると焦点距離 17mm 相当ですから、凄すぎて意味が分かりません。


VoightLander 単焦点広角レンズ HELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 ASPHERICAL VM VMマウント対応 ブラック 130142

ただし、10mm と 12mm はドーム型にレンズが飛び出しているので ND フィルターや PL フィルターを使用することができないほか、開放 F/5.6 とレンズとしては暗い方になります。

むしろ、この小ささ、軽さで F/4.5 の明るさがあり、フィルターも装着できる 15mm の方が特殊なのかもしれません。

どれを選んでよいのか、物凄く迷うところですが、私の場合はコガネムシと衝突することがあるのでフィルターを使用したいこと、なるべく荷物を軽量にしたいことなどから 15mm を選択しました。

しかし、そうした事情さえなければ、世界最広角の 10mm が極めて魅力的に見えます。聞いたところでは 10mm が一番人気があるみたいです。

超広角でも、どれぐらいの差があるのか、どの距離がもっとも使いやすいのかは、下のサイトを見てみるのが最もわかりやすいです。

Voigtlander 10mm vs 12mm vs 15mm: Wide-Angle Lenses for Sony E-mount – The complete comparison
https://mirrorlesscomparison.com/e-mount-lenses/voigtlander-10mm-vs-12mm-vs-15mm/

アダプター使用を前提とした VM マウントだけに、どのカメラでも使える小型軽量の超広角レンズ Wide-Heliar。その使いやすさと表現力を知ってしまうと、文字通りに視野が広がります。

実質、ほぼいつもパンフォーカスでピントリングを大きく動かすことはあまりないので、マニュアルフォーカスという一言で敬遠してしまうのは余りにも勿体ないです。

語ると長くなるのと、言論の自由のない共産国では使用機会が乏しいので、使用感は来月あたりに海峡の反対側にでも行った際に書くかもしれません。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

Contact Us