フルサイズEマウント 50mm レンズを考える

どのメーカーにも「このレンズを使いたいから、カメラ本体 (マウント) ごと購入する」という気持ちにさせる素晴らしいレンズがあります。

SONY フルサイズEマウントで言えば、個人的には FE 85mm F1.4 GM (SEL85F14GM)Planar T* FE 50mm F1.4 ZA (SEL50F14Z) などが該当するのではないかと勝手に思っています。


Planar T* FE 50mm F1.4 ZA (SEL50F14Z)

とくに Planar T* FE 50mm の方は、名前こそ古典的な Planar ですけれども、中身のレンズ構成は「何だこれは」と驚愕するほど唯一無二の形状をしています。

Planar と言うよりもSTFレンズ FE 100mm F2.8 STF GM OSS (SEL100F28GM) と Vario-Sonnar の掛け合わせというか、まったく新しい名前を与えてあげたほうが良いと思われるほど個性的な形をしています (XAレンズを使用していないので G-Master とも違いますね)。

レンズ構成からして全くの別物なので、既存のほかのレンズ (とくに Planar 型のオールドレンズ) では代用できない唯一無二の存在に見えます。




歴史と伝統のある Planar 型をお探しなら、本家の ZEISS から Loxia F2.0/50mm という選択肢が用意されています。

こちらは Double-Gauss の基本に忠実な綺麗な Planar 型レンズです。詳細は公式ページからレンズ構成を確認できます

軽くて質感も非常に良いですが、マニュアルレンズなので少し注意が必要です。


ZEISS Loxia 2/50 E-mount

それから定番の Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA (SEL55F18Z) もあります。

野心的な SONY Planar 50mm とは対照的に、こちらは教科書通りの Sonnar 型レンズです。

ただし Sonnar 型レンズ自体、基本的に一眼レフでは使用できない (レフ機のミラーと物理的に干渉する) とされているので、これはこれで E マウントの特権と言えるかもしれません。

このあたり、Biogon 型にも同じことが言えますね。

一眼レフの広角・標準レンズの多くが Distagon や Planar 型ばかりなのには理由があったわけです。


Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA (SEL55F18Z)

では、私は何を使っているかと言えば、じつは 50mm 付近は所有していません。

むしろ 18mm と 65mm と 110mm の間の焦点距離がぜんぶ空いています(純正レンズが1本もありません)!

現在、手元にある標準域のレンズは MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical の1本だけです。


MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical

このレンズは Tessar型 (Heliar) の発展系であり、言うなれば Sonnar のすごく遠い親戚みたいなものです。

とんでもなく解像度が高く、「マクロ」というのもあってアホみたいに「寄れる」こと(厳密なことを言うと撮影倍率と撮影距離は全く違うものなのですけれども) に特化したレンズです。

ボケを重視する人にはあまり適しているとは言い難いレンズですが、解像度の高さや収差の少なさでは既存のレンズ群の中でもトップクラスの光学性能を持っています。

その性能の分、焦点距離や明るさのわりに大きくて、重たいですし、マニュアルフォーカス限定であるため、友人や子ども、ペットなどを撮るには習熟と工夫が要求されます。

観光地などで知り合ったひとに写真を撮ってもらったり、家族に貸し出したりすることは実質的に不可能と考えたほうが良いです。

高性能なのは素晴らしいことなのですが、さすがに不便なので FE 24-70mm F2.8 GM (SEL2470GM) ズームレンズ を購入するか、または 35mm から 50mm ぐらいのオートフォーカスレンズを1つ増やそうかな、とここ数ヶ月ほど考えていたわけです。


FE 24-70mm F2.8 GM (SEL2470GM)

当然というか、まあ、ズームレンズも持っていないわけでして…

ズームレンズの代わりに RX100 を購入してみて、ズーム機能を多用するようなら 24-70mm G-Master に入れ替えようと考えていました。

しばらく、RX100 をいじっていて「このズーム倍率だったら、今までどおり単焦点だけでも良いか」と思えてきたので、焦点距離 50mm あたりで1本追加しようとなったわけです。

もし仮にレンズを1本も持っていなければ、きっと Planar T* FE 50mm F1.4 ZA (SEL50F14Z) を購入していたと思います。

なんと言っても唯一無二の性能ですし、絞りを開放してボケを堪能するのであれば最適です。

ところが、現状、常用しているレンズは、性格的には正反対の (開放でもシャープ過ぎる) MACRO APO-LANTHAR 65mm です。これと合わせて2本も大きなレンズを持ち歩くのはどうかなと思えます。

一度に両方を持ち出せないとなると、私の性格上、早々にどちらかを手放すことを考え出します。

そこで小型軽量とオートフォーカスの速さを重視して Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA (SEL55F18Z) を選択しました。

このレンズは以前にも所有していたので、元の鞘に納まったと表現できるかもしれません。

とくに性能に不満はありませんでしたけど、最近は出番が少なかったこと、もしズームレンズを購入したら使用用途が重複すること、ちょうど5年ほど使用して保証も切れていたことなどが理由で、数ヶ月前に下取りに出しました。

同じレンズを書い直したことに寄って、発売日に購入した証である小さなシリアル番号と Carl Zeiss 表記がなくなって悲しいような、新しいロゴである ZEISS の表記と新規の長期保証が付いて嬉しいような複雑な気分です。

「寄れる」けれども重くてマニュアルフォーカスのアポランターと、軽くて明るくてオートフォーカスが速いけれども「寄れない」Sonnar のある意味「2つで1つ」のいい組み合わせかもしれません。

どちらもボケはあまり評判が芳しくないのですけれども、私はあまりボケは重視していないので選択における優先度は低いです。

ボケや立体感を楽しみたいのであれば、SONY Planar 50mm や Loxia 2.0/50 の方が使われていて楽しいと思われます。

どちらも欲しくなる良いレンズです。

私が最低限の必要なものしか持ちたくない性格でなければ、間違いなく購入していたと思います。

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