舗装の悪い山道を下っていると突然に破裂音が聞こえてハンドルを持っていかれる事があります。
こんな時に限ってタイヤブートも切らしていて、雨天後に使用するためのルブのステッカーをブート替わりにして応急処置を施すことで、なんとか人がいるところまで辿り着けることがあります (※推奨はしていません)。
あるあると思われた方も、どこを走ったらそんな事になるのかと思われた方も、どちらも正しいと私は思います。
豪雪地帯の山道では国道であっても路面が荒れたり、波打っていたりするのは結構あることです。海外に行くと舗装路が途切れたりすることも珍しくありません。
その一方で舗装の綺麗な道路ばかり走っていると、2年以上もパンクとは無縁でチューブの交換時期が分からなくなったりもします (※こちらも推奨はしていません)。
どんな状況であっても確実に役立つのは気温や天候に合わせたサイクルウェアなので、テールライトやパンク修理キットと一緒に真っ先に適切なウェアから揃えるべきですが、それ以外の持ち物については季節や行き先によって変わります。
とくに片道 80km 程度 (渋谷から都民の森、京都七条から金剛トンネル、新大阪駅から和歌山港フェリーターミナル) から 100km 程度 (渋谷から箱根芦ノ湖、京都から敦賀、梅田新道から亀山) のロングライド† になる場合には、それなりに持っていると便利な装備品があります。
ある人にとっては一度も使う機会がないかもしれません。でも他の人にとっては有益かもしれない装備品を備忘録も兼ねてまとめました。
Contents
調光レンズのアイウェア
長距離を走る日は必然的に早朝の薄暗い時間に出発して、日没後まで走り続けることになります。とくに視界の悪い早朝未明と夜間に役立つのが調光レンズです。普段は無色透明であり、紫外線に反応して色が変わります。つまり、早朝や夜間と日中とで自動的にレンズの色が変わるアイウェアです。
道路のひび割れ、陥没、黒い服を着た路上の泥酔者の存在など、薄暗い道路は自転車にとって大変危険です。ただでさえ障害物を見落としやすい環境において、さらに光量を減らしてしまう着色レンズの使用はとても危険であり、神経を擦り減らすことにも繋がります。
どれだけ薄い色のレンズを付けても、黄色やオレンジなどの明るい色のレンズに変えても、暗所では色付きのアイウェアを着けると視界が悪くなります。
暗所では無色透明となる調光レンズであれば比較にならないほど視界が良くなるので、安全であることはもちろん、身につけていて楽でもあります。
変色にも気が付かないことが普通であるほど自然です。外してみた際に初めて変色していることに気が付くぐらいです。
しかし、この色の変化は緩慢なので自転車の走行速度でトンネルに入る際には調光は頼りにならず、通常の着色レンズ同様に視界は悪くなります。したがってトンネルの多い山間地での使用を期待して購入するものではありません。
あくまで早朝や夜間の風除け、眼球保護に役立つものであり、その用途では十二分に効果を発揮してくれます。
無色透明のレンズさえあれば、レンズ交換式のアイウェアでも同様に使用することは可能ですが、レンズを持ち運ぶ分の荷物が増える、交換する手間が増えるなどのデメリットもあるので使用頻度が多いと億劫になってきます。
レンズを交換する度にフレームに負荷が掛かり、耐久性が下がってしまう点も見逃せません。長距離を走り続けていると集中力も下がってきて、休憩中に机から物を落としたりすることが増えるからです。その程度の衝撃でも、経年使用で傷んだフレームは簡単に割れてしまいます。
私は調光レンズ付きのアイウェアを1本、色付きのアイウェアを (濃度ごとに) 3本持っていて、その日の天候や行き先ごとに使い分けています。
uvex sportstyle 104 vario 調光レンズサングラス
日焼け止めマスク
ロングライドに出かける際、直射日光に長時間さらされ続けることは避けられません。日焼け止めクリームを塗っても間に合わないぐらい日に焼けますし、皮はむけますし、痛みが出てきます。
日焼けに悩まされずに自転車を楽しむのに最善の方法は物理的に肌を覆ってしまうことです。
私も試行錯誤の末に幾つもフェイスカバーを購入して、最終的に ホワイトビューティー C型 と PEARL IZUMI FA-3 UV フェイスカバー の2つを使い分ける形式に落ち着きました。
どこが違うのかと言うとカバーを止める構造と肌への密着性が商品ごとに異なります。ホワイトビューティー C型 はマジックテープで余裕を持って装着できるのに対して、PEARL IZUMI FA-3 UV フェイスカバー はボタンで装着するので風の抵抗が増えないなどの特徴があります。
前者が顔の周りにマフラーを巻きつけるような格好になるのに対して、後者は顔の輪郭が分かるぐらいに無駄なスペースがなくなります。そうした装着感の違いからなのか肌触りも異なります。
装着感が緩くて楽なのは ホワイトビューティー C型 ですが、速乾性が高いのは体感では PEARL IZUMI FA-3 UV フェイスカバー の方です。重さはほぼ同じで、前者が実測 34g 後者が実測 30g です。
これらのフェイスカバーの素晴らしい点は日焼け止めだけでなく、冬場のダウンヒルの寒さを幾分か軽減してくれる効果もあることです。そうした理由もあり、私は季節と行き先と目的ごとに両者を使い分けています。
LEDクリップライト
一日のヒルクライムを終えて河川敷を走っていると、暗闇の中を走っているランナーが見えなくて前照灯を上げたり下げたりすることがあります。
こんな時間に人がいるのかと思う深夜でも、ランナーに、釣り人に、直江津に向かう自転車乗りにと驚くほど人の往来があります。
しかし夕暮れ時を過ぎると河川敷はとても暗くなります。周辺に人工光源が少ないことに加えて堤防に囲まれているからです。
ランナーは周りから見えなくて危険だという事実に衝撃を受けて、自分が早朝に走るときにはクリップライトを身につけるようにしました (私の家は川から遠いので河川敷を走ることはありませんが) 。
Zhaozhe LEDテールライト セーフティライト クリップ式 安全警告灯
このクリップライト、自転車に乗る時に着けても良いじゃないかと考えて、一泊二日以上の自転車旅に出かける時には携帯するようになりました。
着替えなどを詰めたリュックサックに着けておけば、自転車を降りた際にも利用することができます。もともとポケットに着けていたものなので、そのままジャージのポケットに着けても良いですし、チェストベルトなどに挟んでおいても支障はありません。
テールランプが切れた際には予備のライトにも使えますし、小さくて軽いので一つ持っておくと安心感が増します。
乾電池式モバイルバッテリー
私はモバイルバッテリーを5本ぐらい持っています。その中で最も使いやすいのは、重さと容量のバランスの良い 2000mAh から 3000mAh 程度のリチウムイオン電池です。
軽くて持ち運びやすく、必要最低限の容量もあり、充電速度も早いからです。容量が大きい物は自転車で持ち運ぶには重すぎます。
乾電池式のモバイルバッテリーは容量も小さく、充電速度も遅いので使い勝手は良くありません。普段は Arduino を外出先で動かしたいときにしか出番がないほど使用頻度は低いです。
ただし、それは (少なくとも出発時点では) 充電がいつでもできる環境にいるからであって、そうではない時に頼りになるのは乾電池式です。
東南アジアに出張に出かけたりすると当然のように停電したり、そもそも送電線が通っていないことも珍しくはありません。山中やキャンプ場にも充電設備はありません。
そこまで行かなくても、夜通し走り続けたり、緊急時にだけ使いたい時には乾電池式は便利です。値段も安いので紛失しても痛くありませんし、あらかじめ充電しておく必要性もありません。
決して使い勝手は良くありませんが、持っていてよかったと思うことが少なくない不思議なアイテムです。
GREEN HOUSE モバイルバッテリー 乾電池式 ホワイト GH-BTB34A-WH
充電式モバイルバッテリー
さきに述べたとおり、通常時の使用において最も使いやすいのは、重さと容量のバランスの良い 2000mAh から 3000mAh 程度のリチウムイオン電池です。
それはロングライドにおいても変わるところはありません。
使いやすいのに乾電池式よりも優先度が低い理由は、冬場はあまり信用できないからです。特定の製品がどうこうというわけではなく、リチウムイオン電池自体が低温に弱く、使用条件次第で電池残量が大きく異なったります。もちろん、アルカリ乾電池でも見られる減少ですが、リチウムイオン電池ほど顕著ではないので、同じ環境で使用していても信頼性が大きく異なります。
私が出張でよく行くミュンヘンでは冬場の夜の外気温は -5℃ ぐらいになったりします。そんな環境でスマートフォンで通話をしていたら、いきなり電源が切れてしまうことが稀にありました。
電源ボタンを押しても、SIMカードを抜き差ししても反応はなく、詳しく調べてみたら直前まで 60% 以上もあったバッテリーが瞬間的に 0% になっていました。
都市部であれば大した問題ではないかもしれません。しかし、ロングライドで好んで訪れるような無人の山中や過疎地においては話が違います。行き先によっては便利さよりも信頼性が重要です。
チーズ用クラッカー
一緒に出かけたことのある方は、ほとんどがご存知なのですが、私は魚介類が食べられません。
エビだけは10年ぐらい訓練して食べられるようになったものの、未だに魚は吐き出しそうになるほど苦手です。燻製にしても、揚げ物にしても、つみれにしても、かまぼこにしても全く効果がなくて困っています。
お好み焼きにかける鰹節や煮干醤油のラーメンは大丈夫なのでアレルギーではないと思うのですが、それ以外は体が受け付けない感じの吐き気を覚えます。
淡水であろうが、汽水であろうが、海水であろうが、生であろうが、焼いていようが、いくら挑戦を繰り返しても食べれるようにはならず、ブラインドテストしてみても魚が入ったものだけが的確にダメなので、半ばもう諦めています。
蟹はさらに苦手で真剣にアレルギーを疑っています。魚とは異なり、出汁や蟹クリームコロッケに含まれているのを口にだけで、本当に蟹が原因で体調が悪くなります。
かろうじて貝は食べられますが、食べられることと好みであるか否かは別問題です。いつも食生活には悩まされ続けており、自転車で出かけるときも例外ではありません。
これだけ食べられるものがないと補給食でも宿でも困るのです。自転車で行きたいような名所や山間地や離島には旅館しかない場合も多く、食べられるものが冗談抜きで白米だけになることも多々あります。
そこで私が補給食として持ち歩いているのがチーズ用クラッカーです。
このチーズ用のクラッカーは5枚ごとに包装されており、補給食として持ち歩くのに最適なサイズです。おおよそ 55mm × 50mm × 25mm の表面積に 21g の質量です。ジャージのポケットに入ります。
本当はこれに常用のポケットナイフがあるとなお良いのですけれども、キャンプ場以外でナイフを持ち歩いているのはただの不審者なので、試行錯誤の上に KIRI (児童向けのクリームチーズ) をセットで持ち出すようになりました。
これならナイフを用意しなくても塗ることができますし、持ち運びにも適しています。
何しろ 18g ごとに個別包装されており 37mm × 37mm × 13mm とポケットに入れておくのに調度いい大きさになっています。
わりと頻繁にセール対象品になり、チーズの中では賞味期限が極めて長いので、割引価格でまとめ買いしてストックしておくと優秀な補給食 (兼、夕食) になります。
レンズクリーニングティッシュ
長時間、走り続けていると雨に降られたり、泥が跳ねたり、汗で曇ったりと何かとアイウェアが汚れます。サイクルコンピュータもスマートフォンも汚れて見えづらくなります。
道中にお手洗があったりすれば水道水で丸洗いできるのですが、山道ではそうも行かないことが多くて地味にストレスになります。
そういう時に使い捨てのレンズクリーニングティッシュがあると役立ちます。
HAKUBA レンズクリーニングティッシュ 個装 100枚入り 速乾 除菌 ウェットタイプ KMC-78
個別包装で小さく、荷物にもならないので、3つぐらいツールケースに入れっぱなしにしておくと便利です。
ポリエチ手袋
走っていると駆動系に落枝やゴミが絡まったり、チェーンが落ちることがあります。直そうとチェーンを掴むと手が油まみれになって黒く汚れます。
その手で補給食を食べなければならないときは最悪です。
ツールケースの中にポリエチ手袋を3枚程度、入れっぱなしにしておけば、それを回避できるかもしれません。小さく畳んで収納することができることと使い捨てできることが最大の魅力です。
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† と言っても東京では最も近所にある峠の1つへの最短距離に相当するわけですが