自転車とカメラは相性が悪い

今更、言うまでもないことですが、自転車とカメラは互いに相性最悪です。

自転車では (最低質量が設定されているレース以外では) 軽ければ軽いほど良いという世界であり、修理道具すらサポートカーに携行を任せて、自身では何も持たないことが理想です。

カメラの世界は反対に性能が良いものほど、大きく、重たく、携帯性が悪くなっていく傾向があります。

自転車の振動や風雨、汗や蒸気、直射日光や寒暖差など、精密機械であるカメラにとって良いことは一つもありません。

自転車にとっても、撮影の度に停止していたのでは機材に余計な負担が掛かるばかりですし、いちいち止まっていたのでは爽快感も何もないですし、撮影していないときはカメラは余計な荷物です。

はっきり言うと邪魔です。

カメラを持ち出すのは ただの私のエゴ です。

本当にカメラと相性が良いのは旅であり、私の場合は旅に自転車を持ち込んでいるだけです。

自転車は国際免許証がなくても乗れるし、転居の際にも荷物として飛行機に載せられるので便利だなというのが私の自転車生活の原点ですが、それは今も大きくは変わりません。

かつて「転勤族の子ども」として考えていたことを、大人になって出張の名目で繰り返しているに過ぎません。

私にとって都合が良い面もあって、基本的にはやりたいからやっているので、まじめに相性を考えると実は最悪です。

もし仮に自転車とカメラが相性がいいという意見があったとしたら、それは事実関係の整理が不十分なだけの疑似相関のようなものなので、真に受けてはいけません。

別にコウノトリが増えたからと言って出生率が上がるわけではないですし、雨が降るのはカエルが鳴いたからではありません。

相性が悪いけれども、使いたいからこそ、みんな工夫しているわけです。




自転車で遊ぶには荷物が少ないほうが良いので、基本的には小型で軽量であることが一番です。

防水や耐衝撃はあったら嬉しいのですが、防水性を追求すると大型化する傾向にあるので、優先順位はそれほど高くはありません。

ただし、小型軽量を追求しすぎると「何も持たないほうが良い」という極論に行き着いて、最終的にはスマートフォンで良いとなるので画質と操作性も重要です。

スマートフォンのカメラでは何がいけないのかというと、見返したときにつまらないので撮る気力がなくなります。

個人的な意見では、スマホで撮影した絶景写真ほど悲しいものはないです。

二度と訪れない瞬間の記録なので消すに消せません。かと言って、見ていて楽しくないので、見返す気にもならずに扱いに困ります。

もちろん、スマホで十分に満足という人は、それでいいと思います。

満足しているというのは幸せなこと (求めても得られるとは限らないこと) なので、わざわざ相性の悪いカメラに手を出して不幸になることはありません。 手を出したいという人は止めません

スマホが真に偉大だったのは「誰もが常にカメラを持ち歩く」ことを当たり前にして、デジカメを進化させたことの一点に尽きます。

スマホに対抗するためにメーカー各社が開発した高級コンデジは、その大きさと画質から自転車に持ち出すカメラの最有力候補になります。

ポケットに収納できて、高画質で、ズームもできて、ある意味、理想的ではありますが、どれも一眼レフなどと比べると性能のわりに高額で、操作性も犠牲になっている面もあり、使うほどに不便に感じるというデメリットもあります。

個人的には電動ズームレンズは嫌いです。タッチパネルは濡れた手では扱いにくいので、物理的なダイアルのほうが良いです。ファインダーがないと晴天時の屋外は何が写っているのか見えません。

そして、コンデジであっても画質を追求するほど大型化することは避けられず、本体だけならミラーレスカメラと大きさや重さが変わらないこともあります。

これがミラーレスカメラになると、今度は基本的にポケットに収納することができなくなります。

ストラップでたすき掛け状態にして吊るすか、リュックサックに収納して持ち運ぶことになります。

どうせ運搬方法は変わらないので、ミラーレスが選択肢に入るのであれば、お好みで一眼レフを選択されてもいいと思います。

一眼レフの方がバッテリーの持続時間が長く、悪環境に強く、今現在ではレンズも割安です。

ミラーレスは小型軽量で、露出の設定が容易で、オールドから最新の超高性能レンズまでレンズを選び放題という利点があります。

どちらもコンデジに比べると圧倒的に操作性が良く、使い続けていてもストレスが少なく、頑丈で故障に強いモデルもあり、しかも、安く購入できる方法がたくさんあるなど良いことづくめですが、持ち運びには苦労します。

(自転車では濡らしたり、落としたりする頻度が飛躍的に高まるので安いことは重要です。反対に高速オートフォーカスなどの最新の機能は必須ではありません。)

まずは自身が持ち運べる限界を知っておく必要があります。

最初の 30km 程度は大丈夫でも、距離を走り続けていると徐々に辛くなってきたり、首や肩に痛みがでてきたりすることがあります。

私の場合は、経験上、カメラとレンズを合わせて 920g × 1日あたり 300km までの走行は許容できますけど、これ以上は嫌です。

平地しか走らない場合でも持ちたくありません。

しかも、これも余裕があるわけではなく、翌日に肩こりが出るなどの支障が出るけど、安全に持ち運べなくはないという限界に近い重さです。

そして、重さの次に羞恥心に打ち克つ必要があります。

ジャージ姿に大きなカメラを持っている己の姿が滑稽で、いまだに笑えてしまいます。

誰もいない山の中、あるいは誰もがカメラを持ち歩いているような名所なら構わないのですが、サイクリングロードのようなただの人が多いだけの場所では、気恥ずかしい思いをすることも少なくありません。

持っていても不自然ではない大きさで、どこにでも持ち運べて、グループライドのときにも不自然ではないものとなると、当然ながらコンデジのほうが携行性が良いです。

しかし、後から見たときに思い返す、空気の冷たさ、生ぬるさ、蒸し暑さ、雨や森や枯れ草の臭い、風を切る感触を強烈に思い出させるのは大きいカメラの方です。

苦労して持ち運び、きちんと設定を考えているということもあるのでしょうけれども。

つまり、何が言いたいかと言えば、相性が良くないからこそ、いろいろなカメラを用意して、どの場面で何が使えるのかを試したくなります。

運搬方法と羞恥心の苦労を乗り越えても、何を持っていくかという選択の苦労が待っているわけです。

その苦労を乗り越えれば、撮影の楽しさと喜びが待っているわけでもありますが。

では、何をどう選べば良いのか、というのはまた別の機会にでも。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

Contact Us