紅葉の奥多摩

日本の冬には紅葉がある。転職以来、一年の半分以上は大陸で過ごしていたので、そう言えば紅葉の季節なんてものを意識するのは数年ぶりかもしれません。

冬と言えば 20℃ を超す気温のもと半袖で西貢や大嶼山を巡る季節。そんなふうに考えていた時期が私にもありました。

そうした今までの当たり前を捨てて、新しい生活様式を受け入れることに難儀しているというわけでもないのですが、新しい仕事に新しい課題が山積していてなかなか休日を取れません。

奥多摩に出かけたのは、じつに40日も自転車に乗らずに過ごしていたある日のこと。実家に置かせてもらっていたロードバイクを回収しに向かった際に、たまたま暖かい日が続いていたので勢いで自転車にまたがって早朝の半蔵門へと赴きました。

そのまま気分が乗ってきたので数年ぶりに甲州街道を遡上して八王子へと到着。浅川の河川敷を走って高尾駅前に来た時には日も昇り、乗用車が列をなして道を塞いでいました。ああ、何年経っても変わらない、じつに東京らしい光景であるなあと感慨深く思ったものの、立ち止まっていると汗冷えするので車の来ない脇道へと逃れて和田峠に辿り着きました。

八王子の和田峠は最大斜度 18% もある激坂なので、通り抜ける目的であれば敢えて選ぶような経路ではありません。しかし、この日は高尾山の南側の大垂水峠(国道20号)も、北側につづく高尾街道・美山通り(都道61号)も渋滞が酷すぎて、もうあんなところ通りたくないと思ったら、ここしか通れる道がありませんでした。




この坂キツイんだよなあ、いまの走力で登れるかな…と恐る恐る登り始めます。まったく登れる気がしませんでしたが、30 分近く掛けて勾配の緩いところを狙っていけば何とか登りきれました。

いつの間にか展望ポイントができていたり、相模原(藤野)側は心なしか舗装が良くなって道幅も広くなっていないかと思っていたところ、私が知らない間に台風がきて一度崩落していたらしいことなどを後から知りました。

無事に和田峠を通り抜けたら神奈川県(藤野)と山梨県(上野原)をかすめて甲武トンネルに向かいます。藤野や上野原はどこに行っても坂がでてくる場所なので、経路に含めるなら峠越えをするつもりでいたほうが良いですね。

甲武トンネルや田和峠・鶴峠に向かう県道522号の場合も上野原カントリークラブの手前に斜度 10% 超のキツイ坂が出てきます。例によって通りたくねえなあ…と思いながらも、ほかに通れる道がないので覚悟を決めて登るしかありません。

坂の手前に神奈川県内では珍しいハッピードリンクショップがありますので、ファンの方はお忘れなく。坂を登り切ったところで山梨県に入ります。

ここに数年前はロードバイク乗りにとって有名だった富士山ビューポイントがあります。いまはどうなのでしょうね。定期的に来てる人いるのかな。

カントリークラブの入り口を通り過ぎたら、鶴峠と甲武トンネルの分岐点となる棡原の交差点まで暫しの下り坂です。下ったら上るのお約束で、鶴峠に行こうが、甲武トンネルに行こうが峠越えが待っています。

今日はとくに山登りがしたいわけではなく、ただ奥多摩に行きたいだけなので甲武トンネルに向けて右折です。高尾街道や美山通りが渋滞してなければ、こんな獲得標高を増やさなくても良かったわけです。

わずかな神奈川区間と山梨区間を終えて東京都内に戻ってきます。数年ぶりに訪れる檜原村。最初からこっちに来たかった。

上川乗から都民の森へ。ここまで来ると上り坂しかありませんが、登りきれば下り坂しかないので気分が楽です。

感染症対策のこともあって他人とは会いたくないので、観光者が集まる都民の森には立ち寄らずに通過しました。

都民の森は休憩施設を備えた登山道の入り口なので、自転車の場合は補給が不要なときを除いて敢えて行く必要はありません。しかし、困った時には頼りになる存在です。数年前はスポーツ自転車用のタイヤチューブなどを売店で販売していたり、空気入れを貸し出したりしていました。最近のことは良く分からないですが。

都民の森を過ぎると勾配が上がって風張峠が近づいてきます。

斜度 10% 近くのなかなかに手強い峠道だったはずなのですが、和田峠と上野原カントリークラブの坂の直後に訪れるとただの長い上り坂にしか見えずに拍子抜けします。

登りきった時点での標高は海抜 1,146m 気温は 15 ℃ 風速は 1m/s の南風。じつに過ごしやすくて最高です。

ここまで来たら、残すところは青梅までおよそ 50km の長いダウンヒルがあるだけです。

もともと有料道路だっただけあって路面状態は非常に良好、線形も無理がなく、景観も東京都内の道路で一番の奥多摩周遊道路が待っています。

ここのダウンヒルは最高です。ただ人気になり過ぎて二輪車の事故が多発することでも有名です。紅葉の時期には渋滞することもありますので注意が必要になります。

それを言ったら関東地方はどこに行っても大勢の人や車で混雑するところなので、そういうものだと割り切るしかないです。

奥多摩周遊道路を下った先には奥多摩湖こと小河内ダムがあります。観光地化されていて雰囲気も明るく、見どころも多いので新緑の時期はここを目的地に定めて周辺を散策しても楽しいです。

しかし、誰とも会いたくないので色づいた山と湖面だけ撮影して、と思っていたところ、知らないお姉さんに写真を撮っていて良いですかと話し掛けられてしまいました。

経験したことのない事態に、もしかして場所を空けて欲しいのかなと思い悩んでいたところ、どうも私の自転車を撮影したい様子に驚かされました。

自転車の写真を撮りたいなんてロードバイク乗り以外に見たことがないですし、自分の自転車を撮影させて欲しいなど言われたことがないので困惑しつつも、せっかくなので私も一緒に並んで撮影してみました。

それ以降はダウンヒルの爽快感を満喫するために一度も立ち止まること無く、渓谷を走り抜けて多摩川まで戻ってきました。あまりの気持ちよさに久し振りにアクションカメラが欲しいという気分になりました。

ここを録画したら、みんな奥多摩に行きたくなるはず。

そんなふうに思えるぐらいには楽しめましたし、体力と筋力が衰えて登坂はできないと思っていても、何とかならないこともないなと再確認しました。

今度は GoPro と MTB でも始めようかな。

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