ロードバイクのディスクブレーキ採用に思う

Dura-Ace 9100系の発表から1週間ほど経過していますが、9100系での採用をもって、今後の普及が期待される油圧ディスクブレーキについて思っている事を書きます。
私の周辺ではクランク一体型パワーメータの方が話題性が高いのですが、こちらについての反対意見は目にした事がありませんので、気になるのは Sport Camera CM-1000 等の他デバイスとの連携がどうなるのかぐらいです。
対して油圧ディスクブレーキの採用については、仮に Paris-Roubaix の不幸な事故がなかったとしても、賛否両論あり、評価が分かれるところなので、思いつく限りのメリット、デメリットを書き出して整理してみたいと思います。
かつて、私はロードバイクへのディスクブレーキの採用を歓迎していました。
単純に制動力が高く、リムブレーキと比較して天候による性能劣化が少なく、リムへの磨耗が少ない事によるホイールの長寿命化が期待された事が主な理由です。
ディスクブレーキの普及は、カーボンホイールの最大の弱点である ブレーキ熱による破損のリスク雨天時の制動力の低さ を克服し、高性能なカーボンホイールをより身近な存在にするものとして期待すらしていました。
自転車のホイールの構造について調べていくにつれ、しかし、そのメリットを理解しつつも、ロードバイクにディスクブレーキを採用する事に対して、少しばかり懐疑的になってきたのが正直なところです。
リムブレーキと比較してディスクブレーキは、ホイールのスポークにストレスの掛かる構造をしている事は想像に難くありません。
Dura-Ace 9000 C35 などのホイールで採用されているラジアル組は、


ディスクブレーキのホイールでは見られないのはもちろんですが、(特にフロントの)スポーク本数自体も現状のように少なくするのが難しくなる事が容易に想像できます。
言い換えると、ホイール重量、空力的に現状よりも良くなることはありません(他にも左右のバランスや剛性なども気になりますが、実物を見ていないので取り敢えずは割愛します)。
ホイールの回転速度を考えると空力という要素も無視できないのではないかと最近では考えておりまして、これに重たいディスクブレーキが組み合わさると加速の面では相当不利になるのではないか…というのが気になっている点です。
もちろん、そこまで高速では走らないユーザーにとっては、天候に関わらず 安定して大きな制動力を得られる という絶対的なメリットが得られます。
例えば、市街地で通勤に用いられる例などですが、信号ストップが多発するのでスピードの出しようがありません。こうした目的に対しても、軽いカーボンホイールを(磨耗を気にせず)日常使用できるというメリット(夢)があります。
しかし、何のデメリットもないかと問われると、ホイールやブレーキに対して今まで以上に繊細な扱いが要求されるという問題が残ります。
何かしらの衝撃を与えられたり、組み付けが不完全である場合、ディスクブレーキのローターとブレーキパッドは容易に接触します。
接触したら歪むディレイラーハンガーを扱うのと同様の慎重さで、ブレーキを取り扱わなければなりません。輪行時に気を遣う必要があるのはもちろん、車体の転倒落車 にも細心の注意を払う事が要求されます。
こうした特性を考えてみると、否定派の意見も妥当なものが多く、当初、私がナイーブにも想定していたような万能機材でない事は明らかです。
そうした特性を理解した上で、ディスクブレーキを選択する事によるメリット・恩恵を受けられるのは、どのようなユーザーなのでしょうか。
私なりに少しばかり考えたところ、以下の2つのユーザーが思い浮かびました(誤解しないで頂きたいのは、私はディスクブレーキという選択肢が増える事自体は歓迎しています)。

  1. 通勤で乗られる方/ロングライドなどで長距離を乗られる方
  2. アルミとカーボンのホイールを同じバイクで使われたい方

1番の前者と後者は異なる存在である事は理解しておりますが、原則として目的地まで自走を完遂させねばならない事、ディスクブレーキの採用で受けられる恩恵が同じである事から同じグループに含めました。
ディスクブレーキは制動力が高いだけでなく、ブレーキ操作(コントロール)も楽である というメリットがあります。
疲れていても乗らなければならない通勤ライドや、疲弊したロングライドの後半では、これほど頼もしい事はありません。
2番で想定しているのは、1つのフレームで複数のホイールを履き替えたい場合です。
保管場所などの理由から1台で何でもこなしたいという場合、ブレーキシューに頭を悩ませなくて良い分、構造的にはディスクブレーキの方が自由度が高いと見て良さそうです。
対応するホイールの種類が増えてくれば、それ自体がディスクブレーキを選択する理由の一つに成り得ます。
レース、または、それに準じた強度の走行を前提とした Dura-Ace というブランドで発表されたからには、ダウンヒルでもメリットを存分に発揮して活躍してもらいたいのが本音です。
現状ではホイールの剛性が不明なので、本命と思われたダウンヒルでの利用については判断を保留しています。
リム側面のブレーキ性能を考慮しなくても良い分、ホイール外周部の設計の自由度が高まり、リムの軽量化と個性化が進む事が期待されますので、ディスクブレーキ専用に設計されたホイール(リム)が一般的になった時、本当の意味でディスクブレーキのメリットが得られるのかもしれません。




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