南国の夜は暑く妖しく

今年に入って6回目だか7回目の海外出張で、今度はベトナムに来ています。

私がベトナムを訪れるのは3年ぶりの2回目で、前回は友人の実家である大理石の豪邸に泊まりましたが、今回は Hoan Kiem の一流ホテルに泊まります。

ベトナムでホテルに泊まるのは実はこれが初めて。元より海外育ちだった事に加えて、工学系大学(院)生特有の学会発表生活で訪れた国の数は30前後になりますが、指定された場合を除いては友人の家に招かれてばかりなので、ホテルや観光事情には疎いのが私です。

観光事情に疎い事に加えて、新鮮さを欠いた2度目の訪問に、湿気を多分に含んだ南国特有の白い空、散策意欲を減退させる籠もるような熱気に、目的地も味気のない高層ビルだらけの新興業務地区という具合に、今回の出張は撮影趣味の面からは極端に期待度が薄いものでした。




至るところで見かける街路樹のバナナに、建物を超える高さの巨木、巨木群に埋もれて樹木と一体化した旧市街を彷徨うのは別世界に来たように楽しいのですが、写真に写せる範囲で景色を切り取ると何処の地区も同じ場所に見えてしまいます。

写真を撮る為に100kmも離れた山に登るような私でも、代わり映えしない光景と服の内側に籠もるような強烈な熱気に包まれていると、散策を切り上げても良いかなという気分になります。




ところが、そんな白と緑のハノイの光景も夜になると一変します。

自然と人工物とが融合した Hundertwasser の世界のような街並みが妖しく彩られ、昼間とはまるで別の場所に来たような感覚に陥ります。

服の内に籠もる熱気も失せて、30度ぐらいの気温の暖かさが心地よく感じられます。



思えば、容赦のない強烈な日差しやむせ上がるほどの熱気、突然の激しいスコールといったベトナムの気候の厳しさばかりを見てきた私にとって、その穏やかな面に触れたのは初めてかもしれません。

MAXXIS 太魯閣ヒルクライム 2017 参加決定・そして昨年の反省


2017年9月の落石事故を重く受け止め、太魯閣渓谷と山道の危険性について記述しました (2017年9月17日追記)。


昨年はChallengeクラスで参加したMAXXIS 太魯閣ヒルクライムに今年も参加する事を決めました。

南国の白い砂浜から岩肌の荒々しい3000m級の山脈を駆け上がり雲の中に突入して行くドラマチックな展開は、ここでしか味わう事のできない貴重な経験だと感じたからです。

今年こそは頂上まで到達して台湾中央山脈を越えたいという目標もあります。

昨年のMAXXIS 太魯閣ヒルクライムは私にとって初めてのレース参加であり、初めての国際便での飛行機輪行であり 、初めて参加する海外サイクリングイベントである事に加えて、花蓮縣への訪問自体が初めてといった具合に全てが初体験の事ばかりでした。

しかし、事前に念入りに下準備をしていた事もあり、何一つトラブルなく、イベント参加を存分に楽しみ、無事に帰還する事ができました。


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念入りに行っていた下準備ですが、自身で経験してから振り返って見ると、少しばかり大袈裟であったり、的外れであったりする事もあり反省点として残りました。

そうした反省点を総括すると次のようにまとめる事ができます。

  1. 特急列車以外での輪行はそれほど厳しくない
  2. 地図と同様にそれ以外の情報も大切
  3. 自転車整備よりもまずは食事
  4. 日焼けと天候変化に気をつける

順を追って見ていきましょう。




1. 特急列車以外での輪行はそれほど厳しくない

台湾の鉄道会社には厳密な輪行規則があります。これに従って万全の準備を整えて現地に向かったのですが、混雑していない普通列車ではオーストリアやドイツのように自転車を解体しないでも鉄道で輸送できる事もあります。

現地の職員に尋ねると教えてくれますので、職員の指示に従ってください。


2. 地図と同様にそれ以外の情報も大切

見知らぬ花蓮を訪れるに当たって、私はOpenStreetMapから現地の地図情報 (IMGファイル) を自身で作成して手持ちのGARMIN GPSデバイスに登録していきました。

これ自体はあらゆる場面で重宝しましたが、一方で最寄りのレストランや観光名所を検索する事には難儀しました。

後述する食事の問題も併せて考えますと、GPS端末で地図情報のみを参照する事を考えるのではなく、海外旅行用のモバイルルータを借りて持って行った方が何倍も便利です。

例えば私が海外出張でいつも利用しているイモトのWi-Fiもその一つです。

使い方はスマートフォンやタブレットを飛行機モードにしながら、Wi-Fi機能をONにして、モバイルルータ指定のネットワークに接続する事です。

これさえあれば日本で外出している時と同じ感覚でインターネットに接続でき、馴染みの地図アプリとGPSよりも正確な位置情報を使用できます。

性能的に気休め程度にしかなりませんが、オンライン機械翻訳も利用できるようになります。

3. 自転車整備よりもまずは食事

探しても適当なものがなかったので、必要最低限の自転車整備の依頼フレーズ (中国語) に英語と日本語訳を加えたものを渡航前に作成しました。

運悪く使う事になりましたので、これは有っても良かったのですが、現地を訪れて困った事には自転車の整備よりも昼食や晩食のメニューです (朝食はホテルで用意されます)。

写真付きのメニューや英語併記のメニューもありませんが、それ以前にレストランや食堂が何処にあるのかが店舗の外見からは区別がつかなかったりします。

晩食は夜市でも済みますが、昼は本当に困ります。

現地に行ってから調べるよりも、予め有名なレストランとそのメニューを把握しておき、中国語でメモしておいた方が間違いありません。


4. 日焼けと天候変化に気をつける

山の天気は変わりやすいとは登山家の常識ですが、太魯閣は高山である事に加えて湿潤な (亜) 熱帯気候の島に位置しています。

山麓の花蓮の街は、ホテルの窓を開けると一瞬でカメラのレンズが曇るような暑くて、空気中の水分の多い土地です。

突然の激しい雨に見舞われる事も頻繁にあります。

服も靴も自転車も濡れるものと考えて、着替えとサンダルを用意しておくと快適に過ごせます。
その一方で陽射しも強く、遮るもののない海岸線の気持ち良いサイクリングロードを走っていると、日本にいる時とは比較にならない程に日に焼けます。

薄っすらとアイウェアの跡ができる程度ではなく、赤く腫れて痛みがしてきます。

日焼け止めやサンダルを現地調達しても良いですが、探すための時間が勿体ないので、分かっているのならば最初から準備して行った方が利口です。

カタカナ表記とセブンイレブンですが日本ではありません

困難も多いが喜びも大きい

太魯閣は現地でも人気のある雄大で美しい土地です。昨年に訪れた際には、ここに来て本当に良かったと思わせるものがありました。

花蓮の南国の青い海、新城鄉の郷愁あふれる田舎道、コルナゴ部長さんに教えて頂いた海岸沿いの開放的なサイクリングロードに加えて、くり抜かれた断崖絶壁を進むレースのコースがまた美しく歴史を感じさせるものでした。

その先にある頂上では、どんな景色が広がっているのか想像するだけで楽しみで仕方がありません。


台湾の味と日本の味


台湾出張に来ると日本語や日本風を謳った飲食物の多さに驚かされますが、興味本位で購入して口に含んで見ると予想と違う味がする事が多々あります。

日本で提供されれば「甘塩っぱい」味がしそうな見た目をしていても、台湾では魚醤のような独特の風味が強く、見た目は似ていても味の面では掛け離れている事に拍子抜けする事は良くある事です。

世界共通と考えられていたファストフードのハンバーガーでさえ、心なしかパティが中華料理風味です。出汁のせいか調味料のせいかはまでは分かりません。

さすがに日式を掲げている緑茶は日本と大きくは変わりませんが、飲み物は全体的に砂糖が多めで甘い味がします。




しかしながら、高級なレストランではどこも素材の良さを活かすような薄味で、日本食に舌が慣れていると少しばかり味気ない気がします。

しばしの間、台湾に滞在していると、如何に日本の食事に塩分が含まれているのかを実感するようになります。

日本の味付けは一般的に塩辛く、水分多量で、添加物の為か、一部の料理は偽物のような食感がすると長らく暮らしたウィーンから東京に帰国した直後に感じたことを思い出しました。

改めて意識して眺めて見ると日本食の味の下支えに塩や醤油が果たしている役割の大きさに気がつく訳ですが、台湾料理に全く通じていない私からしても、台湾の食事の場面で高頻度で見かける食材に意識が向きます。

その食材とは海老です。



海老が好きなのか、調味料と認識されているのかは不明ですが、何を頼んでも海老が入っている割合が高いです。

また肉料理の場合には骨つき肉の割合が非常に高いという別の特徴があります。

もう少し探求してみたいところなのですが、ホテル周辺とレストランぐらいしか見る事のできなかった短くも忙しい出張では、この辺りが限界です。



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往路で来た道を引き返して、台南から桃園まで高鐵で一気に北上します。

旅のお供は豚肉料理の台鉄弁当です。

海老は入ってませんが骨付きで、この見た目をしていながら生姜焼きや照り焼きとは掛け離れた味のする全く別の料理です。

往路よりも良い天気に名残惜しさを感じながら、高鐵桃園站にて台北方面行きのMRTに乗り換えます。

前回はバスで来ましたが、高鐵站から空港までの所要時間と運賃を比較するため、復路は新規開通したばかりのMRTを利用します。

位置関係から見ると高鐵の路線より西側にある空港と東側にある台北が同じ方角にある事に違和感を覚えますが、MRTは台北の中心街から空港を経由して高鐵の站へと至るので台北方面で間違いはありません。


新路線という事で少しばかり期待していましたが、もちろんMRT (台北の地下鉄) なので過去に何度も乗った事のある地下鉄車両がやって来ます。

空港バスと比較すると桃園空港と高鐵桃園站との間では、料金はMRTの方が5TWDばかり高いものの、所要時間に大きな違いはありませんでした。

大きな荷物がある際は空港内でのアクセスの良さからMRTの方が便利かなと思われましたが、それ以外の場合はバスでも特に問題ないと感じました。

乗り場が近ければ、どちらか先に来た方でも良いのでしょうが、残念ながら空港でも高鐵站でも両者の乗り場は近くはありません。

早く帰宅して思う存分、自転車に乗りたい気持ちが半分、台湾を離れたくない気持ちが半分のまま、桃園を後にして出張を終えます。