鳴滝・団子石・道祖神峠 – 石岡ヒルクライム周回

茨城と言えば関東平野の中心であり、遮るもののない広大な平地がどこまでも広がっていることで有名です。

都道府県面積では大分や島根、宮城よりも小さいのに、可住地面積では兵庫や静岡、岩手すらをも上回る国内第4位という具合です。

本当に笑えるほど平野ばかりです。

その茨城の中央にありながら、まったく茨城らしくない不思議な土地が石岡です。周辺の三方向を山に囲まれて、ここだけ、まるで高原地帯のような光景が拝めます。

調べてみると、石岡市は日本百名山の一つ筑波山、国内第二の湖である霞ケ浦、5つしか現存しない古代の風土記の舞台を市内に有し、関東でもっとも歴史のある土地の一つでもあるという立派な肩書を持っています。

そのはずなのですが・・・

県庁所在地でもなく、文化史跡では鹿島神宮の方が有名で、市内にあるはずの不動峠や風返し峠は筑波のイメージが強すぎ、茨城県という範囲の中でさえ存在感が希薄な印象を受けます。

当地を最初に訪れた時には「ネタみたいな激坂が密集してる農村」ぐらいの印象しか持ちませんでした。

しかし、同時に自転車で散歩して回ると楽しいとも感じました。

いまや関東でもっともサイクリストに優しい街になりつつある土浦、人も車も多い筑波に比べると、観光地化されていない分だけ交通量も少ないので、雰囲気の良い緑地、丘陵地帯、田園地帯を独り占めできます。

そして辺縁部に行くと飽きるほど激坂も存在します。

具体的には筑波山、加波山、難台山、愛宕山といった西部の山々です。この辺りの山地は標高は控えめながら、どれも勾配が急であり、登り始めから峠までの平均斜度は 7% を越えていることが一般的です。

もっとも緩いと思われる上曽峠や湯袋峠においても平均斜度 6.8% (最大 10% 超) という強烈な数字が出ます。片側1車線の普通の道路でも、登り始めると斜度 9% ぐらいは当たり前のようにでてきますし、最大斜度は 14% 以上に達することも珍しくありません。

加えて、勾配がきつい区間と平坦な区間が明確に分かれていて、見かけ上の平均斜度が下がる傾向にあります。

主要な山間道路と平野部はきれいに整備されていて路面状況も良好ですが、人が少ない峠道は苔に覆われていて、その上に泥や落葉の層ができていることが良くあります。そして、たまに路上に倒木が放置されています。




本日、訪れたのは道祖神峠と団子石峠という北部の峠道です。経路沿いの滝を含めながら、この山塊の周囲をめぐると一周 50km 近くの調度いい距離になります。

道祖神峠
道祖神峠(どうろくしんとうげ)は石岡市と笠間市の市境にあります。石岡の峠道の中では、路面状況はもっとも良いです。

全体を通して片側1車線の舗装の綺麗な道が続きます。

この峠の笠間市側はヒルクライム入門者にとても良さそうな道なのですが、石岡市側はとんでもない激坂です。

その長さといい、斜度といい八王子の和田峠にそっくり、最大瞬間斜度は和田峠のそれを上回っているのではないかと思えるほどです。

ただし途中に平坦区間を含みますので、最初から最後まで登り続ける和田峠と比較すると平均斜度は控えめな数値が出ます。

距離 平均斜度
和田峠 (八王子側) 3.5km 10.3%
道祖神峠 (石岡側) 3.2km 7.8%

また和田峠は車1台がギリギリ通れるぐらいの細い道路であるのに対して、こちらは(台数自体はあまり多くはありませんが)車も普通に通行する道路です。

路肩が広いのはいいですが、左端の白線沿いを常時走行することになりますので、ワインディングが本当に辛いです。

登りきっても林道の入り口があるだけで展望は開けません。

団子石峠
団子石峠(だんごいしとうげ)は道祖神峠の手前にある峠です。こちらも石岡市と笠間市の市境になっていますが、峠を抜けた先の方角が違います。

道祖神峠は JR 水戸線の笠間駅の方につながっています。一方で団子石峠の方は JR 常磐線の岩間駅前に至ります。

道祖神峠と比較すると斜度は大したことはありませんが、樹木に覆われて薄暗く、湧水が豊富で路面が湿って苔むしているので注意が必要です。

ダンシングで登ると、苔のせいでトラクションが掛からずに後輪が空転したり、道路上の泥ごと前輪がスリップしてハンドルを持っていかれることがあります。


路面状況は良好とは言い難いですが、後述する滝路と比べるとまだマシな部類です。

石岡の坂らしく、ここも勾配がきつくなったり、ゆるくなったりを繰り返します。ほかの峠道よりも特徴的なのはグレーチングが多くて滑りやすいことです。

数多くのグレーチングがあるものの、石岡市側はわりと平穏に峠まで辿り着けます。ところが笠間市(岩間駅)側に入ると表情が一変し、瞬間最高斜度 15% の危険な坂に変貌します。

何が危険かと言うと、路面が泥や苔に覆われていて、ブレーキを掛けるとスリップするんですよ。かと言って急勾配の下り坂なので、ブレーキを掛けないとガードレールを乗り越えて滑落する危険性が高いです。

できることなら、団子石峠の笠間市側はあまり通りたくないですね。

なお、道祖神峠の石岡市側から登り始めて、帰りに団子石峠の笠間市側から戻ってくると行きも帰りも斜度 14% 超の激坂ヒルクライム周回を実現できます。

団子石峠の方は路面があまり良くないので、通られる予定がある方はオフロードタイヤ仕様の MTB またはシクロクロスで来られた方が無難かもしれません。

鳴滝
鳴滝は峠道ではなく、滝の入り口へと至る登山道に近いです。

しっかりとアスファルト舗装されていて、車や二輪車も通ります。

自転車で登られる人も先述の団子石峠よりもよっぽど多いらしく、セグメントも置かれています。

距離は 1.2km ほどと短く、通り抜けもできませんが、緑が濃くて雰囲気が良いのと勾配がきつくて登り甲斐がある点が楽しいです。


斜度は高めで、油断していると前輪が浮くようなところもあります。

また路面状況はあまり芳しくなく、全体的に滑りやすい点に注意が必要です。落葉や泥、苔に覆われていて路面が見えないところもあります。

しかし、アスファルトが陥没していたり、落石でサイドカットする危険性は低いです。

登りきると見事な滝がありますので、時間があるようでしたら立ち寄ってみられると良いかもしれません。

馬滝
団子石峠や鳴滝は、まだ「ヒルクライム」が可能な山道でした。

馬滝は完全なネタ坂です。ファンシーな看板に導かれて立ち寄ってみると、とんでもない場所に連れて行かれます。

まず、舗装がアスファルトではありません。

激坂で有名な十三塚峠も途中からアスファルトではなくなりますけれども、馬滝は最初の入り口から最後までアスファルト舗装がありません。

そんな坂道なので、当然ながら道幅は狭いですし、勾配も急です。

ここは公道ではなくて林道なのではないかとも思いましたが、市の観光協会にも取り上げられていますし、駐車場もありましたので、車両で通行しても一応は大丈夫なようです。

法令的には通行しても大丈夫なようですが、物理的にはあまり大丈夫ではありません。少なくともスリックタイヤでは、まともに走行できません。

滝の近くだけあって常に路面が濡れているほか、落葉、落枝、泥などの割合が高く、急勾配とも相まって非常にスリップしやすいです。

おそらく最大斜度は 13% ぐらいはありそうです。

今までも登りきれなかった坂というのは、あまり無いのですけれども、ここだけはまともに走行できずに登坂を断念しました。

自転車を降りて押し歩きしながら滝の方に向かうと、巨大なオオムラサキが視界を横切っていきました。

実際には、石岡の坂の中でも市街地に近い場所にあるのですが、遭難しそうなほどの山奥に来た雰囲気があります。

いろいろ寄り道しながら遊んでいると、走行距離 50km 程度で獲得標高 700m ぐらい登れます。

走り続けて血糖値が下がってきたら、経路上にいくつも存在するセイコーマートで美味しい北海道アイスをいつでも頂けます。

これがあるから石岡の山巡りは辞められません。


上空から見下ろすような見事な展望もなければ、話題になるような絶景もありません。

ただ普通に散歩していることが楽しくて、ときどきネタみたいな激坂に遭遇する。石岡というのはそういうところです。

日本の食パンの最高峰を味わう

日本のパンは美味しいです。

いままでに仕事や私用で香港や中国やベトナムやインドネシアや台湾など、いろいろなところに住んだり、滞在したりしてきました。

その中でもパンが美味しい国と言えば、この辺りでは日本が一番だと思います。

私、個人的には、日本の白いパンはあまり好物ではないのですけれども、それを差し置いても美味しいものは美味しいです。

日本の白いパンとは全粒粉を素材にした、柔らかくて、弾力性のつよい、日本中どこにでもある「一般的な」パンのことです。

それ以外に何があるのかと言えば、全粒粉に糖蜜を混ぜた茶色いパンやライ麦のパンなど、実はいろいろな種類のパンがあります。

そちらも専門店を訪れれば簡単に見つかるのですが、せっかく東京にいるうちに日本式パンの最高峰を食べてみようと、ときどき、思い立ったように買いに出かけることがあります。




行きつけの店舗があるわけではなく、評判が良い店を順番に訪れていることが多いです。

今回は西銀座の超有名店にやってきました。

有名店でも自分で訪れるのは初めてです。そもそも私は京橋や銀座あたりに来ることは滅多にありません。

自宅から歩いてくるとそれなりに遠く、混雑する電車には絶対に乗りたくないので、自然と行動範囲から外れます。

有名店だけに店舗の方も混雑していていましたが、大雨の連休中日を狙って訪れたので、通常よりは空いていたのかもしれません。

いずれにしても、東京では何をするにしても並ばされるのは当たり前なので、有名専門店でも通常の百貨店と同じぐらいの行列で済んだのは、幸運であったと思います。

店舗の中に入らないうちから、焼きたてのパンの香りが心地よく、雨が降り続いていることを忘れてしまうほどでした。

入店すると会計待ちの行列に並んでいるうちに整理券を渡されて、そこでメニューを見ながら注文する仕組みのようです。

と言っても、メニューは3種類しかありません。それもイングリッシュブレッドは朝しか焼かないらしいので、時間帯によっては実質的に食パンだけになります。まさに専門店です。

パンが焼き上がると同時に会計が始まり、整理券の順番に焼きたてのパンが渡されます。

文字通りの焼き立てで暖かいパンが渡されますので、雨の中を歩いて持ち帰っても香りも食感も損なわれることはありませんでした。

外側はクッキーの用に香ばしく、内側はやわらかく、しっとりとしていて、強い弾力性があります。

甘さは控えめで、そのまま食べても美味しいです。むしろ、ジャムやチーズを塗ると香りや風味を損なうので、勿体ないかもしれません。

パンそのものを味わうつもりで何もつけずに食すか、フレンチトーストにするのが一番おいしく頂けるのではないかと思いました。

「当日中にそのまま食べて欲しい」と言われるのが分かるぐらい、上質な香りと風味があります。

これをオーブンで再加熱すると、パンの内側の水分が損なわれ、弾力性を失って普通のトーストになります。

そうなることを避けたいのでしょうけれども、米のように保湿性と弾力性に富んだパンを私は強く求めてはいませんので、パンそのものの味を楽しんだ翌日は 170℃ で2分間ほど温めてから食すことにしました。

食感と風味は変わってしまいますが、これはこれでサンドウィッチに使っても良いのではないかと。

いずれにしても、評判の有名店だけあって、何もつけない食パンだけでも食べれられるぐらいに美味しいです。やっぱり日本のパンは美味しいですね。

行く前から分かった 積丹 自転車ツーリングの難しさ

自転車乗りでトンネルが好きな人は、あまりいないかと思われます。

たしかに夏は涼しいのですが、暗くて視界は悪いですし、狭くて逃げ場がありません。

降雨や漏水などで路面状況がよく見えない時などは、トンネル走行に恐怖しか感じません。

しかも、わざわざ費用と時間を掛けてトンネルを通すようなところは、基本的に交通量が多いところばかりです。

「峠道を登ってでもトンネルなんか通りたくない」と思うのは、自転車に乗り慣れてくると良くあることです(乗り始めたばかりで、上り坂が苦手なときは信じられないでしょうけれども)。

北海道の積丹半島は、地図で眺めているだけでも嫌になってくるぐらいトンネルだらけなのですが、北海道の内外から数多の自転車乗りを引き寄せます。

それだけ、魅力的だという証左なのでしょうが、2019年現在、道外から社会人が訪れようとすると難易度が高い土地でもあります。




2019年と限定しているのは、北海道新幹線が倶知安や新小樽まで延伸されれば、劇的にアクセスが改善されて訪れやすくなるからです。

また、本州の社会人にとっては困難ですが、たとえば長期休暇をとれる学生にとっては、日数さえ掛ければ無理なく到着できますので、それほど難易度は高くないかもしれません。

難易度をあげている要素は主に3つありまして、具体的には以下のようになります。

  1. 北海道自体の遠さ (それによって生じる) 現地到着時間の遅さ
  2. 出発地点から積丹半島までのアクセス
  3. 活動時間の短さ

ご存知の通り、東京や大洗から自転車を持って北海道に行こうとすると、北斗(新函館)や苫小牧といった都市が出発地点になります。

この時点で積丹半島から 150km から 200km 近く離れています。しかも、(まあ良くあることなのですが)公共交通機関はあまり頼りになりません。

それは (よくあることなので) まだ良いとしても、経路のほとんどが山間地なので、小樽や定山渓温泉(札幌市南部)、倶知安など決まった地点にしか宿泊施設がありません。

道北や道央を目指す場合とは異なり、到着後、その日のうちに「行けるところまで行って距離を稼いでおく」という旅程を考えることが極めて難しいです。

しかも、北海道に到着した時点で昼または午後なので、出発時間を早めることもできません。

新幹線で新函館駅に到着した場合も 90km 先の長万部はともかく、倶知安までは約 165km も距離がありますので、正午から走り出して同日中に到着するのは難しいです。

「多少は暗くなっても」と思われても、この辺りはヒグマの生息地なので、夜間走行はあまり推奨されません。

ヒグマの生態・行動習性/札幌市
https://www.city.sapporo.jp/kurashi/animal/choju/kuma/seitai/index.html

結果として、実際の距離以上に遠くて、アクセスが難しく感じるわけです。

苫小牧に到着した日の深夜に倶知安まで行けると楽なのですが…

行き先 出発時刻 到着時刻
北海道新幹線 東京 -> 新函館 6:32 (始発) 10:53
商船三井フェリー 大洗 -> 苫小牧 19:45 翌日 13:30

これがオロロンラインであれば、休日1日目の夜にフェリーに乗り込み、2日目の午後に苫小牧に到着、そのまま、美唄や砂川まで北上して3日目から道北入りも検討できます。

ところが積丹の場合、2日目に北海道に到着した後は宿泊施設がある地点で足止めを受け、3日目にようやく積丹半島の入り口に辿り着き、時間的に一周が難しければ、そこでまた足止めです。

もしくは「何のために北海道に来たのだ…」という気持ちを抑えつつ、2日目は石狩平野の市街地を走って札幌に宿泊し、3日目の朝に JR で輪行することが現実的でしょうか。

快速を使って約 80 分間の輪行で余市まで辿り着けますので、そこからの積丹半島一周なら当日中に達成できそうです。

もはやフェリーと列車を乗りに行くことが目的のようになってしまうことが難点ですね。

こうした積丹半島のアクセスの救世主になりそうなのが、新潟発の新日本海フェリーです。

行き先 出発時刻 到着時刻
新日本海フェリー 新潟 -> 小樽 12:00 翌日 4:30

休日1日目の朝に新幹線で新潟まで行き、昼からフェリーに乗り込んで、2日目の早朝に小樽に到着。これなら余市、稲穂峠、泊を経由して小樽から約 200km の積丹半島一周が達成できそうです。

3日目に南下して新函館を目指されても良いですし、もう少し休日が続くようなら道央も選択肢に入ります。

気をつけないといけないのは、現状では倶知安から長万部方面 (函館本線という名前でありながら函館まで行かないので…)には 1日に7本しか列車が来ません ので、新函館までのほぼ全区間を自走する覚悟で予定を組まないと厳しいかもしれません。

最後の手段として飛行機輪行を解禁したとしても、この地域の最寄りの空港は 200km 近く離れた新千歳空港、つまり、苫小牧のすぐ隣ですので往路のときと同じ問題が立ちはだかります。

いろいろ考えていると「積丹半島は新幹線が開通してからでいいや」と思えてきますので、長万部までで良いので早く新幹線を通してください。

もちろん、倶知安まで先行開業なら最高です(輪行的に)。


以下は倶知安までの先行開業を主張する北海道商工会議所連合会の関連サイトです。ガイドブックが凄く良くできていて一見の価値があります。

サイクル・ツーリズム北海道推進連絡会
https://www.hokkaido.cci.or.jp/cycletourism-hokkaido/