普段使いの PC における Linux の使い心地 — そして MacBook と Chromebook

一昔前に Windows から Ubuntu への移行が盛んに唱えられた時期がありました。調べてみると5年前 (2014年) あたりにも Windows XP の延長サポート終了に伴って、そんな意見が盛り上がっていたみたいです。

当時から「正気か?!」と思い続けていますが、定期的に聞かれて消えることのない意見です。 Linux Kernel を用いた OS としては桁違いに普及した Android を除いても、デスクトップ Linux は徐々に PC オペレーティングシステム (OS)の中でのシェアを伸ばしているようです。

と言っても、2018年現在でもデスクトップ OS 全体の約 2% のシェアしかありませんけれども、それでも随分と増えたものです (PCそのものの利用が縮小している中で減少幅が少ないだけかもしれません)。




デスクトップ Linux そのものは大きく変化していないなかで、これだけシェアが増えているのは驚きですね。

なんと言っても Apple iTunes や Adobe Photoshop/Photoshop Lightroom に Microsoft Office などを筆頭に人気の商用ソフトウェアは、デスクトップ Linux では使えない事が普通です。

AMD の CPU や NVIDIA の GPU ドライバと組み合わせると、相性が良くないので頻繁にフリーズします。

いつの時代の計算機なんだよという感じですね。

それでも Apple の Common Unix Printing System (CUPS) のお陰で、プリンタ関係のドライバも充実して、印刷 (とくに日本語などのマルチバイト文字の印刷) に泣かされることは少なくなりました。

スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末から印刷を行うのと同じように、無線LAN対応のプリンタも Linux PC から当たり前のように使えるようになったのは一昔前では考えられなかった環境の変化です。

運良くバイナリパッケージが配布されていても、それを自分のシステム環境に合わせて設定し直してインストールするまでに一苦労。エラーを吐いても何処にも解決法が記載されていないことも珍しくはありませんでした。

さらに昔は日本語の表示や入力すら… と考えると、まさに隔世の感があります。

もう一つの大きな環境の変化は Chromebook の登場です。


ASUS Chromebook Flip C101PA シルバー 10.1型ノートPC OP1 Hexa-core/4GB/eMMC16GB/C101PA-OP1

Chromebook とは ChromeOS を搭載したノートPCです。ChromeOS は Google が Linux Kernel を用いて製作した OS でして、デスクトップ Linux 向けに開発された Gimp や Inkscape といったソフトウェアを動かすこともできます。

つまり Chromebook とは Linux Kernel 向けにPCベンダーが提供するノートPC筐体 (しかも継続販売されるほど普及している) と見なすことができます。

これがどれだけ凄いことかを即座に理解できるのは Linux ユーザーです。

長い間、デスクトップ Linux はユーザーが勝手にインストールする OS であることが一般的であり、ハードウェアメーカーが動作を保証しているのは一部の市販モデルに留まるなど例外的な状況でした。

私もネットブックに当時の流行だった Arch Linux をインストールして CPU の高熱に苦しめられたり、スピーカーの音割れを経験したり、プロジェクターを認識せずに発表で使えなかったりと Linux のダメなところを飽きるぐらい身を以て経験しました。

現在使用しているワークステーションでもフリーズ対策として、安定するまで /etc/default/grub を何箇所 (どうやら Global C-state Control と I/O MMU が鬼門らしく、ここを disable にするとフリーズ頻度が大きく減りますが完全には直りません) も書き換えています (仮想環境で使用しないのは GPU に計算させたい場合があるからです)。

しかし、これでもハードウェアを認識しているだけ、まだ状況としては良い方なのです。

動作も安定していて滅多にフリーズなどせず、人気のソフトウェアも使用できて、一定期間はサポートも期待できる Windows を消去して乗り換えるなど、安易に他人に薦められるものではありません。

とくにラップトップでは Windows OS 用に最適化されたハードウェアを Linux で動かすとバッテリーの消費量が大きくなる可能性があるなど明確なリスクがあります。最近の薄型軽量のノートPCでは仮想環境にインストールしたり、デュアルブートするほど SSD 容量に余裕がないことも多く、そもそも Linux を使おうという気分にすらなりません。

ところが最初から「Linux」向けに開発されている Chromebook は話が別です。

ChromeOS 上で Linux ソフトウェアを利用しても良いですし、外出先からサーバーに SSH 接続するためのコンソールとしても利用できます。Vim も Git も GCC も Java VM もローカルで動きますし、Chrome なんて名前が付いているぐらいなので、もちろん V8 の node.js も使えます。

今まで UNIX/UNIX ライク OS 搭載のノートPCで使いやすいのは MacBook ぐらいしか選択肢がなかったのですが、ChromeOS にこれだけできることがあるのならば、もうモバイルは Chromebook で良いではないかという気分にもなってきます。

MacBook は iTunes を始めとする人気ソフトウェアの大多数を利用することができ、(コネクタを使えばという条件付きで) プリンタやプロジェクタで悩まされることもなく、高価で高機能なだけあって性能は良いです。由緒正しい UNIX でもあります。

そこまでの性能が必要ない場合に、安定して使える Linux ノートPCとして複数のメーカーから Chromebook が (必要最低限の構成からハイエンドの Pixelbook まで) 用意されている意義は大きいです。

無責任にデスクトップ Linux への乗り換えを勧めるのはどうかと思いますけど、Chromebook は「普通の人」が「普通に使える」PC です。ChromeOS をデスクトップ Linux と見なすと、これがどれだけ画期的なことかご理解いただけるかと思います。

クラウドサービスが一般的になり、ドキュメントやスプレッドシートの作成、画像編集、メール管理などウェブブラウザで可能なことが多くある現在では、動画編集なり、ゲームなり、機械学習なりの特別な意図がない限り、ローカルマシンは (とくにノートPCは) それほど高性能である必要性はありません。

出張や旅行などで持ち歩くには MacBook は CPU などが高性能すぎて稼働時間が短いですし、高価すぎて盗難や故障が痛いです。一方で MacBook は UNIX 環境でありながら、デスクトップ Linux の弱点をほぼ完全に克服しており、これ1台でおおよそ何でもできます。

Chromebook は商用ソフトウェアの少なさと外部ハードウェア対応の弱さという Linux 由来の弱点をそのまま残しているものの、Google のサポートと安定した動作環境に長い稼働時間という利点があります。

実用的な Linux 搭載モバイルPCとして極めて有用だと個人的に思います。

という訳でつづき: 出張や旅行で大活躍する Chromebook

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