ホイールはスポークテンション調整で蘇る?テンションメーターを購入しました

ホイールについて調べているうちに、スポークの張り方やテンションがホイールの剛性に直に影響を与え、乗り味が変化する事が分かってきました。

スポークが適正なテンションで張られていないホイールは、反応が悪かったり、力が逃げたりして、本来の性能を発揮できない可能性があるようです。

ですが、お使いのホイールの適正なスポークテンションの値を、皆さん、ご存知でしょうか。そう思った事が、記事タイトルの直接的な由来です。

私はトラブルへの強さとランニングコストを重視して、手組ホイールを常用しています。

ショップの手組なのでネットで検索したところで適正なテンションなど分かりません。

ならば、なるべく未使用に近い状態のうちに、前後ホイールの左右のスポークテンションを自身で計測しておこうと思い立ち、PARKTOOL TM-1ヨドバシのゴールドポイントと交換 購入しました。

あれとかこれとか購入した影響で、ポイントがたくさん余ってたので。

構造は非常に単純で、スポークを挟み込んだ時のバネの伸びでテンションを計測します。

トルクレンチ同様、使い込んでいくうちに、このバネの弾性がどんどん落ちていって精度が狂いそうなので、定期的な再調整は必須ですね。

出荷状態ではどうなっているのか不明ですが、比較対象を持っていないので、今のところは良しとします。

可能であれば、行き着けのショップ等に尋ねる方が絶対に良いです。

私は京都から東京に転居して来たという理由で、頼れるショップが身近にないので、こうして仕方なく試行錯誤しながら何でも自分でやっています。




測ってみたところ、リアはもちろん、左右対称のフロントでさえテンションに差がありました。
それどころか、同じ側のスポークでさえ、一本毎にテンションが異なります。

一本毎に異なるスポークテンションの何を持って、そのホイールのスポークテンションとするのか。

不明だったので調べてみたところ、公式サイトに動画ありました。



動画によると、どうやら全スポークのテンションの平均値が求められれば、良さそうです。

リムの繋ぎ目付近だけ突出して値が高くなったりする事は、あまりないんでしょうね。

やる事は分かったので、右側と左側のそれぞれのスポークテンションを全て調べてメモ帳 (CSV) に書き込み、Rに食わせて平均値を算出します。

計測した値を Kgf に変換するには付属の換算表を用いても良いですが、公式にはこんな便利なものもあります(公式動画に出てくるやつです)。

Wheel Settingsのところから、スポークの素材(Material)、形状(Shape)、幅(Thickness)の入れてやると、換算表に載っていない幅やテンションのスポークのKgfを算出してくれます。

個人的に使えると思ったのは、その付属の Wheel Tension Balancing app の方で、ホイール全体のテンションバランスの可視化をやってくれます。

メモした値を全てコピー&ペーストしていくと平均値も出してくれますし、各スポークのテンションが全体の分散 n% 以内に収まっているかも自動でチェックしてくれます。

アプリで算出された平均値 (Kgf) や標準偏差 (Kgf) などの結果一覧は、名前を付けてローカルに保存できます。

少し動作が遅いのが難点ですが、道具としての使い勝手は素晴らしいです。

換算表に載っていない幅のスポークはノギスで計測するしかありませんが、表に載っているサイズに適合するスポークならば、付属の計りで簡単に調べられます。



見た目は携帯型のニップル回し…

φ1.5mm から φ1.8mm まで 0.1mm おきに幅が切ってあり、そこから飛んで φ2.0mm と φ2.16mm に対応しています。

DT Championなら φ1.8mm でピッタリです。

これで新品出荷時のスポークテンションを調べて記録しておけば、ホイールの性能を長持ちさせる事が可能になるはずです。

やっぱり、振れ取り台も買わないといけないかな…(´・ω・`)

手組みホイールを購入しました

DSC03571

ロードバイクにおける練習用(或いは普段から履きっぱなしの日用)ホイールには、リムが軽く耐久性が高いという条件を満たすアルミクリンチャーホイールが良いと述べました。

その考えを自ら実践すべく、Mavic Open Pro のリムと SHIMANO Dura-Ace ハブ を用いた手組みホイールを新規に購入しました。

手組みホイールの良さはリムやスポーク (消耗品) の価格を抑えながら、回転性能に大きな影響を与えるリム重量を少なくできる事にあります。

逆に短所としては専用設計の完組ホイールよりも空力やバランスが悪くなる事が多く、剛性を求めれば重量が犠牲になる等のトレードオフが顕著に現れます。




その点を考慮しても汎用部品を使用する事によるメンテナンス性の高さとコストパフォーマンス、スポークの多さからくる耐久性とトラブルへの強さは、距離を走る練習用ホイールだからこそ利点となるのではないかというのが本記事の趣旨となります。

手組ホイールと言えども Fast Forward – F6R のようなレース使用を前提としたハイエンドモデルも存在しますが、あくまでも練習用ホイールなのでリムの材質は安価な上に天候を選ばないアルミニウム合金に限定し、タイヤは入手性の良い23Cのクリンチャータイヤを使用する事を前提とします。


DSC03568


とは言え、ハブについてはスポークやリムよりも耐久性が高い事を考慮して Dura-Ace を選択しました。

スポーク本数さえ対応していればカーボンディープリムでも組み合わせられる事を踏まえた上での将来的な拡張を見越した選択です。

練習用ホイールに使用するのであれば、Ultegra ハブでも十分な性能を有している事は間違いありません。後述の様にDura-Aceハブを選択しても極端に軽量化ができる訳ではないからです。

リムについてはアルミリムで最も実績のある Mavic の OpenPro を採用しました。手組のクリンチャーリムとしては定番となります。

左右のテンションバランスを重視するなら DT Swissの RR 440 Asymmetric という選択も考えられますが、OpenProの方が軽量かつ採用実績が豊富なので、先ずはリムはリム屋という事で試験的に導入しました。

スポークはスポーク屋に任せるという考えから、DT Swiss の Competition 1.8mm を採用しています。


DSC03573


迷ったのはスポーク本数です。本数が増えるほど耐久性が増すと同時に剛性も上げられるようになりますが、重量が増えて空力も悪くなります。

完組ホイールはスポークを減らす事で軽量化と空力の改善を行っている事が多いだけに最も頭を使わなくてはいけないポイントです。

私の用途では剛性の高い反応性の良いホイールが理想ですので、ホイール全体の重量が多少増える事を厭わずに剛性を重視する事を考えます。完組ホイールがスポーク本数を前20/後24H程度に抑えるのに対し、手組ホイールでは32Hものスポーク本数が張られる事が一般的です (頑丈なディープリムでは例外的にスポーク本数が減らされる事も多いですが)。

そこで標準的な 32H を検討したところ、懇意にしていたショップの店長から「重くなり過ぎるので (これだけヒルクライム頻度が高いなら) 不満が出るだろう」という貴重なご意見を頂き、最終的に1段階スポークを減らした 28H の2クロス組みで組んで頂く事となりました。

これらの部品の組み合わせにより、完成したホイールの重量はリムテープ込みで前後で 1,647g となりました。

前輪 760g に対して後輪 887g は (部品の合計) 市販価格7万円台のホイールとしては一般的ですが、ランニングコストを含めた長期的な使用で真価が発揮される事が期待されます。


DSC03562

DSC03566


前述のように走行性能、耐久性、価格、(汎用市販品を用いる事による)整備性のバランスから選択した手組みホイールですが、所有欲を満たさないかと問われれば、そんな事はありません。

フランス製の高精度部品などを自由に組み合わせて用いる事ができ、組み方や配色まで指定する事が可能です。

そのように乗り手の好みに合わせて調整されたホイールが使い難い訳がありません。




この新ホイールを用いて、次回以降の「クロモリCarlton N 再生計画」では、具体的な改修作業に取り掛かります。

ZONDAで十分?普段使い用のホイールについて考える 2

DSC03494

※ 本記事で言及している対象は 2015年モデル です。C17以降のモデルは考慮しておりません。


前記事で述べた通り、Zondaは多くのユーザーの支持を受けており目にする機会も多いホイールでありながら特殊な構造を持ったホイールです。
繰り返しになりますが、その特徴を理解した上で自身の使用用途や状況に適した選択をする事が、機材と良い関係を築く上では重要になると私は考えます。と申しますのは、私自身が購入前にZondaの特徴をよく理解していなかった為です。
バイクもホイールも乗り手や環境に対して向き不向きがあります。どんな状況にもお勧めできる万能のホイールは残念ながら存在しません。
評判を根拠にするよりも、ご自身の乗り方や用途を明確にしてから機材を検討する方が満足度が高く、結果的に選択した機材にも愛着が湧くという考えが本記事の執筆の動機です。
Zondaは確かに良いホイールです。しかし他人が良いと言うからではなく、自分の乗り方や使用用途に合致しているから良いと自信を持って言って頂きたいのです。




Zondaの特徴を2点挙げるとG3スポーキングとステンレス製スポークによる柔らかい乗り心地、そして同クラスのホイール群と比較してやや重たいリムと言えそうです。
それに対する私の乗り方は、コストパフォーマンスを叫びながら距離も獲得標高もガッツリ盛るというもの。東京の信号や車を避けて毎週のように奥多摩の山岳地帯を目指すヒルクライムがライドの主体となります。
そうなると物足りなく感じられるのが加速性です。反対にフレームの性質や年齢のせいもあってか乗り心地の良さが重要だと思われた事はそれほど多くはありません。
加速性はホイールの剛性と重量配分により変化します。Zondaは乗り心地が良く耐久性が高い反面、剛性はそれほど高くなくリムが重たいという特徴がここでは短所になり得ます。
リムの重さがどれほど加速に影響してくるかについてですが、仮にホイールの設計が同じならば リムで50gの重量増 は平地での発進から時速20kphに到達するまでに要する時間で5倍、ハブで50gの重量増 は4倍の差の違いになって現れると、以下の記事ではMavicのMaxime Brunandの言葉を借りて報告しています。

上の記事に出てくる唯一の数式が、α(回転加速度)= t (トルク) / i (慣性モーメント)というものですが、同じ回転加速度を得るなら慣性モーメントが大きくなる程、より大きな力が必要となる事を表現しています。
重力に逆らいながら走るヒルクライムでは、無論それ以上に重量が大切になってきます。
言い換えますと私の用途では距離を走るために耐久性の高いステンレス製スポークを選択する意味は大いにあっても、G3スポーキングという特殊な構造を持ったホイールを選択する事による恩恵は余り受けられないのかもしれません。


DSC_0438


むしろ回転体の外周部に位置するリムが軽量であり、Zondaよりもスポーク本数がずっと多いホイールの方が適している可能性があります。
ヒルクライムではスポークの空気抵抗が問題になるほど速度は上がらない状況が多く、それよりも剛性が高くホイールの変形量が少ない事が重要となるからです。
こうした性能だけを追求するのであれば、当然ながらカーボン素材を用いたディープリムにチューブラータイヤを組み合わせるのが合理的です。リムデプスを深くして慣性モーメントを小さくしながら同時に剛性を高める事が可能だからです。
しかし、練習用(或いは普段から履きっぱなしの日用)ホイールとしてはパンクや盗難、悪天候などへの対策面で難があり、日常では使い勝手が良くありません。
気軽に常用する為にはタイヤの入手性が良く、耐久性の高いアルミクリンチャーリムとステンレススポークの組み合わせを満たしている事が現時点では欠かせません (将来的なチューブレスタイヤの普及次第ではクリンチャーである必要性は下がります)。
この条件を満たしながら、なるべくリムが軽量で剛性が高く、なおかつ低価格なものが私にとって理想の普段使い用ホイールです。その結果、候補の一つとして手組ホイールという選択に辿り着きました。
もちろん、レースなどの本番環境では Bora Ultra を使用するので普段からG3パターンに慣れておきたいという方やZondaの乗り味や見た目が好きな方にとっては、最高の普段使い用ホイールである事に間違いはありません。
定期的にスポークを張り替えるので、通勤からレースまでアルミスポークのホイール一本で行くという考え方も否定しません。
Zondaという強烈な個性を持ったホイールから教えられたのは、機材の選択において重要なのはどのような特徴を持っているのかを知り、それをどのような場面で活かすのかを明らかにするという自明ながら忘れがちな事でした。
続く