都民の森での新たな発見

秋空ひろがる 9 月の某日。

かつては毎週末ごとに訪れていた檜原村の都民の森にやってきました。

ここは新宿から片道 76km と、首都圏のまともなサイクリングスポットの中では(これでも)圧倒的に距離が近く、信号の数もおよそ 3km に1つと東京都内とは思えないほど常識的な範囲に収まっていることから、東京のサイクリストにとって、その名の通りに親しみやすいコースです。

決して悪いところではないのですが、それ以上でもそれ以下でもないので、積極的に東京を離れるようになってからは自然と足が遠のき、気がつけば数年のときが経過していました。

さきに述べたように東京都民にとっては極めて貴重なサイクリングスポットではあっても、普通に車も多くて走りづらさ満点ですし、輪行で訪れるにしてもアクセスが良いわけではありません。

もし自分がお隣の埼玉県や神奈川県に住んでいたとしたら、奥武蔵や伊豆箱根を差し置いて、わざわざ奥多摩を訪れることがあるだろうかと考えてしまいます。

ところが、実際に訪れてみると、こうした思い込みとはまた別の印象を抱きました。そして奥多摩自体がここ数年間で大きく変わっていることに驚きました。




ライドの出発地点はいつもの四谷見附 — と言いたいところですが、信号の待ち時間で日が暮れてしまうので、試験調査も兼ねて 5:29 の始発電車で新宿から高尾駅へと輪行します。

休日の東京の始発電車は登山客で満員になることも珍しくはありませんが、平日は平日で夜勤明けの帰宅需要がそれなりにあるらしく、始発の快速電車は意外にも混雑するという知見を得ました。

それから平日でも輪行する人はいるらしく、今回も先頭車両に乗っていると途中駅からミニベロを携えたお爺さんと遭遇し、高尾までご一緒することになりました。

高尾駅への到着は定刻通りの 6:23 — こちらはこちらで都心方面への通勤ラッシュが始まりそうな雰囲気で、駅前で輪行解除している傍から次々と人混みが押し寄せてきます。

人の少ない平日の休みを謳歌できるのは豊かな地方の話であって、こと首都圏においては当てはまらないのではないかと思えました。

車で混み合う高尾街道に沿って北上し、まずはウォーミングアップの和田峠に抜けます。

私にとって和田峠は峠原器みたいなもので、登った回数も桁違いに多いので、もはや何も感じなくなりました。

強いて感想をあげれば、山ガールって実在したのかといったところ。登坂中に大学生ぐらいの3人組を目撃し、その場違いな感じが強烈に印象に残りました。

そのまま和田峠を通過、甲武トンネルを経由して上川乗へと到着。

ここから真っ直ぐに目的地を目指すことも可能です。

しかし、補給食どころかドリンクすら用意してこなかったので、橘橋の檜原村役場のほうに寄り道してから都民の森を目指します。

走り出すと檜原村の微妙な変化に気づきます。

いつの間にか介護福祉施設や小さなスーパーマーケットが開業しています。

以前は村役場と都民の森のあいだの 20km 間には喫茶店と自動販売機しか存在せず、村内にはコンビニの1件すらなかったのに、今では食事処をいくつも選べるようになっています。

檜原村に活気がでてきているのは大きな変化ですが、走ってみると坂のキツさは相変わらずです。

と言うよりも、記憶のなかにあった都民の森の実走記録よりも、ずっとキツイです。

あらためて見ると登りが 20km もつづくルートなど、めったにないですし、ところどころで斜度 10% を超えてくる急勾配区間が地味に効いてきます。

料金所から先のいわゆる「ラスト 3km 区間」は易しいところで、本当に厳しいのは人里交差点、数馬ヘリポート、そして九頭龍神社の先の坂です。

この辺り、速く走ろうと重たいギアで突入すると、クランクが回せなくなります。

三頭山荘を通り過ぎて旧料金所にまで至れば、あとは 9% ぐらいで斜度が安定しているので、無事にここまで来れれば完走したようなものです。

余裕がでてきたところで、あたりを見渡すと舗装状態のよさに感心します。

登りが 20km も続くようなところも珍しいですが、その長さの道路をひび割れや落下物ひとつなく維持管理しつづけているのも、ここぐらいです。

台湾、九州から北海道までのあちこちの峠道を走ったあとで、あらためて訪れてみると奥多摩の特殊性が良く分かります。

ダウンヒルが苦手な人でも、安心して降れると断言できるぐらい綺麗な路面が奥多摩にはあります。

ただし、場所柄、非常に車が多いですし、速度取締重点路線として警察署に名指しされているぐらい暴走車両も少なくないので注意は必要です。

ここで少し道路から離れてみると、また新しい発見がありました。

ここまで自走で訪れて三頭山を登れという意味でしょうか。

ロードバイク × 登山という新しい可能性を感じます。

都民の森のある三頭山の反対側には、地味なことで有名な鶴峠がありますが、そのさらに向こうには絶景で名高い大菩薩嶺があることは登山家には有名です。

三頭山も登ってみると見どころの多い場所なのかも知れません。

都民の森をあとにして、風張峠をくだると奥多摩湖にたどり着きます。

この辺りは写真撮影には最高の場所です。山稜の緑とダム湖の青が作り上げる光景は関東でも有数の美しさを誇ります。

その一方で自転車で走行するには最低の場所です。

どの道路を通ってもトンネル続きで、交通量も檜原や都民の森とは比較にならないほど多いです。

しかもトンネル内は狭小で、照明もなく、湧水のせいで路面状態はまったく分からないのに落下物も多く、あげくに通行車両もダンプトラックを主体とした大型車ばかりという、考えられる限り最低の条件を合わせたような場所です。

これほどまでに好きで嫌いな場所というのは、ほかに国道 135 号ぐらいしか思い当たりません。

さすがに平日の朝なので、週末のように渋滞することはありませんけれども、関東らしい交通量の多さは相変わらずです。

そんな中でもロードバイクやクロスバイクの自転車乗りと3分間に1度ぐらい擦れ違います。

今まで知りませんでしたけど、平日に走りに出かけている人も多いのだなと実感できて新鮮な気分になりました。

そして、最後に梅ケ谷峠を超えて、京王八王子駅から輪行で帰ります。

ここは始発駅であり、スペースに余裕があることが多く(高尾駅との違い)、新宿まで乗換なしで40分前後で到着でき(拝島駅との違い)、さらに電車の本数自体も多い(奥多摩駅や武蔵五日市駅との違い)ので、奥多摩方面に向かうときには圧倒的に使いやすいです。

さらに混雑する時間は外しているはずなのですけれども、それでも新宿に近づくに連れて乗車人数が増えていくのは変わらずです。

最近、気がついたのですが郊外から都心に向かう電車では、途中下車する人がほとんどいないので、どれだけ空いているように見えても、結局、終点近くまで行けばいつでも混んでくることには違いがありません。

あらためて、はやく東京を離れたいと強く、強く思いました。

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