OLIGHT RN1500 と CAT EYE VOLT 700 の照度計測実験

照度センサを用いて自転車用ライト OLIGHT RN 1500 バイクライトCAT EYE LEDヘッドライト VOLT700 (現在は廃盤) の点灯開始から電池切れまでの照度を計測しました。

記事内における電池切れの定義は、ライトの電源電圧が動作電圧未満まで低下し、自動的に消灯した状態になること程度にお考えください。

また点灯時間は計測開始から 1.00lx 以上の照度を連続して維持した時間とします。今回は途中で一時的に照度が 1.00lx 未満まで低下することはありませんでしたので、計測開始から電池切れまでの時間がそのまま点灯時間です。

目的

電池式のハンディライト、自転車や登山用の照明のなかには点灯直後から電池残量の低下に伴って明るさが低下していくものもあれば、電池切れまである程度の明るさを維持するものもあります。

夜間に街灯の期待できない場所で長時間移動を行う際に、どの程度の時間、どの程度の明るさを持続するのかという目安を把握することが計測の目的です。

対象

計測するのは照度と時間です。中立かつ信頼性のある情報源として照明学会の定義を引用します。


照度【しょうど 】
測光量の中で一番馴染みの深い値である照度は,厳密には照明によって照らされている面の単位面積に入る光束を評価した値であり,記号はE,単位はルクス[lx]になります。

つまり計測するのは光源自体の明るさではなく照らされている部分の値となります。

明るさの目安として自然光では、満月の月明かりで 0.05 – 0.1 lx 曇りの日の日中で 10**3 lx 晴天時の真昼の直射日光が 10**5 lx 程度と言われています。

方法

照度センサ BH1750FVI を使用します。

最小 最大
計測範囲 0.11 lx 100,000 lx
動作温度 -40 ℃ 85 ℃

Digital 16bit Serial Output Type Ambient Light Sensor IC BH1750FVI
https://www.mouser.com/datasheet/2/348/bh1750fvi-e-186247.pdf

計測器の詳細は別記事にあります。本記事には記載していませんが照度、温度と同時に湿度も記録しています。




環境

自宅のクローゼット内部のハンガーバーに自転車用ライトの固定ホルダーを設置します。

クローゼットは直射日光が入らない部屋に設置されており、照明を点灯していない状態で照度センサは 0.0lx を示します。

さらに計測中はクローゼットの扉を締め切ります。熱によるライト内部のキャパシタの劣化や火災がとても心配です 😨 低温な時期以外では絶対にやりたくないですね。

ハンガーバーは床から 170cm の高さに設置されていますが、超音波測距センサ等を用いて計測すると床から自転車用ライトまでの距離は約 165cm となりますので、計測に用いるライトとセンサの距離は 165cm とします。

さすがにハンガーバーの高さを変えることは不可能ですし、このクローゼットの他に 24 時間を通して照度センサが 0.0lx を示す場所はうちにはありません。やや不本意ではあるものの、ここにライトと計測器を設置します。

計測器は自転車用ライトからなるべく鉛直線上に位置する場所に固定します。ライトからケーブルを垂らし、照度センサの真上にライトの照射面中心が来るように調整します。

この状態で自転車用ライトを点灯し、クローゼットの扉を絞めてから 30 秒後に計測を始めます。

想定

私の自宅には CANYON AEROAD というロードバイクが一台あります。この自転車のライト固定位置は地面から約 86cm の高さにあります。

さきほどの計測環境からライトとセンサの距離は 165cm ですので、これらの2つの値から推定して、自転車のハンドルバーあたりの位置から前方 1.4m ぐらい先の道路を照らしたときの照度に近いものが求められるのではないかと想定しています。

実際に走行中にライトで照らす位置としては現実的に有りうる範囲に収まっているかと個人的には思います。

ただし、この計測方法では 1.65m 先の法線照度に近い値 En が分かるだけなので入射角 θ を考慮すると、実際に走行中にライトで 1.4m 先あたりを照らしたときの照度 Eh は計測値の半分 (cos π/3 = 0.5) ぐらいの値になるのではないかと考えられます。

この辺りは専門外なので本当に正しいかどうか自信はないですけれども。




計測

計測を行うのは RN1500 および VOLT700 のそれぞれ点灯 (Steady mode) です。点滅 (Flashing mode) は多くの国において扱いが曖昧なので、私は一度も使用したことがありません。これからも使用することはありませんので計測はしません。

RN1500 の表記について

Olight 公式ページでは RN1500 の点灯時の明るさを LEVEL 1-3 と表記しており、点滅時のFlash 1 および 2 を LEVEL 4-5 としています。

ここでは分かりやすさを重視して amazon.com 出品ページの High / Medium / Low の表記を採用しますので、必要に応じて読み替えてください。

VOLT 700 の表記について

Cat Eye VOLT700 の製品紹介では Dynamic / Normal / All-Night mode という3段階で点灯時の明るさが定義されています。こちらも比較のために High / Medium / Low 表記を採用します。

VOLT 700 についての注意点

RN1500 は購入直後ということもあり、現在までの合計使用時間は15時間未満です。おそらく計測時にメーカーが意図した通りの性能を発揮しています。

対して VOLT700 は、いつ購入したのかさえも不明(最低でも3年以上は昔)です。RN1500 を購入するまで前照灯はこれ一つしか持っていませんでしたので、香港はもちろん、台湾でもインドネシアでもフランスでも使用してきました。携帯した状態での総走行距離は 27,988km (ただし点灯状態での走行距離は不明) です。

それだけ信頼性が高いということではありますが、長期使用の結果として素子や蛍光体、回路などが劣化して本来の性能を発揮していない可能性が大いにあります

電池は間違いなく劣化しているので、新品状態での稼働時間はこの計測計測結果よりも長いはずです。また RN1500 に比較して暗い値が出ているのも経年使用によって性能が低下している可能性があります。

そうではありますけど、私はこれを現在でも使用していますので、現状を把握しておくことは私にとっては重要です。あくまでも3年以上、酷使し続けた状態での計測値ということを考慮して、参考としてご覧ください

それでは結果です。

結果

RN1500 High Steady モード
最大値 (lx) 3128.33 点灯時間 (s) 7,904 公称稼働時間 (s) 5,400

まずは RN1500 のもっとも明るい点灯モードです。

開始直後から徐々に明るさが落ちていくのは想定内ですが 1,500 秒 = 25分後あたりで一度踏みとどまって、その後は電池残量が尽きるまで一定の明るさを保っている点に好感が持てます。

この計測結果の階差をとってトレンドを除去するとこうなります。

こう見ると25分後あたりまで徐々に照度が落ちていっているのは、大きな変動には見えません。

明るさに大きな変動があるのは点灯開始から 7,000秒 = 約2時間後あたりです。

この結果を見るに気温 15℃ 以上の環境において High モードで点灯する場合、光源の持続を信用できる2時間程度までと考えておいて良さそうです。

RN1500 Low Steady モード
最大値 (lx) 595.83 点灯時間 (s) 46,054 公称稼働時間 (s) 45,000

続いて、もっとも点灯時間が長くなる Low Steady Mode です。

このモードは RN1500 の目玉機能ともなっており、低光量での点灯時間はなんと公称 12.5 時間です。

計測してみたところ、本当に 46,054秒 = 約 12.8 時間も持続しました。加えて電池切れ直前まで明るさを維持し続けている点も特筆に値します。

計測記録を見るに、いかにも分散が小さそうなグラフなので、階差を求める意味はあるのかなとは思いますけれども、せっかくなので掲載しておきます。

これを見るだけでも、長時間稼働かつ明るさの変動の少ない優秀な照明器具であることが分かりますね。

そのおかげで、このときは半日経っても衣類が取り出せなくて大変だったわけですが。計測場所にクローゼットを選んだやつはとんでもないやつですね。

それと High Steady モードのときもそうなのですが、クローゼットの扉を開いているときに外気の影響を受けて、計測開始時の気温が上がってしまっている点があまり良くないですね。

そこで、これ以降では予め換気して温度変化を少なくする努力をしました。その他の計測条件は先の2つと同一です。

RN1500 Medium Steady モード
最大値 (lx) 1741.67 点灯時間 (s) 19,973 公称稼働時間 (s) 14,400

RN1500 最後の計測対象は、明るさでも稼働時間でも High と Low の中間をとる Medium です。

じつは今回の計測で一番おもしろい結果が出たのは Medium でした。

実測での点灯時間が公称の数値より 92 分も長い 5 時間 32 分もあります。

ここまで稼働時間に差があると製品の個体差ではなく、こういう仕様なのだと思われます。

明るさは一定レベルを維持しつつ、電池残量の減少に合わせて3段階に調整している感じがあります。

一応は公称 4 時間 = 14,400 秒となっているものの、グラフをみると気温次第では 5 時間 = 18,000 秒は連続使用に耐えそうです。公称稼働時間の 14,400 秒を超過しても電池切れ直前まで安定して 300lx の照度が出ています。




ここからはライトを切り替えて Cat Eye VOLT700 の計測です。

VOLT 700 High Steady モード
最大値 (lx) 1926.67 点灯時間 (s) 6,054 公称稼働時間 (s) 7,200

VOLT700 最初の計測は夜道でお世話になる Dynamic モードです。

日没後、街灯が一切ない山道でも、これだけ明るければ安全に走れるのでスポット利用することが多いモードです。街中では明るすぎて使う場面はほとんどありません。

しかし、計測値を見ていると意外と控えめな数値が出ています。これは経年劣化や損耗によるものなのか、最初からこの程度の照度が出るように設計されているのかは分かりません。

少なくとも稼働時間には明確に電池の劣化が反映されています。

変動はほとんどなしです。点灯開始から電池切れまで非常にモデル化しやすそうな落ち方をしていきます。

途中で激しく変動しているのは、一時的にライト電池の電圧が下がっただけでセンサの異常値では無いと思われるのですが断言まではできません。

センサも玩具みたいなものですし、それを言うと Arduino 自体が高精度な計測に向いていませんから、こういうことが無いとは言い切れないです。

それから、本来の使用法では自然風や走行風で排熱されるものなので、赤外線センサでライト表面の温度も監視すべきだったとこのグラフを見て思いました。

VOLT 700 Low Steady モード
最大値 (lx) 284.17 点灯時間 (s) 47,440 公称稼働時間 (s) 36,000

続いて最もよく利用する All-Night モードです。VOLT700 における Low モードです。

驚くべきことに、これもまた公称 10 時間 = 36,000 秒の稼働時間を大きく越えてきました。

なんと RN1500 Low モードの 46,054 秒を超える、およそ13時間17分という稼働時間の長さを記録しています。

RN1500 が 300lx を超える数値を安定して出し続けていたところ VOLT700 は 280lx 程度とは言え、3.6V/5000mAh の 21700 Battery を備えたモデルに対して 3.6V/3100mAh の容量で大健闘しています

こちらも点灯開始から電池切れ直前まで安定した明るさを維持するという理想的なグラフを描いています。この辺り、消費者が求めているものを本当によく分かっていますよね。メーカーに対する信頼が高まります。

登山やロングライドなどの夜間の長時間移動で求められるのは、まさにこういう照明なんですよ。

あとはこの性能を維持したまま、もう少し明るくなれば言うこと無しです。

VOLT 700 Medium Steady モード
最大値 (lx) 849.17 点灯時間 (s) 13,636 公称稼働時間 (s) 12,600

ということで Normal モードです。こちらは All-Night モードの性質をそのままに稼働時間を減らして明るさを向上させた感があります。

正直なところ、私は Normal モードをほとんど使用したことがありませんでした。しかし、よく見てみると早朝練習や帰路など、日照までの時間や残りの走行時間を把握できる場合には非常に使い勝手が良さそうです。

RN1500 と比較すると絶対的な電池容量が少ないので 5 時間とまではいかないものの、一定の明るさで4時間近く持続します。走行距離で考えると舗装路 60-87.5km 程度は点灯しつづける計算になりますので、毎回、満充電する使い方をするのであれば十分に実用的な長さです。

このモードは、もう少し積極的に利用しても良いかなと思えてきました。

総括

厳密に考えると気温などの条件が同一ではないので単純比較はできないのですが、グラフを重ねるとそれぞれの性格が分かりやすくなりますので、計測開始時からの時刻に合わせてそれぞれの計測結果を重ねてみました。

こう見るとこの2つのライトの点灯時間は割と似てる感じがあります。

ところが気をつけないといけないのは、この計測結果はライトの照射面中心にあわせて一点のみで計測しているので、これだけでは周辺はどうなっているのかは全くわからない事です。

加えて現状データセットを1つをしか作成できていないので、本来は何度か繰り返して確からしさを検証した方がいいです。

しかしながら、この計測を行っている期間中は最長13時間はクローゼットを使用できなくなるため、私に対する負担が大きく、率直に述べると非常にやりたくないです 😰 ハンダ付けさえ厭わなければ、照度センサは残りのストックが2つあるのですが、またあれを作ってブートローダを焼くのが憂鬱ですね。

これを公開してると計測用に VOLT800 とかコイン電池とか誰か買ってくれるとか本当なんですかね。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

Contact Us