数ヶ月ぶりの三浦半島で痛感するロングライドの走り方


数ヶ月振りに 200km 超のロングライドに出かけました。

このところ出張が続いたこともあり、まともに自転車に乗ること自体が約2週間振りだったのですが、毎朝の日課として自転車またはランニングで 20km ほど走っていることから大丈夫だろうと高を括っていました。

実際に 100km を走るまでは。

走り出してみると継続的に溜まり続ける疲労への対処に補給食の必要性、ファミレスの偉大さ、三浦半島の走りにくさなど様々なことに気付かされます。

そして長距離を走るには継続的に長距離を走り、走り方を忘れないことが重要だという当たり前のことを改めて実感します。

毎朝の決まり切った時間に近所を周回するトレーニングとは異なり、長距離では道路状況や地形が読めないことが通常ですし、夜間から早朝、日中へと時間が移り変わっていく中で視界状況や温度といった環境も激しく変化します。

同じ距離を走るにしても、いつもよりも疲労が大きいのです。

そして疲れても直ぐに引き返してシャワーを浴びることができないという精神的な重圧が、距離を稼ぐに連れて地味に負担になってきます。

そのことに私が気がついたのは走行距離が 100km を超えてから。

しくじったなと思いながらも長距離ゆえに簡単に終わらないところが辛い点です。

長距離では疲労を溜め込まないように、負荷を少なく維持する走り方を心掛けなければなりません。




そもそもの間違いは長距離であるにも関わらず、重いギアを踏みながら長時間走り続けることです。

早朝4時台に麹町を出発して6時には横浜で日の出が見えるというオーバーペース振り。


路側帯が路上駐車で埋め尽くされる前に都内を抜けたい、始発電車と同じ時刻に横浜に到着したい、きっと写真写りが良いはずだという雑念が歩を緩めません。

東京と横浜の往復走であれば片道 35km 程度なので、こうした走り方でも大きな問題にはなりません。

しかし、距離が伸びれば話が変わります。

日の出とともに訪れる東京都市圏の地獄のような混雑を避けるためにクランクを回し続けているうちに徐々に太腿が強張ってきます。

走行距離にして約 70km ほど、横須賀を過ぎた辺りから寒さや向かい風を辛く感じるようになり、脚も回らなくなってくるのを自覚します。

晩秋の気温と海風に手が悴み、長距離の走行で眼と肩が疲れてきたので、朝食を兼ねて久里浜のデニーズで暖をとることに決めました。


数時間振りに口に含んだコーヒーは暖かく、染み渡るほどに美味しく感じられることに新鮮な驚きを覚えます。

冬場のロングライドで、糖分も水分も枯渇した後に口にするラーメンやココアなどは物凄く美味しいと感じることを思い出しました。

デニーズの朝食で気力と思考力を回復させたら、道路が混み出す前に先を急ぎます。

そもそも人口も可住面積も大阪府とほぼ同一で道路も狭い神奈川県には、いくら東京都心から離れたところで平地の快走地帯など存在しません。

そこで大事なことは、どれだけ人 (車) がいない時間帯のうちに走れるかということです。

ところで同じ関東平野の先に位置する半島でも、東京と対岸にある房総方面に行けば少しは話も変わります。

久里浜からの東京湾フェリーで片道40分、大人一人720円 (+ 自転車一台1,210円) で海峡を越えられることから、東京圏でまともに走れる場所の中では極めて短時間かつ低料金でアクセスできる魅力的な場所と言えます。

何よりも不必要な輪行袋を持ち歩かなくて良い点が素晴らしいです。

8時台の便に乗れるように早朝に自走で到着して、以後は房総半島でゆったりと過ごすのも良さそうです。


翻って三浦半島を眺めると、狭くて迂回路もない道路に押し寄せる人や車の量に感心してしまいます。

早々に引き返して去ろうとしている私の方はともかく、日が昇ると同時に対向車線から押し寄せる四輪車や二輪車、そして自転車の列の長さに圧倒されます。

その混雑に根負けして、一度、主要な道路を離れてしまうと、今度は民家の間の狭い路地を伝って山越えをするはめに陥ることが度々です。

この山越えがまた斜度 20% 近い急坂で構成されていたり、異常に長い屈曲路を通ることになったりするので侮れません。

半島地形だけに逃げ場がないのです。

東京圏からのアクセスが良く、景観の美しさは息を呑むほどなので、入門者でも訪れる気持ちは理解できるものの、道路環境の劣悪さと交通量を考えると、実は国内のサイクリングスポットの中でも指折りの過酷な環境であることに違いありません。

少なくとも私は人通りの多い週末の日中には絶対に走りたくありません。

まさにこれから混雑が始まろうとしている対向車線を横目に、そこを走る彼等の休日が少しでも良いものとなることを祈りつつ、道路がまだ渋滞で埋まらない間に一足先に引き上げます。


ここまでの走行距離は約 150km にして獲得標高は 1,050m 超、前半に飛ばしたせいで消費カロリーは約 5,000kcal に迫ろうとしています。

長らく自転車から離れていたせいか、実際の数値よりも疲労が著しく、珍しく1ライド中に2度も休憩を入れました。

高級グループセットを載せたフラッグシップでは駐輪を躊躇してしまうところでも、クロモリのエントリーモデルなら気兼ねなく何処にでも休憩できます。

200km を超えて帰宅した時には、肩と肘が痺れるほどに限界を感じます。

長距離は長距離の走り方を守りながら、定期的に走りに行ってないと駄目ですね。

自転車で行く横浜 – 走り込んだからこそ分かる京浜間の良さ

ふと行きたくなって東京から横浜まで自転車で行ってきました。

自転車が趣味の人にとって東京や川崎、横浜といった大都市の市街地はあまり通りたくない場所かと思います。

確かに車の通行が多くて危険な面もありますし、信号停止が多過ぎるので、走り出した直後に無理やり急ブレーキを引かされる回数も10回や20回では済みません。

渋滞に巻き込まれれば数十分は身動きができなくなる可能性もあります。

それでも走り終えて帰ってきて見ると「ああ楽しかった」と思わず口から溢れる魅力が京浜間にはあります。

そんな横浜の魅力は何だろうと、走りながら少しばかり考えて見ました。

— 横浜は美しい —

第一に横浜という目的地そのものが絵になります。

東京30km圏内においてカメラを持ち歩くことが、これほど楽しい場所は他に東京都心ぐらいしか思いつきません。

もちろん東京近郊には他にも深大寺や谷津干潟などの魅力的な土地が多々ありますし、市街地を離れて秩父や房総半島、霞ヶ浦まで足を伸ばせば雄大な光景も楽しめます。

横浜が凄いのは都心から気軽に訪れられる距離にありながら、撮影したくなるような光景に溢れていて、その種類も多岐にわたるところです。

少し考えただけでも歴史的建築物に港湾、船舶、動植物と次々に思い浮かびます。



横浜に訪れて、この景色に出会えて良かったという感じられることは、ライドの目的地として重要な要素です。

— 横浜は全国規模の都市 —

目的地に魅力があることと同様にライドに充実感を感じさせる要素が「ここまで行った・登った」という達成感です。

東京と横浜は距離にすると僅か 30km ですが、その間には品川や川崎といった東海道の拠点があります。

これらの拠点は日本全国や東海道を表した地図にも高確率で記載されているため、移動時にはただの近所の散策とは異なる日本地図スケールでの移動を意識させ、気分を高揚させてくれます。

私も初めて自転車で訪れた際には「えらく遠いところまで来てしまった」と感じたことを覚えています。




心理的な充実感と異なる面においても大都市であることの利点は多々あります。

街灯が整備されているため、サイクリングロードや山間部と比較して夜道は明るく安全ですし、コンビニエンスストアや自動販売機を探すことにも苦労しません。

国道上を進めば迷うこともありませんし、その経路上には自転車専門店もあります。本当にどうしようも無くなっても、駐輪場に自転車を停めて、鉄道とバスを使って後日回収しに来ることも不可能ではありません。

ついでに述べておくと、道路の舗装状態も全体的に良いのでカットパンクの心配が少ないこと、また首都圏にしては道幅の広い道路が多いことも利点です。

車の通行量や信号が多いので毛嫌いする人の気持ちも理解できますが、始めたばかりで高輝度LEDライトやナビ、輪行袋などの持ち物が揃っておらず、パンク修理にも慣れていない段階で目的地に設定することも、あながち間違いとも言い切れない面があります。

— 京浜間の移動は変化に富む —

単調で平坦な道は走りやすいことは間違いありません。

しかし、ローラー台のごとく、走り続けるうちに慣れや飽きが生じます。

京浜間は関東平野の中心に位置しているように見えて、国道1号線 (第二京浜) 経由で片道150m以上の獲得標高があります。

その間には多摩川をはじめとする橋梁があり、五反田の相生坂や東寺尾の響橋に代表される坂があり、浅草線やJRといった鉄道との併走区間があり、中心業務地区から繁華街、住宅地、河川敷と景色が目紛しく移り変わります。

少し道を外れれば海浜公園に国際空港、工業地帯に港湾と見慣れたオフィス街とは異なる非日常的な光景が待っています。

信号や渋滞が嫌になることはあっても、その土地に飽きるということはありません。

いろいろと書き連ねて来ましたが、都心から遠く離れた土地まで走りに行けない時間的な制約がある中でも、充実したライドを楽しませてくれる横浜の懐の深さも良いなと感じた一日でした。

自走で行く箱根・旧東海道は満足度過去最低の坂

ソーシャルメディアを眺めていると坂に文句を言っている自転車乗りを多く見ます。

そうした坂の中には奥多摩の見慣れた峠道も含まれている事もあって驚きますが、共通する特徴を抜き出してみると以下のような要素を複数あわせ持っている事が多い模様です。

  • 斜度・傾斜がきつい
  • 距離が長い
  • 道幅が狭い
  • 信号停止がある
  • トンネル区間を含む
  • 展望が良くない
  • 路面が荒れている
  • 橋の繋ぎ目がある
  • 遠い・アクセスが悪い
  • 車の通りが多い
  • バスが通る
  • 路上駐車が多い
  • ランナー・登山者・その他の歩行者が多い
  • どこにも通じていない・軽車両進入禁止に変わる

こうした要素を列挙してみると、一つでもアウトになってしまうものから、単独では気にもならないものまで程度が存在する事が見て取れますが、複合すると近づくのも躊躇われるような「なるべくなら通りたくない」ルートが完成する事には相違ありません。

そうした積極的には通りたくないルートも残念ながら世の中には存在します。例えば、今ライドの舞台である箱根の旧東海道です。

旧東海道は神奈川県の小田原から箱根を経て静岡県の三島に至る4本の道路のうちの一つです。

北側から東海道、旧東海道、箱根新道、箱根ターンパイクと4本の道路がありますが、このうち新道とターンパイクの後2者は自転車走行禁止である為、ロードバイクで小田原から箱根にツーリング (キャノンボールその他) する際には実質的には東海道と旧東海道のどちらかを通ることになります (※ 湯河原や函南、御殿場を経由する経路はまた別にあります) 。

自転車でも通れる東海道 (国道1号線) は、距離が長めで傾斜は緩やか、補給地点のコンビニもたくさんありますが車の通りが多いと聞いています。

箱根登山鉄道と並走して走ることになり、観光地や名所もたくさんあります。

対して旧東海道 (県道732号線) は、箱根湯本付近の温泉街を除いて、ほぼ山道を走ります。

旧道であり、傾斜もきつく、入り口付近は自動車のすれ違いは困難なほどの道幅しかない事から、交通量が少ないだろうと見込んだ事が誤りの原因でした。




タイトル通り往路も復路も自走なので、出発地点は東京と川崎の間にある多摩川大橋です。

ここから第二京浜こと国道1号線を小田原まで進みます。

道路が空いていており、信号に引っ掛かる回数も少なかった為、約3時間弱で川崎から小田原までの区間を抜けて箱根湯本まで到着できました。

箱根湯本から東海道を進む場合は道なりに直進しますが、旧東海道に入るには箱根湯本の三枚橋交差点で左折して早川を越える必要があります。

旧東海道はこの入り口付近の道幅が極端に狭く、バスの往来がある度に上下線ともに局所的な渋滞が発生します。入り込んで直ぐの地点にあるコンビニが (おそらく) ラストコンビニです。

この後の休憩地点は標高700m付近の峠の茶屋までありません。

この地点から既に車の通りが非常に多く、嫌な感じが拭えません。

温泉街から始まる登りを抜けて行くと道幅が広がり、片側一車線の広い道になります。走りやすくなるのは嬉しいのですが、それは同時に交通量が多い事を示唆するもの。

須雲川の鳥居前の坂などでは途切れる事なく続く車の列に煽られて、勾配の最もきつい内側のワインディングを通る事を余儀なくされます。



斜度10%を前後する急斜面を登り続けて行くと『七曲り』という案内表示が登場します。

登場するからといって何かが変わる訳ではありません。ここに来るまでに既に十分に傾斜はきついのです。

一つだけ変化があるとしたら、ここから登山者やランナーの数が増えました。しかも、山道にしては珍しく歩道があるにも関わらず、堂々と車道を歩いて降りてきます。

声を掛けて下さるのは嬉しいですが、車道は危ないので歩道を歩いて頂きたいのが本音です。


景色も開けず、交通量も全く減らず、斜度も落ちずのあんまりな行程を進むと峠の茶屋が見えてきます。まさに旧東海道の良心です。

さらに進むと『石畳』や『お玉ケ池』といった観光地を意識させるバス停が見えてきますが、実物は登坂車線からはよく見えませんし、斜度もきついままなので意識する余裕はありません。

立ち止まる事なく進んで行くと辿り着いた先は、なんと観光名所の芦ノ湖。

ここまで前知識なしで箱根に初訪問しましたが、これでは交通量が衰えない訳です。

帰宅してから走行経路を調べてみると、箱根とは急峻な山合いの狭い盆地に東西の主要交通路と多々ある観光施設をギュッと押し込んだような土地だということが分かりました。

その観光施設も箱根関所などの歴史施設、富士火山帯に由来する火山や温泉街に博物館、そして美術館にゴルフ場に山岳鉄道と多岐に渡り、地図を眺めているだけで感心してしまうほどです。

ただでさえ交通量の多い東海道に通行困難な険しい山道、多くの観光施設と観光客を集中させる箱根は、まさに交通の難所。

こんなところを自転車で走ろうとするのが根本的な間違いなのではないかと深く反省する事になりました。

箱根観光なら鉄道一択ですね。

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