フルサイズのミラーレスカメラ α7 の発売以来、私はずっと SONY Eマウントのカメラやレンズを使い続けてきました。
とにかく携帯性重視の Sonnar T* FE 35mm F2.8 ZA や超広角で単焦点の ZEISS Batis 2.8/18、色収差の抑制に振り切った MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical のような強烈な個性を持つ単焦点レンズを集めて楽しんでいます。
それはそれで最高なのですけれども、誰にでも使いやすい標準ズームレンズは SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G の1本しか持っていません。
フルサイズEマウント以外のレンズは全部手放してしまってから久しいので、そもそもズームレンズはこれしか持っていないのですけどね。
この SONY の 24-105mm F4 ミラーレス用ズームレンズの Canon 版である RF24-105mm F4L IS USM を眺めていたら SONY との思想の違いが反映されていておもしろかったので、Canon ミラーレス一眼 カメラ EOS RP に興味が湧いてきました。
Canon 中望遠ズームレンズ RF24-105mm F4L IS USM EOSR対応 RF24-10540LIS
この2本のレンズはフルサイズ・ミラーレスカメラ用のレンズでありフォーマットは同じです。
ほぼ同じ時期に同じ用途で発売されたレンズであり、撮影できる広さの範囲を決める焦点距離 (24mm – 105mm) も、レンズの明るさを決める開放F値 (F/4.0) も、本体の大きさに影響するフィルター径 (77mm) も同じです。
MTF を見るとコントラストや解像度もほとんど同じです。
厳密に言うと SONY の方が、ほんの少しだけコントラストも解像度も良い数字が出ていますが、実用上で有為な差がでる場面がどれくらいあるのかは分からないぐらいの差なので、ほとんど同じと言ってしまっても語弊はないと思います。
ほかに目に見える違いと言えば、重さと撮影距離です。
SONY SEL24105G | Canon RF24-10540LIS | |
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発売日 | 2017年11月25日 | 2018年10月25日 |
質量 | 663g | 700g |
最短撮影距離 | 38cm | 45cm |
最大撮影倍率 | 31% | 24% |
防塵・防滴 | ○ |
カタログスペックで見比べると SONY の方が被写体に近づけて、写したいものを強調することができます。Canon の方は公式が防塵・防滴を謳っているので海辺や山頂などの絶景シーンで使用する際に安心感があります。
これだけの情報で比べると、両者はほとんど同じで、一見すると SONY の方が少し良さそうです。しかし、カタログスペックでは見えないところは結構違います。
SONY 24-105mm F4 の設計ではレンズを通して歪んでしまった像をそのまま残して、出力のデジタルデータを修正することで歪みを解消する方針を取っているように見えます。
どんなレンズでも大なり小なり像の歪みや色のズレは出ますので、大きさや重さや解像度などの各要素とのバランスを考えながら、どれだけ歪みを解消していくのかという点にレンズの個性があります。
このレンズの設計者はソフトウェアで補正できる部分には敢えて手を付けずに、より高い解像度の獲得や本体の小型化などに注力しているのかもしれません。
その反対に Canon の (少なくとも) RFマウントの 24-105mm F4 レンズでは光学的に歪みを解消しようとしている努力が見られます。
ここで一応述べておきますと、私の場合は大学(院)の専攻からして通信と言うか情報なので、電子補正には全く抵抗がありません。
入力は何であれ、標本化、量子化されている時点でデジタルデータです。データは加工して利用するものなので、当然ながら補正も画像データという出力を得るためのプロセスの一つに見えます。
標本化以前にレンズを通して入ってきた光を光検出素子で電荷に変換してる時点で、まず最初の段階からして変換を行っているのに何を今更という気分ですね。
もちろん、いくら電子補正に抵抗がないとは言え、歪みは少ないほうが良いに決まっています。補正は大雑把にいうと画像の編集や加工のようなものなので、補正量が大きくなるほどデジタルデータとしての画像は劣化します。
よく効く強い薬のほうが副作用が大きいのと同じ意味で、補正ありきで歪みが大きいのもどうかなと言う気がします。
ただし SONY の E 24-105 F4 に限ったことではなく、FUJIFILM 標準ズームレンズ XF16-55mm F2.8 R LM WR や Zマウントの NIKKOR Z 24-70mm f/4S も似た傾向にあります。
その点、Canon RF 24-105 F4 は光学的に歪みを少なくして、減光や色の滲みの方をより積極的に電子補正しているように見えます。
まあ、専用の編集ソフトウェアを利用して確認しようと思わなければ、普通は目にすることさえない「中間出力」について、あれこれ言ったところで実用性の面では何の影響もないのですけど、数字やグラフを眺めているのが楽しい機材マニアなので仕方がありません。
どこかに書いたかどうか覚えていませんけれども、私は Canon を選択するならフルサイズの一眼レフが最も良い (メーカーの個性が最大限に発揮されている) と考えているんですよ。
そう考えている上に一眼レフを使いこなせないので、今まで縁がありませんでしたけど、ミラーレスカメラに一眼レフと同じぐらい注力するのであれば、真剣に使ってみたいと思いました。
こんなことを書き続けているのは、未だに趣味の自転車用途のカメラが決まらないからです。
ホテルを一歩出た瞬間に湿気でレンズが曇るような亜熱帯、砂埃が舞う海岸、雲の中に突っ込む高山の上など、自転車で走って楽しいところはカメラにとって非常に悪い場所ばかりなので、たった2年間で水没2回に結露1回なんてことになります。
カメラを持って転んだことはありませんけど、仮に落車すれば全損のリスクまであります。撮影するためには止まらないといけないので、自転車的に見ても面倒です。カメラと自転車って本当に相性最悪だと思います。
それでも自転車でしか行けないところもたくさんあって、そういうところほど撮影するのが楽しかったりするものです。
Canon の新型ミラーレスカメラが良さそうだったら、将来的にこの枠で Canon を使ってみたいと期待が膨らみます。一年後、二年後あたりがどうなっているのか今からとても楽しみですね。