英彦山を登りに飛行機輪行

英彦山は福岡県と大分県の境界付近に位置する山です。

その立地から九州の各県と山口、広島などの中国地方のサイクリストに割と有名なヒルクライムスポットであると聞きます。標高は約1,200m。

ダウンヒルを超えた先に位置する峠までのラスト5km区間から傾斜がきつくなってくる厳しい峠との噂です。

この英彦山に登りたくて、イベント参加を口実に飛行機輪行で北九州まで行ってきました。

山の位置する田川郡は残念ながら公共交通機関や宿泊施設が余り充実していません。

そのためアクセス方法としてはレンタカーを現地調達して車で向かう事が現実的です。

山の近くで前泊できるホテルも限られているのでヒルクライム当日の早朝に現地まで移動する事になります。

今回の私の場合は一緒に登頂するみかんさんが車を出してくれると言うので、北九州空港から至近の苅田町というところにホテルを取りました。

飲食店は限られていますが空港から公共交通で無理なく移動できる範囲にあり、ホテル付近にサイクルベースあさひさんが立地している事が決め手でした。




持ち物

飛行機輪行と言えども持ち物はいつもの通りです。

分解した自転車とシューズや衣類を エイカー バイクポーター スマートサイズ に詰め込み、リュックに普段着の着替えと日用品を入れて飛行機に乗り込みます。

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いつもと異なるのは恒例の150km超のロングライド参加ではなく、今回は参加するイベントがヒルクライムレースであるという点です。

完走を目的としたロングライドと比較して走行距離は僅か15kmと短く、速度は通常の練習よりも更に上がる事が想定されます。

競技中にパンク修理をしている暇も無さそうなのでCO2ボンベは敢えて持っていきません (飛行機輪行での検査時に手間が増えるため)。

現地調達が難しいと考えられるディレイラーハンガー (専用品) とミッシングリンク、タイヤとチューブの新品の予備だけに荷物を絞り込みます。

それに合わせて輪行するホイールのタイヤとチューブも未使用の新品に換装しておきます。空気圧管理に失敗したり異物を踏んだりといったトラブルを未然に防ぐには、それが一番の対策だと身をもって体験したからこその実践です。

重量が問題となるヒルクライムレースなので少しでも軽量化を考えてカーボンフレームのFELT F7を投入し、その調整に必要となるトルクレンチもバイクポーターに同梱して預け入れ荷物として会場まで持参し…

ようと考えて準備を進めていたのですが自転車の解体の段階になって気分が変わりました。

バイクポータースマートサイズに自転車を収納するためには、ホイール前後輪に加えてハンドルやペダル、シートポスト等を取り外さなければなりません。

それらを取り外して再組立するとプロショップでせっかくポジションを出して頂いた調整が全て無意味になってしまいます。

またカーボンフレームは傷にも弱く塗装の剥がれにすら気を遣います。

クランクからペダルを外そうとした際にチェーンが暴れて脱落するのを目撃して一気に輪行する気力を失いました。

そこでいつも通りクロモリフレームのRaleigh CRNの登場です。

カーボンやアルミであれば割れるような衝撃を受けても少しばかり凹む程度

このフレームの信頼性は移送環境をコントロールできない飛行機輪行だからこそ活きてきます。

購入前に意図したような「旅する自転車」にはなれなくても「機動力」と取り回しの良さから移動先での足となってくれる事に変わりはありません。

前日にドイツから届いたばかりの新ホイールと新品のGrand Prix 4000S IIに履き替えて即席のレース仕様の完成です。

当日

1週間近く雨が降り続いていた関東平野から西に1000km近くも移動すると気持ちの良い青空が広がっていました。

なんだか久し振りに傘を持たずに移動している気がします。

北九州空港は人工島の上に設置された海上空港なのですが、現在は空港までのアクセス鉄道はありません。

まずは西鉄バスで朽網という最寄駅まで移動しないと、市内の小倉にも門司にも行くことができません。

私が宿泊地に選んだ苅田町も以前は空港からの直通バスが出ていた様なのですが、現在の行き先リストの中にその名前は見当たりません。

朽網駅

幸い西鉄バスの料金も格安で、朽網駅を通る日豊本線も複線化されていたため移動について大きなストレスはありませんでした。

無事にホテルに到着したら自転車を組み立て、ヘルメットにシールを貼り、ジャージにゼッケンを付けて明日のレースに備えます。

続く

ロードに乗って花火を見に行く!夜の甲州街道ライド

ロードバイクに乗り慣れてくると、早朝に家を出て日が暮れないうちに100kmから200kmほどを走って帰路に就く事が一般的になります。

昼間の方が休憩地点を見つける事が容易という事情もあるでしょうが、より大きな理由としては自転車で走りやすい道路の多くが街灯の期待できない山間部や川沿いに立地している為、視界の悪い夜間の走行は 単純に危険だから だと考えられます。

平地でも簡単に時速30km/hに到達してしまうロードバイクに乗り細いタイヤで荒れた路面を走る事は、VOLT800のような高性能ライトと透明なアイウェアを準備して臨んでも恐怖を感じます。ましてやダウンヒルなど考えたくもありません。

そうした理由から乗り続けてスキルが上昇するほどに疎遠になっていたナイトライド。久し振りに挑戦したのは感覚を忘れない為です。

出発は午後18時。この時間になると余り遠くまでは行けないので新宿から多摩湖まで往復50kmぐらいを検討しましたが、都合よく調布で花火大会が開催されていたのでこれを目的地に定めます。

街路樹に囲まれて暗い青梅街道よりも街灯の多い甲州街道の方が安全という気がしたのも目的地の決定の一因です。ペース配分を決定するのに目的地やルートを定める事が重要なので、目的地自体は何処でもよかったりもします。

夜間の注意点は急停止に備える事と普段以上に前方に注意する事。

頭では分かっていても実際に走り始めると、高架の影に隠れて直前まで見えない路面の亀裂や左車線に強引に割り込んできて急停止する自動車の危険運転に度々遭遇し、都内を走るのは碌な事がないという事実を再確認します。

日曜の夜という事もあってか交通量は普段よりもずっと少ない点は良かったのですが、安全運転を心掛け細心の注意を払って走行していた結果、約300m置きに信号停止を繰り返す事になりました。そもそもホイールが重たいので、速度を上げようがないのですが。

心臓や脚よりも目と神経を疲労させながら甲州街道を抜け、旧甲州街道に入った辺りから花火を打ち上げる音が耳に入ってきます。

会場となる多摩川河川敷から見ると京王線の線路の反対側に位置するためか、花火大会の開催日にしては人も車も疎らな印象ですが、それなりに交通規制が行われています。

混雑を避ける為に市街地の中心にある調布駅や会場の多摩川には近づかず、少し手前 (新宿寄り) の小さな駅の入り口で自転車を降りて歩道に上がります。駅前広場まで歩いて行くと既に人集りができていました。

幸い自転車を押し歩きできないほどの混雑ではなかったので、路上の観客を避けながら空いている場所を探します。元より会場近くまで接近するつもりもなかったので、外出時なのに珍しく E 50mm F1.8 OSS という中望遠レンズを1本だけ携帯してきました。

広角とは異なり景色を広く写すには全く向いていませんが、光量が少ない夜間には重宝する明るいレンズです。

ブログ用に何枚か撮影を終えたら、他の人の邪魔にならないうちに退散します。復路は往路よりも路面が荒れていない事が救いでしたが、世田谷区に入ると路上駐車が目立ちます。突然ドアが開いたり、車を降りたドライバーが車道を歩いていたりして辟易する度に都内を走るのは…という思いがより一層強くなりました。

帰ってきてみると往復で約31km。出発から1時間30分ほどが経過していました。

日中のように環八交差点付近の渋滞に遭遇しなかった点は良かったのですが、夜間だからというよりも都内だから危険だという思いを強くするナイトライドとなりました。

走っていて楽しいのは、やっぱり早朝の山岳地帯や海岸などの人も車もいないところですね。

※ ライトは電池切れする事があるので、Volt 1200などの前照灯とFemto Driveなどの車幅灯を各2つ以上用意する事をお勧めします。私は走行中に実際に電池切れを経験した事も壊した事もあります。

真夏の高尾に登る

夏季休業中に旧友が北海道から帰省してきました。私自身は転居の多さから出身地が何処だか不明になっていますが、国内においては大阪府や東京都で生まれ育った人物が友人知人の大半を占めています。

そんな帰省した東京人の彼等が久し振りに面会して、何処に行きたいかと言う話になった際、候補の筆頭に上がったのが八王子の高尾山でした。

小学校の遠足の定番だけに馴染みのある山ですが、登山路は自転車進入禁止である事からロードバイクに乗っていると疎遠になりがちな山でもあります。

高尾山の直ぐ南側を東西に横切る甲州街道の大垂水峠も相模湖や鶴峠以外からのアクセスが良くない割に攻略難易度や展望がイマイチなので、積極的に経路に組み込みにくい点も残念です。

しかし、自転車を降りて眺めてみると鉄路によるアクセスは抜群に良く、気軽にトレッキングを味わえる良好な環境があり、由緒ある霊山でもある高尾の魅力が見えてきます。

そんなところが電波塔や専門店街に何の感動も抱かない東京人を引き寄せるのかもしれません。

麓の京王線高尾山口駅前から薬王院までの参道は綺麗に舗装されていますが、車輪の侵入を前提としていない傾斜は奥多摩に行き慣れた私が見ても相当のもの。

以前であれば急崖部に曝け出された地層の体積や植生に目を奪われて意識する事もなかった登山路ですが、日頃、斜度と距離を意識しながら峠道を越えていると高尾山の登山道がなかなかの「激坂」である事に気がつきます。

辿っている道が前方ではなく上に続いている事はヒルクライムの醍醐味ですが、その事態の非日常感を味わえるのは自転車に乗っていてもいなくても同じこと。

他の友人たちは道の傾斜に面白さを見出している事を新鮮に感じているようでした。

舗装路やケーブルカー、自動販売機などのインフラが充実している一方で、自然林や従来の環境が保全されているのも高尾山の面白いところ。

参道を外れると未舗装路が現れ、それらの一部は吊り橋や沢へと通じています。

そうした名所を経路に取り入れつつ (沢歩きは下山時) 1時間ほど登山路を歩くと頂上に到達します。

標高 599m の山頂は奥多摩に続く笹尾根では高い方ではありませんが、見晴らしは抜群です。

ここから見えそうな位置に和田峠を擁する陣馬山、甲武トンネル、そして都民の森の名で知られる三頭山があると思うと、檜原村をホームグラウンドとしているロードバイク乗りとしては感慨深いものがあります。

こうして約1時間と30分の登下山を終えてみると、立ち止まって写真を撮る目的であれば徒歩の方がずっと容易な上、自転車では入り込めない様々な場所に立ち寄れる事、運動中の人物達を綺麗に撮影する事は困難である事など、いつもとは状況が異なるが故の様々な注意点に気づかされる事となりました。