Sony ILCE-7 α7II から α7R III に乗り換えた理由

先日まで SONY α7 II ILCE-7M2 というミラーレスカメラを使っていたのですが、今回の帰国を機に α7R III ILCE-7RM3 という後継機を新調して乗り換えました。

前者は2014年12月に発売された約2400万画素センサーを搭載したベーシックモデルであるのに対し、後者は2017年11月発売の高解像度モデルです。センサーの画素数が約4200万もある点がベーシックモデルとの大きな違いです。

約2年前のモデルとは言え、強力な手ブレ補正と35mmフルサイズCMOSセンサーを備えた小型カメラは使いやすく、あと2年ぐらいは α7 II を使い倒すつもりでいたのですが、いろいろと比較しているうちに α7R III に乗り換えることに決めました。

最大の決め手は、もちろん α7R III の高解像度に魅力を感じて… ではなくて、キャッシュバックとキャンペーンです。

私個人は α7 II とその後継機 α7 III ILCE-7M3 の約2400万画素で十分すぎると感じています。一眼レフのフラッグシップモデルと比較しても遜色ないですし。

非可逆圧縮してるので参考としては微妙なところですが、風景写真でも α7 II で画質に不満を覚えたことはありません。

ZEISS Batis 2.8/18 ƒ/13.0 1/60 ISO 100

FE 55mm F1.8 ZA ƒ/5.6 1/500 ISO 100

FE 35mm F2.8 ZA ƒ/4.0 1/160 ISO 640

それよりも α7 II を使用していて、どうしても不便に感じることが3点もありました。

不満点をよく見ていくと、α7 III / α7R III からは大きく改善されていることが分かり、乗り換えに大きく心が傾きました。

具体的には次のようにまとめられます。




その1 電池の消耗が気になる

過去に私は初代 α7 から α7 II に乗り換えたのですが、α7 II になってからバッテリーの消費が常に気になるようになりました。

仕様状況によっては使用開始から1時間も経たないうちに、バッテリー残量 100% から 70% 近くにまで減ったこともあります。

安心して使えるのは2時間ぐらいまでの散策やパーティなどに限られ、友人たちと旅行や登山に出かけようものなら予備のバッテリーは必須。

2日以上も充電できないような環境で使用する場合には、かなり頭を悩ませることになります。

その影響から自然と必要最低限以上の撮影はしないようになり、予備で使用している SONY α6000 ILCE-6000 で代用したり、写真好きの友人が一人でもいる場合には他人に任せてしまう癖がつきました。

最終的には僅か 5,000 回程度しかシャッターを切らないまま、本機を手放すに至ります。

このように私にとっては不満しかなかったバッテリーですが、カメラ本体から充電でき、さらに上記の α6000 系のサブカメラと共有できる点は便利ではありました。

次の不満点は瞳オートフォーカスです。

その2 女の子は移り気

カメラに興味関心のない友人知人は、デジタルカメラのオートフォーカスが信用できないことを知りません。

撮影を終えて、自宅の大きなモニターで見返した時になって初めてピントが微妙に合っていないことに気がつくのは、カメラを好きな人にとっては珍しいことではないかもしれませんが、それ以外の人にとっては想像さえもしていない事態です。

したがって合焦位置や絞り値を変化させながら、同じ場所から同じ対象を何度も撮影するわけですが、人物写真で同じことをしようとすると高確率で不審に思われます。

自分から撮って欲しいと言ってきたにも拘わらず、のんびりと撮影を待ってはくれません。むしろ1回シャッターを切っただけでポーズを崩して駆け寄って来るほうが普通です。

そのたった1回のシャッターチャンスで確実に合焦させるために、瞳オートフォーカスが簡単に使えればどれだけ良いことかと過去に何度も思いました。

α7 II にも瞳オートフォーカス機能はあるのですが、使用するまでに一手間かかります。この一手間で被写体 (とくに2人以上の場合) の気が変わってしまうことが少なくない割合で発生するので、機能があるだけでは不完全なのです。

自分が撮影する側ではなく、他の人に撮影を依頼する場合には、なおのこと簡単かつ確実に動作させなければなりません。

私自身、過去にカメラを貸して嫌になるほど失敗しています。フルサイズにZEISSレンズを付けていてもピンボケでは台無しです。

これを解消できるなら、乗り換える意味は大きいと個人的には思えました。

そして最後は α7 II そのものの問題ではないので、ここで持ち出すのはフェアではないのは承知しているのですが、今から購入される方には参考となりそうなので挙げておきます。

その3 ケーブルが多すぎる

α7 II は microUSB ケーブルを使用してカメラ本体からバッテリーを充電できます。この機能自体は素晴らしく、microUSB ケーブルも2014年の発売時点では便利だったのですが、時勢は USB Type-C です。

いつもであれば、また新しい規格を増やしやがってと怒りを覚えるところですが、この USB Type-C に関して言えば、スマートフォンや Nintendo Switch だけでなくノートパソコンの充電にも利用できるので画期的です。

2017年に MacBook Pro を購入したときには USB Type-C が不便で仕方がありませんでしたが、最新の Chromebook も Surface Book も Thinkpad も USB Type-C 充電に対応しています。

同じケーブルを複数のデバイスに使いまわせるということは、荷物も減らせると同時に冗長性も保ちやすくなるので旅行時などには特に利便性が向上します。

私などは持ち運び用のSSDまで早々に WDBK3E0010PSL-WESN USB Type-C に変えてしまったので、カメラだけのために microUSB ケーブルを持ち運ぶのは若干の不便さを感じます。

α7 III / α7R III になって USB Type-C が採用されたことは、私にとってはメリットしかなく乗り換えの最後のひと押しとなりました。

気になる点は価格です。

α7 II から乗り換える費用に見合うか

α7 II / R II と α7 III / R III の機能と価格差でお悩みの方がおられるかもしれませんが、2017年に α7 II を購入した私にとっても α7 III / R III との機能の相違は新規購入を検討する余地があるのか不明でした。

レシートを確認すると購入当時の定価は16万円だったのですが、会員特典なのか、株主優待なのか店舗側で謎の2万円引き、キャンペーンで2万円引きで実質12万円で購入したことになっていました。

現時点で α7 II を下取りに出したときの価格がおよそ5万円から7万円ほどだったので、5,000枚の画像に60,000円を支払ったものとすると乗り換えることが勿体なく思えてきます。

いくつか使いづらい点はあるものの、出力される画像を見れば新機種との極端な違いはなく、まだまだ使用できるわけです。

私は連写撮影は使わず、スポーツ撮影もしないので、いくつか欲しい機能はあるにしろ α7 III に乗り換えるという選択肢はなくなりました。

それならと R III に目を向けてみると、キャッシュバック(※現在は終了)で実質3万円引き、キャンペーンで1万円引きと投げ売りにも等しい価格で売られています。

これを α7 II の下取り価格に上乗せすれば、最初から α7 II を買わずに α7 R III だけを購入した場合と大差無いと思えてきました。

初代 α7 に α7 II と乗り換えてきた私ですが、 α7 R に手を出すのは初めてです。というのもローパスフィルターレスに抵抗があります。

ローパスフィルター

α7 III と R III の大きな違いは画素数の他にはローパスフィルターの有無です。

細かな点ではAFの測距点数や動画性能、常用ISO感度、手ブレ補正などにも違いはあるのですが、スチルカメラとしての両者の性格の差異を明確に表しています。

カメラの話題ではネガティブに語られることが多いローパスフィルターですが、有ったほうが良いどころか、素人考えでは無いと困るんじゃないかとさえ思えます。

詳しくはリンク先を見てください(これだけカメラ談義が盛んなのに日本語がないのは何故だろう)。

Anti-aliasing filter
https://en.wikipedia.org/wiki/Anti-aliasing_filter

とても大雑把に言うとレンズから取り入れた光(の周波数)の一部を除去することで解像度を下げるフィルターです。

解像度がセンサーの分解能を超えると出力される画像がおかしくなることがある (詳しくは aliasing で検索してください)ので、意図的に画像をボカして対応しているわけです。

こんな問題が生じる理由は、デジタルカメラは入力の光を光検出素子 (詳しくは pinned-photodiodes で検索して以下略)で電荷に変換し、それをさらに電圧(アナログ信号)に変換し、その後に標本化、量子化して最終的にデジタル信号(大雑把に言うとデジタル画像)に変換しているからです。

問題が生じるのはアナログの連続信号をデジタルの離散信号に変換する過程でして、ここで最大周波数の2倍以下の周波数で標本化すると高周波の成分が失われたり、元の信号よりも低い周波数が生じて出力がおかしくなります(信号処理の教科書に必ず出てくるので詳しく知りたい方は一読されると参考になるかと思われます)。本来の被写体と掛け離れた画像が出力される原因にはこういうものがあります。

もう一つの問題は光検出素子そのものです。

光検出素子は赤緑青(光の三原色)の何れか1色しか検出できません。このため、画素1ピクセルでは1色の光度を検出して、残り2色は周囲の画素の光度から推定値を補間するようにできています (詳しくは Bayer array で検索 以下略)。

この補間がおかしなことにならないように、解像度を犠牲して入力を調整してくれるのもローパスフィルターの役割です。

無くしちゃって大丈夫なのかなという個人的に思うのですが、メーカー各社からローパスフィルターレスモデルが普通に販売されているところを見ると(レンズの解像度に比較して)センサーの分解能が十分に高ければ、実用上はあまり問題ないのかもしれません(※ 実際にどうなるのかは分かりません)。

フィルターありの α7 III では 35.6 x 23.8 mm のセンサーサイズに pixel pitch 5.9 µm に対して、フィルターレスの α7R III では 35.9 x 24.0 mm に 4.5 µm なので解像度も体感できそうなぐらい異なってくるのではないかという気がするのは確かです(詳しくは Nyquist frequency 以下略)。

Camera Sensor Pixel Pitch List
https://letmaik.github.io/pixelpitch/index.html

一言でまとめると、フィルターがないことに対して根拠もなく構造に不安を覚えるわけですが、センサーの分解能を信じればきっと大丈夫、信じる者は救われると言う気分です。もちろん、トレードオフで解像度があがるという利点はあります。

せっかくなので、この機会に高解像度を体感してみようと浪費を正当化します。

α7 II との2台持ち

どうせ単焦点レンズばかり使うのだから、予備の SONY α6000 ILCE-6000 を売却して α7 を2台体制にするのも良いのではないかとも思いつきました。

α7 系のカメラを2台以上も同時に使用されている方もおられれるのは存じています。

しかし、α7 II と α7 R III とではバッテリーやケーブル類を共有できないことから、考えを改めました。

α7 III と α7 R III の2台持ちであれば(高感度やオートフォーカスや出力ファイルサイズの違いを活かして)撮影場面ごとに使い分ける意味が感じられましたが、アクセサリーが丸ごと入れ替わる α7 II と α7 R III であれば荷物が増えるデメリットのほうが大きいと判断しました。

それに私の場合は ISO 6400 以下しか使わないことが通常なので、使いどころを見失って持て余す未来が見えます。

登山や自転車旅行などの過酷な環境で使うことも考えましたが適当なレンズな見当たらないので、いろいろ考えて手放すことにしました。

機材と一緒に気持ちを切り替えてと行きたいところですが、しばらく出張続きで来年の春まで使う機会があるのか、ないのか。

日本語ともども使い方を忘れそうです。

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